No.398 旅館経営教室④―「生産管理」、リアルタイム・サービス法を提案

旅館経営教室④―「生産管理」
リアルタイム・サービス法を提案

 「旅館経営教室」の第4弾は、「生産管理」をテーマに、工学博士でサービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、すべての作業プロセスにおいて、「時間」「位置」「情報」が、お客様がいる最終工程により近づくことを基本原則とする「リアルタイム・サービス法」を提案。「必要なサービスを提供するための作業プロセスを、いかに顧客接点の現場に近づけていくか」を追求することで、高品質のサービスをお客が求めるタイミングでムダなく提供することが可能になる。

【増田 剛】

 
 
 

 旅館が商品として日々生産しているのがサービスです。このサービスを突き詰めていくと、結局のところ、スタッフの手や足、口などの動きに行き着きます。つまり、サービスの内容や品質という視点から見ると、旅館経営にとって、現場で実際に動いているスタッフ一人ひとりの「働き方」がとても重要になります。

 これまで、ここで「就業規則」や「労働時間管理」、「管理会計」といった働き方の現場でのルールや評価方法といった企業が持つべき基本的な組織制度について説明してきました。しかし、現場で旅館を実際に運営していくには、当たり前のことですが、これら働き方の制度だけを整備しても不十分なのです。

 それは、たとえどんなに素晴らしい制度があっても、それだけでは経営に何ら影響しないからです。より高い品質のサービスをできるだけムダなく提供し、お客様の満足を上げ続けようとするのならば、これら制度を基礎に、スタッフの実際の動きである一つひとつの作業工程をしっかり構築し、現場できちんと管理できるようにしていかなければなりません。…

 

※ 詳細は本紙1581号または4月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

客の安全考えツアーを、久保長官、退避勧告地への旅行に苦言

 東京都内の旅行会社は2月、外務省の危険情報で4段階のうち最もレベルの高い「退避勧告」が出ている西アフリカ・ニジェールへのツアーを実施した――。観光庁の久保成人長官は3月19日の会見で、ツアーを実施した旅行会社に対し、ツアーの中止要請を出していたことに言及し、「退避勧告の出ている地域への旅行は自粛すべき」との見解を示したうえで、「旅行会社は当然、ツアー客の安全リスクを考えて商品を造成するべき」と苦言を呈した。

 同ツアーは2月の中旬から下旬にかけて約2週間の日程で実施。観光庁では、ツアーの訪問先が「退避勧告」の出ている地域のため、企画した旅行会社に対しツアーの中止要請を出し、自粛を働きかけていた。

 久保長官は「ツアーの実施は民間会社の判断で行われたが、民間レベルのパイプ(情報)があれば、政府レベルのパイプもある。今後も外務省と連携し危険情報の周知徹底をはかり、旅行会社へ注意喚起していく」と語り、今後も退避勧告地域への旅行商品造成をしないよう働きかけていくとした。

《北陸新幹線金沢開業観光活性化へ期待》

 3月14日に開業した北陸新幹線についても触れ、「首都圏から時間的に近くなるので、国内観光だけでなくインバウンドの動きにも刺激になり、観光の活性化につながる」と語り、名古屋周辺と中部、北陸などを結ぶ県を超えた広域観光ルートへの期待を込めた。

 震災から4年が経った東北観光の現状については、「厳しい状況から前進はしている」と前置きしたうえで、宮城県や岩手県では震災前と比較し、宿泊客数が10%前後のマイナスで推移していることを報告。福島県については「会津若松など中通りの入込みはそこそこだが、いわきなど浜通りはまだまだ厳しい」とし、一過性ではない観光振興のテコ入れの必要性を指摘した。

チュニジア襲撃事件で観光庁は対策本部設置

 現地時間3月18日正午にチュニジアの首都チュニスで起きた武装集団による国民議会議事堂と隣接のバルドー博物館襲撃事件について、観光庁によると、2社の旅行会社が実施したツアー参加者のうち、3人が死亡、3人が負傷したことが分かった。

 ツアーを実施した旅行会社は、ベストワンドットコムとクルーズプラネット。ベストワンドットコムはツアー参加者21人のうち2人が死亡、2人が負傷。クルーズプラネットはツアー参加者90人のうち1人が死亡、1人が負傷。翌19日の会見で観光庁の久保成人長官は「外務省と旅行業団体を通じ情報収集を行ってきた」とし、該当の旅行会社に対し「より一層の事実関係の確認と、ご遺族と負傷者への遺漏なき対応をお願いしている」と報告した。観光庁では審議官を本部長とする対策本部を設置し、情報収集にあたっている。なお、個人や現地在住の日本人の参加者など、2社のツアー以外の日本人参加者については19日時点で把握していないという。

友好築き人的交流拡大へ、日・台旅館組合が調印式

佐藤信幸会長(右)と徐銀樹理事長
佐藤信幸会長(右)と徐銀樹理事長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)と中華民国旅館商業同業公會全国連合会(徐銀樹理事長)は3月10日、台湾台北市のリージェント・タイペイで友好関係を築くための調印式を開いた=写真。今後、日本と台湾双方の研修など人的交流を拡大していく考えだ。

 徐理事長は日本に7年間留学した経験もあり、日本を第二の祖国との思いも強い。東日本大震災直後には義捐金を被災地に送るために訪日し、福島など被災地にも訪問。その後、全旅連の全国大会が開かれた岡山県(12年)、山梨県(13年)、宮城県(14年)に3年連続で参加しており、日本の旅館業界の活動にも詳しい。徐理事長は「今回、日本の旅館・ホテル業界と覚書を締結したことは、台湾の旅館・ホテル業界にとって大いにプラスになる」とし、「問題点や成功例などお互いに分かち合うことで、さらに質の高いサービスを目指すことができる」と述べた。

 一方、全旅連の佐藤会長は、今も被災地を思う徐理事長に謝意を述べ、「双方が人的交流を深め、お互いに研鑽することで、日台観光交流のさらなる発展に貢献していきたい」と語った。

桜の日

 この原稿を書いている今日、3月27日は桜の日だ。1992年に日本さくらの会が制定したもので、「3×9(さくら)=27」の語呂と七十二候の「桜始開(さくらはじめてさく)」の時季が重なることから、この日になったという。東京でもソメイヨシノの蕾が色づき、ちらほら咲き始めている花もある。来週末には都内の桜名所はピークを迎えるだろう。

 桜は、目で愛でるのはもちろん素晴らしいが、スイーツにも多く使われる。加えて、実はバラにも負けない美容成分が含まれているらしい。ただ、咲いている時期が短く、市販化するのは難しいのか桜由来の化粧品を見ることは少ない。でも、もし淡いピンク色のボトルに桜型モチーフのフタがついた花弁入りの化粧水があったなら。日本人はもちろん、この時期を狙って訪れる訪日外国人観光客にも飛ぶように売れる気がする。

【飯塚 小牧】

伊予鉄、無料Wi―Fi開始、訪日客へ英語放送も

伊予鉄道の路面電車と坊ちゃん列車
伊予鉄道の路面電車と坊ちゃん列車

 伊予鉄道(佐伯要社長、愛媛県松山市)は4月4日から、市内電車(路面電車)で誰でも利用できる「無料Wi―Fiサービス」を本格的に開始する。愛媛県を訪れる訪日外国人観光客が急増しているなか、3月1日からは市内電車の英語放送もスタートし、さらなる外国人観光客の利便性向上を目指す。3月下旬から市内電車36両と、坊ちゃん列車(2両編成)車内にWi―Fiアンテナを設置する。清水一郎副社長は「Wi―Fi環境整備など訪日客の受入体制の強化は大変重要。グループ全体で取り組みたい」と話す。

 昨年10月に開催された国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」には、国内外から8千人のサイクリストが参加するなど、近年のサイクリングブームを受け、同社は昨年9月から「サイクルトレイン」の実証実験を開始していたが、こちらも4月4日から本格運行となる。合わせて、伊予鉄道に加え、伊予鉄南予バス(関谷俊夫社長、八幡浜市)、伊予鉄タクシー(光長文生社長、松山市)では、一部の車両にサイクルラック装備車両を導入し、サイクルバス、サイクルタクシーも運行する。

粗さ

 観光パンフレットを開くと、時折、かなり古めかしい写真を目にする。セダン型が多く停まる駐車場や、写り込んだ人たちの服装は80―90年代風に見える。画質は粗く、デジタル時代の写真に囲まれて浮いてしまっている。写真の粗さはホスピタリティの粗さ、と勘繰るうちに、魅力ある観光地とは思えなくなる。

 言葉も時代で粗くなる。

 林業の町の職員と白蝋病の話になった。職業病で、手足に神経障害や白色化を生じる。教科書にも載っていた言葉だが、いまや不快用語。法律上の表記も振動病になっている。本当に不快か、法律にあわせる必要性、などの疑問はさておき、思わぬ劣化だ。粗くなった言葉を載せ続けているパンフも、どこかにありそうだ。

 自分もいつ足をすくわれるか。恐ろしい。

【西田 哲郎】

東京都が伊豆大島の支援継続、観光復興支援で宿泊割引など

 東京都はこのほど、伊豆大島の災害からの復興を目的とした「宿泊費用の割引」と「伊豆大島・復興応援ツアー」の継続を決めた。期間は2015年4月1日―16年3月31日。

 同支援事業は13年秋に発生した台風による被害からの観光復興を目指したもので、「宿泊費用の割引」は14年7月19日から、「伊豆大島・復興応援ツアー」は14年10月1日から実施していた。「宿泊費用の割引」は、伊豆大島のホテル・旅館・民宿などの宿泊に関して1人1泊3000円を補助。「伊豆大島・復興応援ツアー」は船舶利用の場合で1人・1泊2日で6000円、航空機利用で1人・1泊2日で8000円割引された割安な旅行ツアーが提供される。

「人材教育の遅れ」指摘、MICE人材育成など議論(横浜商科大)

MICEの人材育成を議論
MICEの人材育成を議論

 横浜商科大学は2月26日、文部科学省の委託を受けて取り組んできた「地域産業活性化のためのインバウンド観光人材育成」の事業成果報告と、「MICE 人材育成の未来」と題するパネルディスカッションを開いた。各パネリストから、海外に比べて人材教育が遅れているなどの指摘があがった。
【伊集院 悟】

 2部で行われたパネルディスカッションでは、横浜商科大学貿易・観光学科の宍戸学教授をコーディネーターに、多摩大学グローバルスタディーズ学部の市岡浩子教授、日本政府観光局(JNTO)コンベンション誘致部の川﨑悦子次長、川島アソシエイツの川島久男代表、プリンスホテルの徳永清久執行役員が登壇し、「MICE 人材育成の未来」をテーマに議論した。

 川﨑氏はMICE拡大の効果として(1)全国に波及する経済効果(2)研究者のトップが集まることによるイノベーションと新たなビジネス機会の創出(3)メディア露出やインフラ整備など地域の競争力とブランド力の向上――をあげる。人材教育については、香港などの事例を紹介し、海外ではMICEと観光を区別した実践的なプログラムによる人材育成が行われていることを報告した。

 MICEコンサルタントとして40年にわたり国内外で活動する川島氏も「MICEは観光の延長ではない」と、自治体やコンベンションビューローなどのMICE誘致主体が、MICEと観光振興を混同していることを指摘。「大会議は何年も前に開催が決まるので、MICEは5年10年スパンで考えないといけない」と述べ、1、2年で交代してしまう人材のローテーションについても問題提起した。また、「MICEに関係する団体を横断的に見られる組織が必要」と訴え、その組織が人材教育やMICEの啓蒙、国への政策提言などを行うべきとした。産学連携に関しては、海外では8―9カ月にも及ぶインターンシップが行われていることを紹介。「企業が大学に投資している」と、日本との違いを指摘し、大学には教育だけでなくMICEの研究も行うよう求めた。

 徳永氏はプリンスホテルグループでのMICEへの取り組みを紹介。ホテルから見るMICEの特性として、(1)予約の時期が早い(2)滞在期間が長い(3)観光以外も含めて消費額が大きい(4)季節変動がない(5)催行が保証されやすい(6)景気に左右されにくい――などをあげる。早期予約については「国際会議なら5―7年、学会なら2年前に決まる」と紹介し、収入のベースができ開催までに運営の準備ができることや、予約ベースができることで直近の予約を高単価で販売できることなど、利点を説明した。

 観光教育学で博士号を持つ市岡氏は、アメリカやシンガポール、香港などと日本を比較し、産学官の連携の弱さや経営学の視点が欠けていることを指摘。「日本は総合的視点からの観光学カリキュラムばかりで、経営学の視点が欠けているとの指摘をよく受ける」と紹介し、「海外では、インターンでの実務経験が必修化されるなど産学官の強靭な連携がある」と語った。教育機関の役割として(1)MICEに関する周知と知識技能の取得(2)英語コミュニケーション能力(3)「グローバル人材」「国際交流」「国際理解」などの視点からの展開――について言及し、実務経験の場の提供やMICEに関するPRなども大学が行うべきことに挙げた。

 パネルディスカッションに先駆けて行われた第1部の「地域産業活性化のためのインバウンド観光人材育成」の事業成果報告では、インバウンドやMICE人材要件調査の報告や、eラーニング教材の紹介、MICE教育カリキュラムとモデル授業報告などが行われた。なお、同大学は4月に観光マネジメント学科を開設する。

店舗や施設が対象に、国際おもてなし認証開始(JHMA)

斎藤理事長(中央右)とJHMAメンバー
斎藤理事長(中央右)とJHMAメンバー

 日本ホスピタリティ推進協会(JHMA、斎藤敏一理事長)は3月4日に東京都内で、訪日外国人に的確なホスピタリティを実践する飲食や宿泊、小売など幅広い業種の店舗・施設の認証制度「国際おもてなし認証」の発足を発表した。同協会は1992年に発足。ホスピタリティの啓発・普及に取り組み、また人材育成事業として「ホスピタリティ・コーディネータ(HC)」の資格認定や教育研修などを定期的に実施している。

 国際おもてなし認証は、個人の接客パフォーマンスではなく、サービス従事者が一体になり、サービス標準としておもてなしを実践している店舗・施設単位で認証する制度。認証を受けるには、店舗・施設にHCのインバウンド対応版「グローバル・ホスピタリティ・コーディネータ(GHC)」か「グローバル・ホスピタリティ・アソシエイト」が最低1人在籍することが条件。

 認証の流れは、エントリー後2週間から1カ月でプレ審査が始まり、専門審査員によるおもてなし実践状況の点検や確認を行う。

 プレ審査の3週間から1カ月後に外国人審査員の覆面調査が行われ、さらに2週間後に従業員へのホスピタリティ浸透を確認するインタビューなどの本審査が行われ、認証が決定する(認証期間は有期)。GHCの第1回認定試験は3月に開始されており、第1号は早ければ5月ごろに認証される見込み。

 斎藤理事長は「この認証は今後、地域認証の一部としても利用を検討している」と意気込みを語った。1年後に100施設、2020年までには1千施設の認証目標を掲げる。試験は現在、東京・大阪のみだがニーズが高まれば全国展開や観光機関への進出も考えているという。

中村好明委員長
中村好明委員長

「宣伝活動の前にホスピタリティ」、中村好明氏

 JHMAグローバル戦略委員長で、ドン・キホーテグループ、ジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長の話。

 2月のタイ国際旅行フェア(TITF)で改めて痛感したのは、物凄い勢いでプロモーションをしていた東アジア近隣国ブースが唖然とするほど元気がなかったこと。短期的に人気になった国でもリピーターにつながらず、タイからの訪問者が減り、プロモーションの費用対効果が得られなかったためだと思われる。

 ドン・キホーテのブースではタイの観光客にアンケートを取った。日本への旅行に15回も来たことがある人などリピーターが多く、その理由はやはりホスピタリティ。プロモーションの前にまずホスピタリティが重要だと熱く感じた。また、外国人を特別扱いすることなく、ユニバーサルなおもてなしができるように、宗教や文化などの多様性を尊重しつつ、日本の素晴らしさを伝えられるグローバルなホスピタリティが必要だ。

一葉が通った質店取得、地域創造に産学連携(跡見女子大×文京区)

山田徹雄学長
山田徹雄学長

 跡見学園女子大学(山田徹雄学長)と東京都文京区(成澤廣修区長)は3月12日、同大学文京キャンパスで合同記者会見を開いた。文豪・樋口一葉に関する区内の文化財「旧伊勢屋質店」を3月11日に同大学が取得。地域創造の産学連携の取り組みについて発表した。

 旧伊勢屋質店は明治時代に建造された蔵・見世・座敷からなる歴史的商家建築。樋口一葉が生活に困窮した際に何度も通った質店で、文学史跡としても貴重な建築とされる。これまでは個人の所有だったが建築の存続が危ぶまれる状況になったため、これまで保存活動に取り組んできた同大学が土地と建物を取得した。取得費用は約1億3千万円で、文京区が約4千2百万円を支援。区民を対象にした「一葉募金」も開始しており、区・大学・区民が協力し旧伊勢屋質店を活用する。

成澤廣修区長
成澤廣修区長

 成澤区長は「事業委託の形で、大学には建物の公開や観光案内事業など進めてもらいたい」と活用ビジョンを語った。山田学長は「4月に開設する『観光コミュニティ学部』の実践的な地域創造の場として利用を進めていく」と述べた。