卒業証書を自作

 かつて製紙産業が盛んだった福井県小浜市の小学校では、卒業生自らが、自分が受け取る卒業証書を手作りする取り組みが行われている。

 約20年前、地元の伝統産業である「若狭和紙」を次世代に伝えようと、和紙生産がもっとも盛んだった同市中名田地区の小学校から始まったもの。

 今では市内全域に広まり、6年生になると行う恒例行事のようになっている。

 地元では近年、この温かみのある若狭和紙の手づくり卒業証書を全国に広めようと、修学旅行などを対象とした卒業証書づくり体験を実施している。

 各校の校章が入った、まさに世界に1枚だけの卒業証書となるだけに、体験に取り組む学生たちの表情は、いつにもまして真剣だとか。

【塩野 俊誉】

キーワードは“連携”、プラットフォーム創設へ、クールジャパン戦略

計121人・団体が参加した
計121人・団体が参加した

 内閣官房知的財産戦略推進事務局はこのほど、クールジャパン戦略の一層の推進をはかるため、官民・業種の垣根を越えた連携を促進し、情報共有やビジネス・プロジェクト組成を後押しする場となる「官民連携プラットフォーム」を創設し、昨年12月15日に東京都内で設立総会を開いた。冒頭、同プラットフォーム共同会長で政府側代表の島尻安伊子クールジャパン戦略担当大臣は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定から、世界の注目が日本に向いてきていることを踏まえ「クールジャパンを世界に広めていくためには、官民連携や異業種連携など『連携』が重要なキーワードになる」とあいさつした。

 同プラットフォームの主な活動は(1)総会(2)マッチングフォーラム(3)ビジネスプロジェクト組成のための基盤づくり――の3つ。総会はプラットフォームの事業・運営の基本的事項を決めるため、年1回程度開催し、必要に応じて分科会も行われる。

 マッチングフォーラムは、異業種連携によるビジネスプロジェクトの創出を目的として、東京国際映画祭の時期など、年2回程度行われる。また、同フォーラムの開催はその効果を最大化するため、他のイベントなどとの連携についても検討していく。

 ビジネスプロジェクト組成のための基盤づくりでは、民間におけるビジネスプロジェクトの組成を加速化させることを目的として「ポータルサイトやSNSなどを活用した官民の情報の交換・共有」「定例ワークショップの開催」「民間の団体などが実施するマッチングイベントへの協力」などを行っていく。

14年国内宿泊9.3%減、要因は「家計の制約」など(JTBF)

五木田玲子主任研究員
五木田玲子主任研究員

 日本交通公社(JTBF)は昨年10月23日に「第25回旅行動向シンポジウム」を開いた。2014年度の国内観光宿泊旅行者数は前年同期比9・3%減の1億6003万人回。延べ旅行者数はすべての月で減少した。日本人の旅行市場について報告した観光文化研究部の五木田玲子主任研究員は、旅行の阻害要因として「家計の制約」と「景気の先行き不安」の2点を指摘。14年は消費税が引き上げられたことなどもあり、物価が高騰した。このことが家計の消費支出に影響を与え、旅行者数減少につながる結果となった。

 日本人の国内宿泊観光レクリエーションにおける延べ宿泊者数は、ほぼすべての年齢層で減少しており、とくに20代(同19・1%減)と60代(同18・7%減)の女性の減少が顕著であった。また、海外出国者数は1690万人と13年に続き2年連続の減少となり、出国者数についても延べ宿泊者数同様に20代と60代の女性の減少が顕著であった。

 JTBFが昨年3月に、全国の16―79歳を対象に行った「JTBF旅行実態調査」によると、14年の国内旅行の性年代別に見る同行者別の市場シェアは、10代女性は家族・友人との旅行が多く、20代になるとカップルでの旅行が増加する傾向にある。男性は、10代後半から20代後半にかけての1人旅のシェアが多く、若いうちに1人旅に出かける比率が高いのが特徴として挙げられる。また、女性に比べ年齢が上がるにつれ、夫婦旅行の伸び率が増加してくるのも、1つの特徴である。海外旅行においても、国内とほぼ同様の市場シェアとなっている。

 「旅先で最も楽しみにしていたこと」に関する問いでは、国内旅行は1位が「温泉に入ること(16・9%)」で、次いで「おいしいものを食べること(15・9%)」、「文化的な名所を見ること(12・3%)」という順に。海外旅行は1位が「文化的な名所を見ること(18・6%)」で、次いで「おいしいものを食べること(14・1%)」、「自然景観を見ること(13・7%)」という順になった。昨今旅行の多様化が叫ばれているが、やはり「温泉」「食」「文化・自然景観」といった王道的なものに、人気が集まっている。

 14年の日本人の旅行市場の総括として五木田主任研究員は「国内・海外ともに減少局面にある。阻害要因として、『家計の制約』『景気の先行き不安』が高まっている」と報告した。

【オープンから1年 さらに進化】強羅花扇グループ 3軒目の新旅館、強羅花扇 円(まど)かの杜(もり)

「円かの杜」外観
「円かの杜」外観

箱根の森の“隠れ家”に滞在、エステ棟や蔵バーで安らぐ

 強羅花扇グループ(飯山和男社長)は、2014年12月5日に神奈川県・箱根強羅温泉に、日本的で上質なおもてなしを求める顧客層のニーズに対応するため、同温泉地に3軒目となる最上級グレードの新旅館「円かの杜」(まどかのもり)をオープンして1年。4月には敷地内の離れにエステ棟が開業したほか、“箱根の森に潜む隠れ家”をより意識した蔵バー「こだま」など、豊かな自然に囲まれた環境に滞在し、心身ともにリフレッシュできるさまざまな魅力を紹介する。

 自然豊かな箱根であるが、昨年5月6日に箱根山に火口周辺警報(噴火警戒レベル2)が出され、6月30日に噴火警戒レベル3に上がると、箱根を訪れる観光客の足が止まった。とくに大涌谷に近い強羅温泉を訪れる日本人の宿泊客は一時激減した。その後、9月11日にレベル2に、11月20日にはレベル1まで下がった。箱根町観光協会の高橋始専務理事によると、「11月の箱根全体の宿泊人員は前年同月比で8割近くまで回復している」状況という。箱根にはリピーター客が多く、彼らの戻りは早かった。また、欧米系を中心とした多くの外国人観光客は警戒レベルが上っても自己判断で強羅温泉エリアにも宿泊していた。今は日本人観光客も戻ってきており、高橋専務理事は「今後もより正確な情報を伝えていきたい」と語る。

 強羅花扇「円かの杜」も、6―7月には客足が減少したが、夏休みにはリピーター客を中心に日本人宿泊客も徐々に回復し、9月の大型連休「シルバーウイーク」には満館になるなど、稼働率は9割以上の水準まで戻っている。

自然の曲線を残す梁が連なる広い玄関
自然の曲線を残す梁が連なる広い玄関

 箱根の森に潜む隠れ家といった佇まいの「円かの杜」で旅人を最初に迎えるのが、独特の“木の美学”。「格式の高い一流の安らぎ」を与える宿をテーマに、全館畳敷きで、欅や檜をふんだんに使った情緒のある純和風旅館だ。自然の曲線を残す梁が連なるエントランスには圧倒される。フロントに置かれた2つの長いカウンターは、神代欅の長大な一枚板を使用している。

長大な欅の一枚板のカウンターが落ち着く蔵バー「こだま」
長大な欅の一枚板のカウンターが落ち着く蔵バー「こだま」

 その館内に、さらに秘密めいた場所がある。それが蔵バー「こだま」だ。重厚な土蔵の扉の奥には、やはり一枚板の神代欅が、薄暗がりの空間で落ち着いた雰囲気を醸し出し、日本酒やスコッチなどさまざまなお酒を楽しむことができる。ウォッカベースで幻想的なグリーンのオリジナルカクテル「円かの杜」はとくに人気。葉巻の販売代理店の認可も取得しており、バー「こだま」で葉巻の販売も始める。

離れのエステ棟(エステティシャンの高瀬宏美さん)
離れのエステ棟(エステティシャンの高瀬宏美さん)

 4月2日にオープンしたエステ棟は、敷地内の離れに2ルームを完備する。大きな窓からは季節ごとに変化する木々が彩りを演出する。野鳥のさえずりに耳を傾けながら心地よい眠りに誘われる利用客も多いという。エステティシャンの高瀬宏美さんによると「20―30代のお客様や、『人生初めてのエステ』というご高齢の方々まで幅広くご利用になられています。奥様が岩盤浴をされている間にボディマッサージで利用される男性も増えています」と話す。

3階客室「尾花」
3階客室「尾花」

 客室は飛騨の匠による木製の調度が和のくつろぎを与え、「特別な開放感」に満たされる。全20室は個室露天風呂付きで、清々しい白木の湯船には、柔らかな感触の透明な湯が敷地内の源泉から引かれている。箱根連山の稜線を眺めながら浸かる露天大浴場は、自然の森林に包まれた“癒し”の空間だ。

3階客室「風知草」の客室露天風呂
3階客室「風知草」の客室露天風呂
自然の木々に包まれた露天大浴場
自然の木々に包まれた露天大浴場

 料理は「飛騨亭花扇」「花扇別邸いいやま」のある岐阜県・飛騨高山からA5ランクの飛騨牛を独自のルートで取り寄せ、陶板焼きやしゃぶしゃぶで提供。また、相模湾などから獲れる新鮮な魚介や、箱根周辺の山々に息づく野菜や茸も振る舞われる。今後、立場割烹「むげん」の稼働も計画している。

 館内イベントも昨年は9月にロビーでコンサートを行ったが、16年も実施する予定だ。

「とまりゃん」開設2周年、全会員に2000円割引CP

宿泊業界で働く人を元気に

 宿泊予約経営研究所(末吉秀典社長)が運営するホテル・旅館で働くスタッフ専用の割引宿泊サイト「とまりゃん」は、サイト開設2周年を記念して全会員を対象に、12月3日から16年4月22日(予約期間は2月29日まで)の宿泊で利用できる「2千円割引クーポン券」をプレゼントしている。

 現在、宿泊業界の従業者は全国で76万人と推定されている。一見、華やかな宿泊業界。夢や希望を抱いて入社しても、不規則な勤務時間などを理由に離職率が高いのが特徴だ。宿泊予約経営研究所は「宿泊業界で働く方が元気になるようなサポートをしたい」と考え、そのためには「働くスタッフの満足度を高めることが必要」という結論を導き出した。

 「ホテル・旅館で働くスタッフがお得に旅ができ、宿泊業界で働く喜びを感じたり、他の施設を学ぶことで自身のスキルアップにつなげてほしい」と、社内外でさまざまなヒアリングを重ねた。

 そして、13年12月、宿泊施設が同じ業界で働くスタッフのために“特別割引価格”でプランを提供する宿泊予約サイト「とまりゃん」が開設した。コンセプトは、「宿泊業界をもっと元気に!」。

 15年10月にはフェイスブック開設とともに、同社社員の公募で生まれた「とまりゃん」のアイコンとなるキャラクター「さるゴロー」が誕生。全国を旅しながら、宿泊業界人向けに割引されているお得なプランを、フェイスブックページの中で紹介している。

 問い合わせ=電話:045(227)6505。

関西エアポートと契約、関西と伊丹の運営者決定(新関空)

 新関西国際空港(安藤圭一社長)はかねてより募集していた空港の運営権について、昨年12月15日、「関西エアポート株式会社」と「関西国際空港及び大阪国際空港特定空港運営事業等 公共施設等運営権実施契約」を結んだ。同社はオリックス(井上亮社長、東京都港区)とVINCI Airports S.A.S(ヴァンシ・エアポート、ニコラ・ノートバール社長、仏)が設立した会社。 

 関西エアポートは関西地域に基盤を持つオリックスとポルトガル、カンボジア、フランス、チリなど世界各地で空港運営実績を持つヴァンシ・エアポートが相互補完的にパートナーシップを結んだもの。それぞれ関西エアポートの株式を40%保有し、関西地域を拠点とする企業や金融機関を中心に20%を保有する。本社は大阪で、社長はオリックスの山谷佳之氏、副社長はヴァンシ・エアポートのエマヌエル・ムノント氏が就任し、共同で経営する。

 空港運営の事業開始は4月1日から。契約は2060年3月31日までの44年間。

日本最長の人道吊り橋「三島スカイウォーク」、静岡県・三島市に誕生

吊り橋からは富士山の絶景を望む
吊り橋からは富士山の絶景を望む

 静岡県三島市に昨年12月14日、歩行者専用としては国内最長となる全長400メートルの人道大吊橋「三島スカイウォーク」(箱根西麓・三島大吊橋)がオープンした。

 吊り橋は、箱根と三島を結ぶ国道1号線沿いに位置し、高さ70・60メートル、歩道幅1・60メートルの橋上からは、日本最高峰で世界遺産の富士山や日本一の水深を誇る駿河湾などを望む。総事業費は約40億円で、年間の延べ入場者数は180万人を見込む。吊り橋を拠点に箱根西麓や伊豆半島を一体とした、新たな観光ルートの構築にも期待が高まっている。

 事業主は、アミューズメント事業を手掛ける「株式会社フジコー」(宮澤俊二代表、本社=三島市)。建設地は約10年前、三島に住む宮澤代表がハイキング中に偶然見かけた景色に感動した場所で、「この景色をきっかけに、地元三島に何か恩返しできないか」との思いから検討を重ね、立地を活かした大吊橋プロジェクトが始まった。

 敷地内には、花を観賞できる土産物売り場「スカイガーデン」も誕生した。地場産品を扱ったテナントの誘致に励むなど、積極的に地元との連携をはかった施設づくりを進めている。店内では、周辺地域で生産されるブランド野菜「箱根西麓三島野菜」などの農産物や野菜のスムージー、軽食などを販売する。このほか付帯施設として吊り橋を見渡す展望デッキ、駐車場近くにはカフェや休憩スペースも新設された。

 吊り橋は往復経路で、入場料は大人1千円、中高生500円、小学生200円、幼児無料。利用時間は午前9時から午後5時(チケット販売は午後4時30分まで)。駐車場(普通車400台、大型車最大28台)、大型トイレを完備する。

 問い合わせ=電話:055(972)0084。

12の観光圏が連携、まだ知られてない日本発信

まだ知らない日本を発信する
まだ知らない日本を発信する

 全国観光圏推進協議会(小林昭治会長)は昨年11月27日、東京都内で「全国観光圏シンポジウム2015」を開いた。同シンポジウムに先駆け行われた記者発表会では、「Undiscovered Japan(まだ知られていない日本)」を共通コンセプトに、全国12の観光圏が連携して魅力の発信に取り組む、全国観光圏ブランド化プロジェクトの内容が報告された。

 同プロジェクトは、ゴールデンルートに代わる新たな日本の顔を目指し、海外に向けて「まだ知られていない日本」を共同で発信していくことを目的に立ち上げられた。先述したブランドコンセプトを基に、12の観光圏が連携して、滞在プログラムの作成や、FITに向けた情報発信に取り組むほか、確かなサービス品質の提供として、日本初となる宿泊施設・アクティビティの観光品質認証制度「SAKURA QUALITY」の導入に向けた取り組みを推進していく。同認証制度は、申請のあった観光施設のサービス品質を第三者が評価・認証するもので、旅行者のサービス選択の幅が広がり、サービス事業者の質の向上にもつながることから、早期導入が期待されており、すでに新潟県・長野県・群馬県からなる「雪国観光圏」で先行導入が行われている。

 同協議会観光圏ブランド化プロジェクトチームの植田佳宏代表は「共通コンセプトに秘められた思いは『VSゴールデンルート』。地方ならではの多様性に富んだ、日本の魅力を発信したい」と思いを語った。

 そのほか、各観光圏の相互送客や予約手配などに注力する。

第41回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表

第41回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表
伊達の牛たん本舗初の1位(観光•食事)
 加賀屋が36年連続トップ

 旅行新聞新社が主催する第41回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第36回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第25回「プロが選ぶ優良観光バス30選」と選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設が決まった。これまで1月に結果を発表していたが、入選施設や旅行商品企画に活用いただいている旅行会社からの声を受け、今回から12月に発表する。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は旅行新聞新社が主催し、1976年から毎年実施。今回で41回目を迎えた。総合100選は、石川県・和倉温泉の加賀屋が36年連続1位に選ばれた。総合100選部門別の上位入賞、各賞入選施設を紹介する。表彰式は来年1月22日、東京・新宿の京王プラザホテルで開催する。…

 

※ 詳細は本紙1612号または12月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

スピード感か 慎重か、民泊のあり方を熱く議論

検討会のようす
検討会のようす

 観光庁と厚生労働省は11月27日、観光・賃貸業界関係者や大学教授、弁護士など有識者らを招請し、第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開いた。これまで国内になかった事態へ対応するため、慎重に検討を進めるか、スピード感ある対応を進めるかなど今後の民泊への対応指針について熱い議論が展開された。

 現行の民泊に係わる制度について、国土交通省・厚生労働省・観光庁・消防庁が説明。事務局である観光庁と厚労省は検討の基本的な視点に「衛生管理面やテロなどの悪用防止の観点から、宿泊者の把握など管理機能・安全性の確保」「地域住民や宿泊者とのトラブル防止」「急増する訪日客の宿泊需給や空きキャパシティの有効活用」を挙げた。

 論点案には「民泊の必要性(位置付け)」「旅館業法との関係」「建築基準法における用途地域規制との関係」「建築基準法、消防法における構造設備基準との関係」「旅行業法との関係」「仲介事業者の位置付け・役割など」「その他」を候補とし、そのなかで「旅館・ホテルとの競争条件」「地域ごとの宿泊需給の状況」「規制内容や方法に対応した自治体の体制」「課税の適正化」「その他」を留意点に挙げた。

 検討会構成員らは現行の制度の問題点や今後起こり得る不測の事態への対応について議論し、今後の民泊に対する制度のあり方を提言した。以下、検討会で提言された内容を一部紹介する。

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長 北原茂樹氏

 「良い面ばかりではなく、集合住宅にとくに問題が集中しているということもある。まずは戦略特区13条が認められた大阪と東京で来春あたりから実証が始まるので、結果を見て議論を深めることが一番大事なことではないか」

 東京大学社会科学研究所教授 松村敏弘氏

 「法改正をともなわずに解釈の変更でできることについては一刻も早く進めていくべき。また、規制強化や(現行の)旅館業法・旅行業法の制約が厳しいなどの視点を持つことも大事だ」

 日本賃貸住宅管理協会会長 末永照雄氏

 「海外の実態調査をしていただきたい。海外の制度を日本でも受け入れていこうという視点に立ったとき、我われのルールでどう処理するのかも大事だが、海外でどのように民泊を運用し、実際にどんな問題があるのかを学ぶべきだ」

 涼風法律事務所弁護士熊谷則一氏

 「民泊を広く認めていくことで観光業が発展するのか、阻害するのかは立場によって見通しが変わってくるので、やってみないとわからない。現在の旅館業法は、何か起こると多くの生命身体に影響があるだろうということから規制が設けられていると考えると、なかなか一足飛びになんでもやればいいというわけにはならないと思う。そのなかで現在すでに旅館業法で緩和部分はあるし、海外事例もあるので事案を見ていかなければならない」

 全国消費生活相談員協会理事長 吉川萬里子氏

 「安全・安心について強固に考えてから制度をきっちり作りたい。消費生活センターでは新しいものができたときに『スキマ事案』として解決できないことがたくさんでるので、どこが安全の責任を持つのか制度として明確になるような方向で考えてほしい」

 和歌山大学観光学部教授 廣岡裕一氏

 「はっきりと合法と言えない事態でどう保障していくか。民泊だけでなく、通訳でも運送事業でも、包括的に保護していくシステムを考える必要があるのではないか」

 法政大学大学院法務研究科教授 今井猛嘉氏「世の中の方は、親戚を泊めることの延長で『友達の友達を泊める』と考える方も多いと思うので、議論の最後に民泊の定義を決めて、どこまでが法規制がかかるのか考えるべき」

 検討会の構成員は次の各氏。

 【座長】浅見泰司(東京大学大学院工学系研究科教授)【構成員】相澤好治(北里大学名誉教授)▽今井猛嘉(法政大学大学院法務研究科教授)▽梅沢道雄(相模原市副市長)▽川口雄一郎(全国賃貸住宅経営者協会連合会会長)▽北原茂樹(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)▽熊谷則一(涼風法律事務所弁護士)▽小林恭一(東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授)▽末永照雄(日本賃住宅管理協会会長)▽高橋進(日本総合研究所理事長)廣岡裕一(和歌山大学観光学部教授)▽三浦雅生(五木田・三浦法律事務所弁護士)▽森川誠(不動産協会事務局長)▽吉川伸治(神奈川県副知事)▽吉川萬里子(全国消費生活相談員協会理事長)【オブザーバー】上田正尚(日本経済団体連合会産業政策本部長)

 なお、次回の検討会は12月14日、3回目は12月21日を予定する。今後は月に1―2回ほど開催し、来年3月中を目途に中間的な論点整理を行う。その後、来夏―秋にかけ、報告書を取りまとめる。