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インバウンド回復に向けて、旅行動向シンポジウム開く 日本交通公社

2020年10月27日(火) 配信

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 日本交通公社(末永安生会長、東京都港区)は10月27日(火)、第30回旅行動向シンポジウムをオンラインで開いた。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響で、観光・旅行業界や観光地がかつてない甚大な被害を受けた。「コロナ禍の観光動向を振り返る」など3つのテーマを題材に、独自調査や研究成果の発表とともに、国や各自治体が行っているインバウンドに向けた取り組みをゲスト講演で紹介した。【馬場 遥】

 冒頭の主催者あいさつで同公社会長の末永氏は、「楽観視できない状況だが、この期間を有効に活用してほしい。ポストコロナへの理解と考えを深めていくことが大切」と力を込めた。

 

コロナ禍の観光動向を振り返る

 同公社戦略マネジメント室長の守屋邦彦氏は「コロナ禍の観光の動向を振り返る」というテーマで、今年1月以降の社会的動向、地方自治体や地域事業者の観光分野における対応を解説した。

 3~4月の第1波、7~8月の第2波と、新型コロナ感染拡大が国内外に大きな被害をもたらしたなかで、守屋氏は「地域の個性を生かした感染対策PRや、新しい生活様式を踏まえた観光プランが多く造成された」と振り返った。

 

インバウンド再開に向け現状を確認

 主任研究員の柿島あかね氏は、インバウンド市場の再始動に向けて、「アジア・欧米豪の訪日外国人旅行者の動向調査」結果を解説した。

 東アジアは海外旅行に慎重な姿勢を見せているが、「インドネシア・タイ、アメリカなどは日本を含む海外旅行の実施に意欲的という結果が得られた」と語った。

 新型コロナ終息後において、海外観光旅行先では日本が人気1位となった。香港や台湾の訪日人気は「とくに根強い」(柿島氏)。

 コロナ後に希望する訪日旅行のスタイルは、今まで人気だったフルパッケージツアーから、3密を回避できるダイナミックパッケージツアーを望む声が多いと報告した。

 柿島氏の報告と解説を受けて、ゲスト講演では日本政府観光局(JNTO)の企画総室長、蔵持京治氏が、JNTOの取り組みを述べた。

 誘客プロモーションの再開に向け、「入出国規制などの物理的な条件や国内の受入環境、海外の消費者や旅行業界のトレンドの変化に注視する必要がある」(蔵持氏)。

 政府が目指す「30年訪日外国人旅行者数6000万人」達成に向けて、①市場の多様化②消費単価の向上③国内での地域分散――を目指すべき方向性として挙げた。

 

コロナ禍が生んだ地域の独自の商品

 地域活性化室長の中野文彦氏は「コロナ禍に地域を支える観光地の取り組み」を紹介した。

 観光庁が発表した4~6月期の観光消費額は5兆円の減少だった。観光消費額の減少は、交通運輸や飲食、小売店、娯楽などサービス業――など、観光産業以外にも大きな影響を及ぼした。

 中野氏は、感染拡大し始めた4月までに各地域が開発したサービスを例に挙げた。栃木県・塩原温泉「湯守田中屋」と那須ブラーゼン(プロ自転車チーム)は、「源泉デリバリー」で在宅でも温泉を楽しめるサービスを提供。まいまい京都と京都市のガイドツアーライブ配信実施――など。

 「コロナ禍中に生まれた観光サービスを、コロナ後にも継続できるのかが重要」(中野氏)とし、島ファクトリー(島根県・海士町)の青山敦士代表が、行政・一般事業者とは異なる「地域活性化に取り組む民間企業」という立場からゲスト講演を行った。

 同社が造成した「リモートトリップ」は、現地と旅行者をつなぐオンライン旅行体験を紹介した。牡蠣やサザエなどの島の特産品を事前に送ることで、五感を使って楽しめると紹介した。

 4月から開始し、実施回数14回、参加組数は145組という実績をあげ、日本航空(JAL)との協働や宮城県気仙沼市と「2県同時ツアー」などコラボレーションも実現した。

 事業単体としての収益性は低いという認識の一方で、同社としては「島のマーケティングという位置付けをし、コラボレーションを積極的に行うなど継続していきたい」という考えだ。

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