福島再生へ官民一体で、福島県観光復興CPスタート

佐藤雄平福島県知事
佐藤雄平福島県知事

 福島県は10月28日、福島県・磐梯熱海温泉のホテル華の湯で、観光復興キャンペーンのオープニングセレモニーを開いた。本来開催中の観光大型キャンペーンは東日本大震災、福島第1原発事故の影響で中止となったが、復興に向けてさらに強力な体制を構築するために全市町村、団体などが参画し、観光復興キャンペーン委員会を設立した。12月に発表する県の復興計画の1つとしての位置づけ。県の事業として推進する。

 佐藤雄平県知事を会長とする福島県観光復興キャンペーン委員会は観光産業の復興に向けた事業を計画・実施。セレモニーの前に、県内の全市町村のトップ、団体代表者などが出席して行われた第1回の総会で佐藤知事は「福島の再生は観光復興キャンペーンに大きくかかっている。官民あげて展開し、福島の再生につなげていきたい」とあいさつ。「福島県は南北に130キロ、東西に160キロと広いのに、全体が汚染されている印象を持たれている。来ていただかなければ風評被害は払拭できない」と語った。

内藤愼介氏
内藤愼介氏

 観光復興キャンペーン事業は13年までを復旧期、以降を飛躍期とし、県民の地域への誇りと元気再生、「フクシマ」のマイナスイメージの転換、交流人口の拡大と誘客効果の最大化――の3つを事業の柱とする。浜通り、中通り、会津など、地域のそれぞれの状況を踏まえ展開。なかでも13年の放送が決定したNHK大河ドラマ「八重の桜」は復興へ大きな足掛かりとなる。これに関連した観光プロモーションを展開していく。

 オープニングセレモニーは、相馬野馬追の騎馬隊が吹く法螺貝の勇壮な音でスタート。スパリゾートハワイアンズ(いわき市)のフラガールが力強い踊りを披露した。

 記念講演はNHK大河ドラマ「八重の桜」のチーフ・プロデューサー、内藤愼介氏が「大河ドラマと地域振興」をテーマに登壇した。会津出身で、「幕末のジャンヌ・ダルク」といわれる新島八重。内藤氏は3月の震災を受け「やれるやれないではなく、やるしかないという思いに至った」とテーマ選定の経緯を説明。「日本人はなぜ震災後の混乱した状況でも荒れないのか。絆、希望といったものを持ち、強いのか。『ならぬものはならぬ』という幕末の会津を生きた人々の生き方につながるものがある」と語った。

 観光復興キャンペーン委員会の副会長、幹事は以下の通り。

 【副会長】瀬谷俊雄(福島県観光物産交流協会理事長)▽菅野豊(福島県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)【幹事】佐藤正博(福島県町村会会長)▽福田昌明(日本旅行業協会東北支部福島地区委員会委員長)

参加者全員でキャンペーンスタートの掛け声
参加者全員でキャンペーンスタートの掛け声

No.295 長崎―上海航路就航 - アジアとの交流拡大へ起爆剤に

長崎―上海航路就航
アジアとの交流拡大へ起爆剤に

 11月3日、長崎市の長崎港からハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)が就航させる上海航路(長崎市―中国・上海市)の第1便が上海へ向けて出航した。第1便は部分改修を終えての試験運航。本格運航が始まるのは来春3月からで、週2、3便を予定する。上海航路就航は中国、アジアとの交流拡大へ起爆剤になると、地元関係者の期待は大きく、官民あげてのバックアップ体制が整い始めている。

【沖永 篤郎】

<日中新時代切り開く存在>

 上海航路はHTBの子会社、HTBクルーズが運航し、長崎―上海間の約800キロを約24時間で結ぶ。旅客船「オーシャンローズ号」(約3万トン)の旅客定員は約1千人。日中間の定期航路は、すでに大阪―上海、神戸―天津、下関―青島間などで就航しているが、旅客定員は200―400人規模。長崎―上海航路が実現すれば、輸送旅客数は飛躍的に向上する。

 

 

※ 詳細は本紙1441号または日経テレコン21でお読みいただけます。

古くても愛情で変わる ― 僧のように掃除しよう(11/11付)

 修行僧はいつも掃除をしている。掃除をするために生きているのではないかと思うほど、掃除をする。なので、修行僧の多いお寺の廊下はぴかぴかに光り、お堂には塵ひとつ落ちていない。歴史を重ねた古い建造物でも、毎日磨きあげればどの場所よりも綺麗な空間になり得ると教えてくれる。自分の頭や心が乱れているとき、清潔なお寺や神社の境内を歩くだけで、心が清められるような気がする。

 私は掃除が上手くできない。それに加えて、あらゆるものが手の届く範囲で混沌としている。自分の身の周りが整理整頓されすぎていると、何となく落ち着かず、いつの間にか、元の雑然とした空間に戻っている。情けない。フザケタ話だが、そのような人間でありながら、レストランや旅館に行くと、やはり気になるのが「そこが綺麗に掃除されているか、そうでないか」なのである。

 基本的に、私は古いモノの方に強い共感を覚える性質を持っており、古い型のクルマ、古い型のオートバイ、古い建造物などがオーナーによって大事に手入れされているものが街で目に入ろうものなら、いつまでも眺めていたいタイプなのだ。

 だから、宿選びをする場合にも、新しい宿よりも、優先的に歴史を刻んできた宿を選びがちである。建物の古さなぞというものは、プラスにこそなれ、マイナスになるようなことは一切ないのだ。法師温泉・長寿館などは、長い間、宿主やお客に愛されてきたのだなということが感じられる良い例である。

 先日、山梨県・裂石温泉の雲峰荘を訪れ、露天風呂に入ったのだが、建物自体は相当に古いものだった。しかし、目に付くスタッフは皆掃除をしていた。庭も一見、無造作に映っても、宿主の美学のようなものを感じさせる箇所が幾つかあった。

 もう1軒、別の日に山梨県の秘湯の宿に行ったのだが、小屋のような脱衣所の床があまりに汚れていたので、さすがに苦笑してしまった。

 寿司屋でも天ぷら屋でも、一流といわれる店はカウンターが磨きあげられている。どれほど清潔かが勝負のようなものだ。客からの注文を待つ間も常にカウンターの中で厨房を磨き上げている。汚いソースや醤油の入れ物にはうんざりさせられる。僧のように掃除を懸命にするだけで、お客が多く訪れる可能性もある。

(編集長・増田 剛) 

松葉がにプレゼント!

 鳥取県の冬の味覚・松葉がに(ズワイガニ)1杯(約1万円相当)を1名様にプレゼントします。

 11月6日に漁が解禁される松葉がには、鳥取を代表する冬の味覚の王者。甘みと心地よい弾力が特徴で、まさに絶品!

 プレゼント希望者は、住所、電話番号、名前を明記の上、「松葉がにプレゼント希望」との題名で下記宛にメールで応募ください。応募締切は11月26日(土)。当選は商品発送をもって代えさせて頂きます。なお、頂きました個人情報は本企画以外では使用しません。

 プレゼント提供元=鳥取県関西本部

  kansai@ryoko-net.co.jp

 写真はイメージです

商号「はとバス」使用訴訟 別府はとバスと和解合意へ はとバス

 はとバス(東京都大田区)が別府はとバス(大分県別府市)に対し、消費者保護の観点から望ましくないと商号「はとバス」の使用禁止を求めていた訴訟はこのほど、別府はとバスは社名変更登記を行い、「はとバス」を使用しないことで和解合意した。

 商号使用については09年2月から2社間で交渉を重ねてきたが折り合いがつかず、10年9月、はとバスが東京地方裁判所に提訴。11年9月、同地裁の和解勧告を受け入れる方向で解決する方針を決め、協議を続けていた。

 そのほか和解内容の要旨は、別府はとバスは、バス車体や看板などから「はとバス」を除去して今後「はとバス」を使用しない。別府はとバスははとバスに対して和解金を支払う。

プロが選ぶ『100選』中間集計 3回目

 旅行新聞新社が主催する新春恒例のイベント「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」。37回目の投票が今年も10月1日から始まり同31日に締め切られました。投票にご協力いただいた多くの旅行会社の皆様に感謝します。

「100選」は全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出し、表彰いたします。「ホテル・旅館100選」で投票のあった施設を、中間集計の3回目(10月25日現在)として発表します(順不同)。なお、最終発表は来年1月11日付の本紙で行います。

熊本、宮崎、鹿児島DCスタートへ(JRグループ)

スザンヌさんや若手芸人も応援
スザンヌさんや若手芸人も応援

<熊本城で記念式典、南九州から元気を届ける>

 九州新幹線の全線開業に合わせて、JRグループが熊本、宮崎、鹿児島3県と連携して10月から12月まで実施するデスティネーションキャンペーンのオープニングイベントが10月8日、熊本市の熊本城を会場に開かれた。

 同日は、熊本城本丸を背景にした竹の丸広場特設ステージで、くまもとお城まつりのメインイベントが開催され、城内が祭り一色となった。書道ガールズ甲子園や3県郷土芸能祭典、世界ギネスに挑戦の3千人太鼓などイベント満載で盛り上げ、3県の食を集めた「南九州くいだおれ博覧会」も開かれた。

 記念式典では主催者を代表して蒲島郁夫熊本県知事があいさつ。「熊本県がバレーボールのセッター、アタッカーの役割を鹿児島、宮崎県が果たしてもらい、南九州から元気を届けるキャンペーンにしたい」と力を込めた。JR九州の唐池恒二社長も「全国のJRグループあげて3県に送客する」と決意を述べた。

 このあと、熊本県宣伝部長でタレントのスザンヌさんや若手芸人も登場してDCを応援。熊本県のくまモンなど3県と関西のゆるキャラも参加して、風船を飛ばして開会を華やかに演出した。

 式典には関西から近畿運輸局、JR西日本、近畿2府4県と主要都市の行政、観光団体関係者70人も参加し、相互交流強化を確認した。

 一行は、同日に市内ホテルで行われた交流会にも出席。JR西日本の柴田信常務は「新幹線の全線開業で九州と関西の文化の流れができた。観光の具体的な流れをつくれば日本が元気になる」と強調した。

 JR九州熊本支社の福嶋和彦支社長は「熊本と天草方面の三角駅を結ぶ観光列車『A列車で行こう』も運転を始め、阿蘇や指宿、日南へも魅力的な観光列車が走る」とアピール。そのうえで「JR九州としては関西重点で送客し、相互交流を拡大させたい」と結んだ。

 JR西日本によると、新大阪―明石間の9月が前年比110%。小倉―博多間、博多―熊本間も3月から9月まで毎月2ケタ増という。関西から九州への旅行商品実績も4―9月累計で191%と大きく伸び、九州から関西も114%と増加している。JR西日本の橋本修男営業本部長は「一過性に終わらせないためにも新しい旅行テーマが必要」と提案。「人と人を結ぶ絆や企業の休暇長期化、女子旅・若者旅、教育旅行への対応が重要」と指摘した。

人工乳房で温泉に行きたい~乳がん患者の願いを“おっぱいリレー”でつなぐ~

池山メディカルジャパン代表取締役 社団法人日本人工乳房協会理事長 池山 紀之氏
池山メディカルジャパン
代表取締役
社団法人日本人工乳房協会
理事長 池山 紀之氏

 オーダーメイドの人工乳房をつくる「池山メディカルジャパン」(池山紀之代表取締役)は10月17日から31日まで、シリコーン製の人工乳房が全国の温泉や温浴施設に浸けても大丈夫なことを確認する「おっぱいリレー」を実施した。乳がんによっておっぱいをなくしてしまった女性たちにも「温泉旅行を楽しんでもらいたい」(池山氏)との思いが全国的につながり、新たなネットワークが生まれている。池山氏は今後、「乳がん患者にやさしい宿」のリスト作りにも取り組む考えだ。

<乳がん患者に優しい宿、ネットワークをつくろう!>

 10月1日から、社名をウロメディカルジャパンから「池山メディカルジャパン」に変更しました。「ウロ」とは泌尿器という意味で、男性の前立腺肥大を直す特殊な医療機器の開発を行う会社として2003年1月に設立しましたが、現在は乳がん患者さんのために人工乳房を作ることが事業の中心となっています。

 人工乳房を作るきっかけとなったのは、私の妹が乳がんを患い、家族で温泉旅行に行ったときに彼女だけ「温泉に入ることができなかった」と知ったからです。私自身、以前は指や耳を失った人のためにシリコーン製の指や耳を作っていた経験もあり、なんとか妹のために人工乳房を作ることができないものかと必死で研究を進めました。

 そして05年に、乳がん学会で初めて私たちが作った人工乳房をお披露目しました。世界中どこを探しても、見た目も、触感も本物そっくりの人工乳房(シリコーン製)がなかったために、学会の先生方に非常に大きな注目を浴びました。想像を超える高い評価を受けたことで、大きな手ごたえを感じ、本格的に事業化することを決意しました。会社設立当初に取り組んでいた男性の尿道圧迫を解消する機器の方は医療用具のため、厚生労働省の許可が下りず、断念したところでした。

 人工乳房は06年から販売を始めて、現在6年目になりますが急成長を続けています。昨年(10年)は約500人、累計で約1200人の人工乳房を作ってきました。年々倍増しており、今年は1千人ほどの予定です。

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 人工乳房を作り始めた05年ごろ、医療業界では乳がんの専門医や、専門の看護師の資格制度が時期を同じくしてスタートし私たちの仕事は時代の流れにぴったり符合したのです。専門医や看護師の方のほとんどが私と同年代か、もう少し若い世代だったのでとても仲良くなれ、今でも医師から多くの患者さんを紹介していただいています。

 乳がんは助かる率が高いのが特徴です。年間約5万人の女性が胸の切除手術や温存手術を受けられ、8割以上の方が元気になります。そうすると、「その後の人生をどう生きるか」が大きな問題になってきます。乳がんの手術をして乳房を取り除いたり、傷つけてしまったあとに、残念ながら離婚をしてしまうケースも多いのです。そして一番多い悩みが、「温泉に行けなくなる」ということなのです。現在、50―60万人の方々が乳房を失って生活しています。今後も毎年約4万人ずつ増えていきます。そのほとんどの方々が「温泉旅行に行けない」状況に置かれているのです。

 患者さんの生の声を聞くと、患者さん自身が「傷跡を見られるのが嫌だ」という思いよりも、一緒に入った他人が自分の傷跡を見てびっくりさせてしまうのが申し訳ないと感じる方が多いのです。私の妹も、「自分は大丈夫だけど、母親が悲しむ顔を見たくない」と言うのです。また、不思議なのですが「おっぱいがあったときは、個室露天風呂がいいなと思ったけど、手術をしたあとは広い大露天風呂に入りたい」と皆が口をそろえて話すのです。

 元気な乳がん患者さんと、その家族や近しい方々を含めると約200万人以上の人が温泉に行くことをあきらめています。旅館の経営者や女将さんは彼女たちの生の声を耳にすることは少ないと思います。まずは、こんな現実があることを知ってもらいたいのです。そうして、旅館がこれまで温泉に行けなかった乳がんの患者さんの希望を叶えてあげてほしい。私たちはそのお手伝いをしていければと思います。

 医師や看護師さんは、患者さんから「どこか私たちでも入れるような温泉を知りませんか?」とよく聞かれるそうです。しかし、全国の旅館のことを知っているわけではないので、今度は私が彼らから「どこの旅館に行けば、安心して温泉に入れるのか」としばしば質問されます。ですから私は乳がん患者さんを快く受け入れてくれる温泉旅館の「リスト」を作りたいと考えています。患者さんを受け入れてくれる旅館にも元気になってもらいたい。旅館さんにはぜひ手を挙げていただきたいと思います。

<10月17日から全国で「おっぱいリレー」>

 今年1月にある看護師から、「兵庫県の温泉を訪れた患者さんが『温泉に入っても大丈夫だろうか』」という相談があったと連絡をいただきました。もちろんお風呂や温泉にも入れるように作ってきたので、患者さんにも、医療関係の方々にも「安心してお風呂や温泉に入れますよ」と説明してきました。しかし、患者さんのなかには「人工乳房をつけたまま、温泉に入っても変化しないか」と不安に思う方も多いのだと気づいたのです。一方、旅館の中にも人工乳房を温泉に浸けることでお湯の色が染まったりするのではないかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

工房では手づくりで人工乳房が作られる
工房では手づくりで人工乳房が作られる

 そこで、全国の温泉に実際に人工乳房を浸けて大丈夫なことを確かめる「おっぱいリレー」を10月17日から31日までスタートさせました。30分ほど温泉の浴槽に浸けて、「色」や「かたち」に変化がないかを検証し、クリアした温泉には認定証を贈るというものです。全国紙をはじめ、さまざまなメディアにも大きく取り上げられ、95軒の温浴施設が参画しました。多種多様な泉質で試すことができ、多くの施設にご理解をいただくことができました。この「おっぱいリレー」で私たちの活動が温泉旅館など宿泊業界や患者さん、一般の方々まで少しずつ広く知られるようになってきました。来年はもっと多くの温泉旅館にも参画していただきたいと思っています。

 今回のリレーでは、「脱衣所についたてや、体の洗い場に仕切りがついているか」などのアンケートも実施しました。小さな心配りですが、乳がん患者さんには大きな救いになるのです。また、明るすぎる照明を少しだけ落としたりすることでも温泉に入りやすくなるのです。お着替えの場所と、体を洗う場所が目立たなければいいのです。それだけです。

 そのほかにも、「ピンクリボン運動」に協力していますよ、という小さなパンフレットがロビーやカウンターに置いてあったり、ポスターを貼っているだけで、「お宿が理解してくれている」と安心できるのです。本人でなくても、家族の方が目にしたとき、患者さんに紹介することができる。お宿さんにとっても他館と差別化できる部分ではないでしょうか。このような提案をしながら「乳がんの女性にも優しい宿」といったようなリストアップをして全国の病院に配布する活動をしていきたいと思います。

 温泉に行けるようになった患者さんから温泉に入っている写真を送ってきてくれるんです。本当にうれしかったのだと思います。そして1度行って安心できると、彼女たちは「2カ月に3回行った」というように、これまでに行けなかったぶんを取り返すように、以前よりもたくさん温泉に行かれるのです。

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 乳がん患者さんは、人工乳房を作ることに加え、もう一つ、手術で乳房を直す方法もあります。形成外科の医師がおなかの肉を取って乳房にあてるという手術です。今までは医師の勘と眼見当で乳房を作っていたので不自然なかたちになることが多かったのですが、私たちは患者さんの胸の型を先に取って医師に手術をしてもらうので、違和感のない、自然なかたちに仕上がるのです。乳頭部分は、私たちがシリコーンに着色して作ります。厚生労働省からの補助金によって事業は軌道に乗り、10月からこのシステムが本格的に始動し日本中、世界中に広がっていくと思います。手術には保険も適用され、費用は30万円ほどです。ただ、外科的な手術のため、患者さんにとっては心理的な負担にもなるので、高齢者などは人工乳房を選ばれる方が多いかもしれません。そのほか、乳房にあらかじめ型を取ったシリコーンを入れることも可能ですが、全額自己負担となるので片方で100―150万円ほどの高額となってしまいます。しかしながら医療技術が進歩すれば、乳がん患者さんもまた以前のように温泉に行けるようになるのです。

 さらに、最近では海外からの要請も増えています。韓国では当社の関連会社「ウロメディカル・コリア」が人工乳房を作って、温泉旅行までパックにした医療ツアーを企画し募集を始めました。中国からも当社に人工乳房を作ってほしいという患者さんが多く訪れており、今後は台湾、中国でもこのようなツアーの可能性も考えられます。

 これから乳がんの手術をされる方から相談を受けることもありますが、「命を取るのか、おっぱいを取るのか」という選択に迫られたとき、手術を踏み切れない患者さんも多い。そのときに、「こんな人工乳房もあって、温泉にも入れるんですよ」と人工乳房を見せてあげると、安心されて手術に踏み切れる事例が幾つもありました。できるだけ早く検診を受けて、早期発見によって手術をすれば命は助かりますし、傷も小さくて済みます。万一、おっぱいを取ることになっても、人工乳房や手術で再建することもできるので、安心して検診を受けてほしいです。

<人工乳房の技術者に資格を、10年に日本人工乳房協会設立>

 一般社団法人日本人工乳房協会では、人工乳房の普及に向けて職人(技術者)を養成しています。以前は私の会社で養成していましたが、その多くが独立をしています。現在は資格制度がないのですが、将来的には国が認定する資格にしたいと思っています。「義手」「義足」については資格があるのですが、機能回復を最大の目的としているので、リアルな足は作りません。でも「本当にそれでいいのだろうか」と私は思ってしまうのです。本来ならば、医療でやるべきだと私は思うのですが、今の日本ではそこまで達していません。しかし、将来的には必ずそこまで行くと思います。そのためには、作る人の資格が必要になります。それで社団法人を作ろうということになり、2010年2月に設立しました。社団法人として人材を育成し、世の中に人工乳房やピンクリボン活動を普及していくことが目的です。現在は、私が理事長を務めています。将来的には、国の検定や、学校法人設立まで視野に入れています。すでに「学校のカリキュラムに入れてもいい」という話もいただいています。今回の「おっぱいリレー」も日本人工乳房協会が行っています。

観光で東北を元気に、仙台で産学連携セミナー

 日本観光振興機構は12月9日、宮城県仙台市のホテルメトロポリタン仙台で「産学連携オープンセミナー」を開く。「観光で東北を元気に」を全体テーマに、観光で東北の復興を目指す。国土交通省と観光庁、東北観光推進機構の後援。

 講演は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の常務取締役鉄道事業本部副本部長、鉄道事業本部営業部長の原口宰氏が「ツーリズム産業から日本を元気に!JR東日本の観光流動創造」をテーマに登壇する。

 また、パネルディスカッションは「東北復興に向けて観光が果たす役割とは」をテーマに、尚絅学院大学学長の佐々木公明氏がコーディネーターを務める。パネリストはみやぎおかみ会会長の磯田悠子氏と平泉観光協会会長の小野寺邦夫氏、JR東日本取締役仙台支社長の里見雅行氏、宮城大学教授の三橋勇氏。

 参加対象は観光産業に関心の高い大学生や専門学生、観光産業に従事する団体・企業の社員、報道関係者。定員は150人。受講料は無料。

 申し込み・詳細はホームページから。

URL=(http://www.nihon-kankou.or.jp/home/committees/report/event/20111209.html)。

10月中にほぼ復旧へ、台風12号の影響を報告

近畿6府県情報交換会

 近畿6府県首都圏観光連絡協議会は10月5日、東京都千代田区の都道府県会館で旅行会社や報道関係者を集め、「第53回近畿6府県観光情報交換会」を開き、冒頭で和歌山県と奈良県が、台風12号の影響や復旧状況について説明した。10月中には主要の国道や鉄道などがほぼ復旧するという。

 和歌山県観光連盟わかやま喜集館の藤森弘之館長は「紀伊半島の南部が大きい被害を受け、交通や観光がダメージを受けた。直後は交通網がマヒしていたが、現在は回復しつつある」とし、観光関連の現状を報告した。

 交通面は、名古屋方面からの海岸沿いの鉄道は紀伊勝浦―新宮間が12月中の復旧見込みのため、現在はJRが代替バスを運行中。このほか、国道は概ね復旧している。観光地に関しては、熊野古道は歩行可能。高野山や熊野三山、白浜温泉、本宮温泉郷、那智勝浦、龍神温泉なども観光に問題はない。直近の情報については毎日、連盟のホームページで更新しているという。

 また、奈良県東京事務所の中野律也主査によると、奈良県側から和歌山県・熊野本宮大社方面に南下する国道168号線は10月5日時点で普及の見込みが立たっていないが、和歌山県側からは北上が可能。十津川村の観光地は十津川温泉などが休業しているが、温泉地温泉は通常営業しているという。「南部全体に多くのキャンセルが出ているが、十津川以外は観光ができる。復旧には多くの人が観光に来ていただくことが重要なので、ご協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

 この後は、従来通り6府県それぞれが、秋冬の観光情報やイベントなどを紹介した。