No.407 旅館経営教室(6)―「生産性」(まとめ)、「集合モデル」を現場に導入

旅館経営教室(6)―「生産性」(まとめ)
「集合モデル」を現場に導入

 2014年7月1日号からスタートした「旅館経営教室」シリーズは、(1)「管理会計」、(2)「おもてなし」、(3)「労働時間管理」、(4)「生産管理」、(5)「集客」と続けてきたが、最終回の第6弾は、これまでのまとめとして「生産性」がテーマ。工学博士でサービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、現場で提供されるサービスを「集合モデル」として捉え、これまで各テーマで提案してきたさまざまな理論によって、サービス生産性向上のポイントを紹介する。

【増田 剛】

 
 
 

 この「旅館経営教室」の連載では、これまで5回に分けてさまざまな具体的な現場実例を織り交ぜながら、旅館を日々運営していくのに必要な実務的な技術や制度、指標について紹介してきました。最終回となるこの第6回では、現場で提供されるサービスを「集合モデル」として捉え、これまでの連載を踏まえつつ、サービス生産性向上のポイントを紹介していきます。

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 サービス産業のどこの現場でも、食料品やリネンといった材料や製品を外部から仕入れ、それを最終的にサービスという商品にしてお客様に提供しています。この材料や製品も使い、売上につながるサービスを組み立てていくのが付加価値です。

 つまり、外部から仕入れた材料や製品を使い、そこに“新たな価値を付け加えていく”ことが付加価値で、経済学では売上高から仕入れを差し引いた額として計算されます。サービス産業の現場では一般にこれを簡易的に売上総利益で近似します。※詳しくは旅館経営教室(1)「管理会計」(2014年7月1日号)

 気を付けなければならないのは、ここで言っている付加価値とは、お客がそのサービスから実際に感じとった価値のことではなく、あくまでも一方的に提供されたサービスから計算された数字でしかないということです。もしお客から要求されている「ニーズや期待」という要求事項(ISO9000)にきちんと対応できなければ、お客は提供されたサービスに十分な価値を感じず、期待する売上高も結果として得ることができません。…

 

※ 詳細は本紙1594号または7月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

女将サミット2015 北陸で初開催

全国から約120人の女将が集まった
全国から約120人の女将が集まった

 「全国旅館おかみの集い」運営委員会と旅行新聞新社は7月14日、石川県金沢市のホテル日航金沢で「全国旅館おかみの集い―第26回全国女将サミット2015石川」を開いた。北陸では初開催となった今回は、全国から約120人の女将が集まった。

 吉本加代子運営委員長(お花見久兵衛)は、「私たち女将の仕事は、人と会うことから始まる。そのようななかから今年のテーマを“人”とし、人とのつながりや出会い、何を求めて旅をするのかなどを一緒に考えたい」とし、「北陸新幹線開通でにぎわう金沢で思い出に残るひとときと、心つながる仲間を見つけてほしい」とあいさつした。

 夕方から開いた懇親パーティーは、西村明宏国土交通副大臣をはじめ、多くの来賓を含む約270人が参加した。

(次号詳細)

安倍首相を表敬訪問、“女将はおもてなしの代表選手”

女将6人が首相表敬訪問
女将6人が首相表敬訪問

 「第26回全国女将サミット2015石川」の開催を前に7月9日、吉本加代子運営委員長をはじめ、6人の女将が安倍晋三内閣総理大臣を表敬訪問した=写真。安倍首相は「旅館の女将は日本ならではのおもてなしの代表選手」と歓迎した。

 吉本運営委員長は「26回を数える女将サミットで、今年は初の北陸開催です。新幹線もでき、非常に近くなったので金沢にぜひ」とあいさつ。2年前に女将サミットに出席した昭恵婦人へのお礼なども伝えた。

 安倍首相は観光立国を目指すなかで、昨年、訪日外国人観光客が急増したことに触れ「今年は1700―1800万人を超える勢い。国内の観光客に加え、海外からのお客様も女将パワーで日本の文化とおもてなしで迎えながら、地域創生のために活躍してほしい」と激励した。

 また、サービス産業の生産性向上に国としても力を入れていることなどを報告。「まさに女将の皆様にリーダーシップを発揮していただきたい」と期待した。

個別申請が可能に、募集型の取消料規定追加(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、個別申請で認可されることになった旅行業約款について発表した。今回の変更で可能になったのは募集型企画旅行の取消料規定を追加する通称「募集型ペックス約款」と募集型・受注型の変更補償金の除外規定を追加した「旅程保証約款」。

 今まで、標準旅行業約款を各社が自社の約款と定めていたが、画一の標準約款では対応に不便がでることから、観光庁や消費者庁に働きかけていた。7月9日の会見で越智良典事務局長は「大きな進歩」と歓迎。海外からは「過剰な消費者保護」という声もあったことから、広く世界にもアピールする。法務・コンプライアンス室の堀江眞一室長は「本当は標準旅行業約款に組み込めればよかった」と本音を語ったうえで、「今後、事実上すべての会社が今回認可される個別申請を使っていれば、将来の改正で訴えられるのではないか」と期待を込めた。

 個別申請は8月1日から、地方運輸局や各都道府県の行政庁で受け付けを開始し、10月1日以降に締結する企画旅行契約から適用される。

 「募集型ペックス約款」の対象は国内・海外の募集型企画旅行。具体的には、航空会社正規割引運賃(PEX運賃)やLCCの運賃の取消料が標準約款の取消料額の範囲を超えた場合、PEX運賃取消料などの合計額以内の額を募集型企画旅行の取消料として設定することが可能となる。取消料の設定を行う場合、パンフレットなど取消条件説明書面に、PEX運賃を利用する旨や航空会社名・運賃種別、PEX運賃取消料などを目立つように記載することが定められている。また同約款は日本発着時に使用するPEX運賃に限るとした。これらにより、旅行会社のPEX運賃取消料の負担軽減や「とりあえず予約」「多重予約」の牽制を見込んでいる。

 「旅程保証約款」の対象は、国内・海外の募集型・受注型企画旅行で、募集型・受注型企画旅行で変更補償金の支払いが必要となる変更に除外規定を追加。具体的には、旅程保証の適用にあたり、「ホテルリスト」を取引条件説明書面に記載した場合に限り、同リスト内でアップグレードしたホテルへの変更は、変更補償金の支払対象外となる。あらかじめ「ホテルリスト」(ウェブ取引の場合ウェブページに提示)の交付とリスト発効日の記載が必要となる。「募集型のみ」「受注型のみ」の認可申請も可能で、ホテルの手配環境の改善や変更補償金の負担軽減、海外ホテルによる日本人客の倦厭を防ぐ効果があるとみる。

 今回の個別認可についてJATAと全国旅行業協会(ANTA)は共催で、8月6日午後1時30分から東京・全日通霞が関ビルで、説明会を開く。

期待はこんな所からも

 福島県の旅館で聞いた2つの話を紹介したい。東山温泉の庄助の宿瀧の湯は、お客の車を敷地外の駐車場へ移動する際、宿の係か宿泊者自身、どちらが行うかを選んでもらうように心がけている。移動の手間より、愛車を他人に委ねることへの不安を感じる人が多いためだ。駐車場では、ドリンクカウンターを設け、手間分をすぐばん回する。こんな仕掛けは同館ならでは。

 磐梯熱海温泉のホテル華の湯は今月、敷地内に従業員向け保育園を開設した。子供たち10人が早速入所したという。職場の近くにあり、年中無休なので安心して働ける。働く母たちも笑顔だ。

 自分が宿泊するとしたら、直接関係のない話題。それでもか、それだからか、聞いたあと、宿への親しみや期待をより感じるようになっていた。

【鈴木 克範】

「インバウンドへの挑戦」、宿研キズナサミット開く(宿泊予約経営研究所)

末吉秀典社長
末吉秀典社長

 宿泊予約経営研究所(末吉秀典社長)は7月7日、神奈川県横浜市の横浜ロイヤルパークホテルで第4回「宿研キズナサミット」を開いた。今年のテーマは「国際化・インバウンド」で、末吉社長は「昨年9月に当社は創業10周年を迎え、キズナサミットも4回目となった。今年はインバウンドをテーマに、これまでの課題や今後の挑戦への気づきのヒントになれば」とあいさつした。

 基調講演はトリップアドバイザー・ホテルセールスチームマネージャーの伊藤大輔氏が「口コミ活用による訴求性向上」について語り、「ユーザーは口コミが多い方を選ぶ。認知度を高める作業が必要」など、さまざまなアドバイスを行った。

 UHM社長・庭のホテル東京総支配人の木下彩氏は現在5―6割が外国人観光客で、地域密着型ホテルとして稼働率9割まで上げていった取り組みなどを紹介した。その後、パネルディスカッションや、懇親会などが行われた。

 また、今年の宿研アワード2015は、東日本エリアは沼津グランドホテル(静岡県沼津市)、西日本エリアは瑞宝園(兵庫県・有馬温泉)が受賞した。

 沼津グランドホテルの受賞のポイントは、近隣に複数の大手チェーンホテルが開業し厳しい状況のなかで、売上を4年連続で前年比120%以上キープ。メインターゲット向けのプランや、販売環境の見直しと整備を行ったことや、競合を意識した価格設定で過度な値下げ防止への取り組みや、予約受付時間を延長し、販売機会損失を軽減したことなどを評価。

 一方、瑞宝園は、平日の在庫を売る仕組みづくりや、グループサイズ拡大を狙い、売上アップや、検索順位を計画的にアップしたことに加え、口コミ件数、評価アップによる成約率の向上、柔軟な在庫提供などが受賞の理由として挙がった。

東洋大・島川ゼミ院生が日本秘湯を守る会に提案、若者へのアンケートをもとに

島川ゼミ院生が「日本秘湯を守る会」にさまざまな提案を行った
島川ゼミ院生が「日本秘湯を守る会」にさまざまな提案を行った

 「日本秘湯を守る会」と連携してさまざまな研究を行っている東洋大学大学院国際観光学専攻の島川崇ゼミは7月11日、ゼミ生が3つのチームに分かれ、日本秘湯を守る会へ若者の視点からさまざまな提案を行った。

 同ゼミで行った10―20代前半のアンケートでは、「日本秘湯を守る会」の温泉旅館を知っている人の割合は4人に1人、「利用したことがある」割合は30人に1人と、残念ながら若者への認知度は低い結果となった。

 また、「温泉旅館に宿泊するなら、1泊2食でいくらまで払えるか」の問いでは、回答の平均値が約1万5千円となり、日本秘湯を守る会の会員宿178軒の平均価格帯と合致していることもわかった。さらに、秘湯の温泉旅館のイメージとして、プラス要素は「自然に囲まれている」が圧倒的に多い一方で、マイナス要素としては「交通の便が悪い」「電波が圏外」「おじいさん、おばあさんが行くところ」などの意見が多くあった。

 同ゼミの若者チームは「温泉旅館は高齢者が多く訪れるが、若い世代の利用者が少ないイメージがある」というアンケートの結果に対し、若者と温泉旅館を結び付ける可能性を検討した。その結果、若者にとってのメリットは、「非日常の体験ができる」「日本文化を再発見し、味わえる」などが考えられる反面、デメリットとしては「都市観光と比較してレジャーが少なく退屈」な面も指摘した。

 旅館にとって若者と結びつくメリットとしては「口コミの拡散によって、新規利用者やリピーターの獲得が期待できる」「旅館業の担い手も増加する」「若者とのコミュニケーションを通じて、時代に合った旅館に成長するためのヒントが得られる」などがある一方、「若者を受け入れることでにぎやかになり、旅館の雰囲気が崩れる」などトラブルが生じるリスクもデメリットとして挙がった。

 結論としては、「経済的には若者の顧客獲得のために大幅な値下げを行う必要がない」ほか、若者も秘湯の温泉旅館を利用して楽しみたいという意向がある一方で、認知度が低いため(古い、交通が不便、電波が圏外など)マイナスのイメージが先行していることを踏まえ、「このマイナスのイメージを解消していけば若者世代に温泉旅館の利用促進が促せられるのでは」と提案した。

 ホームページについても、理念などを掲げる「非ビジネスサイト」と、宿泊予約を主目的とした「ビジネスサイト」の両方の特徴を持っている同会のトップページについて、レイアウトの工夫などを提案したほか、写真の多用、グーグルマップなどの活用に加え、「各宿の温泉の良質さや効能をもっと強くアピールしては?」など、色々なアイデアが出された。

 日本秘湯を守る会の佐藤好億名誉会長は、秘湯の宿にとって温泉がどれほど大きな意味を持っているかをゼミ生たちに語ったほか、「情報をあまり与え過ぎないことがかえって旅情を誘うことなどもある」としたうえで、「大変参考になる提言をいただき、感謝している。ぜひ若い人たちが私たちに考えてくれたアイデアや意見を積極的に取り入れていきたい」と謝意を述べた。

 今後、島川ゼミと日本秘湯を守る会は、より深く連携していき、人材育成や地域文化の育成などの観点から、秘湯の宿に関心を持つ学生には実際に現場を任せるといったことも検討していく予定だ。

【増田 剛】

入会金改定と定款変更、新副会長に國谷氏(栃木県)、ANTA

二階俊博会長
二階俊博会長

 全国旅行業協会(二階俊博会長、5387会員)は6月30日、東京都内で2015年度の定時総会を開いた。今年度は入会金改定や定款の一部変更を行った。任期満了にともなう役員改選では二階会長が再任、副会長は國谷一男氏(栃木県)が新任、加藤正明氏(愛知県)と近藤幸二氏(岡山県)が再任した。

 15年度事業計画では昨年に引き続き、近隣諸国との双方向の人的交流促進に取り組むほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどのメガイベントに会員が対応できる事業環境作りを進める。入会金の一部変更については第1種旅行業会員の入会金を150万円から225万円に増額することを決めた。定款の一部変更については、役員規定を「幹事2人」から「常任理事10人以内、幹事3人以内」とした。

 来賓の久保成人観光庁長官は「地域創生や国内観光振興には地域に根差した協会の皆様と地域の協力による『地旅』の取り組みが重要になってくる」と期待を述べた。

 懇親会から参加の二階会長は、同協会会員の日中・日韓の交流団参加について改めて感謝の意を述べ、「我われは誰かのために仕事をしているのではないので、皆が協力し、理想の方向に足を進めることが大事。協会の活動が日本の観光政策のなかで大きな役割を果たせるよう、皆で頑張ることを誓う」と力を込めた。

 太田昭宏国土交通大臣は「観光は日本経済の牽引力であると同時に外交関係にも大きく寄与する」と述べ、2千万人時代に向かう観光への一層の協力を求めた。日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己会長は「JATAとANTAが協力し、国内・海外・インバウンドの三位一体で訪日客2千万人時代の課題を解決し、新しい時代の観光立国を目指したい」と意気込みを語った。

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【西村明宏国土交通副大臣に聞く】旅館が“一極集中”緩和、雪で広域ルート可能性も

西村明宏国土交通副大臣
西村明宏国土交通副大臣

 西村明宏国土交通副大臣が6月16日に開いた記者会見(7月1日号既報)で、西村副大臣は今年度の「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」で掲げる2千万人時代への備えの強化について説明した。また、同件に関連して、旅館の活用による宿泊施設の都市一極集中緩和やスノーリゾートの広域観光ルート化の可能性などについても意見を述べた。

 インタビュー内容は次のとおり。

 ――宿泊客の都市一極集中問題について。

 東京や大阪など都市部にあるホテル客室の年間稼働率はすでに80%を超えており、集中を地方に広げることが求められているが、そのほかにも都市部の旅館が活用できることにも注目したい。ホテル客室稼働率は東京で84・2%、大阪で86・7%と非常に高いが、旅館になると東京で41・8%、大阪が39・7%となっている。今後は旅館の魅力を発信し、宿泊整備を進めたい。

 ――旅館業法が適用されない「宿泊マッチングサービス」について。

 このまま既成事実として広がっていくのはいかがなものかと思う。衛生面や安全面、防犯面で問題になる可能性もあるため、最低限のラインを設ける必要がある。基準を設けることは宿泊希望者のニーズに合わせた選択肢を作ることにもなる。

 ――「スノーリゾート」をテーマとした広域観光周遊ルート案について。

 スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会を立ち上げ、新たな観光ルート化を目指している。外国人に日本での観光目的を聞くと「買い物」と「食べ物」が多いが、それ以外では「スノーリゾート」がトップに出ており、とくに中国・韓国・台湾で人気がある。東京・大阪圏以外の地方の集客の力になる。

 ――東北方面の観光について。

 被災地復興が進み、インフラ整備が整った地域では仕事が無くなり、働き手が離れている。若者は市街地に移ってしまい、沿岸部にはお年寄りが残されている。地域の魅力を発信し、仕事を生みだし、また人々を定着させたい。

15年度管理者試験の受付開始、試験は10月11日(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は7月2日から、2015年度の総合旅行業務取扱管理者試験の受け付けを開始した。JATAは観光庁長官の試験事務代行機関として、10月11日に管理者試験を実施する。

 試験会場は札幌と仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇の8都市で東京は2会場を用意する。試験科目は旅行業法と各種約款、国内旅行実務、海外旅行実務の4科目。受験料は6500円。願書は郵送が8月7日の消印まで、持参は8月3―7日までJATA本部で受け付ける。(http://www.jata-net.or.jp/seminar/)。