松田会長を再選、新3カ年計画も策定(四国ツーリズム創造機構)

松田会長があいさつ

 四国4県とJR四国などで組織する「四国ツーリズム創造機構」(会長=松田清宏JR四国会長、正会員16、準会員103)は4月25日、高松市内のホテルで2013年度総会を開き、役員改選で松田会長を再選した。

 松田会長は「本機構は発足して3年半になり、第1期の事業計画を遂行してきた。この間、東日本大震災や中国・韓国との摩擦など逆風があったが、自己採点では優を取れたのではないか。次の3カ年の事業計画をまとめたが、今後は数だけでなく質も追い求めていきたい」とあいさつした。

 議事は、新たな3カ年計画や事業計画、収支予算などすべて可決した。

 13―15年度の第2次四国観光交流戦略では、15年度に四国外の国内から訪れる延べ宿泊者数を430万人(11年度比3・3%増)、海外からは5万5千人(同36%増)の数値目標を掲げた。

 誘客重点エリアは、第1次戦略からの四国西南部のほか、にし阿波、こんぴら、瀬戸内アート、道後・しまなみ海道を加え、官民協働で観光素材や周遊ルートの開発を実施する。

 インバウンドは東アジア・欧米豪がターゲットで、四国内の全鉄道(6社)が乗り放題の鉄道パス「ALL SHIKOKU Rail Pass」をセールスツールに誘客を促進。関西や九州との連携も強化する。

 今年度は国内外でのプロモーション強化や、四万十・足摺エリアの周遊観光バス「しまんと・あしずり号」のコース改良、機構のホームページリニューアルなどを実施する。

“沖縄観光を元気にしたい”、お菓子のポルシェ・澤岻 カズ子氏にインタビュー

お菓子のポルシェ代表取締役社長
澤岻 カズ子氏(たくし・かずこ)

「紅いもタルト」誕生とそれから、「御菓子御殿」創業者の35年間

 今や沖縄のお土産の定番商品となった「紅いもタルト」。しかし、創業から35年の間に大変な苦労もあった。作り立ての「紅いもタルト」を製造・販売する「御菓子御殿」の創業者・澤岻カズ子氏(お菓子のポルシェ代表取締役社長)は、アメリカからの輸入菓子が大半だった沖縄に、お菓子文化を生み、定着させた。地元のお客様に支持されながら、「沖縄観光を元気にしたい」と話す澤岻社長にインタビューした。

≪沖縄に「お菓子文化」生む≫

 菓子製造販売業をスタートした当時は、沖縄復帰(1972年)の時期と重なり、米軍基地の中で働く多くの人たちが解雇されたため、その人たちを雇用しながら、まずはレストランを始めました。そのレストランの一角で、アメリカ仕込みのドーナツやチョコレートケーキ、アップルパイなどを作って販売しました。あつあつのドーナツや焼き立てのお菓子の販売はとても人気を集めました。レストランの方は朝から夜中までの仕事がものすごく大変で、また、それほど利益が出ているわけでもなかったので、思い切って4店舗あったレストランをすべて閉店し、菓子製造販売業をスタートしたのです。

 当時、私たちが作れるお菓子は、アメリカ仕込みのドーナツやチョコレートケーキ、アップルパイのわずか3品だけ。でも、「やるからには成功させたい」という強い思いがありました。

■3品のお菓子から

 私の出身地である読谷村の周辺では、30年以上前は、スーパーマーケットなどはなく、雑貨店しかなかったので、その雑貨店に作り立てのお菓子を置かせていただき、売れた分だけお金をいただくという委託販売を始めたのです。地元からそのような取り組みを始めたのですが、これが大きな評判を呼びました。地域の皆さんにもよくしていただき、近隣の市町村まで営業活動を広げていくことができました。当時は20坪ほどの借家で、たった3品の小さな店舗からのスタートでした。やがて工場・店舗併設の新社屋を読谷村につくり、北部地域や那覇市内にも販路を広げていくことができました。少しずつ自信もついて、沖縄全域にお得意様もできました。

 営業を始めて7年目の1986(昭和61)年のことです。読谷村では「紅いもを使って村おこしをしよう」という取り組みが始まり、私どもに読谷村商工会から「紅いもでお菓子が作れないものか」と相談がありました。当時は紅いもを使ったお菓子などはまったくありませんでしたし、紫色は食に合わないと言われましたが、あえて素材の紫色を生かした紅いもタルトを開発したのです。

 読谷村は、戦前は紅いもの産地として有名で、多く作られたそうですが、戦後は主食だった紅いもが米やパンにかわり、大半を占めていた家畜の飼料も配合飼料となり紅いものニーズはなくなったため、紅いも農家が少なくなって、紅いもの仕入に苦労しました。

 今では役場と農業試験場の連携で品種を開発しておりますが、当時は良質な紅いもを探し集めては選別を繰り返し、リスクを負いながら「経験の中から一つひとつ学んでいく」という忍耐力を必要とする仕事でした。「紅いもがない」事情と合わせて、「品質を上げていかなくてはならない」ということに苦労しました。読谷村も協力的で、商工会も物産展やシンポジウムを開くなど、マスコミに紹介する機会を作っていただきました。私たちがリスクを負いながら作り続けた結果、地域の方々もお土産として積極的に紅いものお菓子を買っていただき、“村ぐるみ”での取り組みでした。

 そのうちに、「村おこしの成功例」として全国的に話題になっていきました。これによって、県内外から視察研修として多くの方々が訪れて来るようになりました。1991(平成3)年に新社屋・新工場を作ることができたのもそのおかげです。沖縄県は製造業が少なく、「成功モデルになってほしい」と商工会も後押しをしてくれました。

 そのころの沖縄の一般的なお菓子は、サーターアンダギーやちんすこうなど昔ながらのお菓子と、アメリカからの輸入菓子(チョコレート)や、本土で沖縄のお菓子らしく作られたものばかりでした。「御菓子御殿恩納店」がオープンした2001年ごろも、8割ぐらいが本土や輸入菓子でしたが、画期的だったのは1995年から5年間、「沖縄のお菓子を沖縄発のすべての飛行機に乗せましょう」と、飛行機の茶菓子に、当社の紅いもタルトや、沖縄の素材で作ったお菓子が採用されたことでした。それ以降、観光客が読谷村の小さな店まで地図を探しながら来ていただけるようになったのです。

■観光見学工場を作る

 全国に4―5軒ほどあったと聞いていますが、「観光見学工場を作りたい」というのが、私の長年の夢だったのです。「名前は『御菓子御殿』にしよう」と考えていました。「沖縄らしい首里城の正殿をイメージした建物にしたい」と思い描いていました。

 しかし、バブル崩壊後の景気低迷などで、なかなか融資が上手く行かなかったのです。そのころ、1997(平成9)年に、那覇市の国際通りの三越の向かいに13坪の小さなお店(現在の「牧志店」)を出店したことが話題を呼びました。バスガイドさんらが口コミで「紅いもタルトは美味しい」と紹介して下さり、そのうちに金融機関にも評価していただき、念願の「観光見学工場」を備えた「御菓子御殿恩納店」をオープンすることができました。

■地元に愛される店に

 私たちは開業当時から「地元に愛される店づくり」に取り組んできました。身体にやさしい無着色・保存料も使わない「作り立て」のお菓子を売りたいというのが創業からのコンセプトです。このため、「紅いもタルト」は、少なくとも翌日までに完売できるように、おおよその販売予想を立て、売れる分だけを作ることを基本としています。また、地元「沖縄県のお菓子屋さん」として定着していますので、今も変わらず地元に支持される店づくりを目指しています。昨年オープンした「やんばる憩いの森店」も、観光客や地元のお客様でにぎわっております。

 2001年に夢でありました「御菓子御殿恩納店」が誕生しましたが、私の人生で一番苦労したのが、この恩納村の御菓子御殿の開業です。1996年の計画から6年かかりました。大変でしたが、この期間に諦めていたら、沖縄県の菓子業界は今でも輸入菓子が大半を占めていたかもしれません。しかし、開店と同時に自分たちの予想を超えるお客様にご来店いただけました。オープン直後には、9・11テロが発生し、沖縄観光は大打撃を受けましたが、地元のお客様に助けられました。その後、恩納店も軌道に乗り、私たちの原点である読谷村に2005年、本店となる「御菓子御殿読谷本店」を移転新規オープンし、また04年に那覇市の「国際通り松尾店」をオープンいたしました。

 商品を作っても必ず売れるわけではなく、リスクを負いながら売れるまで作り続けました。商品開発で美味しいお菓子を作っても、多くの人に知っていただき、売れるまでには相当な時間がかかります。でも頑張ってきたおかげで今があるのかなと思います。

 御菓子御殿恩納店で、紅いものお菓子を作ることや、観光客向けの見学工場を作ったのも沖縄県で初めてのことでした。前例がないということでとても大変でした。現在では、御菓子御殿恩納店・読谷本店・松尾店の3店舗の工場で紅いもタルトを1日平均9万個製造し販売しています。3つの工場を1日中フル稼働して、多い日には15万個を製造し、ありがたいことに現在でも販売は伸び続けていますが、最近では類似品が出過ぎてお客様が混乱してしまうのです。私たちは、全国どこでも買える商品ではなく沖縄に来ていただいた方々にお土産としてお持ち帰りいただきたいのです。これからも沖縄の素材にこだわったお菓子を作り、沖縄発のお菓子を買いたいという多くの声に応えていきたいと思います。

     ■ □

 現在では新商品の「紅いも生タルト」が好評です。今年3月7日に開港した新石垣空港にも離島で初めて出店し、販売も順調です。

沖縄歴史民俗資料館外観

民俗資料館に展示する琉球創作人形

 沖縄本島北部の新たな観光名所として、名護市に昨年オープンした「やんばる憩いの森店」には、ヘゴの原生林と今年4月に「沖縄歴史民俗資料館」を開館しました。資料館の内部には、これまで当社の会長・澤岻安信が収集してきた人間国宝・金城次郎氏の陶器や、漆器、民具、貝など約1万点を展示しています。また、琉球創作人形を1千体そろえ、沖縄の祭事行事などを再現しています。沖縄を代表する名工の焼物や懐かしい民具で子供たちの教育の場や北部地域の発展に貢献したいと思っています。

 御菓子御殿恩納店では「紅いもタルトのお菓子作り体験」も行っています。お客様の声を聞きながら、ニーズに合わせてさまざまな事業を展開しています。

■皆さんに支えられて

 創業当初から商品の箱や名刺にも「やさしい心くばりのポルシェ洋菓子店」と書いてスタートし「気くばり、目くばりのある仕事をしたい」と心がけています。注文が入れば作り立てを美味しいうちにお届けしたり、お客様の立場になってお客様が喜ぶことを第一に考えてきました。

 6月で35周年を迎えますが、従業員や地域の皆さん、観光のお客様に支えられたことに感謝しております。

実践的な口述試験に、13年度通訳案内士試験

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、外国人旅行者に付き添い外国語を用いて日本の観光案内をする国家資格「通訳案内士」の2013年度試験の詳細を発表した。今年度は筆記や一般試験の免除対象を拡大したほか、口述試験ではよりコミュニケーション能力や実践を意識した内容へと変更した。

 出願はインターネットの電子申請か書面による申請で、願書受付は6月24日まで。筆記試験は8月25日、口述試験は12月8日。最終合格発表は14年2月7日の予定。試験場所は、筆記試験が国内8地域と海外3都市(ソウル、北京、台北)。口述試験が英語、中国語、韓国語は東京、大阪、福岡、それ以外の言語は東京のみ。

 筆記試験は外国語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語)と、日本地理、日本歴史、産業・経済・政治・文化に関する一般常識。口述試験は、通訳案内の現場で必要とされる実践的な能力を判定する面接形式で行う。今年度は、コミュニケーション能力を量る、より実務に即した内容に変更。(1)試験委員が日本語で話す内容を外国人観光客にガイドするつもりで通訳(2)3つのテーマから1つを選びプレゼンテーション(3)(2)の内容についての質問への回答――の3問となる。

 また、今年度は筆記や一般試験の免除対象を拡大。従来の実用英語技能検定1級合格者に対する英語筆記試験免除に加え、実用フランス語技能検定試験とドイツ語技能検定試験、中国語検定試験、ハングル能力検定試験の1級合格者にも外国語筆記試験を免除する。さらに、大学入試センター試験の日本史Bが60点以上の受験者は日本歴史筆記試験免除、大学入試センター試験の現代社会が80点以上の受験者は産業・経済・政治・文化の一般常識の試験を免除する。

地域観光リーダー育成、電通と共同でスクール(JTB)

 JTBと電通はこのほど、観光資源の育て方・売り方を学び、地域観光リーダーを育成するためのプログラム「地域観光マーケティングスクール」を共同開発し、販売を開始した。

 同スクールは、地域資源を活用した着地型観光振興に取り組む地域や、着地型旅行商品の流通、販売に課題がある地域を対象とし、全国の消費者から地域がどのように思われているのか、地域の観光資源にどれくらい魅力があるのかなど、さまざまな角度から調査し、約2カ月間かけて観光資源のカルテを作成する。その後、3日間の集中ワークショップで「観光」を考え、有望資源の見つけ方、伝え方、商品の作り方までを学ぶ。

 プログラム終了後は、JTBのフォローアップがあり、同スクールで開発した着地型旅行商品は、JTBのホームページなどで情報配信、販売も可能になる。インバウンド向け商品は、JTBのグローバルネットワークでの販売も視野に入れ、地域の交流人口の拡大に向けた取り組みを推進する。

 同プログラムは、JTBのDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)戦略の一環で、観光を基軸とした経済波及効果や、雇用促進効果を高め地域活性化をはかることが目的だ。企業のマーケティング手法を得意とする電通と連携することで、地域の魅力ある資源を掘り起こし、高付加価値・差別化をはかる。継続的・安定的に地域の集客を促すため、地域資源の育て方や売り方のノウハウを伝え、地域の観光リーダーを育成する。

 2013年度は、10地域でのプログラム導入が目標で、最終的には47都道府県での導入を目指していく。

従業員対象にセミナー、池山氏が吉川屋で講演(リボン宿ネット)

熱心に話しを聞く従業員

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(略称・リボン宿ネット、畠ひで子会長)は5月6日、畠会長が経営する福島県穴原温泉の匠のこころ吉川屋で、同館従業員らを対象にした講演会を開いた。昨年末に会員施設を対象としたセミナーを新潟県瀬波温泉の夕映えの宿汐美荘で開いたが、今回のような従業員を対象としたものは初めて。

池山紀之氏

 講演会はリボン宿ネットの副会長で人工乳房の製作販売を行う、池山メディカルジャパン社長の池山紀之氏を講師に開催。池山氏は「患者が無事に手術に成功した後に思うことは、もちろん安堵感だが、次にこれで温泉に行けなくなったと思う声が多い。人工乳房という方法もあるが、対応できる患者数には限りがある。また、患者が旅行に行かないということは家族も含めて、その機会が減るということ。こうした方々に安心して旅行に出てほしいという思いで設立したのがリボン宿ネット。昨年末には会の冊子を作り、現在全国の約500の病院に配布している」と組織を説明。

 そのうえで、患者が望む旅館での欲求を、「貸切風呂の声もあるが、大浴場で寛ぎたいという希望が多い」とした。その希望に応えるには「洗い場の間仕切りなどハード面も必要だが、それ以上にソフト面の対応、例えばバスタオルや洗いタオルを多めに提供できる、大浴場が空いている時間などを発信してほしい。患者は着替える場合、周りや鏡に映る姿を見られたくないが、バスタオルなどを多く使用することである程度解決でき、大浴場の空いている時間がわかることで足を運びやすくなる。この点を考慮した情報発信をお願いしたい」と話した。

 最後に「こうした配慮の根底にあるのは、乳がん患者だから特別なことをする、ということではなく他の宿泊客と変わらないもてなしをするということ」とまとめた。

“旅行が障がいに効果”、推進に向け議論を展開、ユニバーサルツーリズム

パネルディスカッションのようす

 観光庁は、高齢者や障がい者など誰もが気兼ねなく旅行ができる環境作りのため「ユニバーサルツーリズム」を推進している。「ユニバーサルツーリズム推進に向けた地域活動に関する検討会」を設置し、昨年11月と今年3月に検討会を実施。また、2月には東京・秋葉原で「ユニバーサルツーリズム シンポジウム」を開いた。シンポジウムは検討会メンバーの大学教授や医師など関係者が登壇し、旅行が障がい者にもたらす効果や現状、推進に向けた議論を展開した。
【飯塚 小牧】

 シンポジウムは、検討会メンバーの2人が講演。北星学園大学客員教授の秋山哲男氏は「ユニバーサルツーリズムの促進に向けて」と題し、ユニバーサルツーリズムの定義などを説明した。三軒茶屋リハビリテーションクリニック院長の長谷川幹氏は、長年、障がい者や高齢者とともに国内・海外旅行に出かけている経験から、旅行がもたらす効果を語った。80代のパーキンソン病の女性の例をあげ、「重度で仮面様顔貌(無表情)があり、全介助を必要としていたが、旅行をきっかけに耐久力がアップし、表情も豊かになった。教科書的にパーキンソン病は現状維持か悪化だが、それを覆した」と述べた。

 旅行に対するハードルは高いが、1歩目が出れば2歩目はすぐに出ることや、役割を与えることで自信につながることを紹介。「障がいがあってもできたという実感が必要。そのなかで旅は最も効果的だ」と語った。また、旅行関係者に配慮してほしいこととして、トイレ休憩は通常の2倍必要なことや、同行する家族が疲れてしまうことを避けるため、当事者と援助者は1対2以上必要なこと、嚥下障害への食事の配慮などを訴えた。

 講演後は秋山氏をコーディネーターにパネルディスカッションを実施。秋山氏は「ユニバーサルツーリズムは今後、どのような展開をするのかまだみえていない」とし、現状を把握するところから議論を開始した。

 旅行業の現状は、先進的な取り組みをしているANAセールスCS推進室ツアーアシストグループグループリーダーの田中穂積氏とクラブツーリズムテーマ旅行部バリアフリー旅行センター支店長の渕山知弘氏、昭和観光社代表取締役でバリアフリー旅行ネットワーク会長の平森良典氏の3人のパネリストが語った。

 そのなかで、田中氏は「ANAセールスの募集型企画旅行に参加してもらうには、何を手伝えばよいのか」という考え方から、3人の専属担当者が申込みの段階から相談を受けていることを紹介。約10年間の積み重ねで今では、12年度上半期の取扱件数で約670件、売上高約3億円まで成長しているという。「ノウハウと人手が必要なので、ホールセラーではなかなか難しいと思う。今は、日本旅行業協会(JATA)でバリアフリー旅行部会の会長を務め、旅行会社に向けた啓蒙活動を広げている」と述べた。

 また、NPOで活動する神戸ユニバーサルツーリズムセンター代表で日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク理事長の鞍本長利氏は、「介護する家族が旅先でもお風呂に入れなければならないと、もう二度と旅をしなくなる。また、最近は障がい者が1人で旅をすることも増えているので、支援するための着地のネットワークをつなげていく取り組みを進めている。ホテルや空港など一つひとつが対応できるだけではダメ。宿泊やサービス、医療福祉、行政、NPOなどすべての連携で作り上げていくことが必要」と語った。

 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター理事長で日本バリアフリー観光推進機構理事長の中村元氏は、観光客を増やすためにバリアフリー観光の取り組みを始め、障がい者で組織した専門員による観光地の「バリア」調査などを行っている。「まちづくりでバリアフリー観光を行い、それによって地域が恩恵を受けるレベルまで持っていかなければ意味がない。今は、とても厳しい基準で『パーソナルバリアフリー基準』を設定し、全国に広げている。地域を育てるという視点が重要だ」と語った。

 一方、「観光はバリアを楽しむもの」とし、杖をついていても景色がよければ階段のある旅館を選ぶこともあることや、神社などの階段を上ることに意味がある場合は、専門のNPOが補助していることなどを紹介。「バリアを取ってしまうと、観光そのものを失くしてしまう。それは福祉の世界。福祉と観光は、融合はできても目的は違うもの」と強調した。

 最後は、今後ユニバーサルツーリズムを発展させるために必要なことを各自が発言。渕山氏は「我われのような旅行形態は土壌や仕組みがないと動き出せないと思う。今求められているのは、一般のツアーや地域をどうアレンジしたら、多くのお客様にきてもらえるかを考えること。できない理由を考えるのを止め、できることから考えれば新しい開発につながるのではないか」と呼び掛けた。

訪日消費額13・2%増(1―3月)

 観光庁がこのほど発表した13年1―3月期の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人全体の日本国内での旅行消費額は前年同期比13・2%増の2539億1千万円で、訪日外国人1人当たりの旅行中支出額は同4・0%減の11万2594円となった。

 同調査は全国11カ所の主要空海港で、日本を出国する訪日外国人(1年以上の滞在者や永住者、定住者などを除く)に行ったもので、調査期間は13年1月17日―2月27日。調査標本数は7067サンプル。

 総旅行消費額の増加は、期間中の訪日外客数が12年の191万2千人から13年は225万5千人に増加した影響と分析。タイの旅行消費額は同56・0%増で、韓国も同40・2%増と大幅に増加したが、中国は16・9%減となった。これも訪日外客数の変動が大きな要因と考えられる。 

 国籍別の旅行消費額は1位が中国で501億3千万円。2位が韓国で444億5千万円、3位が台湾で320億6千万円、4位が米国で245億6千万円、5位が香港で168億6千万円、6位がタイで90億5千万円と続く。構成比でみると、上位5カ国で全体の66・2%を占める。

 訪日外国人1人当たりの旅行中支出額を国籍別にみると、1位が中国で同14・2%増の19万6188円。2位が米国で同9・6%増の14万2587円、3位が香港で同6・9%減の11万4593円、4位がタイで同3・9%増の11万1954円、5位が台湾で13・7%減の7万8368円と続いた。台湾の減少と中国の増加は平均宿泊数の変動が大きな要因と分析。平均宿泊数は台湾が10・0泊から7・7泊に減少し、中国は22・1泊から29・9泊に増加している。

 訪日旅行の満足度をみると、「大変満足」39・5%、「満足」51・6%で合わせて91・1%が満足している。再訪意向は「必ず来たい」52・2%、「来たい」40・9%であわせて93・1%が再訪意向を示している。

 日本への来訪回数では「1回目」が32・0%と最も多いが、「10回以上」も19・9%と少なくない。国籍別ではタイ、マレーシア、インド、英国、フランス、ロシア、カナダ、オーストラリアで「1回目」が4割を超え、台湾や香港、シンガポールでは「1回目」の割合が他国より低く、3割を下回った。

 観光・レジャー目的で訪れた訪日外国人の滞在日数は、「4―6日間」が58・4%と最も多い。国籍別では、韓国が「3日間以内」の滞在が32・5%と他の国籍に比べて多い。台湾は「4―6日間」の割合が78・5%と高く、ドイツ、フランス、オーストラリアは14日以上の滞在が3割を超えた。利用の宿泊施設タイプは、86・1%が「ホテル(洋室中心)」、24・4%が「旅館(和室中心)」。台湾やタイ、インドでは「旅館」の利用率が3割を超えた。

 旅行前支出額(パッケージツアー代や日本までの往復運賃)は平均9万9330円で、旅行中支出額と合算した総支出額は平均21万1923円。国籍別に旅行中支出額を比較すると、オーストラリアが21万9千円と最も高く、中国19万6千円、カナダ17万円、シンガポール15万9千円と続く。1泊当たり旅行中支出額の平均は7808円で、旅行前支出を含めた1泊当たり総支出額の平均は1万4697円。

No.341 改正耐震改修促進法 - 2015年末までに耐震診断義務に

改正耐震改修促進法
2015年末までに耐震診断義務に

 耐震改修促進法の改正案が5月22日、参議院本会議で全会一致で可決、成立した。1981(昭和56)年以前に建築され、5千平方メートル以上の旅館ホテルは、2015年末までの耐震診断が義務付けられる。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長の佐藤信幸氏と国土交通省住宅局担当大臣官房審議官の橋本公博氏との対談、自民党観光産業振興議員連盟幹事長の望月義夫氏への単独インタビューにより、宿泊業界、行政、政治の多角的な視点から、分かりづらい"耐震問題"を語り合った。

【司会=旅行新聞新社社長・石井 貞德、構成=内川 久季】

 

【対談】全旅連会長・佐藤 信幸氏 × 国交省審議官・橋本 公博氏
≪要望や相談窓口わからない ― 佐藤氏≫
≪自治体に補助金理解求める ― 橋本氏≫

 ――耐震改修促進法改正案が3月8日に閣議決定されたことについてどのように思われますか。

■佐藤:耐震改修促進法の改正案について国交省の住宅局から初めて説明を受けたのが、2月21日の全旅連の理事会でした。驚いたのは、5千平方メートル以上の建物の耐震診断の義務化、耐震診断結果の公表を2015(平成27)年末までにすると日付まで明確に書いてあったことです。努力目標ではなく、罰則規定まである法案に驚きました。同法案への対応には十分な時間が必要だったはずですが、2月27日には自民党の国土交通部会まで通ってしまい、同日に全旅連は陳情を行いましたが間に合いませんでした。お客様の安心・安全は大切であり、耐震の必要性は十分理解できますが、あまりにも性急過ぎます。少なくても半年から1年前に、住宅局から相談をしてほしかったです。全旅連は約1万6千軒の組合員がおり、同改正案を会員に周知するには時間がかかります。もう少し時間がほしいというのが正直なところです。

■橋本:旅館、ホテルなどの宿泊業に限らず、他の業界も同じなのですが、1995(平成7)年に同法律ができ、不特定多数の人が使う2千平方メートル以上の建物については、都道府県や政令指定都市などから耐震診断や改修をお願いしてきたはずなのです。

 その前提で皆様方にはある程度、耐震診断や改修にご理解いただいているだろうということ、また、15年以上法律で努力義務がかけられてきたことなどを踏まえ、東日本大震災が発生したことで次のステップに進まなければならないと判断いたしました。

 ただ、佐藤会長がおっしゃるように、同法案を知らなかったという意見があるとのことですので、もう少し広報を周知徹底しておくべきだったかもしれません。

 

※ 詳細は本紙1503号または6月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

スポーツによるまちづくり ― Jリーグに学ぶべきもの

 SC相模原VS横河武蔵野FC戦を観に行った。いわゆるJ1、J2の下部組織JFLの一戦だ。相模原市立の小学生の息子が学校から地元開催のホームゲームの無料券を配布されてきたので、一緒に観に行くことになった。「SC相模原も上手いことをやるなぁ」と思った。地元に愛されるチームを目指すのなら、少年少女には無料券を配るべきなのだ。お金は大人から取ればいい。

 小さなスタジアムは試合開始前から、ホームチーム一色に染まる。相手チームの紹介のあと、さまざまな映像を交えた地元チームの選手紹介が始まる。スターティングイレブンを一人ひとりドラマティックに紹介したのち、「そして、我らが背番号12番!SC相模原のサポーターの皆さん!」とアナウンサーが絶叫し、大画面に観覧席の無邪気な子供たちや、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんたちが次から次に映し出されると、私も久しぶりに感動してしまった。私は現在、神奈川県に住んでいるが、鹿島アントラーズが大好きなので、自宅に近い日産スタジアムであっても、鹿島アントラーズ側に座る。東京や神奈川、埼玉、名古屋、大阪をホームにするクラブは強くて当たり前であるが、しかし、小さな茨城県鹿嶋市のクラブがJリーグの進むべき道をリードしていることが素晴らしい。泥臭いチームの伝統を自然なかたちで次世代に引き継いでいるチームである。そんなJリーグも今年20周年を向かえ、さまざまな記念イベントや、この20年を振り返り、検証する試みも行われている。

 地域づくりほど難しいものはない。観光による地域づくりの苦労や大変さも、たくさん見聞きしている。住民の総意がなければ一歩も前に進まなかったり、反対の立場の人も必ずいる。

 そんななかで、Jリーグはスポーツによるまちづくりで成功した良い例だ。長期的なビジョンを持って行動することが得意とは思えない日本にあって、百年構想をゆっくり、地道に進めている。小さな町であっても、さまざまな業種の企業や、一般の人たちが協力し合って、自分たちの地元のチームやスポーツ文化を育てていこうと支援していることも伝わってくる。観光も地域との一体感が不可欠である。Jリーグの地域愛を湧き立たせる演出などは、きっと勉強になる。

(編集長・増田 剛) 

【当選者発表】第38回プロが選ぶ100選宿泊券プレゼント

今回もたくさんのご応募ありがとうございました。

2013年4月19日の締め切り後、厳正なる抽選の結果、ご当選者が決まりました。

ご当選者の皆様には当選ホテルから近日中に宿泊券をお送りいたします。どうぞ楽しいご旅行をお楽しみください。

このトップページ左側リンクバナー「宿泊券&名産品プレゼント~当選者発表~」にご当選者のお名前を掲載いたしましたのでご覧ください。

もしくはコチラ(弊社の同ページへリンクしています)から!