スピード感か 慎重か、民泊のあり方を熱く議論

検討会のようす
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 観光庁と厚生労働省は11月27日、観光・賃貸業界関係者や大学教授、弁護士など有識者らを招請し、第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開いた。これまで国内になかった事態へ対応するため、慎重に検討を進めるか、スピード感ある対応を進めるかなど今後の民泊への対応指針について熱い議論が展開された。

 現行の民泊に係わる制度について、国土交通省・厚生労働省・観光庁・消防庁が説明。事務局である観光庁と厚労省は検討の基本的な視点に「衛生管理面やテロなどの悪用防止の観点から、宿泊者の把握など管理機能・安全性の確保」「地域住民や宿泊者とのトラブル防止」「急増する訪日客の宿泊需給や空きキャパシティの有効活用」を挙げた。

 論点案には「民泊の必要性(位置付け)」「旅館業法との関係」「建築基準法における用途地域規制との関係」「建築基準法、消防法における構造設備基準との関係」「旅行業法との関係」「仲介事業者の位置付け・役割など」「その他」を候補とし、そのなかで「旅館・ホテルとの競争条件」「地域ごとの宿泊需給の状況」「規制内容や方法に対応した自治体の体制」「課税の適正化」「その他」を留意点に挙げた。

 検討会構成員らは現行の制度の問題点や今後起こり得る不測の事態への対応について議論し、今後の民泊に対する制度のあり方を提言した。以下、検討会で提言された内容を一部紹介する。

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長 北原茂樹氏

 「良い面ばかりではなく、集合住宅にとくに問題が集中しているということもある。まずは戦略特区13条が認められた大阪と東京で来春あたりから実証が始まるので、結果を見て議論を深めることが一番大事なことではないか」

 東京大学社会科学研究所教授 松村敏弘氏

 「法改正をともなわずに解釈の変更でできることについては一刻も早く進めていくべき。また、規制強化や(現行の)旅館業法・旅行業法の制約が厳しいなどの視点を持つことも大事だ」

 日本賃貸住宅管理協会会長 末永照雄氏

 「海外の実態調査をしていただきたい。海外の制度を日本でも受け入れていこうという視点に立ったとき、我われのルールでどう処理するのかも大事だが、海外でどのように民泊を運用し、実際にどんな問題があるのかを学ぶべきだ」

 涼風法律事務所弁護士熊谷則一氏

 「民泊を広く認めていくことで観光業が発展するのか、阻害するのかは立場によって見通しが変わってくるので、やってみないとわからない。現在の旅館業法は、何か起こると多くの生命身体に影響があるだろうということから規制が設けられていると考えると、なかなか一足飛びになんでもやればいいというわけにはならないと思う。そのなかで現在すでに旅館業法で緩和部分はあるし、海外事例もあるので事案を見ていかなければならない」

 全国消費生活相談員協会理事長 吉川萬里子氏

 「安全・安心について強固に考えてから制度をきっちり作りたい。消費生活センターでは新しいものができたときに『スキマ事案』として解決できないことがたくさんでるので、どこが安全の責任を持つのか制度として明確になるような方向で考えてほしい」

 和歌山大学観光学部教授 廣岡裕一氏

 「はっきりと合法と言えない事態でどう保障していくか。民泊だけでなく、通訳でも運送事業でも、包括的に保護していくシステムを考える必要があるのではないか」

 法政大学大学院法務研究科教授 今井猛嘉氏「世の中の方は、親戚を泊めることの延長で『友達の友達を泊める』と考える方も多いと思うので、議論の最後に民泊の定義を決めて、どこまでが法規制がかかるのか考えるべき」

 検討会の構成員は次の各氏。

 【座長】浅見泰司(東京大学大学院工学系研究科教授)【構成員】相澤好治(北里大学名誉教授)▽今井猛嘉(法政大学大学院法務研究科教授)▽梅沢道雄(相模原市副市長)▽川口雄一郎(全国賃貸住宅経営者協会連合会会長)▽北原茂樹(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)▽熊谷則一(涼風法律事務所弁護士)▽小林恭一(東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授)▽末永照雄(日本賃住宅管理協会会長)▽高橋進(日本総合研究所理事長)廣岡裕一(和歌山大学観光学部教授)▽三浦雅生(五木田・三浦法律事務所弁護士)▽森川誠(不動産協会事務局長)▽吉川伸治(神奈川県副知事)▽吉川萬里子(全国消費生活相談員協会理事長)【オブザーバー】上田正尚(日本経済団体連合会産業政策本部長)

 なお、次回の検討会は12月14日、3回目は12月21日を予定する。今後は月に1―2回ほど開催し、来年3月中を目途に中間的な論点整理を行う。その後、来夏―秋にかけ、報告書を取りまとめる。

機能面での不備 ― 利用者のことを考えた製品・サービス

 6年の歳月を費やして、今年11月にオープンした韓国初のドーム球場「高尺スカイドーム」の観客席は、長いところで31席のロングベンチが途切れず続き、さらに前後の座席スペースは膝が密着するほど窮屈なため、真ん中の席の観客がトイレに行くには15人が席を立ち通路に出なければならず、その不便さから「『21世紀最悪のドーム球場』という酷評を国民から受けている」というニュースを見て、うっかりちょっと笑ってしまったのだが、これは笑える話ではなく、自分たちもこのようなことは、気づかずに日常的に行っていることだと思った。

 このニュースを読むと、誰もが「なんで観客のことをしっかり考えないで設計したのか」と批判的なコメントになるだろう。

 でも、これは一つの象徴的な事例であり、ありとあらゆるサービス業や製造業も、程度の差こそあれ、利用者のことをきっちりと考えていないサービスや製品を安易に提供していたり、良かれと思ったことが、利用者にとってはむしろ迷惑であったり、「どうしてこの程度のことが気づかないのだろう?」と首を傾げられることは、残念ながらよくあることなのだ。

 作り付けの設備でいつも気になるのが、旅館の洗面台である。水道の蛇口の位置と、洗面ボウルの位置が上手く計算されてなく、手は問題なく洗えるが、顔を洗おうとすると、中央まで出過ぎた蛇口が邪魔になって洗えない、機能面での不備がある洗面台にしばしば出会う。それも1泊3万円くらいの高級旅館のお洒落な客室にも多いのだ。宿主は一見豪華で綺麗な洗面台にウットリするだろうが、一度その洗面台で手や顔を洗えば、利用者の不便さに気がつくのだと思う。

 海辺の風光明媚な宿に泊まったときのこと。窓からの眺めは最高で、ベランダの手すりに凭れて美しい海に見惚れていた。「そうだ! この素晴らしい海を眺めながらよく冷えたワインでも飲もう」と思いつき、ベランダのソファに座って窓の外を眺めた。すると、手すりの位置がちょうど目の位置となり、広大な海は無残にも上下に分断し、情緒は消え失せ、やむなく手すりを見ながらよく冷えたワインを飲んだ。もう10数センチ、手すりを上か下かにずらして設計されていたなら、「また必ずこの宿に来て、冷えたワインを飲みながら海を眺めるんだ」と思っていただろう。宿主は手すりを設置するときに、ベランダのソファに座って窓の外の海を眺めていないはずだ。

 先日、少し疲れも溜まってきていたので、伊豆半島の湯治場を訪れた。石のお地蔵さんも入っている広い湯船は、高・中・低温の3段階に分かれている。紅葉に染まる初秋の森林を眺めながら、身体が温まれば、低温に移り、ひんやりとした心地いい気分を味わうと、再び中・高温の方に移動した。あちこちの温泉地に行くのだが、多くの温泉は温度が高い。加水しない「泉質至上主義」のこだわりの浴槽は必要だと思うが、温泉情緒をゆっくりと味わいたい入浴客もいる。そうすると、少し加水してでも、2種類、あるいは3種類の温度の浴槽が用意されていると、利用者側の意見としてはありがたい。

 何はともあれ、利用者、我われにとっては読者のことをもっと深く考える2016年にしたい。 

(編集長・増田 剛)

過去最高の3058万人に、国内旅行の意欲高く(JTB15―16年 年末年始旅行動向)

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 JTBはこのほど、年末年始(2015年12月23日―16年1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人の旅行動向を発表した。これによると、国内旅行者数が前年同期比0・3%増の2996万人と過去最高が予測され、年末年始の旅行も国内旅行への意欲は高く、総旅行人数は過去最高の3058万8千人(同0・2%増)にのぼると推計した。

 一方、海外旅行者数については、国際情勢不安などから同4・3%減の62万8千人と減少する見通しだ。

 JTB総合研究所が今年3月に行った「国内旅行についての考え方の変化」の調査によると、「泊まってみたいと思える宿泊施設が増えた(39・6%)」、「乗ってみたいと思える観光列車や新幹線などが増えた(25・6%)」という意見が多いなか、「訪日旅行者の増加がきっかけで日本の良さを再認識するようになった(8・5%)」という意見もあり、訪日外国人の増加が、少なからず日本人が国内旅行に目を向けるきっかけになっていると言える。

 アンケート調査から旅行の交通手段をみると、「乗用車」が前年同期比1・5ポイント増の69・0%と最も多く、鉄道は「新幹線」が同2・6ポイント減の12・7%、「JR在来線・私鉄」が同3・9ポイント減の10・1%となった。

 また、宿泊場所については「旅館」「ホテル」「民宿」「ペンション」を合わせると同6・8ポイント増の44・9%で、「実家」と回答した割合は同0・7%減の47・5%となった。

 国内旅行は3泊4日の旅行が増加。今年は実家への帰省だけではなく、お金をかけてホテルや旅館での宿泊を楽しむ、ふるさと旅行券を有効に使うなど、少し贅沢な旅行を予定している人が多くみられる。出発日のピークは12月31日の見込みで、方面別では新幹線開業効果が根強い「北陸方面」や、海外の著名なガイドブックで2年連続1位になった京都を含む近畿方面も人気が高くなっている。

 海外旅行は円安の影響や、日並びの関係で長期の旅行に行きにくいことから、海外旅行平均費用は同2・3%減の21万7千円と減少を予想している。出発日のピークは、ヨーロッパなど長距離方面は23日、アジアなどの近距離方面は29日と30日。帰国日のピークは1月2、3日になる見込みで、方面別では台湾やハワイが引き続き好調で、昨年デモがあり旅行者数が減少した香港も増加に転じた。

 同調査は、航空会社予約状況と業界動向、同社グループの販売状況、1200人へのアンケートから推計。アンケート調査は11月3―15日に、全国200地点の15―79歳までの男女を対象に実施した。

電力販売事業へ、代理販売を計画(HIS)

 エイチ・アイ・エス(HIS、平林朗社長)はこのほど、2016年4月から家庭などに向けた電力小売が全面自由化になることを受け、電力販売事業に参入することを決定した。

 同社は、ハウステンボス(澤田秀雄社長)の子会社であるHTBエナジー(早坂昌彦社長)が供給する電力を代理販売する計画であり、店舗を中心としたネットワークを活用して、来店者に対しサービスの案内や申し込みの手続きを行う予定だ。

 HTBエナジーは、特定規模電気事業者として、ハウステンボスへ今年8月から電力供給を開始していて、一般家庭への電力共有も実施するため、小売電気事業者の登録申請を行った。同社は、リーズナブルで安定的な電力供給への準備を進めている。

 HISは同社グループの総合力を活用して取り組む今回の新事業展開を通じて、顧客の日常生活の質的向上に寄与することを目指す。

日本の旅の良さ語る、日本旅行記者クラブ50周年

シンポジウムのようす
シンポジウムのようす

 日本旅行記者クラブ(神崎公一代表幹事)は11月19日に、東京都内のホテルで同クラブの創立50周年を記念したシンポジウムと交流会を開いた。シンポジウムでは「日本人が気づかない日本の旅のすばらしさ」と題し、パネリストとして日中コミュニケーション取締役の可越氏、鬼怒川グランドホテル夢の季代表取締役社長でビジットジャパン大使の波木恵美氏、JHNトラベル代表取締役社長でHAKUBA RESORT INVESTMENTS代表取締役社長のケビン・モラード氏の3人が登壇。ダイヤモンド・ビッグ社代表取締役社長の藤岡比左志氏がコーディネーターを務め、議論を展開した。

 冒頭、藤岡氏から今年の訪日外国人旅行者数はすでに1500万人を突破し、目標の2千万人に届く勢いであるとの報告がなされ、それを踏まえたうえで「日本人が気づかない日本の良さ」について議題が与えられた。この議題に対し可氏は、「日本人が気づかない日本の魅力は『日本人』である」と述べ、日本の職人が作る商品の品質はとても良く、円安になると品質の良いものが安く手に入るため、中国人旅行者による「爆買い」が起きていると語った。

 ケビン氏は日本の雪質と建造物の素晴らしさを挙げ、とくに建造物について「海外では100年前の建物で非常に古く歴史があるとされるが、京都に行くと、1千年前の建物が残っている。本当に信じられないくらい素晴らしい」と称えた。

 波木氏は、日光・鬼怒川を訪れる外国人観光客に向けたプロモーションに変化を加えたことを報告。以前は日光東照宮など名所をPRしてきたが、近年「周遊」を意識し、あしかがフラワーパークの〝藤〟を前面的に売り出す方法に切り替えた。その結果、同施設を訪れる外国人観光客の数は、3千人から5万人へと急増した。波木氏は「藤の花1つにしても、それを守るための日本の技術力と、やさしさを感じることができる」とし、外国人観光客は、花や果物などのキーワードの裏側にある、日本の技術や伝統などに魅力を感じていると伝えた。

 また、「日本に足りないところ」に関する議題では、パネリスト3人がそれぞれ「受入態勢」「危機管理」「発信力」などを挙げ、なかでも日本の情報発信力は海外に比べるとまだ弱く、今後は相手を理解したうえで、PR方法をその都度変えていくことが重要であるとまとめた。

 シンポジウム後の交流会には、多くの人が出席し同クラブの50周年を祝った。

16年10月9日―11月27日、現代アートの祭典、「岡山芸術交流」を開催

大森雅夫会長(右から2人目)
大森雅夫会長(右から2人目)

 岡山県岡山市の中心市街地を利用した現代アートの祭典「(仮称)岡山国際現代芸術祭」の実施計画発表会が11月20日、東京都内で開かれた。正式名称は「岡山芸術交流(オカヤマ・アート・サミット2016)」で、会期は2016年10月9日―11月27日まで50日間の予定。会場は岡山城周辺の文化施設が集積するゾーンを中心に、来場者が徒歩や自転車ですべての会場を回ることができるコンパクトなエリアで展開する。主催は岡山芸術交流実行委員会で、会長は大森雅夫氏(岡山市市長)、総合プロデューサーは石川康晴氏(石川文化振興財団理事長/クロスカンパニー社長)、総合ディレクターは那須太郎氏(TARO NASU代表/ギャラリスト)、アーティスティックディレクターはリアム・ギリック氏(アーティスト)が務める。

 芸術祭のテーマは「Development(開発)」で、14年に開かれた「イマジニアリング(オカヤマ・アート・プロジェクト)」を進化させた。国内外からリアム・ギリック氏が選定した30アーティストの現代アート作品が展示される。

 大森会長は「中心市街地の回遊性向上や、街のさらなる魅力向上をはかるために欠かすことのできない旧城下町エリアのにぎわい復活への起爆剤として、『芸術文化―アートのもつ創造性』に着目し、官民の力を結集した現代アートの祭典『岡山芸術交流』を新たに創設する。アートには人と人、街と人をつなぐ力が秘められている。国内外から岡山の街にさまざまな人が集い、交わり、絆を深め合うことで、岡山の良さや眠っている魅力を再認識し、広く世界に向けて情報発信するきっかけになる」と語った。

経常益100億円突破、入場者数300万人超え(ハウステンボスグループ)

澤田秀雄社長
澤田秀雄社長

 ハウステンボスグループがこのほど発表した第26期(2014年10月―15年9月)決算によると、ハウステンボスグループ連結での取扱高は前年同期比28・1%増の354億900万円、営業利益は同23・0%増の92億3500万円、経常利益は同20・5%増の104億4200万円、当期純利益は同26・7%増の69億4100万円と増収増益となり、経常利益が100億円に到達した。

 ハウステンボス(澤田秀雄社長)単独の取扱高は同13・2%増の297億2千万円、営業利益は同21・1%増の89億1800万円、経常利益は11・4%増の92億7千万円、当期純利益は同16・4%増の60億5800万円となった。また、入場者数は同11・2%増の310万7千人となり、15年ぶりに300万人超えを達成した。

 当期も前期に引き続き、来場客の期待を超える感動を提供すべく場内サービスの質的向上に取り組むとともに、「花の王国」「光の王国」「音楽とショーの王国」「ゲームの王国」の4つのイベント展開軸に加え、新たに第5の王国「健康と美の王国」を開始した。さらに世界初のローコストホテルとして世界中から注目を集める「変なホテル」が7月から第1期の72室が稼働を開始。また、来年3月15日には第2期棟がオープンする。12月中には予約受付が開始となり、ロボットをはじめとする最先端技術の導入により世界一の生産性を目指す。

 同社の高木潔専務は、このほどの入場者数増加の要因について、「常に新しいことに取り組んでいったことが、入場者数増加に寄与した」とし、「なかでも健康と美の王国が、3世代で楽しめるものとして順調に成長した」とコメント。澤田社長は来期に向けた取り組みとして「お客様満足度を上げるための投資を行うのと同時に、スタッフの職場環境を今よりももっと良くなるよう改善し、サービス力向上につなげていきたい」と目標を語った。

30段、1千体の雛人形、1月20日から(須坂アートパーク)

世界の民俗人形博物館「三十段飾り千体の雛祭り」 (昨年のようす)
世界の民俗人形博物館「三十段飾り千体の雛祭り」
(昨年のようす)

 長野県・須坂市の須坂アートパークでは、来年で10周年を迎える「三十段飾り千体の雛祭り」を世界の民俗人形博物館と須坂版画美術館の2館で、2016年1月20日―4月17日まで開く。期間中無休。世界の民俗人形博物館では、高さ6メートル、30段飾り豪華絢爛1千体の雛人形が来館者を出迎える。隣接する須坂版画美術館にも雛人形が飾られ、歴史的建物園に飾られるお雛様と合わせて、全体で約6千体の雛人形が展示される。

 開館時間は午前9時―午後5時(最終入館は午後4時30分まで)。入館料は500円(須坂版画美術館との共通券)、中学生以下無料。20人以上で団体割引あり。

 なお、須坂版画美術館と歴史的建物園では5月8日まで展示する。

 期間中の3月3日―4月3日には「お雛様なりきり体験」を開催する。小学生程度を対象に、着物を羽織ってお雛様になりきる体験イベントで、豆雛さがしなどを実施する。午前の部が午前10時―10時30分、午後の部が午後2時―2時30分まで行う。

 問い合わせ=世界の民俗人形博物館 電話:026(245)2340。

旅行会社向けモニターツアー、きらきら羽越

荻原さん(左)と田村さん
荻原さん(左)と田村さん

 日本海きらきら羽越観光圏推進協議会から荻原直さん(山形県庄内町)と田村清洋さん(新潟県関川村)が11月26日、本紙を訪問し、旅行会社などを対象にしたモニターツアーを紹介した。

 ツアーは商品造成の下見などに利用できる。圏内2つ以上の市町村を視察することなどが条件。交通費、宿泊費、食費、体験料を協議会が負担(1人当たり10万円以内)する。

 観光圏は新潟県村上市から山形県庄内地方、秋田県にかほ市までの日本海側10市町村で構成している。

 問い合わせ=電話:0235(66)5492。

震災から4年9カ月―岩手県陸前高田市と宮古市田老地区を取材― (11月9―10日)

生命と防災の“学びの場”に

 2011年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく5年を迎えようとしている。復興が遅れる一方で、震災の風化は進んでいる。そのなかで、被災地は「生命の大切さ」や「防災」「まちづくりの復興」などさまざまな“学びの場”を提供している。11月9―10日に、復興の最前線、岩手県陸前高田市と宮古市田老地区を訪れた。語り部ガイドが伝えたい真の想いや、未来への「希望」など、現場の声を届ける。
【増田 剛】

「奇跡の一本松」の沖で新たな防潮堤が作られている
「奇跡の一本松」の沖で新たな防潮堤が作られている

陸前高田市、“もの言わぬ語り部”残すべき

 震災で甚大な被害を受けた陸前高田市には、今も全国から「陸前高田で何かしたい」という気持ちを持って多くの人々が訪れる。そんな人々の来訪の窓口となって「陸前高田をもっと深く知ってほしい」と、同市観光物産協会は14年4月に「まるごとりくぜんたかた協議会」を設立した。「応援されるだけではなく、訪れてくれた方々に『確かな価値』を提供していこう」との思いから、震災と復興を伝える「語り部ガイド」とともに、震災遺構を目の当たりにして“防災意識の大事さ”を学んだり、ゼロからのまちづくりの過程を見学しながら“復興とは何か”を考え、そして“生命の大切さ”までも考える機会を与える場となっている。

 震災から5年近くの月日のなかで、まちは日々姿を変えている。被災した建物の多くは取り壊され、わずかに保存が決まった震災遺構が残る風景。平均10メートルのかさ上げ工事のため、重機が山を削り、土砂を運ぶベルトコンベアが中心部の空中で稼働していたが、そのコンベアも撤去されようとしている。また、市内には5・5メートル、12・5メートルの巨大な防潮堤の建設も進められており、復興の最前線を体感することができる。

 陸前高田観光ガイドのガイド部会長の新沼岳志さんは14・5メートルの印が津波到達の高さを示す震災遺構「道の駅陸前高田松原」の前で「日々、我われが体験した震災について語っているが、時が経てば体験者は減っていく。『もの言わぬ語り部』を残しておかなければならない」と強調する。「明治29年、昭和8年、昭和35年の津波のときも何も残してこなかった。書物やDVDで記録しても平時には誰も見ない。見たくなくても毎日目に映る震災遺構こそが訴える力になる。何も残せなかった地域は次第に人々が訪れなくなっている……」と話す。「時とともに訪れる方々のニーズは変わる。ガイドも震災の話だけでなく、『被災地では今このような問題が起こっている』など、ソフト面の話を中心にしている」と語る。

 問い合わせ=陸前高田市観光物産協会 電話:0192(54)5011。

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津波で4階まで浸水した「たろう観光ホテル」
津波で4階まで浸水した「たろう観光ホテル」

宮古市田老地区、「防災の町」世界に向けて発信

 宮古市田老地区は“万里の長城”の異称を持つX型の高さ10メートル、全長2433メートルの二重防潮堤があまりにも有名だ。しかしながら東日本大震災では、181人という大きな犠牲者を出した。

 現在、無残に壊れた防潮堤の沖合70メートルに、高さ14・7メートルの新しい防潮堤の工事が始まっている。4階まで浸水した「たろう観光ホテル」も震災遺構として宮古市が保存することが決まった。

 さまざまな震災遺構が残る田老地区は「防災の町」として認知度を広め、日本全国、世界中から多くの人々が訪れる。宮古市も防災意識を高めてもらおうと、「学ぶ防災」として多様な案内コース・プログラムを用意している。

 田老には高齢者もスロープや階段で高台に逃げやすいように避難道がたくさんあるのが特徴。また、今回の災害で水門作業をしていた消防団が逃げ遅れ犠牲になったことを教訓に、津波到達予想時刻の10分前までに作業を終わらせるルールなども新たに整備された。

 宮古観光文化交流協会に6人在籍する“学ぶ防災ガイド”の佐々木純子さんは「時間稼ぎのための防潮堤がいつの間にか過信になっていたのかもしれない。人間は自然災害には勝てない。100年経っても“逃げること”。少しずつ逃げなくなる意識が恐い」と語る。現在も多くの行政や企業・団体のリーダー研修などで田老を訪れる。

 問い合わせ=宮古観光文化交流協会「学ぶ防災ガイド」 電話:0193(77)3305。

地元の食材を提供「渚亭 たろう庵」

 被災したたろう観光ホテルは宮古市に無償譲渡し保存が決まったが、同ホテルの松本勇毅社長は今年6月、田老の高台に新たに「渚亭 たろう庵」を開業させた。全13室で関西や中四国、九州からも多く訪れ、稼働率は90%を超える超人気宿となっている。アワビやワカメをはじめ、地元の豊富な魚介や野菜を洋食のシェフと和食の料理人が提供する。松本社長は「震災後も以前と変わらず魚は獲れる。加工工場ができ、付加価値を付けられると、さらにブランド化され、大きな可能性を感じる」と未来に期待を抱いている。館内では、松本社長がたろう観光ホテルの6階から撮影した、インターネットでも配信されていない津波の映像を見ることができる。

 問い合わせ=渚亭 たろう庵 電話:0193(87)2002。

 田老地区はまちづくりのビジョンも描かれている。過去何度も津波被害を受け、将来も津波が訪れることが確実なまちであるがゆえに、最先端の「防災の町」として世界中からこのまちに多くの人が訪れ、知恵と情報が集まり、発信していく可能性を感じた。