No.395 石川県・加賀市座談会、北陸新幹線金沢開業に向けて

石川県・加賀市座談会
北陸新幹線金沢開業に向けて

 3月14日の北陸新幹線金沢開業を目前に控え、石川県加賀市は観光客拡大に向け、「加賀ていねい」をキーワードにさまざまな取り組みをスタートさせた。首都圏へのトップセールスを積極的に展開する宮元陸市長をはじめ、山代温泉観光協会の萬谷正幸会長、山中温泉観光協会の上口昌徳会長、片山津温泉観光協会の鹿野祐司会長の4氏が出席して座談会を開き、加賀市への誘客の課題と今後の取り組みを熱く語り合った。

【司会進行=旅行新聞新社社長・石井 貞德、構成=増田 剛】

 
 
 

「加賀ていねい」首都圏に発信

 ――まもなく北陸新幹線金沢開業を迎えますが、加賀市の取り組みを教えてください。

 ■宮元:昨年、加賀市は1年かけて観光戦略プランを策定し、観光入込客数の具体的な目標数値も掲げました。観光戦略プランに基づいて首都圏ではすでに宣伝活動を始めていますが、現状の加賀市の観光入込客数約178万人から3年以内に20%の増客、つまり36万人増の214万人をできるだけ早期に達成し、観光消費額も現状の383億円から77億円増の460億円に向けて、さまざまな政策を今年に入って実行に移しています。

 市内の山代、山中、片山津の3温泉の入込客を地域別にみると、地元・北陸3県が最も多く33%。次いで関西圏が28%、中京圏が16%となっていますが、首都圏は大きな市場でありながら、1割にも満たない7%と非常にもの足りない状況となっています。

 加賀温泉郷はこれまで主に関西の奥座敷という位置付けで、関西圏のお客様によって栄えてきたこともあり、首都圏での認知度はあまり高くないと言われてきました。しかし、北陸新幹線が3月14日に金沢まで伸びて来ることになり、首都圏における認知度向上は必要不可欠になっています。このようななかで、どのように加賀市の素晴らしさを知っていただくかが今後の大きな課題でもあります。そこで北陸新幹線金沢開業を契機に、首都圏でのプロモーションを強化し、2014年の首都圏からの観光客数13万人を、15年は30万人まで拡大する目標を掲げています。…

 

※ 詳細は本紙1578号または3月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

訪日外国人旅行者が急増 ― 受け入れる宿の方針を考える時期

 訪日外国人観光客の勢いが止まらない。昨年、1341万人と史上最高値を記録したかと思えば、日本政府観光局が発表した15年1月の推計値は、前年同月比29・1%増の121万8400人。しかも、昨年は中華系の旧正月の休暇が1月下旬からだったのに対し、今年は2月中旬から下旬であるにも関わらず、約3割増とは驚異的な数値だ。韓国は同40・1%増、中国は同45・4%増と、両国が牽引している。

 とりわけ、中国人観光客の“爆買い”が注目を浴び、百貨店などの売上も好調という。14年の日経MJヒット商品番付で「インバウンド消費」が東の横綱にランクされるなど、経済界全体が訪日外国人観光客の消費動向に目を光らせている。

 訪日外国人客を迎え入れる旅館・ホテルにも少なからず影響が出ているようだ。多くのエリアで外国人宿泊客が飛躍的に伸びているという話を耳にする。そして、最近、新たな流れとなって脚光を浴びているのが、海外の富裕層をターゲットとした1泊2食5万円以上の高級旅館や客室だ。

 外国人団体客が一挙に旅館に押し寄せる格安ツアーは、「忙しいばかりで利益はあまり出ない」が、富裕層の個人客の場合、旅館にとっては歓迎すべき客なのだろう。しかし、一方で「外国人観光客で満館になり、日本人がまったく入らない宿になってしまう」ことへの戸惑いを感じているご主人もいる。

 外国人観光客は、世界情勢や社会的な影響を大きく受けやすい。東日本大震災や原発事故のあと、訪日外国人観光客数は大きく減少した。また、近隣諸国と政治的な問題が発生した場合にも、人的交流に冷や水を浴びせ合う傾向が強まる。さらに、紛争、テロ、パンデミック、為替変動にも敏感に反応する。

 これに似た構図として、遠方から旅行者が宿泊する旅館が、災害や風評被害によって旅行者が訪れなくなったとき、「頼りになるのが地元の客だ」という話だ。

 急増する訪日外国人客と、最大市場である日本人の国内旅行の客との受け入れの重点をどのように配分いくか、宿の方針を考える時期でもある。

 前号で、東京・谷中の澤の屋旅館がまとめた「訪日外国人宿泊客調査」を取り上げた。同館のホームページにも掲載されているので、今後訪日外国人の宿泊客を受け入れようとする宿や、自治体、旅行会社の関係者にも参考になる部分がたくさんあるはずだ。館主の澤功さんは「外国人旅行者を受け入れようとされる宿など、少しでも多くの方にこの調査が参考になればうれしい」と話す。

 澤の屋旅館には、多くの外国人が宿泊する。これだけなら他にも同じような旅館やホテルはあるだろう。しかし、東日本大震災の後、多くの旅館が、外国人観光客が減少して苦しむなか、澤の屋旅館では世界中のリピーターが戻ってきて、驚くような早さで、震災前の稼働率に近づいていった。

 観光産業として世界中の外国人観光客に目を向け、迎え入れる姿勢は素晴らしい。しかし、外国人旅行者を一人の人間として深く付き合っていく覚悟があるだろうか。単に「インバウンド流行り」だからといって、何も考えず安易に流れに棹を差し移ろっていくのなら、旅館はかつて来た道を繰り返すかもしれない。

(編集長・増田 剛)

旅行業が輝く未来へ、“観光大国向け安定経営を ”(JATA・経営セミナー)

田川博己会長
田川博己会長

 日本旅行業協会(JATA)は2月18日、東京都内で「旅行業が輝く未来へ―これからの旅行業経営を考える―」をメインテーマに「経営フォーラム2015」を開き、会員108社・276人が参加した。田川博己会長は「観光大国への発展には旅行産業の安定した経営が必要不可欠。今回は、原点に返ったプログラムとした」と述べた。

 田川会長は昨年、訪日外国人観光客が1341万人を記録したことに触れ「海外旅行2千万人、訪日2千万人の双方向交流4千万人時代へのカウントダウンが始まった」と語った。一方、海外旅行者数は減少傾向で、イスラム国の動きなどさまざまな世界情勢もあるなか、「リスクを十分理解したうえでのツアー催行をすると同時に、旅行会社のネットワークを駆使し、正確な情報を発信して風評被害の拡大を防ぐことも旅行会社の使命ではないか」と述べた。

 全体プログラムの基調講演は、経済同友会代表幹事で武田薬品工業代表取締役会長兼CEOの長谷川閑史氏が「持続的経済成長に向けた日本の課題」をテーマに、日本再生に必要な取り組みなどを語った。

長谷川閑史氏
長谷川閑史氏

 長谷川氏は「日本は課題先進国ともいわれ、国の岐路に立っている。ここ数年の対応が将来を左右するギリギリのターニングポイント」と指摘。日本再生に必要な取り組みは「何といっても経済成長」と述べた。経済成長に必要なことは労働力の増加と資本の投下、生産性の向上を列挙。資本の投下については「海外からの投資、対内直接投資がGDPに占める割合が指標になるが、日本は4%と極めて低い。先進国の平均は30%」と増加の余地を示した。

 また、環境変化がますます加速するなか、企業にも国にも強力なリーダーシップが必要と言及。「この時代に何もしないことは最大の罪。リーダーたるもの現実を冷静に見つめ、不都合な真実から目を逸らさず将来を予測すること。組織が生き残り繁栄するため、今できる改革を、いかに痛みをともなおうとも実行する覚悟と勇気が必要だ」と強調した。

 基調講演後は5つのテーマでセミナーを開いたほか、宇宙飛行士・山崎直子氏による特別講演を行った。

もう一度、北陸へ

 北陸新幹線が金沢まで開業する。メディアの露出も著しい。その影響か、友人は開業前の金沢へ旅行しているようすをSNSでアップしていた。

 この仕事をするまで、あまり北陸という土地を意識することはなかった。若かったこともあるが、正直、旅行先の選択肢には入らなかった。しかし、考えてみると、仕事も含めて3県にはすべて行ったことがあると気付いた。

 個人的に福井、石川に出掛けたのは22歳のとき。家族旅行だった。当時、私は人生の岐路に立っていた。築き上げてきたものがすべて壊れ、今後どう生きていいかさえよく分からなかった。それを見かねた両親が妹も誘って、車で連れていってくれたのだ。

 皮肉にも、当時と同じような心境の今、新幹線が開業する。地元の高崎からも直結する。もう一度、家族で北陸特有のゆったりとした時間と空間に癒されに出掛けたい。

【飯塚 小牧】

事業者名など明示を、サイト表示について討議(第2回OTAガイドライン委)

 観光庁は2月23日、海外のオンライン旅行会社(OTA)に提示していくためのガイドラインについて検討を行うOTAガイドライン策定検討委員会の第2回を東京都内で開いた。インターネットサイト上での事業者表示の明確化をはじめとしたオンライン取引上で必要とされる表示方法について、専門家や国内OTA事業者などで形成する策定委員が討議した。

 まず、消費者が予約サイトを見てから完了するまでのステップを時系列で分け、(1)トップ画面(2)予約画面(3)予約確認画面(4)予約完了の確認メール――のそれぞれの画面で必要と思われる表示を話し合った。海外OTAは日本の旅行業法が適応されないため、(1)トップ画面の段階で事業者名を明示し、所在を明らかにする必用性を指摘する意見や言語の対応や連絡先の明示が必要であるという意見が挙がった。(2)予約画面では、準拠法の関係から旅行契約先がどこにあるのか明示することを要求した。

 観光庁観光産業課の石原大課長は「ガイドラインに権限があるわけではないが、日本法人のある海外OTAとも話し合い、協力を要請していく」と述べた。今後はガイドラインを受け入れる海外OTAを観光庁ホームページに掲示し、消費者の目安にするなどの取り組みも検討するとした。

 今後はガイドラインの周知についての話し合いも進める。次回で最終回となり、3月下旬を予定。その後は協議の結果をまとめ、最終的なガイドラインを発表する。

広島春牡蠣フェスタ2015

 新宿の大久保公園で、2月21日から4月5日まで「広島春牡蠣フェスタ2015」が開催されている。

 オープン初日に先立ち、マスコミ向けの内覧・試食会に参加してきた。公園内に「広島かき小屋」が設置され、BBQスタイルで春カキが楽しめる。総席数は268席。

 昨年に引き続き、2回目の実施。前回の反省点が随所に生かされていた。昨年は4人掛けのテーブル席のみだったが、グループ向けのテーブル席と1、2人で利用するカウンター席が新設された。ドリンク類は缶ビールだけでなく、希望が多かった生ビール等も飲めるようになった。

 一番人気メニューは「広島殻つき春カキ」だ。濃厚でクリーミーかつアツアツの新鮮な春カキを、都内でたらふく食べられるのだから至福というほかない。

【古沢 克昌】

特別委員会を設置、障害者差別解消法へ対応(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は2月20日に開いた理事会で、「障害者差別解消法特別委員会」の設置を決めた。来年4月1日から施行される「障害者差別解消法」に向け、国土交通省が検討している今夏策定予定の指針への対応が目的。各委員会横断の特別委員会で、委員長は法制委員会委員長の原優二氏。委員については弁護士や法制委員会、バリアフリー部会などを対象に検討し、決定する。

 同法は2013年に成立したもので、障がい者も健常者も平等の社会的チャンス、待遇を得られる社会づくりを定めるもの。来年の施行に向け、現在各省庁ではガイドラインの策定が進められている。

宿泊券1100億円へ再挑戦、創立60周年記念総会開く(近旅連)

西野目信雄会長
西野目信雄会長

 近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟(西野目信雄会長、2530会員)は2月19日、東京都内で創立60周年記念総会を開いた。2年に一度の役員改選では、西野目会長が再選を果たし、年間目標の宿泊券販売1100億円への再挑戦を誓った。

 「60年間ともにウイン―ウインの関係で支え合ってきた。年間目標の宿泊券1100億円に惜しくも届かなかったが、お互い責任を持って今年クリアしたい。旅行会社や旅連のかたちは変化していくが、これまで続いてきた関係は変わらない。1100億円の再チャレンジはマストで、優に、超えていこう」と西野目会長は強調した。

 KNT―CTホールディングスの戸川和良社長は、グループ連携の柱となる事業を(1)スポーツ関連事業(2)訪日事業(3)地方誘客交流ビジネス事業――と定め、「これからは総合旅行会社として、地域そのものを売ることが求められているが、旅行会社単体ではできない。関連団体の総合力を最大限に活かせる体制作りを進める」と述べた。

 近畿日本ツーリストの小川亘社長は「今年は教育団体の先行契約が厳しいが、春高バレーなど修学旅行外の契約を拡大させている。一般団体は大型案件の契約時期である9カ月前の予約を進めており、件数も増加している。価格競争から離れ、お客様を維持し、長期契約を進めることで会社の利益構造を変えたい」と語った。昨年の団体部門の宿泊券販売状況は、国内一般が前年比1・9%減、国内修学旅行が同2・8%増(修旅外の学生団体を含めると同8・9%増)、団体全体で1・6%増だった。

戸川和良社長
戸川和良社長

 近畿日本ツーリスト個人旅行の岡本邦夫社長は、「今年は外交問題や円安の影響で海外旅行に逆風が見込まれ、これをカバーするためにも北陸新幹線金沢開業や高野山開創1200年などイベントが豊富にある国内に力を入れたい」と述べた。注力事項としてインターネット宿泊予約サイト「e宿」と企画担当者がおすすめする「セット型販売」を挙げた。

 総会後、オリンピックメダリストで参議院議員の橋本聖子氏がオリンピックをテーマに講演を行った。橋本氏は自身のオリンピック出場経験からスポーツ分野や健康分野と連携した観光の推進を呼びかけた。
 
 
 
 

日旅110周年で事業協力、小林会長が再任(日旅連)

小林喜平太会長があいさつ
小林喜平太会長があいさつ

 日本旅行協定旅館ホテル連盟(小林喜平太会長、2095会員)は2月18日、東京都内のホテルで2015年度通常総会を開き、任期満了にともなう役員改選では、小林会長の再任を決めた。日旅の中期経営計画とリンクさせ、法人・個人旅行営業の各部門と連携した取り組みを基本に宿泊販売の拡大を目指す。

 小林会長は「日本旅行の中期経営計画『アクティブ2016』の効果で順調に推移している。また、今年は日旅110周年の記念の年であり、旅連としては可能な限り協力し、さまざまな事業を展開していきたい」と語った。さらに、「外国人観光客も飛躍的に伸びており、おもてなしのサービス向上をはかる必要がある」と述べた。

 今年度は、第7回日旅連塾、日旅連ワークショップの開催に加え、6月26―28日に日旅と台湾観光協会が台湾・台北駅で開く「日本の観光・物産博2015」への参加、顧客紹介運動の推進、日本旅行創業110周年への各地域における事業への協力などに取り組む。

西川丈次氏が講演
西川丈次氏が講演

 総会後の記念講演では、本紙でコラム「もてなし上手」を連載する観光ビジネスコンサルタンツ社長の西川丈次氏が「偶然の出逢いを、必然のリピートに」をテーマに講演した。

6年ぶりに4千億円台、日本旅行・丸尾和明社長

 日旅連の総会に、日本旅行の丸尾和明社長が来賓として出席し、前年の業績や、今後の展望について語った。主な内容は以下の通り。

 

丸尾和明社長
丸尾和明社長

 今年は日本旅行創業110周年で記念の年。今年は“ハッピー返し”というスローガンで、感謝の気持ちを持ってさまざまな事業を展開していく。

 14年の全体の販売高は前年比5%増の約4160億円と、6年ぶりに4千億円の大台に乗った。前年から210億円伸びたが、このうち国内旅行が120億円、外国人旅行が65億円、海外旅行が25億円。

 国内旅行は団体が6%増、赤い風船が5%増、個札が2%増で、国内全体では5%増。一方、海外旅行は業務渡航が伸び、全体で2%増。外国人旅行は躍進し45%増となった。

 中期経営計画「アクティブ2016」の中核分野を見ると、教育旅行は4%増、MICEは3%増、BTMは7%増、インターネット販売は16%増と着実に伸びており、これら分野に人材を投入し、さらに拡大していきたい。

 15年はターゲット層を拡げる。赤い風船は昨年過去最高だったが、今年は女性、熟年、シニア層を牽引役としてさらなる更新を目指す。インバウンドは個人、団体とも増やしていく。東南アジアにも駐在員を派遣しており、現在、外国人旅行は、現在全体の売上の5%程度だが海外旅行と並ぶくらい成長させたい。

 国内旅行を活性化することが基本となる道筋だと考えている。しかし、地域によっては仕入が足りない状況も出ており、仕入強化にも取り組んでいく。 

ジャルパック新社長に藤田氏

藤田 克己氏
藤田 克己氏

 ジャルパックは2月18日に開いた臨時取締役会で、4月1日付で日本航空(JAL)北海道地区支配人兼ジャルセールス北海道支社長の藤田克己氏の新社長就任人事を決定した。現社長の二宮秀生氏は3月31日で退任し、JAL執行役員・旅行販売統括本部副本部長・国際旅客販売本部長・Web販売本部長、東日本地区支配人に就任する予定。

 藤田 克己氏(ふじた・かつみ)。1958年生まれ。1981年にJAL入社。2006年日本航空ジャパン国内営業部長、07年日本航空インターナショナル運航企画室付部長、08年同社シドニー支店長などを歴任し、10年から現職。