クラツー、東京メトロらと連携 台東区を歩くツアー始める

2021年11月24日(水) 配信

銀座線(イメージ)

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)はこのほど、日帰りツアーの新シリーズ「東洋初の地下鉄開業を成し遂げた東京メトロと大都市東京の街並みをあるく」を売り出した。第1回と第2回のコースが異なるツアーを計8回実施予定で、出発日は2022年1月19日(水)から。旅行代金は8980円。

 同企画は、クラブツーリズムと東京都台東区が11月1日(月)に締結した「観光分野における連携協定」の協力内容の1つ、「地域資源を活かした観光振興」の取り組み。同社と台東区、そして同区に本社を構える東京地下鉄(東京メトロ)の3社連携により、「持続的な江戸東京の魅力・活力創出事業」を実施する。

 今回のツアーは、東京メトロ沿線をゆっくりと散策しながら楽しめる、現地集合・現地解散型のウォーキングツアー。第1回の日本初の地下鉄・銀座線「上野駅から浅草駅」コースは、「駅員からのあいさつ」や「駅員による構内特別見学」などを組み込み、同ツアーでしか得られない体験価値を提供する。

 「上野駅から浅草駅」コースの出発日は、1月19日(水)、28日(金)、2月5日(土)、13日の計4回。第2回となる、東京を代表する繁華街の入り口「銀座駅から日本橋」コースの出発日は、2月4日(金)、22日(火)、3月11日(金)、19日(土)の計4回実施。

ハワイアンクラフトビールの魅力に迫る! ジャルパックがオンラインツアー開催

2021年11月24日(水) 配信

マウイブリューイングのクラフトビール

 ジャルパック(江利川宗光社長)のハワイ現地法人、JALPAK International Hawaii(JPIH)は12月11日(土)、ハワイアンクラフトビールの魅力に迫るオンラインツアーを実施する。ハワイ・マウイ島でビール製造工程のすべてを行っているマウイブリューイングのレストランと中継で結び、ハワイを感じながらビールを楽しむことができる。

 アメリカンクラフトビールの輸入を手掛けるナガノトレーディング(バルマス朱美社長、神奈川県横浜市)が販売する、マウイブリューイングの参加用ビールパック(355㍉×4缶)3300円を購入することがツアーの参加条件。ジャルパックのホームページからオンラインツアー登録を申し込み後、ナガノトレーディングが運営するアンテナアメリカ販売サイトからビールを購入する。ツアー自体は無料。

 なお、ビールは先着90セットのみオリジナル缶グラスの特典が付く。

 申し込みは12月7日(火)の午後11:59まで。催行人数はZoom200接続が上限。

三陸国際ガストロノミー会議 東北の食の魅力探る シェフと生産者が意見交換

2021年11月24日(水)配信

南部潜りを学ぶ

 三陸国際ガストロノミー会議は10月24日、岩手県久慈市、洋野町で「食のキャラバン」を行った。食材をその背景や歴史などと一体として見直し、シェフによる視察を通じ、外部の視点で岩手・三陸の食材の良さを再認識してもらうとともに、その食材を軸に地域振興をはかることが目的。3年目となる今年は、原木しいたけ生産者や短角牛の牛舎などを周り、生産者の思いに触れた。

 視察を終えロレオール田野畑の伊藤勝康氏は、「シェフが生産現場を見ることが重要。最低限、生産者の顔を見て、食材をどう育てているかを見てから料理を考え、併せて環境も考える。そして、生産者の思いを、お客さんに伝えてほしい」と語った。

 三陸国際ガストロノミー会議の一環として行われた同キャラバン。事務局を務めた県の農林水産部流通課6次産業化推進担当の石川一行課長は、「同会議は今年で一区切りとなるが、新しいネットワークも構築されつつある。各地での取り組みも広がっているので、3年間で得たことを生かし、来年以降の展開を考えたい」とした。

炭作りから山の保全を学ぶ

 県はこれまでの取り組みを11月15日に長崎県雲仙市で開かれた「第1回ナショナルパーク・サミット」で発表した。これに合わせ雲仙市らとサミットを共催するONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構の田邊依里子氏が参加。「東日本大震災、風評被害、今も続く異常気象、新型コロナという未曽有の事態に向き合い続ける生産者・シェフの方々の強い眼差し、言葉、笑顔を肌で感じ取ることで、当たり前の日常に心底感謝し、日本・ふるさとの素晴らしさを胸に刻むことができた。各地の真髄にもっと触れ合い、当機構として『日本の心』を伝えられるよう努めていきたい」と感想を語った。

 また、毎年同キャラバンには、歴史、文化を踏まえ食材を見直すなかで、今後を担う若い世代にも生産現場を見てもらい、次につなげてほしいという思いから、高校生も招待している。今年参加した久慈工業高等学校の生徒は、「野田村の海産物を使ったメニューを考案してPRする計画を立てているので、食材やその生産過程を学ぶことができてよかった」と成果を語った。

「観光人文学への遡航(17)」 国を開くのなら団体旅行にしませんか?

2021年11月23日(火) 配信

 
 「ポストコロナはどうなっていくのか」ということを最近色々なところから聞かれる。「コロナ前の世界がまた戻ってくるのか」とも聞かれる。この質問をもらうとき、いつも違和感や、もどかしさを感じる。果たしてコロナ前の世界は、良かったのだろうか。

 
 オーバーツーリズムで自国内の観光が苦痛になり、生活圏まで踏み荒らされたコロナ前の世界になんか戻ってほしくない人は多いのではないだろうか。

 
 旅行を捨てた(大手の)旅行会社たちが憧れ、目指している広告代理店ビジネスは、実はぐだぐだだったということがこのオリ・パラで白日の元に晒された。

 
 補助金に巣喰い、中抜きをし、自分たちは上澄み液をたっぷりいただいて、仲間内に仕事を分配することで、自分たちの存在意義を示し続ける。実際のオペレーションは、孫請け、ひ孫請けが安価で請け負うから、イベントとしてのクオリティはびっくりするほど低レベルだったが、実際のオペレーションもぐだぐだだった。孫請け、ひ孫請けが実施しているから、そこに当事者意識などさらさらなく、いわゆる「バブル」を抜け出す人がいても、誰も注意もできないし、見て見ぬふりをする。その結果がこの感染大爆発だ。安心安全な大会とは程遠い代物だった。

 
 旅行会社がフツーに参加者の人数を常にカウントし、健康状態も確認し、行く先々のサービスが適切に行われているかも確認し、時間管理もする。そして、にこにこと笑顔を忘れず、お客様が常軌を逸したときは角を立てずにうまく軌道修正をする。これはにわかでできるものではない。他業種から見たらこれは神業の域だ。

 
 にもかかわらず、旅行会社は、この神業を、世の中が求めているのは個人旅行だからといって、いとも簡単に捨ててしまった。

 
 我が国において、最多の感染者を発生させ、自宅療養という名の医療崩壊を招いた第5波は、もう明らかにオリ・パラに伴う入国者の増加と、当初関係者が主張していたバブルが形成できなかったことによる。

 
 感染が収まったら間髪入れずに制限緩和の流れが加速しているが、海外は再拡大している国も多いのが現状である。インバウンドは個人旅行ではなく、確実にバブルを形成できる団体旅行で再開することを再度ここで改めて強く主張したい。インバウンドのいち早い再開を求めている国民は一体どのくらいいるのだろうか。自国民に負荷がかかるインバウンドの復活を多数の国民は求めていない。

 
 団体旅行は、今まで旅行会社やホテルに蓄積された数々のノウハウが生きてくる。お題目ではない真の安心安全を、旅行者にも、そして、とくに旅行者を受け入れる観光地に住む地元の人々に対して提供するために、観光産業が今までのノウハウを結集して、団体旅行で実施してもらいたい。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

斉藤国土交通大臣、Go To再開来年1月下旬を念頭に 県民割ブロックなども追加へ

2021年11月22日(月) 配信

斉藤鉄夫大臣。「(すべての事業は)感染が落ち着いていることが、前提となる。状況によっては停止することもある」との考えを示した

 新型コロナウイルスの感染が収まっている状況を受け、斉藤鉄夫国土交通大臣は11月19日(金)、現在実施している県民割について同日付で、隣県への拡大を決めた。また、来年1月8(土)~10日(月)の3連休など適切な時期に、地域ブロック単位での割引も追加し、段階的に緩和していく考え。Go Toトラベルキャンペーンは、1月下旬から2月上旬から再開し、夏の繁忙期前までを想定。斉藤大臣は「観光産業の雇用と事業の継続を維持する」と力を込めた。

 県民割の拡大は、対象となる都道府県知事の同意を得ることを条件に、準備の整った県からスタートする。

 地域ブロックは、同省の地方運輸局が管轄地域として区分けする関東や近畿などをベースとして設定する予定だ。期間は来年3月10日(木)宿泊分まで延長する。

 Go Toは県民割拡大後の感染状況と専門家の意見を踏まえ、再開する。割引率は、低価格帯の宿泊施設への利用を促すため、上限額を前回の1万4000円から1万円に引き下げる。宿泊のみは7000円を限度とする。混雑回避もはかるため、クーポン券は旅行代金の15%から平日が3000円、休日は1000円に変える。ゴールデンウイークは対象から外す。

 「(すべての事業は)感染が落ち着いていることが、前提となる。状況によっては停止することもある」(斉藤大臣)と付け加えた。

 このため、全制度の利用者には、ワクチン接種証明書または陰性証明書の提示を義務付ける。

 斉藤大臣の発表を受けて、観光庁の和田浩一長官は同日の会見で、県民割の具体的な運用について、旅行先または出発地の警戒レベルが3以上となった場合は停止する方針を示した。

和田浩一長官。Go To終了後の急激な需要低下を防ぐため、着地となる各県が旅行需要の回復状況を鑑みて、段階的な割引率の引き下げを可能にすることを話した

 Go Toは、旅行後2週間以内に陽性となった際の報告や、行動履歴の記録を旅行者に求める。

 ゴールデンウイーク以降は、費用は国が負担したうえで、都道府県の事業に変更。Go To終了後の急激な需要低下を防ぐため、着地となる各県が旅行需要の回復状況を鑑みて、段階的に割引率を引き下げる。

 上限は割引率が20%、金額は8000円で、宿泊のみは5000円。クーポンは3000円。

 和田長官は「今後も観光産業から話を聞いて、できる限り対応していきたい」と意気込んだ。

実証で陽性0人 8千人が参加

 観光庁は同日、「ワクチン・検査パッケージ」技術実証の結果を発表した。同実証は、ツアーや宿泊施設を利用するワクチン接種証明書や、陰性証明書を持参した旅行客へのオペレーションや効果を確認するもの。8315人が参加し、旅行後2週間以内に、陽性と疑われる症状を発症した人は0人だった。

 期間中は、9割以上が接種証明書を提示。書類の平均確認時間は、接種歴が18秒。検査証は25秒。

 一方、92・3%が書類の様式が統一された場合、負担が軽減すると回答。また、約3割の宿泊施設で、書類を忘れた利用客がいたとして、「条件を満たさない場合の対応を考える必要がある」(和田長官)と語った。

 運用については「大きな混乱はなかった」と成果を強調した。

 さらに、同実証は緊急事態宣言下でも、接種証や陰性証明書の携帯で、コロナ禍前のように移動できることを証明する目的で実施したことにも振り返り、「今後は県境を跨いだ移動の自粛は求めない」と話した。

訪日モニター年内に JATA管理型造成

 管理型ツアーによる訪日旅行の再開に向けて、観光庁は年内に、訪日外国人観光客を招き、モニターツアーを行う。

 同日現在、日本旅行業協会(JATA)にツアーの造成を依頼している。受け入れる国や人数などは今後、決まる。

 和田長官は「観光目的の入国はモニターツアーによる感染拡大の状況などを鑑みて、判断する」との認識を示した。

 また、JATAの菊間潤吾会長が経営するワールド航空サービスが、雇用調整助成金を不正に受給した疑惑にも触れ、「中間報告が発表されたが、最終報告を待って、必要であれば措置を講じる」と述べた。

「WE ROOM」ビジネス版を発表 リアルとオンラインつなぐ

2021年11月22日(月)配信

対談する八芳園の薮嵜取締役(左)とJTB新宿の坂井氏(右)

 総合プロデュース企業の八芳園(井上義則社長、東京都港区)は11月17日(水)、オンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」を発表した。イベント主催者のライブ配信を視聴しながら、参加者同士及びイベント主催者と参加者による双方向の同時通話を実現。これにより、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリットイベントをサポートする。

 WE ROOMの特徴は、オンライン空間内に仮想テーブルを用意し、席次ごとにグループ分けが可能。加えて、オンライン空間内のテーブルを自由に移動でき、他のグループ参加者とのコミュニケーションができる。また、スクリーンモード機能で、リアル会場とオンライン空間を自由に行き来ができ、一体感を演出できる。

 結婚式のためのオンラインツールとして今年4月に誕生し、さまざまな業界の企業が開催する大規模なイベントやセミナー、集団面接、社内研修などにも導入。今後はウィズコロナ時代の新オンラインプラットフォームとして、より幅広く一般企業にも利用できるように事業規模の拡大をはかっていくとした。

 同日、WE ROOMを活用したメディア向け発表会を開いた。今後のオンラインイベントについて、八芳園の薮嵜正道取締役経営管理部長と、WE ROOMの活用実績があるJTB新宿第一事業部の坂井弘和氏の対談が行われた。

 坂井氏はオフライン開催の課題であった、収容規模の拡大(オンラインによる参加)、来場者の会場までの移動や日程調整などの物理的課題を解消できると指摘。イベント開催の効果分析もしやすくなると伝え、「これからはオンラインとオフラインを目的に応じて掛け合わせたハイブリットが非常に拡大していく」と力を込めた。

JWTC(日本旅行業女性の会)、40周年記念パーティーを開く

2021年11月22日(月) 配信 

日本旅行業女性の会はこのほど40周年を迎えた(日本旅行業女性の会HPより)

 日本旅行業女性の会(JWTC、坂本友理会長、52会員)は11月13日(土)、東京ステーションホテル(東京都千代田区)で40周年記念パーティーを開いた。1980年11月27日に創立した同会は、昨年11月に40周年を迎えた。

 同会では、会員相互の親睦や、専門知識や能力を生かした社会貢献、世界各国の女性旅行関係者との親善などを目的に活動している。

 活動内容として、会員向け勉強会や、関連団体共催の勉強会や交流会、業務・プライベート両面における会員相互の情報交換などを行っている。

 パーティーには、初代会長やOBなど36人が参加した。

 また、吉田正子氏(東京海上日動火災保険常務執行役員)が記念講演で登壇し、「JWTC40周年に想うこと~女性たちを、明日元気にするもの~」をテーマに話した。

 同会は、「ワクチンの接種の広がりにより、人流の再開が見え始めている。旅の新しいカタチとともにJWTCも未来を創造しながら、50周年を目指して今後も活動していく」と決意をあらわにした。

記念講演では東京海上日勤火災保険の吉田正子氏が登壇した

加賀温泉郷 最大級レインアート 雨ならではの魅力創出

2021年11月22日(月)配信

山中座広場前のレインアート

 日本最大級のレインアートが今年秋、石川県の加賀温泉郷(加賀市)に登場し、注目を集めている。降雨時、地面に描いたアートが浮かび上がる。雨が多い北陸地方の気候を生かしたユニークな企画だ。

 レインアートとは、特殊なスプレーによって地面に描かれた絵や文字が、水に濡れることで浮かび上がる作品のこと。

 加賀温泉郷がある北陸地方は「弁当忘れても傘忘れるな」という格言があるほど、1日の天気が変わりやすいエリア。この特性を生かし、山代と山中、片山津の3温泉に「加賀雨紋様~KAGA RAIN ART~」と題して、それぞれの開湯伝説に関わりのある鳥類や、各温泉ゆかりの事象をモチーフにした巨大なレインアートを設けた。旅先で雨が降るとネガティブなイメージを抱きがちだが、雨だからこそ楽しめるコンテンツを提供することで“雨が似合う風情ある地”として加賀温泉郷の新たなイメージを発信する。

 山代温泉では、服部神社境内に、ヤタガラスや九谷焼、あいうえお発祥の地にちなんだ紋様などを描写。山中温泉の山中座広場前には、白鷺や芸妓をはじめ、山中節やこいこい祭りの獅子舞みこしといった地元の伝統芸能。片山津温泉の柴山潟遊歩道では、鴨や柴山潟に打ち上がる花火、雪の科学館にちなんだ雪の結晶などを描いている。

 レインアートは、気象状況や通行量にもよるが、1―2カ月程度は楽しめるという。ただし、雨の日でも降水量や見る角度によっては見えない場合がある。評判が良ければ、来年度以降、設置場所を増やしていくことも検討しているという。

〈観光最前線〉昭和プロレス談義が熱い

2021年11月21日(日)配信

昭和プロレスを語ろう!-(廣済堂新書)

 過日、群馬県の法師温泉長寿館の岡村建新社長にインタビューする機会があった。

 その際に、趣味を訊ねると昭和プロレスにとても造詣が深い。「昭和プロレスで最強のプロレスラーは誰か?」と質問すると、岡村さんは真剣な眼差しで「やはりジャイアント馬場が一番じゃないでしょうか」という答えに感動してしまった。

 私の予想では、たぶんスタン・ハンセンやブルーザー・ブロディといった外国人レスラーの名前が出てくるのかと思いきや、まさかの「王道プロレス=ジャイアント馬場」の名前がいきなり出てきたので少々驚いてしまった。

 これも宿主として「温泉第一」「従業員は家族と同じくらい大切」「なるべく変えないで歴史を大事にしたい」という考え方と相通じるものを感じた次第。

【古沢 克昌】

〈旬刊旅行新聞11月21日号コラム〉ヒガシヘルマンリクガメ―― 黙して語らず生きている姿に「癒し」

2021年11月20日(土) 配信

 
 昨年末に我が家に来たヒガシヘルマンリクガメの亀吉氏は、今や家族にとって無くてはならない存在となった。

 
 今年も新型コロナウイルスの感染拡大が繰り返し、ストレスを強く感じた。通常の年と比べて家で過ごす時間が増え、必然的にリクガメと遊ぶ時間が多くなった。

 
 フローリングのリビングに放しているので、ノコノコと気が向いたら歩き出し、眠くなったらソファや、テーブルの下の隅で眠っている。

 
 好物は温めたカボチャ。バナナも好きだ。タンポポの葉や、キャベツ、レタス、キュウリ、モヤシなども好んで食べる。ミカンやリンゴは、食べるときと食べないときがある。

 
 こんもりとした手のひらサイズの丸い甲羅をさわりながら、私はテレビを観たり、読書したりする。そうすると、気持ち良くて眠くなるのか、下瞼が上がってきて、カメはいつの間にか眠っている。

 
 トイレをした後など、1日に何度も専用のお風呂に入れたり、シャワーを浴びたりしているので、とても清潔である。

 

 
 私はもともと動物が好きで、犬や猫も好きだ。リスも飼っていた時期がある。

 
 カメに比べると、犬や猫の方が知能も高く、感情が豊かなので、その仕草を可愛く思う。

 
 リクガメを飼っていると、「懐くの?」と聞かれることがある。実際はよく分からない。ゴロンと横になっていると、遠くからノコノコと近づいてきて、体を摺り寄せてくることもある。「亀吉!」と喉が痛くなるほど名前を呼んでも、ちっとも反応しないこともある。ほぼ自分の生きたいように生きている。この心の距離感に心地よさを感じることがある。

 
 これが犬や猫との違いだ。犬の場合、飼い主から名前を呼ばれたら、気が向かなくても近づいてきたり、お愛想で尻尾を振ったりする。私も犬を2匹飼っていた経験から分かる。

 
 猫もポーカーフェイスで無視することもあるが、飼い主との“心の駆け引き”が存在する。

 
 だが、私は最近、ペットとの間でも、人間同士のような細かな心の駆け引きすら煩わしく、必要性を感じなくなってきている。

 

 
 高度に複雑化した社会では、気配りや配慮が不可欠である。旅館業などは最たるものの1つだ。また、インターネットやテレビ、SNS(交流サイト)からも情報が過剰に発信され、受け取る側のキャパシティをはるかに超えている。

 
 私は好き好んで、小さいながらメディアの世界の端くれにいるのだけれど、日々刻々とあふれるばかりに押し寄せてくる情報量の処理に疲れ果ててしまうことも時々ある。

 
 そんなときに、私は家に帰って、お風呂に入り、麦焼酎「いいちこ」を氷で割って飲みながら、2億年も変わらぬリクガメの丸く愛らしい甲羅を撫でて、癒しを求めてしまうのだ。

 

 
 これからは天文学的なデータを蓄積したAI(人工知能)との付き合いも本格化する。膨大なデータをベースに、“正論らしきもの”を雄弁に語りだす。

 
 一方で、黙って情報やストレスを吸収してくれる存在が希少価値化するはずだ。

 
 リクガメの亀吉氏はこちらの話を聞いても分からないだろうが、黙して語らず生きている姿に、私は大きな癒しをもらっている。

 

(編集長・増田 剛)