No.406 対談「和食文化を語る」、道場六三郎氏×吉本加代子女将

対談「和食文化を語る」
道場六三郎氏×吉本加代子女将

 7月14日、石川県金沢市のホテル日航金沢で「全国旅館おかみの集い―第26回全国女将サミット2015金沢」が開かれる。今回のテーマは「あなたに逢いたい~人つどい 人うるおす、魅力ある宿を求めて」。開催を前に、石川県・山中温泉の出身で、日本を代表する日本料理の料理人・道場六三郎氏と同温泉地の旅館の女将で、道場氏と長年の交流がある今大会の吉本加代子運営委員長(お花見久兵衛女将)の対談が実現。和食文化の素晴らしさなどを語り合った。
【司会=旅行新聞新社社長・石井 貞德、構成=飯塚 小牧】

 

 

 ――現在の和食について、どうご覧になっていますか。

■道場:基礎は揺るぎませんが、当然、時代の変遷はあります。食材も海外からさまざまなものが入ってきたので、それから随分と変わりました。また、私は料理の鉄人以来、フレンチ、イタリアン、中華の料理人との交流が深くなりました。例えば、異ジャンルの料理人の方々と話をしていると、料理の手法も食材の種類も、新しい知識が広がって楽しいのです。今は垣根を飛び越え「地球の料理」というか「宇宙から見た料理」のように変わってきたのではないでしょうか。

 今は食事のスタイルがテーブルになってきているので、お膳の上で映える器とテーブルで映える器も変わってきています。そういう点でも料理は変わります。でも私はこれも、自然の成り行きでいいのではないかと思います。

 一方で、昔からある白和えや、地で採れたワラビの浸しなど、ホッとする一品は、今のお客様にも喜んで頂けます。こうしたものを献立の合いの手として挟むと変化に富みますし、「これ昔、おばあちゃんが作ってくれた」と懐かしい思い出話にもつながります。また、今は食事の前に野菜を食べるといいと報道されていますが、こうしたテレビの情報などにも影響されます。ですから、「不易流行」で変わらないものは変わらず、そのなかで時代の流れに乗るということです。流れとケンカしても勝てないので、流れをよく見ながら、変えるべきところは変えていかなければなりません。

■吉本:一昔前は、団体の宴会料理ばかりだった旅館の料理も変わってきました。

■道場:昔は茶碗蒸しと天ぷら、コンロが三種の神器でしたね。

■吉本:そうです。お酌して回ってきて、冷たくなった天ぷらを食べなくてはならないような状態でも、それが旅館の料理というような時代がありました。…

 

※ 詳細は本紙1593号または7月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

不安定化の中で観光は―― ― 世界の動きと連動して刻一刻と変化

 JTBが発表した今年の夏休み(7月15日―8月31日)の旅行動向によると、国内旅行は前年同期比0・2%増の7561万人、海外旅行は同1・9%減の255万人。総旅行人数は同0・1%増で過去2番目の7816万人と、好調に推移すると予想している。

 また、9月19―23日には5連休(シルバーウイーク)も控えている。期間中の予約状況は、ルックJTBは同80%増、エースJTB(首都圏発)は同188%増と、夏休みが終わった後の予約も絶好調だ。JTBは雇用環境の好転や、夏期ボーナスの増加などが好調の要因と見ており、国内旅行は今年4月から順次全国で販売された「ふるさと旅行券(プレミアム付き旅行券)」が各地で売り切れになるなど、地域への旅行需要喚起に貢献していることも挙げる。

 方面別では、北陸新幹線効果で依然と北陸が好調のほか、16年5月のサミット開催が決まった伊勢志摩への注目も高まっている。旅の目的では「帰省、離れて住む家族と過ごす」「温泉でゆっくりする」などが多いという。一方、円安傾向に加え、国際情勢や感染症への不安から、海外旅行は昨年よりも減少する見通しだ。ハワイや台湾への人気は継続しており、航空路線の拡大でオーストラリアも増加が見込まれている。

 しかし、最近の国際情勢を見ると、さまざまな不安を抱いてしまう。ギリシャのユーロ離脱危機や、急落する中国の株式市場、ロシア・ウクライナ問題、南沙諸島周辺での緊張関係、過激派組織「イスラム国」を巡る動きなど、世界は不安定な状態にあり、強いストレスを感じ合っている。それらすべてがつながっており、何か一つの些細な出来事や、“思い違い”がきっかけで、国際秩序が一気に瓦解してしまう脆弱さを感じる。MARSなど感染症の拡大も人々を無意識のうちにも緊張させている。

 国内を見渡しても、火山活動の活発化により、観光客が著しく減少しているエリアが点在している。また、新幹線火災事件など、好調が予想される国内旅行にも水を差すような事件も発生している。不安定化する時代であるが、どの時代であれ、運命的に出会った時代を逞しく生きていくより仕方がない。

 「観光立国」を目指す日本は、これら世界の動きと複合的に連動しながら、刻一刻と状況が変わりゆくことを認識しなくてはならなくなった。また、これまで以上に観光産業の経済的な存在感や、“地域創生への役割”が大きくなってきたことで、国際政治における「駆け引き」にも大きな影響を与えるようになった。リーディング産業としての責任も求められてくる。

 このほど、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決まり、長年準備を続けてきた地元の方々の喜びも伝えられた。一方で、韓国との間で「強制労働」について対立し、後味の悪さも残した。世界中の人々に地元の優れた自然や文化を知ってもらえるチャンスである「世界遺産登録」だが、政治的な問題に発展してしまうことは本意ではない。比較的近代の登録については、そのようなリスクが含まれていることを、地元民や観光関係者も考えていかなければならない。また、登録によって一時的に大きな注目を浴びるが、その後の永続的なビジョンへの視点が、より大事になってくる。

(編集長・増田 剛)

「国内は順調に推移」、海外旅行は1つの区切り(JATA・田川会長)

田川博己会長
田川博己会長

 日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は7月1日、JATA本部で会見を開き、現況の市場動向や先般、観光庁に提出した政策提言のポイントなどを語った。国内市場については、「各社の数字を見ると順調に推移している」とした。

 国内旅行は、北陸新幹線の開業で東京―大阪間に新たな流れができはじめていることや、9月のシルバーウイークなど好材料があることから「8月、9月は流れがいい」と感触を語った。一方で、東北への送客はまだ十分ではないとし、今後も東北の宿泊旅行拡大に取り組んでいく方針を示した。

 訪日旅行は「フォローの風が吹き、絶好調。円安やビザの緩和、免税拡大など今後も中国を中心に東アジアからの訪日が拡大するだろう」とし、今年は2千万人に近づくと予測。旅行業界としての取り扱いは小さいが、宿泊業や飲食店をはじめ、波及の裾野が広く、日本経済への影響は大きいことを強調した。

 喫緊の課題となっている海外旅行は「6月期の市場動向でも震災後で最も厳しい数字。シルバーウイークを除くと夏も数字が上がっていない」と報告した。現況の数字は円安や社会情勢などの要因が影響しているが、さらに大きな観点から「海外旅行自由化から50年が経ち、1つの区切りがつき始めているのではないか」と持論を展開。「海外旅行をする意味を含めて、次の時代の海外旅行を考えていかなければならない。価値創造にしっかり対応していく」と述べた。

 提言のなかでは、国際化による地方創生やクルーズ施設の整備、休暇制度の普及、安心・安全な旅の推進をポイントにあげ、「今年度は提言の実現に向け着実に前に進んでいく。想定外のことが起きることを予測しながら取り組んでいく」と意気込みを語った。

元気を前面に発信、「東北篇」動画を公開へ、JATA国内CP

 日本旅行業協会(JATA)は7月1日から、国内宿泊拡大キャンペーン「ニッポンを、遊びつくせ!」の2015年度第2弾として、「東北篇」動画を公開した。引き続き、ダンスユニット「WORLD ORDER」を起用し、東北の元気を前面に発信している。

 6月25日の定例会見で国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は「復興支援というよりも、元気な東北を世界に発信していきたい」とし、地元の人との触れ合いを象徴するような各地の人々の笑顔や安心・安全な食にフォーカスした内容に仕上げた。10月には東北メイキング版を配信予定で、来年度も今回とは異なる東北地域の動画を制作する予定だという。

 キャンペーンの動向は、4月から公開している九州篇の動画が、6月20日時点で約5万回再生されたことを報告。また、海外からの視聴が約43%を占め、国別で再生回数が多いのは台湾、米国、タイと訪日旅行が多い国となっており、訪日旅行の促進にもつながっているという。なお、カウントには入っていないが、中国は同国ナンバーワンの動画サイト「ヨーク」で62万回以上再生されている。

 また、同キャンペーンの大きな狙いである若年層への旅行需要喚起については、モバイルからのアクセスが昨年の38%から46%へ増加していることや、フェイスブックサイトのファンのうち、35歳以下が48・9%と、昨年から1万7175人増加していることなどから、訴求の拡大ができてきているとみる。

新社長に中間幹夫氏、池田氏は会長に就任、㈱全旅

中間幹夫社長
中間幹夫社長

 株式会社全旅(池田孝昭社長)は6月23日、東京都内で第42期株主総会懇親会を開き、新社長に中間幹夫氏(鹿児島県・アローツーリスト)が就任した。池田社長は会長に就いた。

 懇親会で池田社長は「昨年度は売上、利益とも過去最高を記録した。これも皆様のおかげ」と述べるとともに「地旅は海外にも通用する株全の成果だと思う。中間新体制のもと新たなスタートを期待する」と結んだ。中間新社長も「全役員一丸となって事業を進めていくので引き続きご協力いただきたい」と述べた。

 続いて来賓を代表して林幹雄自由民主党衆議院議員が「2月の韓国、5月のインドネシア、そして北京と、全旅は外交行動の際に欠かせない存在。これからも議員外交で政府を側面から支えていくので今まで以上の協力をお願いしたい」と語った。二階俊博全国旅行業協会長(代読・近藤幸二副会長)は、「5月の北京での日中観光文化交流団の際は3千人を超える人が参加してくれた。日中を民間の力で支え、より人的交流の促進を心掛けていく。観光が明るくなれば必ず世の中が明るくなる。今後も全旅協5400社の発展に寄与してほしい」と述べた。

 株主総会で承認された役員は次の各氏。

【取締役会長】池田孝昭
【代表取締役社長】中間幹夫
【取締役副社長】佐藤達雄▽植竹孝史
【取締役】佐藤好徳▽武井哲郎▽三澤弘▽萩原敏和▽上原龍男▽武下孝司▽藤田光三
【監査役】吉田正博▽半田初幸▽内田正人
【常務執行役員】日野俊英
【相談役】江間金作▽大原秀雄▽兒島武

志賀高原根曲がり竹三昧

 長野県・山ノ内町の町制60周年を記念して7月某日、銀座NAGANOで感謝フェア「志賀高原根曲がり竹三昧」が開かれた。山ノ内町の竹節義孝町長がホスト役となって自らゲストをもてなした。

 根曲がり竹を使った郷土料理のフルコースは次の通り。「タルタルソース和え天然山葵添え」は柔らかい根曲がり竹に山葵のツンと鼻に来る刺激が絶妙。皮を剥いて食べる「姿焼き」は基本中の基本だが、獲れたてを食べるにはこれが一番。抹茶塩でいただいた根曲がり竹の天ぷらも揚げたては驚くぐらいに美味い。

 飲み物は志賀高原ビールのペールエールとIPAという具合に至れり尽くせりだ。

 とくに地元産の稀少米「稔兵衛米」を使った「鶏むね肉の炊き込みご飯」と「たけのこ汁」は絶品で思わずおかわりした次第。

【古沢 克昌】

被災3県女将と意見交換、観光庁長官が南三陸訪問

意見交換に参加した女将たち(6月9日)
意見交換に参加した女将たち(6月9日)

 観光庁の久保成人長官は6月9日、宮城県・南三陸温泉の南三陸ホテル観洋を訪れ、岩手、宮城、福島の各県の女将との意見交換会を開いた。意見交換に先立ち「語り部バス」にも乗車し、被災地の現状を視察した。

 ホテル観洋の阿部憲子女将が今春、太田昭宏国土交通大臣と対談したことがきっかけで実現した。今回は7人が参加し、各地域の現状を報告した。

 ホテル対滝閣(岩手湯本温泉)の大澤幸子女将は、旅行商品の開発や資材購入に共同で取り組む「いわて希望の宿ネットワーク」の設立など、震災後の取り組みを紹介。阿部女将は「1千年に一度の震災があった地は学びの場」と強調、「震災後意見を交わす機会が少なかったが、今回をきっかけに連携を深めたい」と意欲的だ。

 久保長官は「地域の連携や、被災地の現状を再認識するツアーの必要性を改めて感じた」という。

太田大臣を訪問(6月24日)
太田大臣を訪問(6月24日)

 太田大臣へ報告

 6月24日には大澤女将、阿部女将のほか、意見交換に参加した雨情の宿新つた(いわき湯本温泉)の若松佐代子女将、割烹旅館天地閣(いわき市小名浜)の大平淑子女将の4人が、国土交通省を訪れ、太田大臣に今回の意見交換などを報告した。女将たちは、6月12日に大臣認定された7つの広域周遊観光ルートのなかに東北が選ばれたことにも触れ、「地域でさらに工夫を重ねたい」と伝えた。

ウェブ取引の指針決定、契約条件など記載求める

OTAガイドライン、観光庁が策定

 観光庁はこのほど、インターネット上でのオンライン旅行取引を扱う旅行会社(OTA=Online Travel Agency)の旅行業登録の有無や取引形態が異なることを受け、契約条件や会社の基本情報などをウェブサイト上に表示することを求めるガイドラインを策定した=表参照。

 OTAは旅行会社が運営するサイトだけでなく、サービスや商品を紹介するだけの「場貸しサイト」や「メタサーチ」と呼ばれるサイトも存在し、これらのサイトの運用自体には旅行業登録が不要となる。さらに、紹介元の旅行会社サイトが外国であった場合、日本の旅行業法が適用されない。このような点から、当事者とどのような取引を行うのか不明瞭で、契約に関するトラブルが発生しており、今年1月から「OTAガイドライン策定検討委員会」(委員長=山内弘隆氏・一橋大学大学院教授)を設置し、ガイドライン策定に向けて検討を進めてきた。

 ガイドラインでは「OTA等に関する基本情報」「問い合わせ先に関する事項」「契約条件に関する事項」「契約内容確認画面等」の4事項の表示を求めている。詳しくは別表を参照。また、一般の消費者向けに、旅行予約サイトを利用する際の確認事項を整理した啓発チラシを作成した。ガイドライン全文は観光庁ホームページで公開中。(http://www.mlit.go.jp/common/001092700.pdf

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女将さんのこころ―その二、瀬戸川礼子著、7月7日発刊(旅行新聞新社)

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 旅行新聞新社は7日、「おもてなしの原点 女将さんのこころ―その二」(瀬戸川礼子著)を発刊した=写真。

 14年7月に「その一」を発刊。現在も好評販売中であり、本紙には「その二」の発刊を期待する声が多く寄せられていた。

 「女将さんのこころ」は、本紙で2000年から毎月21日号に、瀬戸川氏が連載中の人気コラム「女将のこえ」をベースに、最新情報に加筆・修正したもので、「その一」と同様に55人の新たな女将さんが登場する。本書では、女将の生き方のみならず、地域社会への貢献、社員教育、会社経営、後継問題、日本文化の継承、お客様へのおもてなし、働く意義についてなど、多様なテーマが盛り込まれている。上製本240ページ。定価1800円(税別)。

 問い合わせ・申込み=旅行新聞新社 電話:03(3834)2718。

新型バスを2台導入、富裕層向けツアーで運行(名阪近鉄バス)

新型デラックスバス「浪漫Ⅱ」
新型デラックスバス「浪漫Ⅱ」

 名阪近鉄バス(愛知県名古屋市)はこのほど、ツアー専用の特別車両として新型デラックスバス「浪漫Ⅱ」を2台導入した。最新設備がそろった高級仕様のバスで、ワンランク上の日帰りや宿泊コースの特選ツアーで運行する。

 「浪漫Ⅱ」の車体色は紺を基調に、木曽三川をイメージしたゴールドと白の曲線、大垣市花「さつき」をイメージしたデザインが施されている。

手すり付化粧室
手すり付化粧室

 内装は、ゆとりあるシート配列で段差のないフラットなフロアに、全32席の総革張りシート。車内後部には木目を基調にしたモダンな室内の手すり付化粧室(パウダールーム・トイレ)を備え、年配の人も安心して利用できる。

 このほか、車内の空気をきれいに保つ除菌イオン発生装置、眩しさを和らげる間接照明の車内灯を設置。全座席に充電に便利な100ボルトのコンセント、淹れたてコーヒー、車内用スリッパ、Wi―Fiなどの車内サービスも備えた。

 安全面では、安全走行サポートシステム「サラウンドアイ」、自車の走行車線からはみ出すと警報する「車線免脱警報」、ドライバーの閉眼や顔の向きを検知し警告する「ドライバーモニター」、万が一の衝突が避けられないと判断するとシステムがブレーキをかける「衝突被害軽減ブレーキ」を搭載する。

 そのほか、運転士・ガイドの技術向上を目的にした社内選考基準(SSS制度)を今年度に設定。セーフティー(安全)、サービス(おもてなし)、スキル(技術)の3分野において優れた技術を備え、さらなる技術向上を目的にした社内制度で、「浪漫Ⅱ」は社内基準の上位に選ばれた乗務員が運行する。

 「浪漫Ⅱ」でめぐるバスツアーは、名阪近鉄旅行が企画する「カッコーツアー」で販売している。