旅行者の9割満足 観光庁、音声翻訳技術を初調査

2019年5月3日(金) 配信

観光庁はさらなる導入を促す

 観光庁はこのほど、多言語コミュニケーションの課題に対する全国規模の調査を初めて行った。総務省所管の情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語音声翻訳技術の効果を検証した。全国50地域の観光関連施設500軒と、外国人旅行者270人を対象とした。これによると、施設と旅行者の約9割が「満足度が高まる」と答えた。観光庁は同技術の周知に努めて、さらなる導入を促していく方向だ。

 同庁の受入環境アンケートで、旅行中困ったことは「施設などのスタッフとコミュニケーション」が3年連続で最多だった。この課題を踏まえ、解決に有効なツールとして、VoiceTra(ボイストラ)に代表される同技術の検証を行った。

 同技術を活用した民間のアプリには、凸版印刷の「ボイスビズ」や、フィートの「どこでも翻訳」などがある。機器には、ログバーの「illi インバウンド」、ソースネクストの「POCKETALK®W」などが販売されている。

 観光関連施設の調査結果をみると、全体の86%が「外国人旅行者への対応がしやすくなった」と答え、満足度も89%だった。

 外国人旅行者では、全体の95%が「コミュニケーションが成立する」「利用が拡大することで訪日時の満足度が向上する」と回答した。

 一方、外国人旅行者のニーズとして「専門用語の追加」「長文での翻訳対応」「認識精度向上」「カメラ読み取りでの翻訳機能」などがあった。

「休暇村安曇野Bed&Breakfast」6月1日から期間限定でプレオープン

2019年5月2日(木) 配信

休暇村安曇野Bed&Breakfast

 休暇村協会(河本利夫理事長、東京都台東区)はこのほど、長野県安曇野市にある豊田市民山の家「リゾート安曇野」を購入した。改修工事を経て「休暇村リトリート安曇野ホテル」として、2020年春の開業を目指している。開業に先駆け、2019年6月1日(土)から11月30日(土)までの期間限定で、既存の施設のまま「休暇村安曇野Bed&Breakfast」として、1泊朝食付きでプレオープンする。

安曇野「朝ごはん」

安曇野「朝ごはん」

 安曇野は清流育ちの代表格「わさび」に始まり、ニジマスやイワナ、ヤマメなど北アルプスのふもとで伏流水の恩恵を受けて育った米や黒豆、タマネギ、信州リンゴなど食材の宝庫となっている。旬の食材と地域の食文化を安曇野「朝ごはん」と銘打ってアレンジする。メニューの例としては、新鮮な安曇野野菜スムージーや土鍋を使った炊き立てごはん、野山の幸根菜サラダ、前菜、肉または魚のメイン料理、季節汁のお椀、旬の果物などがそろっている。

美肌の湯

美肌の湯

 風呂は、刺激が少なく肌に優しいアルカリ性単純温泉で、入浴すると肌がすべすべする「美肌の湯」とも言われている。広い内湯やサウナ、露天風呂には寝湯もあり、星空を楽しみながらゆったりと温泉浴が楽しめる。

安曇野「朝のお散歩会」

朝のお散歩会

 朝食までの時間は「朝のお散歩会」(所要時間30分)が楽しめる。朝、ロビーに集まりホテルを出発。アカマツとクヌギの森を抜けると背中には北アルプス、安曇平のむこう遠くまでぐるり山々に見守られているような朝焼けの景色。目の前に広がる田園風景は季節によってさまざまな表情を見せ、四季折々の景観を楽しめる。

周辺観光情報

 同施設の周辺には、「東洋のロダン」として知られる荻原碌山の「碌山美術館」、現代フランス画壇を代表するジャン・ジャンセンの「安曇野ジャンセン美術館」、絵本画家いわさきちひろや、世界の絵本画家の作品を展示する「安曇野ちひろ美術館」など多くの美術館があり、併設されたカフェなどで景色を眺めながらのんびりと過ごせる。また、古くから日本アルプスの総鎮守として広く信仰されている「穂高神社」、四季折々に花にちなんだイベントを開催する「国営アルプスあづみの公園」、日本一広大なわさび田を有する「大王わさび農場」などの観光施設がある。少し足をのばすと、現存天守として日本最古の松本城のある「松本市」、山岳景勝地として名高い「上高地」、日本最古の仏像と言われる一光三尊阿弥陀如来をご本尊とする善光寺のある「長野市」、黒部ダム・立山黒部アルペンルートの入口「大町」など、車での移動圏内にも観光施設が数多くあり、その拠点としても利用できる。

施設概要

施設名称:休暇村安曇野Bed&Breakfast

所在地:〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明7682-4

営業期間:2019年6月1日(土)~11月30日(土)

客室数:22室(和室14室/洋室4室/和洋室4室)定員90人

施設構成:天然温泉(単純温泉・大浴場/露天風呂)、レストラン、売店など

宿泊料金:1泊朝食付1室2人利用時 大人8千円(税抜/入湯税別)小学生5千円(税抜)幼児(4歳以上)2500円(税抜)

予約受付:2019年5月1日(水)午前9:00から電話/公式ホームページにて

TEL:0263-31-0874

乗継ルートで表記揺らぎ HPに自動翻訳の誤訳も 観光庁

2019年5月2日(木) 配信

3月4日に行われた調査のようす

 観光庁は4月3日、公共交通機関の駅施設などにおける多言語表記について、初の全国一斉調査の結果を公表した。整備が進んでいる一方、異なる事業者を乗り継ぐルートで揺らぎや情報が不足している箇所もあった。併せて外国人旅行者が、交通機関の利用時にみる主なホームページについて調べた。85社のHPを調査し、自動翻訳による誤訳や構造上の課題などが複数見つかった。

 調査では外国人調査員が現地を歩き、乗り継ぎ案内などで誤訳や表記の揺らぎが無いかを探した。北海道から沖縄まで計80ルートを見て回った。一部を除き日本語の案内があれば、英語での案内もあった。とくに迷いやすいところには、英語に加え中国語や韓国語が併記されていた。

 一方、課題点には「乗換先ごとに階段が異なる」「特急列車などの乗車方法が分からない」「表記内容が見えづらい」などが挙げられた。

 課題解決に向け、先進的な取り組みもみられた。JR西日本・大阪駅では、ホーム上に路線ごとに乗換しやすい階段の案内版がある。

 近畿日本鉄道・京都駅では、券売機付近に特急や急行を利用する場合の運賃や経路、乗り場などが整理して案内されていた。このほか、ピクトグラム(絵文字)で分かりやすく表記する例が多数あった。

 HPでは全言語共通の誤訳の傾向が明らかになった。とくに自動翻訳では「小人」が、「dwarf(おとぎ話に出てくる小人などの意)」になるように、意味の通らない表現になる場合があった。

 駅名の固有名詞も翻訳され、利用が難しいものもあった。

 中国語では、簡体字ページに繁体字表記がある場合やこの逆になっていることが頻繁に見付かった。

 このほかにも、HPの構造上の課題が散見された。時刻表などが、トップ画面から3、4回ページをまたがなければ確認できないことがあった。

 ニュースリリースなど、閲覧の可能性が低いページが目立ち、乗車案内などが探しづらい場合があった。

 同庁は「翻訳の完成度を高める必要がある」としたうえで、「外国人旅行者のニーズを理解し、必要な情報をより容易に見つけられるような取り組みも重要になる」と指摘した。

日台の観光格差縮小へ新戦略を 徐 銀樹・栄誉理事長(中華民国旅館商業同業組合全国連合会)×石井 貞德・本紙社長

2019年5月1日(水) 配信

徐銀樹氏(左)と石井貞德・本紙社長

 本紙の石井貞德社長は3月14日、観光事業交流のため台湾・台北市を訪れ、中華民国旅館商業同業組合全国連合会の徐銀樹栄誉理事長と1年ぶりに再会した。両氏は、徐氏の経営する京都商務旅館で「日台観光交流のさらなる拡大と、格差縮小に向け官民挙げた新たな戦略の必要性」などについて対談した。

 :2018年の台湾人の出国者数は約1664万人で、うち観光・ビジネスで日本を訪れた人は約483万人。全出国者数の約3割を占め、実に台湾人の4・8人に1人が日本を訪れた計算になります。

 一方、日本人の出国者数は約1895万人で、このうち台湾が占める割合は約1割程度です。

 日台間の相互訪問者数の格差が年々拡大していることを、危惧しています。

 石井:確かに重視すべき問題ですね。

 多くの日本人は本当に台湾が好きなのですが、現状では、航空機の予約が取りづらいなど問題もあり、今後、改善を要する点でもあります。

 また、台湾の官民が連携して、日本の各都道府県を訪れ、観光誘致に努めることで大きなアピールになるでしょう。

 :政府の観光管轄機関が日本に対し、新しい観光客誘致戦略を打ち出すことが大事です。

 さらに、台湾のインバウンド業界も日本を見習い、定期的に日本各地で誘致活動をすべきだと思います。台湾の素晴らしさをアピールすることで、観光客増加のチャンスが出てくるのだと考えています。

 現在、日本各地に住んでいる台湾人・台湾留学生にも、台湾の観光発展の一助となるべく「台湾をアピールしてほしい」とお願いしています。

 台湾と日本は歴史的、地理的にもつながりが深く、台湾には日本人が観光に訪れたくなる観光資源がたくさんあります。とくに台湾の多くの町には日本時代の歴史的建造物や名所が、そして各地に美味しい食べ物があります。

 石井:鉄道の旅も魅力的です。電車で台東に行ったり、あるいは船で緑島に行ったりする旅もいいですね。

 私は長年、観光産業に関する人やモノを報道していますが、おっしゃるように台湾各地には風光明媚な観光地や観光ルートも多い。各県市には観光サービスセンターも設置され、観光パンフレットにはすべて日本語による説明があります。

 :治安も良く、公共交通の利便性も高いのが特徴です。衛生医療面も日本同様に充実しています。インターネット環境も整備されています。

 石井:台湾人は人情味に溢れ、日本語が話せる人も多く、物価も日本より安い。日本人が観光するのに最も適した魅力的な観光地だと思います。

 :台湾と日本は文化的類似点も多く、ともに義理人情に厚く、共存共栄の信念を持っています。より多くの日本の方々が海外旅行の第一の候補地として台湾を挙げてくださるよう、この場をお借りしてお願いいたします。

 石井:私も各地で台湾の民間観光大使になり、1人でも多くの日本人が台湾を訪れるよう働きかけています。双方の努力によって、来年再会するときは訪問者の格差が縮小していることを願っています。

  ◆プロフィール

 徐 銀樹(じょ・ぎんじゅ)氏 1981―88年まで日本に留学し、亜細亜大学、日本大学大学院を卒業。東日本大震災直後から、福島をはじめ東北地方の復興支援に赴いた親日家。

富岡製糸場ポスターが国土交通大臣賞に、第67回日本観光ポスコン

2019年4月30日(火) 配信

世界遺産 富岡製糸

 日本観光振興協会はこのほど、第67回日本観光ポスターコンクールの優秀作品を決定した。国土交通大臣賞は「世界遺産富岡製糸場」(群馬県富岡市)が受賞したほか、総務大臣賞は「『秋田犬の里』集中プロモーション『行け、行け、アキタ。』」(秋田県)が選ばれた。

「秋田犬の里」集中プロモーション『行け、行け、アキタ。』

 今回は全国から147作品の応募があり、52作品が第1次審査を通過。そのなかから、審査会で各賞を選定した。

 受賞作品は次の通り。

 【国土交通大臣賞】世界遺産 富岡製糸場(群馬県富岡市、トレードマーク)【総務大臣賞】「秋田犬の里」集中プロモーション『行け、行け、アキタ。』(秋田県、JTB秋田支店・JTBコミュニケーションデザイン)【観光庁長官賞】渥美半島田原市の四季の魅力(渥美半島観光ビューロー、エクスラージ)【日本観光振興協会会長賞】Photogenic City室蘭(室蘭観光推進連絡会議、電通・たき工房)【インバウンド賞】「GO!OGA!(英語版)」(東日本旅客鉄道秋田支社、ジェイアール東日本企画秋田支店)【審査員特別賞】愛知デスティネーションキャンペーン未来クリエイター愛知 想像を超える旅へ。(JRグループ、ジェイアール東海エージェンシー・JTBコミュニケーションデザイン)【審査員特別奨励賞】あなたの六合 こなたの六合(群馬県吾妻郡中之条町、群馬県立女子大学文学部国文学科「六合えむプロジェクト」)【入賞】JEWELRY ICE(豊頃町観光協会、プロコム北海道)▽福滋県境 鉄道遺産回廊「長浜、敦賀、南越前」(長浜市・敦賀市・南越前町観光連携協議会、ライトスタッフ)

 審査会に先立ち、2月8~3月11日まで行われたオンライン投票の結果は次の通り。投票者数は1万1101人、有効投票数は2万1911票。

【1位】絶景をハシゴする(長州路観光連絡会下関長門連携事業専門部会、five o’clock shadow)【2位】小樽ゆき物語・余市ゆき物語(小樽観光協会、北日本広告社)【3位】北海道ポスター「Good day 北海道」(北海道観光振興機構、北海道ジェイ・アール・エージェンシー)【4位】「冬に恋。函館 second season」(函館市、電通北海道)【5位】大分県由布市―おしえたくなる時間があります。(由布市まちづくり観光局、山口靖雄)【6位】上越市観光イメージポスター(新潟県上越市、エムエー・プランニング)

第67回結果発表
https://www.kankou-poster.com/67vote_result.html
日本観光ポスターコンクールの結果発表は専門的な観点から各賞を決定するものです。審査員は、評論家の山田五郎氏、写真家・映画監督の宮澤正明氏、グラフィックデザイナーの左合ひとみ氏をお迎えいたしました。

「女将のこえ221」小口 正子さん、四季彩一力(福島県磐梯熱海温泉)

2019年4月30日(火) 配信

四季彩一力 小口 正子さん

自分の居場所

 昨年100周年を迎えた四季彩一力。四季彩という冠を象徴するのは、5千坪の日本庭園・水月園だ。すべての客室は庭園に面しており、文字通り四季の彩を味わえる。 

 正子さんは佐世保の出身。夫で社長の憲太朗さんとは東京で出会った。大学入学日にサークル勧誘のチラシの山から見つけた一枚。これこそ、憲太朗さんが作ったものだった。それは、もともと正子さんの興味があったお能のサークル。謡、仕舞、囃子を各流派の宗家に師事し、お能の「型」を叩き込んだ。

 卒業後はイギリスへ。私立の全寮制の学校に教員として赴任した。英国労働許可証の期限2年間は、3年に延長された。全校生徒たちが「帰らないで」と署名活動をしたのだ。親元を遠く離れて暮らす生徒たちの心に、正子さんは人として寄り添ったのだろう。

 帰国後は佐世保で家業に入った。父から接客や経営のイロハを学び始めたころ、「福島国体で宮様が3組おいでになるから早く来てもらいたい」と、一力に嫁ぐ。異文化で戸惑いもあったろうが、居場所を探り始めた。

 17年前、憲太朗さんとブライダル部門を立ち上げる。この話になると正子さんの瞳が輝く。「一力にしかないお二人らしいブライダルを創造し、人生の節目節目に寄り添える場所になれたら。一力の歴史の中で、私たちの代から始まる生涯顧客を創りたい」。

 ブライダルの過程では、両家の関係性や空気を察し、思いやりの心得などを立場を超えてアドバイスすることもある。

 「お食事処でお客様のご挨拶を終えた後、新郎新婦から届くご相談メールを、夜遅くまでチャットのようにやりとりすることも珍しくありません」。まさにプロデューサーでありカウンセラーでもあるのだ。

 東日本大震災で福島が負ったものは計り知れない。県外の宿泊客は激減したと聞くが、一力にはほとんど風評を受けない、地元に根付くブライダルがあった。義母で女将の潔子さんからの「ブライダルをやっていてよかった。ありがとう」は、正子さんにとって忘れられない言葉になったのではなかろうか。

 「私にとって、女将は羅針盤のような存在です。『発信型の宿であれ』という女将の気概を、受け継ぎたい。旅館は日本文化を伝える場所。正しい型をわきまえることで、型破りにならない新しいことにも挑戦できる。いま学生の娘にとっても、私がそういう存在になれたらと思う。スタッフにも身近な存在でありたい」。ここが、24年かけてつくった正子さんの居場所だ。

 (ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

住所:福島県郡山市熱海町熱海4-161▽電話:024-984-2115▽客室数:75室(300人収容)、一人利用可▽創業:1918(大正7)年▽料金:1泊2食付18,000円~(税別)▽温泉:アルカリ性単純温泉▽ブライダル「ブラッサムガーデン」はオーダーメイドで神前式・人前式・教会式に対応。全館無料Wi‐Fi完備。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(4月号)」

2019年4月29日(月) 配信

http://zoomjapon.info

〈巻頭言〉

クロード編集長

 日本の天皇の生前退位と新天皇即位に伴う新元号決定のニュースは、フランスの各メディアでも取り上げられました。ル・フィガロ(Le Figaro)紙は「REIWA」の言葉の由来や命名のされ方を中心に解説し、ル・モンド(Le Monde)紙は、加えて日本人の新元号の受け止め方や、IT対応の懸念、そして日常の中での西暦と和暦の併用についても言及しています。けれども、「令和」という言葉を理解するだけでは、この新時代に何が期待され、何が課題なのかは見えてきません。平成最後の月となったこの4月、本誌では「さよならHeisei」と題して特集を組み、日本社会が歩んだ平成の30年間を振り返りました。文化面では静岡県袋井市の小学校で実践されている食育についてのリポート、旅ページでは、旧東海道、江戸の趣を残す箱根八里の旅を紹介しています。

(編集長 クロード・ルブラン)

特集 さよなら平成…

3月中旬にパリを訪れた湯浅誠氏

 1989年に昭和が幕を閉じ、平成という新しい時代が始まったとき、人々はより豊かな未来を期待していた。しかし現在、大多数の国民が将来に期待をしていないという。政治的には、内閣が頻繁に入れ替わり不安定な時代だった。安倍内閣が再誕生してからは、経済効果が表れた一方、原発の再稼働が始まり、軍事力の増強がうたわれ、戦争ができる国へと変化しつつある。そのなかで、過去の戦争を悔やみ、平和を願いながら退位する明仁天皇は、日本の新たな象徴となるだろう。■加速化する格差社会:湯浅誠氏に平成の幕開けと貧困問題の始まり、そして現状について聞いた。■イノベーションとガラパゴス現象:長い間、世界からすべてをコピーすると言われてきた日本人は、平成に入り独自の技術革新に成功した。燃料電池車、i-modeケイタイや無料通信アプリの開発のほか、LEDなど画期的な製品を生み出したが、電化製品に関してはアジア他国に市場を奪われた。日本国内仕様のものが多く、海外に普及しなかったことが致命的だった。■市民権を得たオタクたち:マンガ、アニメ、地下アイドルなど、サブカルチャーが活発に発信され、その影響は海外まで広がっている。

〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉サクラ咲く

フランス仕様のキリンの広告

 よくフランス人から、日本で桜を見るのにベストな旅行時期はいつなのかという質問を受けます。満開の桜並木と、ひらひらと花びらが舞う薄紅色の世界は、年齢を問わず多くの人々の憧れのようです。最近はさらにその人気に拍車がかかり、「花見」への注目度も急上昇。3月末付のル・フィガロ紙は、パリから南西に約370㌔に位置するロワール地方モレヴリエ市内の東洋庭園内が花見ピクニックを解禁した情報を伝えています。パリでは、近郊のソー公園が昔から在仏日本人たちのお花見スポット。いつからか、そこに日本好きのフランス人たちも集うようになり、2013年には太鼓や阿波おどりのイベントも開始。ついにソー市公認の「Hanami」として、コスプレーヤーたちも集まる大イベントに成長しました。この時期に市内の地下鉄駅で目につくのは、キリンビールの広告。太鼓橋がかかる川とサクラ咲く谷の風景は、まるで桜源郷のよう。飲食店に設置された同じシリーズの紙コースターのピックアップ率も高く、コンセプトの人気を裏付けています。このようなフランス国内での桜をめぐる盛り上がりは、日本へのインバウンドに確実に一役買っていそうです。

 

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

「トラベルスクエア」平成は家業消滅の時代?

2019年4月28日(日) 配信

家業が持つファジーな人間味を

 
 平成の間で、どんな風景がいちばん印象的だった? と問われるなら、僕は平成9(1997)年の11月27日(だったと記憶する)、昼下がりの兜町と答えたい。
 
 そこには2つの震災や豪雨災害の跡を見た時のような激しさはなく、ごく普通のビジネス街の佇まいがあるだけだった。
 
 なぜ、日付まで覚えているかというと、その3日前、山一證券の倒産が伝えられたからだ。株式とはまったく別の用件で茅場町から兜町方面に行っていたのだが、衝撃を受けたのは、あまりに人が歩いていない風景だった。ふだんは証券会社の社員や株式売買の人たちで溢れている歩道にほとんど人影がない。
 
 その誰もいない白日夢のような景色に、僕は戦慄を覚えた。
 
 平成の旅館ホテルは、まさにそんな金融危機のなかで、「家業」としてのビジネス形態が崩壊していく過程だったように思う。不良債権処理、金融引き締めのなかで、貸しはがしが横行し、多くの旅館ホテルがファンドに買収されていった。バブル期の過剰投資に浮かれたことのツケもあったとはいえ、僕自身が敬愛していた旅館業の大先輩や、仲間と言っていい人たちが、いつの間にか消えて、いまだに消息不明の人も多い。「さらば友よ」はあまりに悲しい。
 
 一方、ファンドが乗り出して、オペレーターとマネジメントの分離がどんどん進んだ。B&B型や宿泊特化型など、旅館ホテルが持つコミュニティ機能よりも、旅(商用含む)のための基地機能が強調されるようになった。もはや、浴衣で宴会しにいく時代ではなくなってしまったのか。僕のように、旅館の大宴会場のふすまの外、上がり框に散乱するスリッパを眺めると「おっ、ご同輩やっておりますな!」とそれなりの旅情を感じる人には残念なことだ。
 
 一方、インバウンドの増加。これはもうこんなにも中国の経済発展が急速だと読み込めなかった僕自身の不明を恥じ入るしかないが、予約発生源のネットエージェント化と符節を合わせて、旅館ホテル業界の経営に大変革をもたらしている。
 
 インバウンドが無限定に流入し、営業はIT任せ。毎日の仕事のロボット化や新しい外国の方々の就労も増えるだろう。
 
 やはり、旅館ホテル業のビジネスフォームは、平成で大きく変わってしまったのだと思う。
 
 家業が持つファジーな人間味が薄れてきているのは、宿に機能だけではなく、ある種の詩情(ポエジー)を求めたい僕は不本意だが、これも大きな流れと納得している。
 
 これからの「令和」はそんな新しい脱・家業のビジネスフォームが、どれだけお客とそこで働く人々双方の幸福が増していくか、その技法に磨きをかけようという気持ちで迎えたいと思う。

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

熱海初!イチゴスイーツ専門店「いちごBonBonBerry 熱海ハウス」がオープン

2019年4月27日(土) 配信

1階イメージ

 観光関連事業を展開するフジノネ(水野正広社長、静岡県熱海市)はゴールデンウイーク初日の2019年4月27日(土)、熱海初のイチゴスイーツ専門店「いちごBonBonBerry 熱海ハウス」をオープンした。熱海駅から徒歩2分のところにあるビル1棟すべてをフル活用し、静岡県産のイチゴを使ったスイーツやお土産を販売する。イートインのほか持ち歩きできる商品もあり、熱海の街歩きがより楽しくなりそうだ。

 店舗は「いちごスイーツの夢のアトリエ」をコンセプトに作られ、各階ごとにテーマを設けた内装デザインになっている。1階はテイクアウトスイーツやお土産を販売。開放的な入り口と愛らしいピンク色を主体にした内装は、店の前を通る人も思わず足を止めてしまいそうだ。2階は工房で、パティシエがイチゴスイーツ(=芸術作品)を作る「アトリエ」をイメージ。3階はイチゴの苗を育てる農園を表現し、4階と合わせてイートインスペースを設け、カフェメニューの販売を行っている。

メニューの紹介

【散策しながら食べたくなるスイーツ】

▽温泉まんじゅういちご串 450円

老舗の温泉まんじゅうとイチゴを1本にまとめた、良いとこ取りのスイーツ。

▽食べ歩きボンボンいちご 600円

洋菓子のプチシューとフレッシュなイチゴを組み合わせた一品。散策のお供に。

▽ボンボンソフト 500円

濃厚なイチゴ味とミルクのコクが絶妙なバランスで味わえる。

 

【テイクアウトスイーツ】

▽いちごのババロア 500円

なめらかな口当たりのババロアの中には、甘酸っぱいイチゴがふんだんに詰まっている。

【カフェメニュー】

▽ボンボンパフェ 1600円

10粒以上のイチゴが使われている贅沢な一品。フレッシュなイチゴを思う存分、堪能できる。

▽いちごのクリームソーダ 600円

クリームソーダをイチゴカラーにした、見た目にも楽しい飲み物。街歩きで疲れた喉を潤してくれる。

※いずれも税込価格

店舗概要

店舗名:いちごBonBonBerry 熱海ハウス

オープン日:2019年4月27日(土)

概要: 1階/持ち歩きスイーツ、テイクアウトスイーツ、土産品販売、2階/工房、3階・4階/イートインスペース(カフェメニュー販売)

所在地: 〒413-0011 静岡県熱海市田原本町3-16

アクセス:JR熱海駅から徒歩2分

TEL:0557-55-9550

営業時間:午前10:00~午後6:00

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(171)」 まち歩きが観光になる(神奈川県小田原市)

2019年4月27日(土) 配信

前夜祭「宿場町小田原・夜のまちあるき」のようす

 日々のなりわい(生業)がツーリズムになる。いわゆる「なりわいツーリズム」を早くから提唱してきた神奈川県小田原市で、3月初旬に「日本まちあるきフォーラムin小田原」が開催され参加した。

 前夜祭「宿場町小田原・夜のまちあるき」に始まり、講演会とテーマ別ワークショップ、エキスカーションと3日間にわたるフォーラムには、おなじみ「長崎さるく」や弘前路地裏探偵団の「ひろさき街歩き」、北九州タウンツーリズムなど、全国から30地域以上の“まちあるき”仲間らが集まった。

 小田原のまちあるきの歴史は古い。きっかけは、2000年に市民主体のシンクタンク「小田原市政策総合研究所」による提案である。空洞化する中心市街地再生をテーマに、市民と行政が「車座」と呼ばれるワークショップを重ね、「まちづくり」と「まちあるき」を連携するなかで、さまざまな事業化プランが提案された。こうした提案に基づいて実現したのが「小田原宿なりわい交流館(旧井上商店)」や「小田原街かど博物館」(まち歩きの拠点)などである。

 提案は「なりわい」だけでなく、皇室や貴族・豪商の別邸群などの建築遺産の活用、そのもとで生まれた茶道・華道などの「粋・芸術」の活用(千年蔵プロジェクト)、松林や竹藪、水路、海浜などの自然の活用、出桁・蔵造商家の町屋活用など多岐にわたっていた。これらの構想を担うグループは、やがて小田原の活性化を目指してそれぞれの組織化を進め、今日に至っている。

まちあるきフォーラム全体会議

 2日目の午後に開かれたワークショップでは、こうした小田原の取り組みをもとに、「DMOとまちづくり」「まちあるきとインバウンド」など7つの分科会に分かれて熱心な討議が行われた。

 小田原は長い間、箱根の通過点という位置づけから観光には無頓着であった。その小田原が初めて「観光戦略ビジョン」を策定したのは16年である。小田原城に特化した観光を、地域全体に回遊できる仕組みづくりが計画の核となった。ここでも小田原のなりわいが注目された。海に面し、海からの産物を加工して蒲鉾や鰹節、干物などに加工する「海なりわい」、箱根に続く山の幸を生かした木工細工などの「山なりわい」、有名な曽我梅林の梅干しなどの「里なりわい」などを総合的に生かすというプランでもある。

 また、箱根を目指して近年急増する訪日外国人への訴求も意識して、17年には小田原DMOが設立された。ここで重点プロジェクトを絞り込んで、19年4月にはDMCの設立にまでこぎつけた。

 小田原の「なりわいツーリズム」の究極の目的は、生業の活性化、ひいてはまちの元気再生にある。観光客が増えることは望ましいが、これが地域の真の活性化につながらなければ意味がない。地域に根差した観光の1つのモデルであろう。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)