No.456 ITベンチャーの実力と可能性、“手話”と“スキャン”、2社に注目

ITベンチャーの実力と可能性
“手話”と“スキャン”、2社に注目

 需要と供給のマッチングで威力を発揮するインターネット業界。専門性の高いサービスを展開するITベンチャー企業も少なくない。新たなサービスと需要の創出はいかに果たされるのか。“手話”と“スキャン”を切り口に事業展開するシュアールとPayke、2社を訪ねた。企業と自治体、国内とインバウンド、ソリューション提供の対象は広く、組織や個人、国も問わない。両社代表ともに、「よそ者、若者、ばか者だからこそ、冒険的な試み(ベンチャー)ができる」と力を込めたのが印象的だった。

【謝 谷楓】

 
 

古田奎輔氏

Payke 古田奎輔代表

 ――スマートフォン端末用アプリで、製品のバーコード(JANコード、Japan article number code)を読み取る。それだけで、製品情報が多言語で表示される。とても分かりやすい機能です。まずは、製品情報の入手方法を教えてください。

 方法は、2通りです。メーカーに直接登録してもらう場合と、プログラムが自動的にWeb上にあるデータを収集する(クローリング)場合があります。

 メーカーは専用の管理画面を通じ、情報を登録します。有料プランなら、動画のアップロードも可能です。広告の出稿や、ネイティブスピーカーによる翻訳、関連データの獲得もできます。

 ――詳しく教えてください。

 我われのサービスを通じ、“いつ”“どこ”でバーコードがスキャンされたのかを知ることができます。年齢や性別、国籍といった属性も知れます。

 また、“風邪薬”というように、製品を限定し、関連データを集めることもできます。特定の製品に興味を持った人の集合データを確認できるのです。

 “どこ”でどの製品をスキャンしたのか、特定の端末を追跡することも可能です。製品にまつわる動態データ(人の流れ)も併せて取得できるため、興味を示す属性とエリアの把握にも役立ちます。…

大木洵人氏

シュアール 大木洵人代表

 ――サービスについて教えてください。

 遠隔手話通訳サービス“モバイルサイン”を提供しています。

 通訳士が、音声言語と手話をそれぞれ翻訳し、スマートフォンやタブレットといった携帯端末を通じ、利用者と企業・自治体をつなぎます。端末のディスプレイとカメラを用いることで、音声言語から訳された手話を確認するとともに、利用者は考えを手話で表現することができます。

 タイプは2つ、対面型とコールセンター型があります。

 対面型では、企業・自治体が受付窓口に端末を設置し、手話通訳を必要とするユーザーの来訪に備えます。駅や役所での問い合わせや、ホテルでルームサービスを希望するときに活用されています。

 コールセンター型は、ユーザー自身の端末を利用します。例えば、チェックイン時間の変更といった宿泊施設への電話連絡で利用されています。

 手話通訳士と情報通信技術(ICT)を駆使し、音声言語と手話、双方の話者をつないでいるのです。…

 

※ 詳細は本紙1664号または3月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

罰則金100万円、事業廃止命令も、観・国・県が連携し監督(民泊関連法案)

 政府は民泊サービスのルールを定めた「住宅宿泊事業法案」を3月10日に閣議決定した。年間提供日数の上限は180日となったが、条例で日数の制限ができる。一方、同法案に先立ち、違法民泊の規制強化を盛り込んだ「旅館業法の一部を改正する法律案」も閣議決定された。厚生労働省の民泊実態調査で、全国で許可物件の割合は16・5%と2割を切っていた。違法民泊や地域住民とのトラブルの早期解決に向けて観・国・県が管理監督をはかる。罰則金も100万円まで引き上げ、厳格化した。両法案ともに今国会の成立を目指す。
【平綿 裕一】

 住宅宿泊事業法案では、住宅宿泊事業(民泊サービス)を行う事業者と、管理業者、仲介業者の3者に制度を創設した。それぞれ事業を始めるには届出か登録が必要だ。同法案で民泊サービスの適正化をはかり、観光客の来訪と滞在の促進を促す。

 民泊を有料で住宅に人を1年間で180日を超えない範囲で宿泊させる事業と規定した。民泊事業者は米国エアビーアンドビーのような仲介業者のサイトに、物件情報を提供。宿泊者がサイトを通して物件を探して予約、支払をすることが基本的な流れになる。

 民泊事業者はサービスを提供する際に、都道府県知事に届出が必要になる。さらに衛生管理や騒音防止のための説明、苦情の対応などを義務づけられている。家主不在型の場合、これらを管理業者に委託しなければならない。

 民泊管理業者は国土交通大臣が、民泊仲介業者は観光庁長官が、登録を行う。知事と長官、大臣は互いに情報共有をはかり、それぞれの事業の監督を行う。違反があれば事業改善命令や事業廃止命令などがなされる。

 観光庁長官は民泊事業者に対し、インターネット設備に必要な助言を行う。インターネットの活用で、利便性向上をはかる考え。

 各都道府県は条例で民泊サービスを実施する期間を、区域を定めたうえで制限が可能だ。民泊が原因の生活環境悪化を防止するため、必要がある場合は条例を定めることができる。地域の実情を反映する仕組みとして盛り込んだ。

 一方、旅館業法を一部改正する法案で規制を強める。都道府県知事らは無許可営業者に対する報告徴収や立入検査、緊急命令の創設などを行う。さらに旅行業の欠陥要件に暴力団排除規定を追加した。 

 具体的には無許可営業者らに対する罰則金が3万円から100万円に引き上げられた。旅館業法に違反した場合は、2万円から50万円になる。

 このほか、同法案でホテルと旅館の営業種別「旅館・ホテル営業」に統合する。規制の緩和で旅行業の健全は発達をはかる考えだ。

旅の責任は自分が負う ― 謙虚さを失った旅人は見苦しい

 旅とは思い通りにいかないものである。

 海外を旅するにしても、飛行機の着陸が遅れたり、現地で道に迷ったり、注文したものと違う料理が出てきたり……。これらを含めて旅だと思っていれば、すんなりとホテルに到着できたり、食べたい料理がちゃんと出てきただけで万事順調と感じられる。

 半分上手くいけば、上々だというレベルの謙虚さが、旅を楽しくする。

 でも、旅先で思い通りにいかないことを極度に嫌う人もいる。何かトラブルが生じると、大きなストレスを感じて、イライラしたり、旅行会社やホテルのスタッフに当たり散らしたりする。

 旅行中に不快なことや、不便なことを一切排除したいがために、リスクの少ない「安全・安心」を謳うツアーに参加するのも1つだ。一定以上の基準を満たしたツアーでは、おそらくホテルもそれなりのグレードが選ばれ、レストランのメニューもしっかりと選択されているだろう。トラブルに巻き込まれる確率もぐんと下がり、何かトラブルに巻き込まれたとしても、旅行会社が対応してくれる。

 旅のリスクを最小限にする努力は旅行者にとって当然必要なことである。安全・安心なツアーに参加することは、リスク回避の努力の正攻法である。けれど、信頼できるツアーを選んだからといって、旅のトラブルがなくなるわけではない。

 旅の責任を自分が負うのではなく、100%旅行会社などに寄りかかっている旅行者の姿勢が、ときどき鼻につくことがある。

 初めて行く海外のビーチで泳いでいる最中に沖に流されたり、街の危険な区域に立ち入って暴行されたりというケースが多々ある。そうすると、被害に遭った旅行者やその関係者が、「『ここは危険だ』という十分な説明がなかった」などと言って、旅行会社と揉める。旅行会社にも非があるかもしれないが、旅行者も自らの「安全」を他者に委ね過ぎていたのではないかと感じることもある。

 子供のころから泳ぎ慣れた海なら、水深や潮の干満の大きさ、波の流れ、風の向きなどある程度理解しているので事故も起こりづらい。しかし、初めて行く、見知らぬ海に対して「何を安心して泳いでいるのだろう」と思ってしまう。初めて歩く街の路地も危険だらけだという基本認識が欠かせない。旅行するなら少なくとも、“自分自身で”危険かどうかを調べるべきであるし、どうしても調べ切れなかったものに対しては、旅行会社のスタッフに、自分から聞くべきである。旅人の身でありながら、旅行会社からの説明をひたすら待っている姿勢こそ疑問に感じる。そして旅人は危機への嗅覚も必要だ。

 「安全・安心」を謳うツアーに参加することは、リスク回避の1つの手段であるが、そこに寄りかかり過ぎると、逆にリスクを大きくしてしまう。

 国内旅行でも、旅館に少し高額な宿泊費を払うと、王様のように振る舞う客がいる。そして何か気に食わないことが起こると、宿に文句を言う。日本の旅館は“おもてなし”を前面に出しているため、それら甘ったれた客に対しても強く出づらい。

 旅人は所詮「他所者」である。もっと謙虚であるべきである。謙虚さを失った旅人は見苦しい。

(編集長・増田 剛)

業務独占から名称独占へ、地方誘客に向け規制緩和

通訳案内士・旅行業法を一部改正へ

 政府は3月10日に「通訳案内士および旅行業法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。通訳ガイドの量と質の向上や、ランドオペレーターの適正化、着地型観光に関する規制緩和などを盛り込んだ。訪日外国人旅行者は地方へ流れている。地方誘客促進のため、受入環境の充実や旅行に係る安心・安全を追求していく。

 通訳案内士は業務独占を廃止する。無資格者が資格の名称や類似名称を利用できない「名称独占」に規制を見直す。このほか、地域のガイドに特化した地域限定通訳案内士の資格制度を創設する。さらに試験項目に実務項目を追加。適正化をはかり、全国通訳案内士に定期的な研修の受講を義務づける。

 ランドオペレーターは登録制を創設。管理者の選任と書面の交付などを義務づける。さらに業務改善命令と、これに違反した場合には登録を取り消す。欠格期間は5年間となる。一部の悪質なランドオペレーターを是正し、安心・安全や公正さを確保する。

 地域の観光資源・魅力を生かした体験・交流型旅行商品、いわゆる着地型観光の規制を緩和する。旅行業務取扱管理者の複数営業所兼務を解禁する。一方、地域に限定した知識だけで取得可能な「地域限定の旅行業務取扱管理者」の資格制度を新たに創設。地域の旅館・ホテルで着地型観光商品の企画、販売を促進させる考えだ。

推理ドラマの名優

 トラベルミステリーの巨匠・西村京太郎氏の推理小説を原作にドラマ化した「十津川警部シリーズ」をはじめ、推理ドラマなどで活躍した俳優の渡瀬恒彦氏が3月14日、闘病生活の末に亡くなった。

 「十津川警部シリーズ」は、全国津々浦々の急行列車を舞台に、犯人の巧妙な鉄道トリックを見破り、事件を解決していく刑事ドラマシリーズだ。同じく主演した「タクシードライバーの推理日記」では、元刑事のタクシードライバーが乗客に関わった事件を解決するため、全国各地をめぐる推理ドラマ。どちらも全国の観光地を舞台に話が展開していくため、旅番組のように豊富な情報量が心地良い。

 全国の観光名所や温泉地、旅館を知るきっかけになった俳優なため、これからはその姿が見られなくなると思うと寂しい。

【長谷川 貴人】

【発信地点】労基法改正へ 期限は2年間

内藤 耕氏(ないとう・こう)
サービス産業革新推進機構
代表理事、工学博士

 「働き方」という名の下で、政府でさまざまな議論が進められ、労働基準法の改正案が最終的に連合と経団連で概ね合意された。これによって、今から2年後の2019年度からの運用を目指して国会で法改正が進められる運びとなった。

 報道によれば、これまでは労使で特別条項付きの36協定さえ締結すれば、実質的に残業時間が青天井だったのが、今回の法改正で残業時間に上限が罰則付きで定められることである。

 つまり、現在の36協定では、残業時間の上限は年360時間、月45時間だったのが、この法改正で労働時間の延長は特例で年720時間が上限となる。しかし、産業界側からの要望もあって、その延長が繁忙月に100時間未満まででき、これが2カ月から6カ月続くようであればそれは80時間になるが、45時間を超える残業は最大で6カ月という。 

 労働基準監督署が企業をチエックする仕組みも盛り込み、ここで定められた残業時間の上限を5年後に見直す。

 これまでその必要性が繰り返し指摘されてきた「勤務間インターバル制度」の導入への努力義務も新たに書き込まれる。1993年に勤務間インターバルが導入されたヨーロッパでは、終業時刻後から連続して最低11時間の休息を付与することが義務付けられ、とくに宿泊産業への影響が大きい。

 これとは別に、昨年度の法改正で、これまで50%以上と定められていた月60時間を超える時間外労働への割増賃金率について、中小企業への猶予措置を廃止することが既に決まっている。雇用形態の違いによる待遇差の解消も政府によって検討され、昨年末に同一労働同一賃金のガイドラインが公表されている。

 これらの法律改正に対応しようとすれば、企業は就業規則を改定しなければならない。働き方の具体的な方法は法律には定められていなく、あまり意識されることはないが、それは労働契約法第7条に「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による」と書かれているからである。

 注意しなければならないのは、就業規則を変更しても、それは適用される企業内の働き方のルールが新しくなるだけである。実際に長時間労働を是正しようと思えば、現場作業を見直す労働生産性の改革を実現しなければならない。

 しかし、サービス産業にとって、作業自身が商品そのものであり、それを変更することは簡単なことではなく、今回の法改正でその実現までの期限が2年間と定められたことになる。

西・英語圏を狙う、乗合バスツアーに参入(JTBグループ)

今までにない日本全国を
周遊するツアーを展開

 JTBグループのEuropa Mundo Vacaciones S.L.(EMV、ルイス・ガルシア社長)は3月2日に東京都内で行った記者会見で、4月からJTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT、座間久徳社長)と連携し、スペイン語圏・英語圏の旅行者を対象に、日本での観光乗合型バスツアー事業に本格的に参入すると発表した。同事業においてJTBGMTは、日本でのランドオペレーターとして、同社が保有しているネットワークを生かし、安全・安心の旅を提供していく。

 今回日本で展開する、乗合型バスツアーは、欧米などでは「シート・イン・コーチ(SIC)」と呼ばれており、EMVは1997年から欧州36カ国で中南米・スペイン語圏22カ国の旅行者を対象に同事業を展開している。現在52の基本コースを設定しているが、EMVのバスツアーの特徴として、複数のコースの組み合わせや、観光バスの一部区間のみの乗車も可能なため、約800コースを展開している。日本での事業展開においてもこの特徴を生かし、全行程1人催行保証の個人旅行者向け商品として、今までにない日本全国を周遊するガイド付きバスツアーを提供していく。

 日本では北は北海道、南は九州まで22都道府県をめぐる(1)North Japan(東京―仙台―盛岡―函館―札幌―会津若松―東京)(2)Central Japan(東京―河口湖―名古屋―京都―松本―高崎―東京)(3)Osaka and Kyoto(大阪―高野山―京都―大阪)(4)South Japan Express(大阪―岡山―広島―松山―徳島―大阪)(5)Korea and Japan(韓国―下関―広島―福岡―韓国)――の5つの基本ルートを設定。同ルートの組み合わせと乗車区間の選定により、48コースのラインナップを取りそろえた。48コースの平均的な旅行日程は12日間と長めで、最長は22日間の日程になっている。バスは45席の一般的な観光バスを利用する。

 JTBGMTの座間社長は、同事業では、観光バスの一部区間のみの乗車が可能であることについて「このスタイルが個人のお客様に定着していけば、2次交通としての役割も果たしていけるのではないかと感じている」と、想いを述べた。

金沢市に1200会員集結、国内活性化フォーラム開く(ANTA)

二階会長があいさつ

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)は3月3日に、石川県金沢市で「第12回国内活性化フォーラムinいしかわ」を開いた。全国からANTA会員約1200人が集り、新たな観光素材の発掘や地域観光の活性化などに向け、結束・連携をはかった。

 二階会長は「昨今は自然災害の影響を受け、社会インフラ整備の必要が叫ばれている。地域の安心安全はもとより、観光振興に極めて重要な政策の柱だ。今後はまさに国民運動としてともに進めていきたい」と会員らに訴えた。

 開催地の石川県は昨年支部が50周年を迎え、一昨年は北陸新幹線が開通。同県支部長の北敏一地元実行委員長は「北陸新幹線が開通して3年目を迎え、正念場となる。ぜひ北陸地方にもう一度目を向けていただきたい」とあいさつした。

 基調講演には観光庁審議官の瓦林康人氏が登壇。着地型観光はインバウンドを地方に長く滞在させるために「非常に重要なツールだ」とした。

 政府は今通常国会で旅行業法の一部改正を提出した。地域限定の旅行業務取扱管理者の資格制度の創設や、旅行業務取扱管理者の複数営業所兼務が緩和される見通し。裾野を広げ新規参入、活性化をはかっていく。

 記念講演は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の森喜朗元首相が行った。「2020年東京オリンピックの最大の狙いは、『復興日本』の発信だ」と強調。東日本大震災や熊本地震など、近年は自然災害で計り知れない打撃を受けた。一方で諸外国からボランティアや義援金など多くの支援があった。「世界の皆様に感謝しなければいけない。日本はおかげでここまで元気なったという姿を見せることが大事だ」と開催の意義を語った。

 このほか、明治維新鹿児島送客キャンペーンと「学生がつくる石川県の着地型旅行プランコンテスト」の表彰式が行われた。学生コンテストでは北陸学院大学短期大学部2年の林優里さんと善田麻珠子さんらの「金沢イケメン観光❤❤」が最優秀賞を受賞した。

 そのあと、國井一男副会長から北陸石川県送客キャンペーンが提案され可決した。12月末までに「3万人以上の送客を目標とする」と発表した。

 次回の国内活性化フォーラムは18年2月14日に高知県で開催予定。引継式では四国地方支部長連絡会議長の山中盛世氏が壇上に上がった。同県での開催は初めて。

 今年から再来年にかけ「志国高知幕末維新博」が開幕する。山中氏は「この節目の年に国内活性化フォーラムが、高知県で開かれるのは大変意義があり、ありがたいこと」と述べ、歓迎の意を示した。

着地型の方向性は?、有志が各地の事例を報告

「着地型観光」を議論

 全国旅行業協会(ANTA)会員の有志らが集まり、3月2日に石川県金沢市で「第3回着地型観光活性化会議事例報告会」を開いた。事例報告や課題共有・解決に向けた取り組み、今後の方向性などを議論した。九州産交ツーリズム社長の小髙直弘氏の講演も実施した。

 小髙氏は着地型観光の最大の問題が「流通が欠けていること」と述べ、顧客に情報を届けるためSNS(交流サイト)で発信を強めるなどの戦略が必要だと話した。一方、市場をみると、顧客は海外個人旅行(FIT)化や、観光知識の深いプロ化が進んでいる。今後は市場を正確に理解して「いかに直販の客を取り込めるかが重要だ」と強調した。

 商品に対しては、縦(収容人数)と横(実施期間)を掛けた面積(取扱人数)が、大きければ「息が長い魅力的な商品になる」と説明。流通させる条件には「1―2名から募集・催行できる商品」などを挙げた。

 小髙氏はインバウンドに関して「間違いなく伸びていく。これはチャンスだ」と述べた。さらに、大阪府立大学観光産業戦略研究所客室研究員の尾家建生氏は「インバウンドは観光に非常に高度な要求をしている。地域でこれに応える着地型観光商品を作り出し、発信していかないといけない」と見解を示した。

 事例報告では富山県福祉旅行センター(伏江努代表、富山県高岡市)が、国宝高岡山の瑞龍寺で行う着地型観光を紹介。写経や坐禅、精進料理が楽しめ、好評を得ている。近年はオンライン旅行会社(OTA)からの予約が「全体の約7割を占めている」と報告した。

 すマイル・ツアーズ(渡部郁郎所長、山形県酒田市)はオーナーが鮮魚会社(菅原鮮魚)を営む一方、着地型観光も行う珍しい旅行会社。「とびしま漁師体験」を企画している。日本海に浮かぶ「飛島」でさしあみ漁体験ができる。ただ昨年5年目を迎えたが、集客が芳しくない。「宣伝不足か内容なのか、自問自答している」と現状を振り返った。

 報告のなかでは「情報発信に課題がある」「収益を上げることが難しい」との意見が多かった。地域の旅行業者が経営の軸に据え、継続的に行うにはまだ難しい点があり、難しい局面にある。

 同会を主催しているツアー・ステーションの加藤広明代表は「我われで声を上げて現状を変えて行く必要がある」と語った。

民泊新法「大変うれしく思う」、エアビーアンドビーが声明

 エアビーアンドビー・ジャパン(田邉泰之代表)は3月10日に、「住宅宿泊事業法案」(民泊新法)が閣議決定されたのを受け、声明を発表した。

 「この度の閣議決定を大変うれしく思います。遊休資産である空き家、空き部屋の活用により、多くの新たな機会が生みだされます。地域社会に配慮し、持続可能なかたちで、ホームシェアを含む短期賃貸が日本全国で普及するよう、引き続き日本政府や関係者の皆様と協働させていただく所存です」と、新たな法案に対して一定の理解を示した。

 なお、現在日本に4万8000軒の部屋が登録されていると報告した。