No.405 道の駅×大学、学生と連携し“地方創生”へ

道の駅×大学
学生と連携し“地方創生”へ

 国土交通省は4月28日、全国の道の駅と大学との連携事業を行うと発表した。政府が発表した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」にも道の駅を核とする地域の観光振興についての記述が加わり、道の駅の発展にさらに期待が高まる。国土交通省道路局企画課長の石川雄一氏と跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授の篠原靖氏(内閣府登録地域活性化伝道師)が対談し、連携の可能性などを語った。(2面に関連)
【聞き手=増田 剛編集長、構成=丁田 徹也】

 

 

 ――これまでの道の駅の変遷と現在の姿を教えてください。

■石川:道の駅は「高速道路にあるサービスエリア・パーキングエリアのように、一般道にも休憩機能があっても良いのでは」ということで、1993年にスタートした制度です。103カ所でスタートし、22年経った現在では10倍の1059カ所となりました。

 この間、道路情報の発信機能に、地域情報の発信機能が加わり、さらに地域の物産品販売所やレストランができるなど、道の駅は大きく発展しました。休憩拠点としてだけでなく、利用客と地域をつなぐゲートウェイ機能を果たす集客拠点にもなったのです。

 また、地域住民のための「小さな拠点」として、ワンストップ化された役場機能や防災機能を有する「地域センター型」の道の駅もあります。

 ――道の駅が全国に広く展開できた理由は。

■石川:休憩や情報発信など、基本的な機能があれば道の駅として登録でき、そのほかの部分は地方の創意工夫に任せてきたことが大きいと思います。全国の道の駅の売上高も年間2100億円ほどで、コンビニエンスストア業界と比較すると5位に食い込める規模になっています。ただ、コンビニと違うのは「どこでもある」ものではなく、地方の独自性を活かした「ここにしかない」ものを提供していることです。

 1千カ所を超えた道の駅は今後、一つひとつの駅がさらに発展するための第2ステージに突入します。…

 

※ 詳細は本紙1591号または7月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

宿の現代性 ― アナクロニズムには耐えられない

 食通は、高級な牛肉などはとうに食べ飽き、鴨肉や鹿肉、熊肉、鳩や雉、ウサギなどジビエに食指が動く。それにも飽きたらなくなれば鰐や蛇、蛙、蠍など“ゲテモノ食い”に向う。また、肉よりも皮を好み、やがて皮よりも内臓に耽溺し、最後は骨まで味わい尽くすと言われる。グルメに限らず、あらゆる分野で、口当たりの良い「万人向け」から入り、より刺激を求め、先鋭的なものや、苦みのある珍味なものに向っていく。旅先選びや宿選びもその傾向を持つ人もいる。かく言う私も近年はより“秘した”離島の宿などに魅かれるようになった。陸続きよりも、一度今生との「結界」を意味するような小さな船に乗ってたどり着く島に胸が騒ぐのである。それも、港から反対側の僻地にひっそりと佇み、一歩足を踏み入れるとどことなく居心地がよい宿に出会いたいと思っている。だが、私が常に夢想のように思い描くその“居心地の良さ”とは、一体何に依拠しているのだろう。

 よく考えると、離島で、しかも港の反対側の宿を好むなどというのは、どこか病んでいる証だ。夢想するのは、一週間ほどの間、すべての連絡を断ち切って朝から凪いだ海で釣りをして、夕方に地元の居酒屋で適当に飲み、小さな宿に戻る旅。決して前向きではない、遁世的で、背徳的な旅だ。ただ、そのような旅も逆に1週間が限度だろうと自分でもわかっている。

 旅人が田舎の宿に泊まって「素朴なところがいい」と褒めることがある。意図して「素朴な感じ」を演出している宿がある一方、宿に入った途端、懐かしさを感じさせるところもある。しかし、その懐かしさは、最初はレトロ(懐古的)な感情に支配されているが、次第に我慢できなくなっていく。人は、現代性を失い過去に戻されたような空間に居続けることが苦痛に感じてくるのである。過去に取り残された時代錯誤なもの、つまり「アナクロニズム」には耐えられない。

 地方の宿でも、このアナクロニズムに陥らないために、先端のデザインを宿に取り入れようとする経営者もいる。一見すると、内装も都会的で洒落たデザインである。しかし、どこか違う。しっくりとこない。おそらく、東京で流行っていると思われるデザインを無批判に取り入れた結果なのではないだろうか。現代性とは、表面の模倣ではなく、自らがさまざまな社会的な事象と広く関係しながら、「今」という時代を深く考え、生きることである。

 現代性を失った宿は「社会との関係性の一切を断ち切りたい」と願いながら訪れる“旅人の矛盾した心”をも不安にさせる。仮に、秘境で旅人を1週間滞在させるには、最先端の思想と、それを上手く包み隠せる技術が必要である。

 「通」は退屈を嫌い、ゲテモノや珍味に向うが、それは毎日のことではない。

 この世で最も強い存在は、普遍性と日常性をより強く持ち続ける者である。宿もそうだ。万人受けする宿は、普遍性を持つ証左である。

 しかし、もし自分の宿の存在が、より刺激を求める旅人を相手にする“ゲテモノ的”であるのなら、その矜持によって、上辺だけの模倣を自ら破壊してほしい。私は離島の反対側で最新ロボットを操り、『ヴォーグ』を読むような主人の宿で過ごしたい。

(編集長・増田 剛)

「サービス生産性革命」を、針谷氏ら宿泊業30人出席

第1回サービス業の生産性向上協議会

 生産性が低いとされる介護、飲食、貨物運送、小売り、そして宿泊業の5業種から約300人が集まり、6月18日に総理大臣官邸でサービス業の生産性向上協議会を開いた。

 宿泊業は日本旅館協会の針谷了会長をはじめ、同協会労務委員会の山口敦史委員長、全旅連青年部らを中心に約30人の旅館経営者が同席して、針谷氏が自社や、宿泊業界の生産性向上、経営改善への取り組みをプレゼンテーションした。また、官民が連携した取り組みとして観光庁のホームページでスタートしたオンライン講座「旅館経営教室」も紹介した。

 安倍晋三首相は「賃上げにともなう消費回復が期待されるなか、今後、労働力不足の克服がアベノミクスの最大の課題となっている。この課題を乗り越えるには生産性の向上しかない」とし、「我が国の雇用の7割を担うサービス業は飛躍的に生産性を高める潜在力を秘めている。今こそ『サービス生産性革命』を起こす時」と大きな期待を寄せた。

 今後、5業種が個別に官民連携の協議会をつくり、具体的な活動に取り組んでいく予定。

労務委員会を新設、生産性向上に取り組む(日本旅館協会)

針谷了会長
針谷了会長

 日本旅館協会(針谷了会長、2872会員)は、6月17日、東京都のホテルインターコンチネンタル東京ベイで2015年度通常総会を開いた。今年度から新たに労務委員会を設立し、人手不足解消や労働生産性の向上などに取り組んでいく。

 針谷氏は労務委員会設立に関して「待遇を改善し、従業員の定着を高め、旅館業のイメージを向上させ、地域社会から認められる旅館になっていくべきだ」と意気込みを語った。労務委員長の山口敦史氏(山形県・ほほえみの宿 滝の湯)は「我われの業界はとくに人手不足が深刻。関係省庁と連絡を密にしていくほか、講師を招いて会員の労働生産性向上につながる情報提供をしたい」と話した。

 そのほか今年度は、貸切バス運賃の影響についての取り組みやクレジットカード手数料の低減化、民泊規制緩和に対する問題提起に取り組む。
 
 

呉海自カレー

 海上自衛隊では多くの部隊で毎週金曜日の昼食にカレーが食べられる。長く航海する隊員が曜日感覚を忘れないようにするためという。艦船によってレシピが異なり、同一のものは存在しないとも言われる。

 旧日本海軍第一の軍港として栄えた歴史を持つ広島県呉市では4月から、呉基地所属の22艦船のカレーを再現し、市内の飲食店などで提供を始めた。各艦船が秘伝のレシピを公開。飲食店側が隊員から作り方を教わり、最後は艦長の認定まで受けた。スタート2カ月で延べ2万4千食を売り上げるなど注目度が高い。

 たとえば「居酒屋利根本店」は「護衛艦とね特製キーマカレー」を提供。鶏ガラを使った独特のコクと香ばしさが特徴で、小さな旭日旗も添えられる硬派な一品だ。

【土橋 孝秀】

登録実施機関に認定、「農林漁業体験民宿」(百戦錬磨)

農林漁業体験民宿シンボルマーク
農林漁業体験民宿シンボルマーク

 百戦錬磨(上山康博社長、宮城県仙台市)はこのほど、民間企業で初めて農林水産大臣から「農林漁業体験民宿(Japan.Farm Stay)」の登録実施機関として認定を受けた。

 登録サイト(http://www.hyakuren.org/gt/)で、登録に関するガイドを提示しているほか、様式集のダウンロードが可能。

 農林漁業体験民宿は、農林水産省と観光庁の連携事業で、外国人旅行者を地方へ誘客し、その滞在先として、民宿利用を促進するための施策。シンボルマークを制定し、ブランド化を推進している。

 一方、百戦錬磨は昨年、日本各地の農山漁村の民宿や古民家に絞った予約サイト「とまりーな ~お気に入りの田舎を見つけよう~」をオープン。農山漁村ならではの体験を満喫できる農林漁業体験民宿を同サイトからアピールし、訪日外国人を含む個人旅行者に日本の農山漁村への滞在を促進する。

【鶴雅グループ・大西 雅之社長に聞く】来年持株会社へ移行、100年ブランド目指す

大西  雅之氏
大西 雅之氏

 鶴雅グループ(大西雅之社長)は今年、創業60周年を迎えた。5月には記念式典を北海道・阿寒湖温泉のあかん湖鶴雅ウイングスで開き、持ち株会社体制への移行や、阿寒独自のアイヌアート・プロジェクトへの支援などを発表した。大西社長にグループが描く今後の姿などを聞いた。

 【聞き手=本紙社長・石井 貞徳、構成=鈴木 克範】

 ――今の心境は。

 「この仕事に就けて本当によかった」と思う。時代時代で花形のさまざまな業種・業態があるが、厳しい競争のなかで10年後我が社があると言うのは難しい。製造業では商品のライフサイクルとともに次の会社が勃興してくる。自然の環境に守られた宿泊業界では70年、さらに100年と言える。100年後を地域とともに目指せる観光業界にいることを本当に幸せに思う。

 ――後継体制を発表しました。

 60周年を機に、後継体制を社内外に報告した。来年3月に持ち株会社「鶴雅ホールディングス(HD)」を設立し、傘下に「鶴雅リゾート」「鶴雅観光開発」を置く。鶴雅リゾートは阿寒の遊久の里鶴雅や鄙の座、定山渓・森の謌など7施設を、鶴雅観光開発はサロマ湖鶴雅リゾートや支笏湖・水の謌、札幌のビュッフェダイニングなど5施設を運営する。運営ホテルを道央、道東などのエリアで分けると企業としての現状の体力や将来性が違ってくる。そこで地域を掛け合わせるかたちにした。

 20年度までをHD第1期とする。この間、現経営陣を中心に後継者育成に力を注ぐ。鶴雅、森の謌の増改築にも着手する。とくに森の謌は、稼働率は高いが施設は敷地の3分の1しか活かせていない。ゆったりと食事ができるレストランやVIP対応の客室整備が急務だ。新規2施設の開業も目指し、グループ総売上は現状の100億円から130億円へ安定的に成長させる。あくまで、拡大することが目標ではなく、一軒ずつを充実させ、世界から評価される宿を作りたい。

 21年度からHD第2期とする。鶴雅リゾートには大西希取締役が、鶴雅観光開発には大西将仁取締役がそれぞれ就く予定。お互いの個性を生かし切磋琢磨しながら、協力して100年ブランド作りを目指してほしい。

 ――従業員満足度(ES)の向上への取り組みは。

 ESの向上は質の高いサービスを提供するためには必要不可欠。鶴雅観光人材養成講座という大学の寄付講座を9年続けてきて、卒業生は270人を超えた。今年も56人の新卒を迎えたが、社員の平均年齢は、5年前の42歳から、今年は36歳になった。若い人たちが、ゆとりをもって暮らせる会社にしたい。労働生産性を高め、時短も強力に進めたい。リフレッシュ休暇なども含め、まずは休みをしっかりとれる会社を目指す。社員の待遇、給与についても考える。企業内保育所や社員寮も新設する。

 今年は大学院制度も導入する。有望な社員には通信制大学院に入学してもらう。次の時代を支えるスタッフを育てたい。

 ――目指す国際的リゾートとは。

 国際的に通用する施設づくりを目指している。今年は外国人宿泊客が現在の14%から20%になる見込み。東京オリンピックが開かれる20年までに30%に達するだろう。

 札幌の営業本部には海外の個人旅行客を受ける専属の部署もある。宿泊予約に加え、レンタカー手配などの旅行支援も行っている。きめ細かな対応でリピーターが増えている。FIT宿泊客には専属の担当者名と携帯電話の番号を記した「安心カード」を配布している。体調不良や急な行程変更など、緊急時にしっかりとその国の言語でサポートすることを目指している。

 今後は外国人の幹部社員も増やしたい。今はリーダークラスだが、宿泊客の3分の1が外国人になる将来、役員登用も自然な流れだ。

 ――郷土力の発信とは。

 昨今の観光は、歴史や文化、芸術がキーワードになってきた。阿寒湖温泉には縄文時代から続くアイヌ文化がある。今、「北の大地・北海道を訪れて、先住民の叡智に触れ、もう一度人生を見つめなおしてみませんか」というメッセージを発信している。

 感銘を受けたアイヌ語に「ヤイコシラムスエ」という表現がある。考えるという言葉だが、日本語に直訳すると「自らが自らの心を揺さぶる」という意味になる。心を揺さぶることが、アイヌ民族の「考える」に当たる。心に深く響いた。

 グループでは04年の鄙の座開業時、初めてアイヌ文化を宿に取り入れた。12年、鶴雅ウイングスを開業して一番良かったのは、広い中庭ができたこと。この空間を「アイヌアートガーデン」と名付け、悠久の時を表現した縄文アートをテーマに整備したい。真新しいキャンバスにやりがいを感じている。

 過去、阿寒オリジナルのアイヌアートによる独自商品の開発・販売を支援してきたが、60周年を記念して、アイヌ文化振興基金(仮称)の創設に2千万円を寄贈する。伝統を引き継ぎ、掘り下げ、郷土力に磨きをかけたい。

 ――ありがとうございました。

ウェブの充実検討、正会員証を有償配布(日本観光施設協会)

西山健司会長
西山健司会長

 日本観光施設協会(西山健司会長、203会員)は6月16日、東京都内で2015年度の定時総会を開き、今年度は新規事業として、ウェブサイトの充実をはかるための検討を行うことなどを決定した。また、意識の向上や消費者へのアピールなどを目的に、正会員証を発行し、有償で会員に配布する。

会員証
会員証

 西山会長は「頭が痛い貸切バスの新運賃の件は各地区で状況を調査している。中国・四国ではバス旅行が4割減になっているようだ。一方、インバウンドは60―80%増という。状況が年々変わってきている」と語り、今後の対応などを議論したいとした。また、会員数を拡大し、スケールメリットを創出していくべきだと強調。「会員が300、400になれば必ず大きな会になる。しかし『協会が何をしてくれるか』ではなく、協会を使い、自ら何をするかを考えてほしい」と呼びかけた。

 今年度は昨年、会員に実施した施設のバリアフリーやAEDの設置状況などをたずねたアンケートをまとめていく。

跡見学園女子大30人、販売や生産現場を視察、道の駅「もてぎ」

町の職員から説明を受ける学生
町の職員から説明を受ける学生

 跡見学園女子大学(東京都文京区)で観光を学ぶ学生30人が6月19日、道の駅と大学の連携事業の一環として、連携道の駅「もてぎ」(栃木県茂木町、全国モデル道の駅)の販売所や地域産品の生産・加工現場の視察を行った。

 古口達也茂木町長兼もてぎプラザ社長(道の駅もてぎ駅長)は「多様な要望に応えられる道の駅にならないと、1059もの道の駅があるなかで生き残れない。まさに若い人の柔軟な考えが必要になっている。また、大学卒業者が『ここで一生働きたい』と思える道の駅にしたい」と期待を語り、視察団を歓迎した。

 視察団は道の駅施設を見学し、6次産業化により誕生した加工品や地場産品について説明を受けたあと、学校跡地に建てられた食品加工場や東日本大震災からの復興として生産が始まった菌床シイタケ栽培所など生産現場などを回った。

 視察後の町の職員との意見交換会では、観光マネジメント学科3年の村上史香さんが「今後も現状をしっかり捉えたうえで若者の力で活性化プランを考えていきたい」と意気込みを語った。同3年の平井莉子さんは「今回の視察会をヒントに、人を呼び込む仕組みや着地型観光の企画、女子大生目線のパッケージデザインなどを考案していきたい」と語った。

宿泊販売4千億円達成、福田氏が会長再任(JTB旅ホ連)

福田朋英会長
福田朋英会長

 JTB協定旅館ホテル連盟(福田朋英会長、3888会員)は6月10日、石川県金沢市内のホテルで2015年度通常総会を開いた。14年度は宿泊販売目標4千億円を達成し、今年度は4200億円の新目標を設定した。任期満了にともなう役員改選では福田氏が再任した。

 福田会長は今年度の連盟の動きについて「宿泊増売と質の向上に加えて、地域のことを考えて地域振興と観光振興を重要なテーマとする」と述べた。これまでの「宿泊増売」「人財育成」「組織強化」に「地域振興・観光振興」を加えた4本柱で事業を推進する。

 「宿泊増売」については、14年度宿泊販売実績が前年度比5・2%増の4053億円で、15年度目標は同3・6%増の4200億円。「地域振興・観光振興」では、JTBが各地で進めている地域交流事業に協力し、観光誘致につながる事業に取り組む。「人財育成」面では、次世代経営層の育成に重点を置き、セミナーの充実を目指す。「組織強化」は、本部・連合会・支部で各種事業や会議の見直しを行い、実効性のある事業を推進する。