「過度な規制は反発招く」、民泊新法の成立急ぐ(田村長官)

田村明比古長官

 田村明比古観光庁長官は3月15日に行った会見で、3月10日に閣議決定された「住宅宿泊事業法案」(民泊新法)について、「いざという時の治安への対応などから、法案の用意を進めてきた。健全な民泊サービスが提供されるためにも、速やかに法案を成立し、施行しなければならない」とコメントした。

 同法案の検討時、仲介事業者などから、民泊サービスの提供について「シェアリングエコノミーの観点から、借りたい人と貸したい人をマッチングしているだけ」という意見が出されたという。

 このことに対し田村長官は、「シェアリングエコノミーを普及させたいという意見を鑑みると、あまりにも過度な規制をし過ぎると、反発などの支障が生じる恐れがある」との見解を示した。

 なお、現段階では法案の成立日時に関しては未定である。
 
 

日本縦断の妄想

 先日、JR西日本が今年6月17日から運行開始する豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」の車両を見学した。世界的にも珍しい1両1室の「ザ・スイート」など、プレミアム感満載の車両は、鉄道愛好家でなくとも、興味をそそられるものがあった。今年はJR東日本も5月1日から豪華寝台列車「トランスイート四季島」を運行する。先行するJR九州の「ななつ星in九州」を含めると、豪華寝台列車が走る都道府県は結構な数になる。そうなってくると「いっそのこと日本を縦断する豪華寝台列車とかできないの?」と考えなくもない。

 ダイヤの問題や地域性に合わせた列車コンセプトがあることなどは重々承知。それでも、瑞風が九州を走り、ななつ星が東日本を駆ける。そんな光景をいつか見てみたいとも思う。

【塩野 俊誉】

4月、JIF設立へ、地方へ外客誘致促進

日本インバウンド連合会が4月1日に始動する

 インバウンドを通じ、官民一体で観光立国の実現を目指す日本インバウンド連合会(JIF)は3月9日、4月の設立を前に東京都内でセミナーを開いた。理事長に就任する中村好明氏(ジャパンインバウンドソリューションズ)が同連合会の使命などを語った。今後は(1)国際観光人材育成(2)インバウンドソリューション(3)マーケティング・プロモーション支援(4)官民連携――を軸に活動。47都道府県すべてに拠点を設置し、地方へのインバウンド誘致を促進していく。中村理事長は政府が掲げる2020年訪日外国人旅行者数4千万人を達成するためには「リピータ―を獲得していくことがすべてだ」と断言。「そのためにはホスピタリティ(おもてなし)を高めていくことが戦略的に必要」と訴えた。

 顧問に就任した日本観光振興協会理事長の久保成人氏は「インバウンドが地方創生の鍵を握っており、その促進は、観光全体を底上げしていくことにもなる」と語った。

睡眠環境サポートルーム、東京西川×パナソニックが提案

「日本橋西川」内に睡眠環境サポートルームを開設

 西川産業(東京西川、西川八一行社長、本社=東京都中央区日本橋)は、パナソニックと協同し、睡眠環境のトータルリフォームを提案する「睡眠環境サポートルーム」を、寝具専門店「日本橋西川」内に2月18日からオープンした。

 睡眠環境サポートルームでは、東京西川の研究機関である「睡眠科学研究所」の監修による寝具・眠りの知見と、パナソニックのトータルソリューションによって、寝具だけでなく寝室全体の上質な睡眠環境をコーディネートする。眠りの質を左右する温度・湿度、照明、音響、香りなどの室内環境を最適に制御する〝睡眠環境サポートシステム”を開発。就寝から睡眠中、起床までの間、スマートフォンの睡眠センサーアプリによって、眠る人のリズムに合わせて自動制御し、寝室を理想的な状態に調整する。

 一方、寝具は快眠寝具トータルブランド「&Free(アンドフリー)」のアイテムを展開。眠りのスペシャリストが〝パーソナル・フィッティング〟を行い、一人ひとりに合ったオーダー枕やマットレスなどの最適な高機能寝具を選ぶことができる。

 営業時間は午前10時30分―午後6時30分。

 問い合わせ=電話:0120(543)443。

市民総出のおもてなし、市民運動推進大会開く(福井市)

“つるつるいっぱい”のおもてなしで観光客を迎える

 市民総ぐるみで観光客を温かく迎える「観光おもてなし市民運動」を推進する福井市で3月5日、第3回「観光おもてなし市民運動推進大会」が開かれた。会場となった福井県国際交流会館(福井市)には、多くの市民や観光従事者などが詰めかけた。

 同運動は、2018年の福井国体開催や、北陸新幹線の福井県内延伸などを控え、今後、観光客の増加が見込まれるなか、また訪れたいと思ってもらえるようなまちづくりを進めようと、14年度から地元経済界や観光・交通事業者、市民団体などで構成する「観光おもてなし市民運動推進会議」が取り組むもの。

 16年度は、おもてなし講習会の実施などに加え、新たに同運動の牽引役となる「観光おもてなしマイスター」の育成にも着手。大会では、全46人の受講生のなかから、実技や観光知識の研修・試験に合格した17人の認定式も行われた。

 同推進会議の会長を務める東村新一福井市長は「来年は、いよいよ福井国体・障害者スポーツ大会が開催。さらに今年9月からは競技別プレ大会も開かれ、全国から多くの人が福井を訪れることになる。そうしたお客様を“つるつるいっぱい”(福井弁であふれるほどいっぱいの意)のおもてなしでお迎えすることが、本市へのさらなる誘客やリピーター増に向け重要となる。本大会が、皆さんのおもてなしへの理解を深めるきっかけになるとともに、推進運動の取り組みがさらに広がることを期待したい」とあいさつした。

西川丈次社長

 観光おもてなしマイスターには、地元の観光施設や百貨店スタッフ、ボランティアガイド、バスドライバー、さらにはJR西日本・福井駅駅員など17人が選ばれ、東村市長から認定書を授与された。

 会場では、マイスターによるおもてなし実演のほか、マイスターの講習や審査に関わった観光ビジネスコンサルタンツの西川丈次社長による基調講演も行われた。

 西川氏は講演のなかで「おもてなしは決して難しいことではない。必要なのは、恥ずかしいという気持ちを乗り越える勇気を持つこと。そして、目の前にいる相手に興味を持つこと。人間は興味を持つことで、今まで見えなかったものが見えてくる。それでもわからないときは相手に聞けばいい。間違えても構わないので、感じる力を養い、情報を得て、勇気を持って行動してほしい」と市民らに呼びかけた。

料亭文化を国内外に、100年の歴史持つ料亭集う(百年料亭)

 100年以上の歴史を持つ全国18カ所の料亭は3月7日に、新潟県上越市の料亭・宇喜世で、「百年料亭ネットワーク」を設立した。これまで料亭は日本の伝統的な料理や文化を守ってきた。一方で「一見さんお断り」に代表される敷居の高さが、料亭の認知・普及を妨げていた。東京オリンピックを前に、歴史的建造物の価値と和食・料亭文化を、改めて国内外に発信していく。

 具体的な活動内容は情報発信だけではない。築100年を超す建造物の維持・保存・継承。百年料亭を軸に互いに送客し合い、地域活性化や地方創生を目指す。すでに今年1月に長野県・松本館(同会員)に宇喜世から送客を実施。4月は長崎県・一力(同会員)への送客を予定している。

 さらに「地方の伝統・文化を守る有識者会議」「地方の伝統・文化を支援する会議」を2017年度に立ち上げる見通し。専門的な見地から建造物の維持・保存方法の提言と指導を行う。支援に対しては特別賛助・賛助会員らを募り、観光誘致や商品開発をともに進めていく考えだ。

 このほか、ネットワーク構築で相互交流や情報共有をはかり、料亭文化(芸妓・舞妓など)の継承や、個々の家風などを後生に残す側面もある。

 発起人は宇喜世の大島誠社長(百年料亭ネットワーク事務局長)。4年前に宇喜世の社長に就任したが、経営状況が思わしくなかった。そこで全国の料亭に話を聞いて回ったところ、同じ悩みの声を多く聞いたという。

 大島氏は全国各地3千カ所の和食店を調査。全国で百年料亭の基準に当てはまったのは67カ所のみ。このうち約半数以上に訪問し、同会の考えを伝えたところ、賛同する料亭も多かった。

 国土交通省に何度も通い、100年を超える料亭、建造物の保護や改修費補助などの理解を訴えた。ただ「料亭文化全般に対する国民の理解が必要」と、同会の必要性を諭された。

第1回総会のようす。足掛け2年で設立に

 同日に記者会見と第1回の総会を開催。全国10カ所の料亭が駆けつけ、足掛け2年で設立に漕ぎ着けた。大島氏は「この2年もの間に2つの百年料亭が廃業となった。今後は建造物・料亭の文化を守り、発信していきたい」と述べた。

 一方、料亭を利用することに「空間と歴史、さまざまな物語があるなかで、食事を楽しむことに価値を見出してほしい」と想いを語った。

 青森県・富士見館(同会員)の大舘むつ子女将は「100年の歴史を持つ料亭は少ない。悩みを共有でき、いい励みになる」と設立を喜んだ。

 今後もインバウンド増加、地方への流入が見込まれる。日本の新たな文化価値訴求、新たな受け皿として、同会の役割に期待がかかる。
【平綿 裕一】

「百年料亭ネットワーク」設立。発起人は大島誠氏(前列左から3番目)

旅行会社の強み活かす、良質な商品造成を(ジャルパック)

試飲などが楽しめる高砂酒造工場
高砂酒造杜氏の森本良久氏

 ジャルパックでは、北海道と沖縄に仕入センターを設け、地域と協力しながら、魅力的な商品造成に力を入れている。今回、国内企画商品第1事業部北海道グループの中川明子グループ長と、企画を担当した益子沙織アシスタントマネージャーに話を聞いた。工夫を施した丁寧な企画やパンフレット制作、旅行会社ならではの、質の高い商品が生まれる背景を知ることができた。同社プランナーへのインタビューはこれで3回目。
【謝 谷楓】

 ――オススメコース「北海道銘酒を学び味わう旅」について。

益子沙織アシスタント
マネージャー

益子:銘酒をテーマにした、新しいコースです。食や自然というイメージが強いなか、日本酒とウィスキーに着目することで、さらに一歩踏み込んだ北海道を紹介したいと考えました。ご年配の夫婦だけでなく、日本酒に興味を持つ大人の女性も視野に、ターゲティングを行いました。

 高砂酒造工場と、ニッカウヰスキー北海道余市蒸留所工場で試飲ができるほか、蔵元限定酒のプレゼントといった特典も用意しています。

中川:携わった益子は現地を訪れたうえで、造成に着手しています。

 視察を通じ、見せたいモノや見せるタイミング、食事を取る時間帯にも配慮しています。テーマに関連したホテルでの特典や、旅行が終わった後でも楽しめる吹きガラス体験(グラス作り)など、丁寧でこだわりのある企画です。銘酒というテーマを存分に楽しめる物語性だけでなく、試飲などを考慮し、旅行中の移動手段にも選択肢を設けました。旅行会社ならではの商品となりました。

中川明子グループ長

 ――バランスの良い商品のようです。仕入センターが、2014年にできましたが。

益子:現地の施設各社への提案は、東京にいる私たちが行います。一方、例えば工場見学の時間枠の交渉は、仕入センターが担います。

中川:しっかりと役割分担ができています。

 また、仕入センターの設置により、施設各社とジャルパック、双方にとって相談しやすい環境が生まれました。コミュニケーションを道内に居ながらできるため、施設の方にとっても時間や費用の短縮につながっていると思います。

 ――ジャルパックでの商品造成について。

中川:オンライン旅行会社(OTA)のシェアが高くなってきている昨今、企画に携わる私たちとしては、ユーザーの需要を把握することが大切だと考えています。それを踏まえたうえで、ジャルパックができることは何かを考え、自治体や観光協会、地域の施設各社と連携しています。

 例えば、まだ知られていない温泉地や、個人では体験が難しいアクティビティの提案・商品化というように、旅行会社の強みを活かし、地域の良さを伝えたいと考えています。

 企画会議では、グループメンバー一人ひとりが積極的に発言をしています。ユーザーに見せたいモノや体験させたいコトを考え、年齢層や性別といったターゲットの選定も行います。

 パンフレットのほか、Web商品の造成も行っていますので、商品の性質やターゲットに最適な媒体選びにも気を使っています。

 集客や、自社のダイナミックパッケージ商品とのバランスを配慮したうえで、ジャルパックならではの良質な商品造成を続けています。

 ――パンフレットで工夫している部分は。

益子:パンフレットでは、写真のインパクトをとても大切にしています。商品購入のキッカケとなるため、丁寧な選定を心がけています。直接現地に赴き、撮影を行うときもあります。同一施設でも、他社パンフレットと比べて見栄えするような写真を載せるなど、差別化ができるよう工夫しています。

中川:現地視察では、ユーザーに伝えたい見どころや、オススメの味わい方を意識して行動しています。写真へのこだわりもその一環です。

益子:被写体の立ち位置を指定することもあります。

 施設の方には手間をかけてしまいますが、パンフレットを通じ現地の雰囲気を知ってほしいと考えています。

 秋から冬にかけ、下期のパンフレットには2次元バーコードを載せています。冬の北海道はイベントが多いため、動画などを通じ、臨場感を伝える工夫もしています。

 ――オススメの商品を教えてください。

益子:ジャルパックなら、道内間の飛行機にも乗ることができます。オリジナルの旅を楽しめる商品“旅スケッチ”を利用すれば、利尻島や奥尻島といった地元の方でも訪れる機会の少ない地域に、スムーズにアクセスできます。

 北海道は広いため、移動時間短縮でもぜひ、飛行機を活用してほしいと思います。

 ――ありがとうございました。

16年大賞は日本旅行、今年から2つの賞を新設(鉄旅オブザイヤー)

第6回受賞者・関係者ら

 「第6回鉄旅オブザイヤー2016」の表彰式が1月25日、鉄道博物館(埼玉県大宮市)で行われ、過去最多の106作品の応募の中から、グランプリには日本旅行の「赤い風船 観光列車『ながまれ海峡号』に乗ろう」が選ばれた。今年から「DC(デスティネーションキャンペーン)賞」と「ベストアマチュア賞」が新設された。DC賞は、同年のDC開催地を含むツアーに贈られる。

 鉄旅オブザイヤー実行委員会委員長の戸川和良氏(KNT―CTホールディングス社長)は「鉄道旅がますます重要になってきていると実感している」と強調。今年も多彩な観光列車がデビューすることに触れ、「旅行会社としては、いち早く旅行商品に仕上げて全国に広めていきたい」と語った。

 日本旅行は、新幹線開業を契機とした道南エリアのさらなる活性化を目的に、「ながまれ号」を総合プロデュース。旅行会社が企画、販売、車内サービス提供を手がけた非常に珍しい試みだ。道南いさりび鉄道や道南いさりび鉄道応援隊と連携しツアーを造成。同応援隊は、函館市と北斗市、木古内町の沿線自治体有志メンバーで構成され、地域資源の活用や、観光客のもてなしなどの活動を担っている。

 車内では函館市のスイーツを活かした「海鮮スイーツ丼」や、木古内町の地元食材をふんだんに使った創作イタリアンが楽しめるほか、茂辺地駅(北斗市)ではホーム上で海鮮バーベキュー体験も用意。

 同社経営管理部新規事業室鉄道プロジェクトの瀬端浩之マネージャーは「この賞の受賞が、これからの沿線の活力につながっていくと確信している」とコメントした。

 13通の応募のなかから「ベストアマチュア賞」を受賞したのは、会社員の谷正博氏が企画した「寝台特急サンライズ瀬戸&四国まんなか千年物語号で行く四国横断鉄道の旅」。

 香川―徳島―高知間を鉄道で横断しながら、各地の歴史やグルメ、自然が堪能できるツアーだ。「四国まんなか千年物語」の始発駅がある多度津町の出身だったことから、同列車をツアーに組み込んだ。プライベートでも列車旅を楽しむ同氏は「企画できないことが起こるのが旅の魅力」と語った。

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 準グランプリ以下の受賞は以下の通り。

 【準グランプリ】 長崎・雲仙仁田峠ミヤマキリシマと「幸せの黄色い王国」福袋付きカーネーション列車と島原半島7大ご当地グルメ食べ比べ(読売旅行)

 【ルーキー賞】 日本海絶景トレイン「きらきらうえつ号」に乗る 月山・鳥海山3つの絶景遊覧3日間(阪急交通社)

 【DC賞】「プレミアムステージ」中国鉄道コンチェルト〈第1楽章〉~瀬戸内観光列車旅の章~3日間(クラブツーリズム)

 【審査委員特別賞】 貸切新幹線で行く 元気に!九州 鹿児島(西鉄旅行)

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瀬端浩之氏(左)と永山茂氏

グランプリの日本旅行担当者に聞く、二人三脚で新たな価値を創造

 第6回鉄旅オブザイヤー2016」でグランプリに輝いた日本旅行の「赤い風船 観光列車『ながまれ海峡号』に乗ろう」。旅行会社が総合プロデュースを行う「観光列車」の企画意図や、今後どのような可能性を秘めているのかを、同社経営管理部新規事業室鉄道プロジェクトの瀬端浩之マネージャーと日本旅行北海道の永山茂地方創生推進室長に伺った。
【後藤 文昭】

 ――旅行会社が観光列車をプロデュースしようと考えたきっかけは。

 「道南を訪れるお客様に観光列車を楽しんでもらえないか」。この考えが企画をスタートしたきっかけです。道南いさりび鉄道側も観光列車用として新しい塗装を施した「ながまれ号」2両を準備していました。しかし、開業準備が忙しく、観光列車として走らせる作業は手付かずの状況でした。そこで、我われがプロデュースを行うことになりました。

 ――商品化に向けて意識されたことは。

 観光列車として使用した「ながまれ海峡号」には、もともと地域情報発信列車としての役割があるので、沿線3市町の魅力をしっかりと盛り込んでいくことが重要でした。とくに食事については、それぞれの市町の住民の皆さんの自慢の一品、産物を提供しました。漁協関係者など観光に不慣れな方々の協力が得られたことや、観光列車の内装や企画などを手作りしたことで魅力が増しました。

 ――今回の大賞受賞は、今後どういう意義を持ちますか。

 面白い取り組みに踏み出したいが、「集客や満足度の高いサービス、お客様を楽しませるための演出の方法がわからない」と悩み、その先に踏み出せないでいる地方のローカル鉄道会社が多くあると思います。我われは、地方のローカル鉄道会社の皆さんと協同、協力し、「その地域ならではの観光列車」の全国展開ができると考えています。

 ――旅行会社が鉄道会社に提供できることは。

 観光客は、旅先でそれぞれに求めているものがある。そのニーズに応え、またお客様の反応を見極めて次に活かせるノウハウを、旅行会社は長い経験から持っています。

 日本旅行鉄道プロジェクトチームにご連絡いただければ、全国どこでもすぐに駆けつけて、一緒に企画を立案します。

 ――地方鉄道の魅力は。

 「地域の良いところを取り込め、その地域の食や文化など多面的な観光が楽しめる」ところが地方鉄道ならではの魅力です。今回は、道南という海鮮素材が素晴らしい場所ということで海鮮バーベキューを企画しました。地域によっては、例えば山の幸を活かした企画も立てられます。

 豪華な観光列車も観光資源としては必要ですが、どこでもできるわけではありません。しかし、資金面で難しいからと言ってあきらめる必要はないと思います。大きな金額は出せなくても、知恵は出せるはず。鉄道車両だけでなく、駅舎など活用できるものが多いのが“鉄道の魅力”です。その地域の魅力は何か、どうすればお客様が満足してくれるかを考えれば、素敵な観光列車を走らせることができると思います。

 今回の受賞は「知恵を出すことで、新しい展開が可能になる」と、全国でさまざまな取り組みをしている事業者に、夢を与えられたのではないでしょうか。これからはローカル鉄道と旅行会社が二人三脚で動くことで、新しい価値を生み出すことが必要です。

 ――ありがとうございました。

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ながまれ号と津軽海峡(道南いさりび鉄道提供)

 道南いさりび鉄道(小上一郎社長、北海道函館市)は、北海道新幹線開業と同じ2016年3月26日に開業した第3セクターの鉄道会社。北海道旅客鉄道から江差線の経営を引き継ぎ、木古内―函館(五稜郭―函館はJR線に乗り入れ)を運行している。

 同社は北海道の補助事業を活用し、地域情報発信列車「ながまれ号」を開業当初から運行。潜在的な観光需要を掘り起こし、新幹線の開業効果を高めている。

「ふるさとオンリーワンのまち」第8号認定、安曇野の“地域づくり”(NPO法人ふるさとオンリーワンのまち)

安曇野市の宮澤宗弘市長(右)と津田令子理事長

 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は2011年の発足以来、独特の風土や伝統文化、産物、無形のおもてなしなどユニークな観光資源を、「ふるさとオンリーワンのまち」と認定している。3月8日には、長野県安曇野市(宮澤宗弘市長)を訪れ、同市の「地域ブランドを活かした人づくり、モノづくり、まちづくり~新たな取り組み『朝が好きになる街 安曇野』の展開~」を第8号として認定。津田理事長が宮澤市長に認定書を授与した。

 安曇野市は長野県の中部に位置し、雄大な北アルプスの麓に田園風景が広がる。清冽な湧水と緑豊かな自然のなかで電子部品や精密機械などさまざまな産業も立地しており、「田園産業都市」を目指している。人口は約10万人。川端康成や井上靖、東山魁夷など多くの文人墨客に愛された地としても知られる。

北アルプスの麓に広がる美しい田園風景

 宮澤市長は「ふるさとオンリーワンのまちの認定をいただき、心から感謝している」と謝意を述べ、「これを機にさらに安曇野市の魅力を、全国、そして全世界に発信していきたい。多くの皆さんに訪れていただき、できれば定住につなげていきたい」と語った。

 同市は商工観光部観光交流促進課に「ブランド推進担当」を設置している。ワサビやリンゴ、ニンジンなど地域の特産品をスイーツにしたり、日本観光ポスターコンクールでは「朝が好きになる街 安曇野」が入賞するなど、あらゆる面で、安曇野市のブランド化に取り組んでいる。

 宮澤市長は「地域の皆さんに安曇野の良さを知ってもらうことが一番大切だと思っている」と語り、田園風景や清冽な水、きれいな空気、人の温かさ、地元市民や旅人も愛する安曇野の朝の魅力も紹介した。「15年からスタートした信州安曇野ハーフマラソンも定着している。昨年は拾ヶ堰が世界かんがい施設遺産に登録された。自転車で安曇野を満喫できる仕掛けも今後取り組んでいきたい」と力強く語った。

 津田理事長は「 “ここにしかないもの”に多くの地元の人が気づいていない。その魅力を発掘し、発信していくために私たちはNPO法人を作った」と説明。「安曇野に住んだり、訪れたりしなければ安曇野の朝の素晴らしさは分からない。安曇野にしかないオンリーワンの魅力をあらゆるメディアを通して発信していく」と強調した。また、「今秋にも、東京でふるさとオンリーワンのまちサミットの開催を計画している」と参加を呼び掛けた。津田理事長は、「飯島町(長野県)や御前崎市(静岡県)、嬬恋村(群馬県)など、これまでに認定された地域が実施するイベントなどで、お互いに特産品をPRし、販売し合う取り組みも進んでいる」と紹介。「認定された地域が相互にウイン―ウインの関係になれるネットワークを広げていきたい」と語った。

 認定式終了後NPOのメンバーらは、安曇野市を代表するわさび田の「大王わさび農場」や、市内に500体を超える道祖神、安曇野が生んだ夭逝の彫刻家、荻原守衛(碌山)の作品を展示する「碌山美術館」、穂高神社などを視察した。

大王わさび農場
道祖神も安曇野の風景

No.456 ITベンチャーの実力と可能性、“手話”と“スキャン”、2社に注目

ITベンチャーの実力と可能性
“手話”と“スキャン”、2社に注目

 需要と供給のマッチングで威力を発揮するインターネット業界。専門性の高いサービスを展開するITベンチャー企業も少なくない。新たなサービスと需要の創出はいかに果たされるのか。“手話”と“スキャン”を切り口に事業展開するシュアールとPayke、2社を訪ねた。企業と自治体、国内とインバウンド、ソリューション提供の対象は広く、組織や個人、国も問わない。両社代表ともに、「よそ者、若者、ばか者だからこそ、冒険的な試み(ベンチャー)ができる」と力を込めたのが印象的だった。

【謝 谷楓】

 
 

古田奎輔氏

Payke 古田奎輔代表

 ――スマートフォン端末用アプリで、製品のバーコード(JANコード、Japan article number code)を読み取る。それだけで、製品情報が多言語で表示される。とても分かりやすい機能です。まずは、製品情報の入手方法を教えてください。

 方法は、2通りです。メーカーに直接登録してもらう場合と、プログラムが自動的にWeb上にあるデータを収集する(クローリング)場合があります。

 メーカーは専用の管理画面を通じ、情報を登録します。有料プランなら、動画のアップロードも可能です。広告の出稿や、ネイティブスピーカーによる翻訳、関連データの獲得もできます。

 ――詳しく教えてください。

 我われのサービスを通じ、“いつ”“どこ”でバーコードがスキャンされたのかを知ることができます。年齢や性別、国籍といった属性も知れます。

 また、“風邪薬”というように、製品を限定し、関連データを集めることもできます。特定の製品に興味を持った人の集合データを確認できるのです。

 “どこ”でどの製品をスキャンしたのか、特定の端末を追跡することも可能です。製品にまつわる動態データ(人の流れ)も併せて取得できるため、興味を示す属性とエリアの把握にも役立ちます。…

大木洵人氏

シュアール 大木洵人代表

 ――サービスについて教えてください。

 遠隔手話通訳サービス“モバイルサイン”を提供しています。

 通訳士が、音声言語と手話をそれぞれ翻訳し、スマートフォンやタブレットといった携帯端末を通じ、利用者と企業・自治体をつなぎます。端末のディスプレイとカメラを用いることで、音声言語から訳された手話を確認するとともに、利用者は考えを手話で表現することができます。

 タイプは2つ、対面型とコールセンター型があります。

 対面型では、企業・自治体が受付窓口に端末を設置し、手話通訳を必要とするユーザーの来訪に備えます。駅や役所での問い合わせや、ホテルでルームサービスを希望するときに活用されています。

 コールセンター型は、ユーザー自身の端末を利用します。例えば、チェックイン時間の変更といった宿泊施設への電話連絡で利用されています。

 手話通訳士と情報通信技術(ICT)を駆使し、音声言語と手話、双方の話者をつないでいるのです。…

 

※ 詳細は本紙1664号または3月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。