消費につながる仕組みづくりを アトキンソン氏基調講演(JNTO)

2018年3月20日(火) 配信

デービッド・アトキンソン氏
(提供=JNTO)

 訪日外国人旅行者数(インバウンド)が2800万人を上回り、政府目標の4千万人(2020年)は現実味を帯びてきた。一方の消費額は4兆円を突破し過去最高となったが、1人当たりの旅行支出は2年連続の減少(15万4千円)となった。20年に目標(8兆円)を達成するためにクリアするべき課題は何か? 解決に向け、日本政府観光局(JNTO)ではさまざまな施策を用意する。3月8日に行われたシンポジウムもそのうちの1つ。今回は、デービッド・アトキンソン氏による基調講演に注目した。
【謝 谷楓】

観光素材の真価を伝える

 観光業界人のバイブルとなりつつある「新・観光立国論」。著者であるデービッド・アトキンソン氏は昨年、日本政府観光局(JNTO)の特別顧問に就任し、富裕層の獲得や外国人目線に基づく施策の実行に注目が集まっていた。2月には、欧米豪をメインターゲットに据えたグローバルキャンペーン「Enjoy my Japan」がスタート。高所得で観光に対する関心の高い市場の取り込みに本腰を入れた。富裕層の獲得や長期滞在など、「新・観光立国論」での提言が実現しつつある。

 今回のシンポジウム(訪日インバウンド新潮流 ――持続可能な観光を目指して)の基調講演では、観光業における生産性向上をテーマに持論を展開した。

 「生産性向上とは、消費単価を引き上げることに等しい。観光素材を見せるだけに留まらず、消費につなげられるよう、利活用することが必要だ」と、アトキンソン氏は訴える。インバウンドが国内の常識を理解できると楽観視してはいけない。史実や伝統など、日本文化に関する知見をまったく持たない来訪者に対し、観光素材を理解できる工夫を施すことでようやく、消費につなげることが可能だと同氏はみる。

 「世界遺産である二条城ですら利活用が不十分でした。黒書院(二の丸御殿、小広間)には牡丹の間があるのですが、長い間そこには、牡丹という花に関する多言語説明がありませんでした。アルファベットで“BOTAN”という表記を見ても、牡丹がpeonyという花であることすら、インバウンドには分からないはずです」。

 障壁画をはじめ、施されたさまざまな装飾の持つ意味を伝えきることができなければ、その価値に気付いてもらうことはできない。リピーターの獲得や、口コミを通じた情報拡散を実現するためにも、外国人の視線に立った詳細な説明は不可欠だ。インバウンドの持つ興味関心を理解できる外国人ライターを起用するなど、説明の質にもこだわる必要がある。

 二条城をはじめとする観光素材の役割は、近隣宿泊施設や飲食店での消費額増、参観客の増加促進にある。その真価を理解してもらうことを怠れば、消費増という真の目的を達成することはできない。

“自然”を生かし、長期滞在に結び付ける

 インバウンドの平均泊数は9・1日(17年)、横ばいが続くなか、同氏は“自然”こそ、長期滞在の実現に欠かせない観光素材だと強調する。

 「観光庁の調査から、“自然・景勝地観光”に対する関心がとても高いことが分かっています。季節の変化ではなく、山や雪、海など、自然の多様性を生かすことが大切です。旅行支出のおよそ5割が宿泊と食事だと言われていますから、消費につなげられるよう、“自然”を活用することが必要です」。

 観光素材の違いにかかわらず、お金を落としてもらうための工夫を、観光関連企業は行う必要がある。

 例えば、美しい景観のなかでサイクリングを楽しめれば、自転車のレンタル費が生じ、休憩時には飲食が必ず伴う。景勝地を見るだけのものから、体験するものへと変えることは、工夫次第でいくらでも応用が利く。同氏がいう〝自然の多様性〟とは、加工のしやすさだと捉えるべきだろう。

明確な目的を提示する

 「持続可能な観光戦略とは、お金を落としてもらう仕組みをつくることです。そのためにも、明確なターゲティングと、目的の提示が必要なのです」。日本が誇る“自然”にアイデアを注入し、独自のアクティビティを創出することで、客を呼び込む。工夫が不可欠な理由は、インバウンドのニーズ自体が多様だからだ。「新・観光立国論」から一貫して主張していることでもある。ショッピングや食事、観劇など、FIT客の抱える多様なニーズを尊重し応えることができなければ、満足度を高めることはできず、再来や口コミへの期待も難しい。サービスといったソフト面の充実が可能な超高級ホテルを増やす試みも必要だ。雪山や海といった“自然”にスキーやビーチスポーツといったバカンスの要素を加えれば、インバウンドは、来訪目的を明確に定められる。ターゲットの幅が広いため、個々の要求を叶える手段として、アクティビティの創出は不可欠なのだ。自然の持つ多様性を武器に、さまざまな“ワガママ”に応えることができれば、お金を落としてもらう仕組みは自ずとでき上がる。

 あるものをどう生かすのか? 資源を利活用するアイデアが消費増を促す。

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