新潟県の石「ヒスイ」が国石に

 日本鉱物科学会は9月24日、金沢市で行われた総会で「日本の石(国石)」に“ヒスイ”を選定した。自然金や水晶など5種類の候補から、会員による投票で決定した。

 日本では、古代縄文時代の遺跡からヒスイを加工した勾玉などの装飾品が発見され、日本の宝石の原点と言われている。ヒスイは新潟県糸魚川地域が最大の産地で、宝石になるような綺麗なものを多く産出している。それゆえ、糸魚川市が2008(平成20)年に市の石に選び、今年5月には日本地質学会が新潟県の石に選んでいる。

 糸魚川市観光協会は11月18―20日、東京の表参道・新潟館ネスパスで観光物産フェアを開く。ヒスイの産地ならではの宝飾品なども並ぶので、好みの「日本の石」を探しに立ち寄ってみてはいかがだろうか。

【長谷川 貴人】

日本は売上8倍に、掲載数1万軒目指す(ブッキング・ドットコム)

ジェームス・ホワイトモア氏
ジェームス・ホワイトモア氏

 ブッキング・ドットコム・ジャパンはこのほど東京都内で、日本におけるビジネスの事業戦略説明会を開いた。同社のデータによると、2012年から15年の北アジア地区の市場で、日本の売上は8倍以上と最も高い伸長率だった。国別の人気渡航先順位も32位から8位に上昇。また日本における掲載施設数は、昨年の夏時点で6800軒だったが、今年の夏で約30%増え8800軒となった。勢いを増す日本で事業強化を推進し、年内に掲載件数1万軒を目指す。
【平綿 裕一】

 「北アジア地区は面白いトレンドがある」。北アジア地区統括リージョナル・ディレクターのジェームス・ホワイトモア氏は、香港や台湾、韓国などで事業が伸びるにつれ、この国々から同社を介して日本の予約をする人が増えたと説明。この結果、日本への送客が増加している。今年上半期国籍別の訪日客割合は、中国が15%、台湾が12%、韓国が7%、タイが5%でアジア地区が全体の約4割を占める。

 同氏は「今後はアジアからのリピーターが増える」と予想。日本の文化や社会、言語に精通し、ゴールデンルート以外の観光地を訪れる機会が増すとした。これらを踏まえ、「さまざまな地域、施設、そしてニーズに応えられるように営業を強化する」と述べた。

 一方、日本からの渡航先はパリ、ロンドンが人気だったが、現在は国内旅行がそれらを上回る。また、国籍別の訪日客割合で、日本は全体の約30%と1番高い割合。同氏は「日本人が国内旅行にブッキング・ドットコムを利用していることがよく分かる」と解説した。

 日本人利用者が増える一因が、初の試みとなるテレビCMキャンペーンだ。昨年の夏に始め、ブランド認知度向上は開始前から2倍以上となり、継続して上昇傾向をみせる。同氏は「昨年は我われにとって飛躍の年だった」と振り返った。

 さらに、新たなTVCMキャンペーンを製作。テーマは「情熱」。第1弾はフードLover篇で、スポーツLover篇と温泉Lover篇が続く。同氏は「それぞれ個人が情熱を持って旅行している。この情熱を大切にしたいという願いを込めた」と製作の想いを述べた。

 また、同社は事業促進だけでなく客のサポートも充実させている。

 今年1月、カスタマーサービスセンターを東京・大崎に開設した。同オフィスを増床し、コールセンターの職員数も大きく増やした。日本語と英語、中国語、韓国語、タイ語など、多言語でサポート。同氏は「これにより日本語は365日、24時間、サポートできる。国内だけでなく、海外からも日本語で対応が可能だ」と盤石な体制を示した。

アダム・ブラウンステイン氏
アダム・ブラウンステイン氏

 続いて、今年7月に日本地区統括リージョナル・マネージャーに就任した、アダム・ブラウンステイン氏が登壇。

 8月に国内の掲載施設が8800軒を達成。年内に1万軒の掲載数という目標に対し、同氏は「あくまでも通過点。その先にまだまだ伸びる沃野がある」と意気込みを語った。加えてこれからは、「人材がカギとなる」とした。

 同社は海外展開で成長を遂げてきたが、一方で地元地域に軸を据え、掲載施設と連携を密にしている。営業所は東京と大阪、札幌、福岡にある。日本各地に拠点を置き、昨年の11月には沖縄支店を開設した。

 沖縄支店は掲載施設に対して初めに、多大なデータやトレンド、分析結果を理解してもらう活動を実施。掲載施設からは「観光のトレンドやインバウンド、国内旅行者に対する理解が深まった」など多くのフィードバックが集まった。同社は沖縄支店の成功を踏まえ、今後は全国に支店を設置していく。さらに日本事業の成長要因に(1)顧客のニーズに応える(2)掲載施設のニーズに応える(3)日本市場の成長――の3つを挙げ、すべてでバランスが重要だとした。

 日本市場が成長すると、全国の施設の数や品質、種類も充実する。これにより、日本の事業がますます促進され、同社の掲載している施設の数や品質、種類も相対的に増やすことができる。同氏は「ただ掲載施設を増やすだけでなく、施設の種類は顧客志向でありたい。さまざまなデータを収集、分析し、ニーズに応えていく」と語った。

 また、民泊の関心が国内外で非常に高いことも報告した。「民泊もバランス良く考えたい。政府と良好な関係で、法令を遵守してビジネスをしていく」と堅実な姿勢をみせた。最後に、日本の市場がまだ伸びる可能性があることや国内の利用者からの信頼も得ているとこを踏まえて、「日本にはこれからも投資をしていく」と強調した。

“学生交流を地域交流へ”、観光プランコンテスト実施(松江市観光振興公社)

独自のプランを発表
独自のプランを発表

 松江城(島根県松江市)のお堀で遊覧船事業などを行う松江市観光振興公社は9月6日、若者の視点で新しい松江観光を探ろうと、愛知県名古屋市の椙山(すぎやま)女学園大学で「松江観光プランコンテスト」を開いた。

 公社では昨年12月、島根大学と県立短期大学部の学生計15人で学外サークル「みんなの堀川委員会」を設立。ワークショップや乗船体験などを通して、松江の歴史・文化を深く学ぶ取り組みを実践している。この活動が、松江市の外部委員も務める椙山女学園大学の齊藤由里恵准教授の目に留まり、今回地域を超えた学生交流が実現した。

 コンテストでは椙山女学園大学現代マネジメント学部で公共経済学を学ぶ3年生9人がそれぞれ、松江の観光素材を盛り込んだ独自のプランをプレゼンテーション。コンテストに賛同した中部経済連合会や日本政策投資銀行の幹部のほか、堀川委員会のメンバー3人も審査委員に加わり、最優秀賞には堀川遊覧船などを活用したお見合いツアーの「恋よ来い!一期一会ツアー」が選ばれた。

表彰後の記念撮影
表彰後の記念撮影

 一連の事業の仕掛け人で、公社の乙部明宏専務理事は「半分近くのプランに松江城が出てこないのが驚きだった。従来の考え方では若い女性のニーズと少なからずミスマッチがあるのだろう」と話す。

 今後の展開についてはコンテスト上位入賞者を松江に招待し、堀川委員会の学生と交流を加速させる。さらに松江観光協会ではプランの旅行商品化に向け検討を進める。

 乙部専務理事は、フジドリームエアラインズの出雲―名古屋間の増便や松江市と愛知県大口町との姉妹都市提携なども念頭に、「学生交流を地域交流へ広げていきたい。中部圏は1700万人の市場。その意味で今回中部圏の経済界の賛同が得られたのは大きい」とコンテストの意義を強調する。

ぴーすくる女子求む、観光レンタサイクルをPR(ツアーズ広島)

山田智浩社長
山田智浩社長

 広島県広島市の観光総合案内所ツアーズ広島は8 月24日、本紙を訪れ、同市中心部に設置したサイクルポートで、自由に貸出返却ができる、観光レンタサイクル「ぴーすくる」をPRした。来社したのはツアーズ広島の山田智浩社長。

 ぴーすくるは(1)観光客へのおもてなし度向上(2)観光利用と市民利用との融合(3)地元との連携と地域活性化――を目的とし広島市の委託事業として、2015年2月から開始した。事業開始から1年半経った現在、外国人による利用も多いという。広島市には、原爆ドームなど自転車で訪れることのできる場所が多いため、自転車の周遊コースなどを案内することで、観光客の行動範囲拡大を目指している。

 訪日観光客やビジネスで同市を訪れている人たちにとって、最寄の場所までのバスでの移動は、バスのルートや、降車停留所などが分かりづらい部分が多いため、今後はビジネスパック利用者などへのサービス拡大を目指す。山田社長は、「カープ女子ならぬ、〝ぴーすくる女子〟を早く結成して、しっかりPRしていきたい」と語った。

 料金プランは、1日パスで、税込1080円。貸出時間は午前7時―午後11時までで、返却は利用当日の午前零時まで可能。また、交通系ICカードや、おサイフ携帯を持っていれば、それらをカギとして利用することができる。そのほか1日パスのほかに、月額会員プランなど、各種会員料金プランを設けている。詳細は「ぴーすくる」(http://docomo-cycle.jp/hiroshima/)まで。

竹を使ったアクティビティ、群馬県・みなかみ町体験旅行

ライフジャケット着用で、はしゃいでも安心(撮影:内田晃)
ライフジャケット着用で、はしゃいでも安心(撮影:内田晃)

 みなかみ町体験旅行(入内島芳崇代表理事、群馬県利根郡)は9月11日、「バンブーキャンプ」をみなかみ町にある洞元湖の湖畔で行った。旅行会社やメディア関係者を対象としたモニターツアーで、今後の商品造成に向けフィードバックを得るのが目的。参加者は大人8人、子供2人。

 「バンブーキャンプ」とは、天然の竹を使って「つくる」と「食べる」「遊ぶ」を、参加者が協力して楽しむもの。当日は、竹を使った筏や器、箸づくりなどが行われた。参加者は、つくった筏で湖に漕ぎ出したほか、竹の箸を利用して流しそうめんを食するなど、竹を利用したアクティビティを満喫した。

 筏づくりでは、パラグライダーインストラクターでもある小林晋リーダーのもと、長い竹をノコギリで裁断して結わうなど、参加者は一致団結して作業に取り組んだ。大人の指導や手助けがあれば、子供でも無理なくつくることができ、林間学校で訪れた小中高生らにも好評を博している。

手作りでも、“本格的”な流しそうめんが楽しめる
手作りでも、“本格的”な流しそうめんが楽しめる

 完成した筏を湖に浮かべ、大人4人で試乗。不安定ながらも、一丸となって漕ぐと、筏はぐんぐん沖へ進んだ。ライフジャケットの着用やインストラクターによる丁寧な指導など、安全面での配慮が厚く、転覆などのハプニングも楽しい。林間学校など大人数での参加時には、プールを目一杯利用しての宝探しゲームなども体験できる。

 流しそうめん用の汁を入れる器や箸づくりでは、竹が割れないよう工夫するなど、作業を通じて竹という素材の性質を学ぶことが可能。そうめんを流すために用いる台も、参加者による手作りで、金槌となたを利用して竹の節を取るなど、普段味わえない体験ができる。

 受け入れの多くを、都心の中学生や小学生、高校生が占め、林間学校や修学旅行など参加者は年間で1万人(15年度実績)を超える。海外からの参加はおよそ10%。みなかみ町体験旅行では一般向けツアーの企画も行っており、現在、冬に向け造成している最中。雪に焦点を据えたものになる予定だという。
【謝 谷楓】

「旅しおり」作成、お届け、旅行体験の質的向上へ(たびらい)

人の温もりを感じる、オーダーメイドならではの楽しみ
人の温もりを感じる、オーダーメイドならではの楽しみ

 パム(長嶺由成社長、沖縄県那覇市)はこのほど、「あなただけの旅しおり」サービスを本格的に開始した。同サービスは、予約サイト「たびらい」を利用した、沖縄エリアの宿泊予約者に対し、オーダーメイドで観光情報を提供するというもの。利用者の目的に合わせて、沖縄を知り尽くした同社の現地編集部スタッフが専任で、観光ガイドを作成する。旅行体験の質的向上を果たすのが目的だ。

 利用者は、施設予約後にメールで届くオーダーシートに、旅の目的や体験したいことなどを記入して返信するだけ。現地編集部スタッフは、想いなどを汲み取ったうえで、各々にぴったりな「旅しおり」を作成し、指定日にオンラインで送付する。スマートフォンからも操作でき、旅行前だけでなく、雨の日の過ごし方など旅行中の質問にも対応できる仕様となっている。

 「たびらい」は同社が運営しており、宿泊やレンタカーといったツアーの予約対応だけでなく、各地域の観光情報も満載の旅行総合サイト。同サイトを訪れれば、目的地の歴史や地理にも触れることができる。

 同社は、“「目的地」から旅を面白くする会社”を掲げて活動しており、現地を拠点に取材を重ねながら、体験にもとづくユニークなコンテンツを企画している。運営メディアも多彩で、「たびらい」のほか、訪日外国人観光客向けの「Tabirai Japan」や、沖縄観光に特化したクーポン付きフリーペーパー「たびカタログ」、中国語沖縄観光フリーペーパー「Hi!沖縄朋友」などの発行も行っている。

 「旅しおり」に関する問い合わせ=パム広報企画(担当・妻夫木) 電話:050(3850)8925。

観光大喜利で魅力発信、やまがた若旦那

大喜利を終えて笑顔であいさつ
大喜利を終えて笑顔であいさつ

 山形県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部(佐藤太一部長)は9月13日、東京都内の寄席でプロの落語家を司会に「やまがた若旦那観光大喜利」を開き、県内の魅力を「笑い」に乗せて発信した。無料冊子「やまがた若旦那」の第3号も配布し、来県を呼びかけた。県の「若者チャレンジ応援事業」の助成金を活用している。立川流真打の立川こしらさんが司会を務めるなか、9人の若旦那が高座に上がった。「お国自慢」や「クレーム」などのお題に対し、珍解答や名回答が続出。それを立川さんが引き取り、さらに笑いを誘った。

 大喜利で魅力を発信するというざん新な企画について佐藤部長は、「経験のないなか、いきなり甲子園のマウンドに立つようなもの」と表現。今回、異業種代表として参加した農家の中川吉右衛門さん(高畠町)は「自分で決めてこの場にいることが楽しい」と語った。企画を練った遠藤直人さん(鈴の宿登府屋旅館)は「一度やると要領が分かった。さらに面白いことができそう」と、次の取り組みに目を向ける。

 青年部では昨年度から若旦那を切り口に、無料冊子の発行やフェイスブックを活用した人投票などのアイデアで、誘客活動に取り組んでいる。

No.441 バリアフリーへの挑戦、情報の見える化で再び温泉へ

バリアフリーへの挑戦
情報の見える化で再び温泉へ

 今年の4月から「障害者差別解消法」が施行され、全国的に障がい者差別解消に対する意識が少しずつ高まってきている。しかし、旅行業において現段階では、観光施設や宿泊施設などの態勢は十分だとはまだ言い切れない状態だ。障がいを理由に温泉旅行に行くことをあきらめている人たちに、再び温泉旅行を楽しんでもらうために、今、旅行業界に求められていることは何か、バリアフリー旅行ネットワーク代表理事の平森良典氏(昭和観光社社長)に伺った。

【松本 彩】

 
 
 

 ――今年4月に「障害者差別解消法」が施行され、障がいを理由とする差別を禁止し、合理的な配慮を行うことが求められるようになったが、現段階で観光施設・宿泊施設などの態勢は十分整っているといえますか。

 観光業では観光庁が主導して、日本旅行業協会(JATA)や、全国旅行業協会(ANTA)などが、数多くの取り組みを行っていくなかで、差別解消に対する意識が高まってきており、かなりの数の人たちが理解を示すようになってきました。

 しかし旅行業ということで考えると、1つの旅行商品で多くのニーズを満たすことは難しいです。困りごとは人によってさまざまだからです。例えば、車イス利用者でも、貸切バスの段差が可能な方から、昇降が難しい方などさまざまです。昇降できない方への合理的な配慮は、ハード面で昇降リフト付バスや、タクシーの別手配、ソフト面で接遇のできる介助者の別手配など、選択肢の配慮がまだまだ不十分だと思います。

 旅行業においては、ゆったりとしたスケジュールで、長い距離を歩かない一般ツアーや、障がい者に優しい専門ツアーなど、地域の旅行会社の、一泊温泉手配旅行などのツアーを、1つの手段として全国に広げることが重要です。宿泊1つとってみても、困りごとはトイレや客室、食事、お風呂、ケアの問題など多岐にわたります。例えば「杖を使っている方に優しい部屋」や「車イス生活の方に優しい部屋」など、求めている情報は人により違います。

 そのため、ホームページ上に「高齢者・杖・車イスなどに優しい」といったキーワードで専用ページを設け、部屋の平面図や、トイレの手すりの有無、介助スペース、ベッド周りのスペースなどが分かる写真と、センチメートル単位の情報を掲載する。各施設が、お客様が知りたい情報を提供していける環境づくりこそが、温泉旅行をあきらめている方の利用促進につながると思います。…

 

※ 詳細は本紙1641号または9月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

あえて… ― 快適なゆえの“退屈さ”を排除する

 ある時、フランス料理の先生が2人、向かい合って昼食を食べているのを何気なく眺めていたことがあった。

 彼らは、テーブルに肘を着き、リラックスしながら時に話に夢中になり、千切ったパンでお皿のソースの残りをすくいながら、口に持っていっていた。フランス料理を知り尽くし、テーブルマナーも熟知しながら、背筋を張らず、丸めた背中で少し下品にフランス料理を食べる、慣れた仕草に男の色気のようなものを感じた。世の中には、さまざまなマナーや作法、ルールがあるが、知識のうえで知りながら、あえてきっちりとやらないことが、洒脱であったりもする。服装もそうだ。上から下まで完璧なドレスアップよりも、あえてのドレスダウンが粋に見える。

 最近の旅は、どんどん快適な方向に進んでいる。家を出て駅や空港まで行けば、目的地までエアコンが効き通しで、雨にも濡れない。目的地でもホテルや旅館の中でずっと過ごせば、旅の途中でその土地の空気と触れることもなく、旅が終わる。

 数年前、沖縄の県庁に日帰りの取材に行ったことがある。家を出てバスで高速道路を走り、羽田空港からそのまま飛行機に乗った。那覇空港に着くと空港内でランチを取り、モノレールに乗って県庁前駅からわずかに歩いただけ。沖縄の島渡る風をほとんど浴びることなくその日の夜には逆の経路で家に帰っていた。これは、私の中では、「旅」とは言えない。沖縄には行ったが、「旅」ではなかった。

 最近、普通自動二輪の免許を取りに行っている。

 なぜ、オートバイなのか?

 それは、どこか快適さへのささやかな反逆なのかもしれないと、思っている。

 クルマは、年々快適性が向上している。まず、ほとんどがオートマチック車である。AT車は便利な分だけ、退屈さを感じてしまうのは、仕方がない。

 最近のクルマは、エンジンの振動や風切り音も遮断し、シートポジションも細かに選べ、エアコンやナビゲーションシステムも高性能だ。だから、家を出て、気が付けば快適な環境のまま、目的地に着いてしまうことになる。

 人間は贅沢である。不快なものを次から次に取り除き、ようやく得た快適さには、退屈を感じてしまうのであるから。だから、あえて快適さを排除したものを求めたがる。

 その一つが、オートバイである。クルマはまもなく自動運転の時代が到来する。そうなれば、ただの快適なカプセルの移動に過ぎない。

 メルセデスやポルシェ、ロールスロイスを所有する世界中のセレブの多くも、オートバイを所有している。快適な退屈さをあえて排除した楽しみに興じているのだと思う。

 オートバイには天井もなければ、エアコンもない。このため、夏は暑いし、冬は凍えるほど寒い。雨が降れば全身ズブ濡れだ。転倒すれば、生死に関わる。しかし、少なくとも旅の目的地に到着した時に覚える感動は、快適な高級車で行くよりも大きいはずだ。

 宿も同じで、ただ快適さや贅を尽くすだけでは、宿泊客はもの足りなさを感じるかもしれない。山や海、川など自然を体感できる遊びのメニューや、あえて原始的な空間を提供することも、きっとプラスに作用するだろう。

(編集長・増田 剛)

リアルな体験を提案、旅行会社だからできること(ジャルパック)

永瀬グループ長(左)、石井マネージャー
永瀬グループ長(左)、石井マネージャー

 ジャルパックは、10月21日と11月3日に、「忠義に生きた西軍の智将石田三成ゆかりの地をめぐる」ツアーを実施する。同ツアーは、JALマイレージバンク(JMB)会員に上質な旅を提供する“JMBプレミアムツアー”の商品で、石田三成というテーマにこだわった内容となっている。造成を担った石井秀俊国内企画商品第2事業部西日本グループマネージャーと同グループを率いる永瀬聡グループ長に話を聞いた。造成の意図に注目したい。
【謝 谷楓】

 ――ツアーの醍醐味はズバリ何でしょうか。

石井:このツアーの醍醐味は、石田三成が身を隠したとされる「オトチの岩窟」(滋賀県)を訪れ、捕縛された瞬間の風景や想いを追体験できるところです。この岩窟は、過去のNHK大河ドラマだけでなく、関ヶ原の合戦を描いた映像作品では必ずといっていいほど登場してきました。現地を訪れることは、歴史好きな方にとって、非常に興味深い体験になると考えています。
 現地へは山を登らなくてはならず、麓から1時間以上かかります。一般的な観光地ではありませんから、道などの整備も十分なものではありません。テレビや映画を見て、行ってみたいと思い立っても、1人で手軽に出かけるといったことはかなり難しいのが現実です。ツアーならば、団体行動というメリットを活かして、このような奥地を訪れることができます。参加者らは、余裕を持って、現場の雰囲気を感じ、過去の出来事に想いを馳せることができるのです。
 また、アマチュア歴史家で、「ミツナリスト」として有名な田附清子氏も同行するため、歴史に詳しくない方でもツアーを楽しむことができます。

 ――テーマ型の造成で大切にしていることを教えてください。

石井:テーマ型造成では、内容の“濃さ・深さ”が重要なキーワードとなってきます。旅行会社は、そのテーマの“キモ”をはっきりさせたうえ、参加者らに対し納得のあるものを提供しなくてはなりません。ただ深掘りし過ぎるのもまた問題ですが、適度な濃さは必要不可欠です。そうすることによって旅行会社は、特定のファン、すなわちリピーターを獲得できるようになると考えています。
 もちろん、これ単体だけでは、十分な利益を望むことはできません。しかし、リピーターを獲得できれば、同種や派生型のツアーを繰り返し実施でき、利益の確保もし易くなります。また、“そのテーマならジャルパック”というように、会社のブランド向上効果も期待できます。

 ――旅行会社としての企画力や提案力が問われる訳ですね。このような姿勢は、個人旅行全盛の昨今では珍しいことだと思いますが。

石井:その通りだと思います。しかし、旅行会社が主体となって、忠実にテーマと向き合い提案するなら、期待しているお客様は必ずついてきてくれます。そのため、内容の“濃さ・深さ”を重んじるツアーがなくなることはないと考えています。今回は、フリープランを中心とした個人旅行とは、ベクトルの異なるツアーができたのではないでしょうか。

JMBプレミアムツアー最新号の表紙。詳しくは左記News HEADLINEへ
JMBプレミアムツアー最新号の表紙。詳しくは左記News HEADLINEへ

 ――個人旅行との差別化も意図していたのですね。今後も、テーマ型に力を入れていくのでしょうか。永瀬グループ長いかがですか。

永瀬:ほかのパッケージ型やフリープラン型とのバランスが、とても重要だと考えています。
 お客様からの要望や自治体との連携など、テーマ型のツアーは、継続していく必要があります。一方、個人旅行の増加や、フリープランを中心とした価格競争など、旅行市場を取り巻く環境の変化についていくことも疎かにはできません。今回のツアーでも、「オトチの岩窟」という秘境をメインに据えましたが、個人では容易に行けないデスティネーションは決して多くありません。言葉のバリアがない国内旅行は、とくにそのことが顕著です。
 そのため、今後も、フリープラン型といった収益を確保する商品を大切にしながら、テーマ型を継続して、バランスの良いツアー造成をはかっていきたいと考えています。

 ――同ツアーと“JMBプレミアムツアー”の関わりについて教えてください。

永瀬:このような内容の“濃い”ツアーを、誰に向かって、どのようにして届けるのかということは、大きな課題でした。JMBはしっかりした会員組織で、“JMBプレミアムツアー”のパンフレットは、そのなかでも上位の会員向けに送付されています。それら会員をターゲットにしているからこそ実現できたツアーだと考えています。

石井:入会に際し、お客様の趣味嗜好に関するアンケートを取るのですが、スポーツや登山といったなかで、歴史という項目もあります。おかげで、年齢や性別にとらわれることなく、歴史に興味を持つお客様というように、ターゲットを明確に意識したツアー造成ができました。

 ――同ツアーは、JALグループの一員であるジャルパックならではの商品だと言えます。本日はありがとうございました。

 “JMBプレミアムツアー「ジャルパックが厳選して贈る いい旅、あたらしい旅。」”では、3つのカテゴリーがあり、「ポレイア」と「ポレイア ネオ」では海外旅行のツアーを、「JMBセレクション」では国内旅行のツアーも楽しめる。

 「ポレイア」は、JALビジネスクラスを利用し、旅にはベテラン添乗員も同行する。「ポレイア ネオ」は、1人からの参加が可能で、ビジネスクラスとJALプレミアムエコノミークラスを利用できる。「JMBセレクション」は、JALエコノミークラスを利用し、テーマに沿った旅を提供する。同ツアーもここに属する。