グランディア芳泉 和モダンな客室開業 心地良さで若者も狙う

2021年6月2日(水) 配信

「離れ ここみち亭」の客室

 福井県・あわら温泉のグランディア芳泉は4月17日、和モダンテイストな新客室「離れ ここみち亭」(全13室)をオープンした。

 本館2階の純和風客室「貴粋殿」を全面改装したもので、畳や床の間などの日本文化の良さは残しつつ、居心地の良い空間と、自分らしいスタイルで滞在できる“心地よさ”を追求した。

 主なターゲットは、若者からミドル世代。温泉宿としての利用をメインに、ホステルやワーキングステイなど、お客の滞在スタイルに合わせて、柔軟に対応できる空間とサービスを提供する。

 客室はツインと畳リビングで構成。約40平方㍍のスタンダードが9室、約70平方㍍のデラックスが3室、露天風呂付きが1室。全室シャワーブース付きで、2部屋のみ浴槽が備わる。

 全客室とも、日本庭園が眺められるほか、梁や天井、鴨居など、随所に日本建築の技と美をちりばめている。ベッドはシモンズ製のセミダブルベッドを導入し、寝心地を重視。水回りや空調も一新した。有線LANによるネット環境の再整備や、4Kスマートテレビの全室設置など、リモートワークに対応できる環境も整えた。

 一方で、客室それぞれの良さを発揮させるため、内装の趣やデザインは、客室ごとに、すべて違う雰囲気に仕上げた。

 また、専用の「ここみちラウンジ」を設置。アルコール類やソフトドリンク、コーヒーなどがフリーで楽しめるほか、カウンター席やWi―Fiも完備し、思いのまま過ごすことができる。

 お風呂は、大浴場「天上のSPA」に加え、特別室利用客専用の「ひのき大浴場」が利用可能。

 宿泊プランは、旅館スタイルの1泊2食付きのほか、ホテルスタイルの1泊素泊まり、1泊朝食付き、連泊プランなどを用意する。

ICT活用でスマートな滞在を 「カミシホロホテル」が北海道・上士幌町に7月4日(日)開業

2021年6月1日(火)配信

ホテル全景(イメージ)

 北海道上士幌町に2021年7月4日(日)、顔認証システムなどICTの活用でスマートな滞在ができる「カミシホロホテル」が開業する。

 建物は地上2階建て、客室は15室。タブレット端末を使ったスマートチェックインや客室入室時の顔認証システム、客室のデリバリーボックス設置などICT活用によりパブリックスペースでの混雑を避け、非対面でスマートなサービスを提供する。連携するカーシェアリングやシェアオフィス、コインランドリーなども活用しながら、長期滞在もしやすい環境づくりも目指す。

 北海道上士幌町は人口5000人という小さな町でありながら、約1700㌶の敷地面積を有した日本一広い公共牧場「ナイタイ高原牧場」をはじめ、日本で最も歴史のあるバルーンフェスティバルや、産業遺産であるタウシュベツ川橋梁など魅力的な観光資源が多数ある。また自動運転バスのテスト走行やドローンを活用した遭難救助サービスでいち早く協定を結ぶなど、ICTを活用した町おこしの取り組も注目され、全国から多くの視察が訪れている。一方、市街地には宿泊施設が1軒しかないことが、近年の町の課題だった。

大友啓史監督も登壇 ロケツーリズム協議会で島原市や幸田町など全国のロケツーリズムの好事例を共有

2021年6月1日(火)配信

大友啓史監督

 ロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)は5月8日、リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)で今年初の会合を開いた。

 緊急事態宣言下であることからオンラインでも併用し、会員自治体関係者や企業らが実績を共有。映画監督の大友啓史氏も会に参加し、制作者の目線から選びたくなるロケ地の条件や、誘致活動に際して大切なことなどを話した。

 藤崎会長は、「コロナ渦でも感染症対策を万全にし、この時期でもできることをしっかりとやることが大切」と強調。「コロナが収束してから動き出しては遅いので、いかに工夫して成果に結びつけられるか、今からアフターコロナに向けて準備する」と開催の意図を語った。

 長崎県島原市は4月1日、シティプロモーション課のなかに「ロケツーリズム班」を設置した。同課に属する他の班と連携し、観光や移住定住情報の発信などロケ実績をシティプロモーションにつなげることが狙い。4月20日から放送されている「キリンレモン」のCMでは、大三東駅が話題になるなど、ロケ実績の蓄積も進んでいる。また、東海テレビが制作した連続ドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」では、愛知県・幸田町の「町おこし」をテーマにストーリーを展開する回が放送された。町名の使用に加え、筆柿などの特産物が使用されたり、幸田町役場の職員が本人役で出演したりと、ドラマを通じた地域PRにつながったという。

 番組で取り上げられた商品も人気を集めている。千葉県いすみ市の牧場で販売されているブルーチーズは、4月24日に放送された情報番組で紹介された直後から注文が殺到し、現在3カ月以上待ちとなっている。

 企業側の事例では、協議会の会場であるリーガロイヤルホテル東京が、テレビ東京の番組に2週連続で取り上げられ、2日間合計82分23秒の放送時間で、広告換算効果2億9658万円になるという。

 こうした事例発表に加え、「ロケナビゲーター」、「ロケエディター」の2クラスに分かれてのグループワーキングも行った。都市ホテルの販促担当者らが参加した「ロケナビゲーター」クラスでは、互いにロケ受け入れ実績を発表。海外撮影クルーが求めるコロナ対策などの事例を共有した。講師はロケ受け入れ実績を販促に活用する場合、事前に「権利処理確認書」を交わすことがポイントと解説した。

「ロケエディター」クラスクラスではロールプレイングを実施

 一方の「ロケエディター」クラスでは、シーン写真の使用交渉の場面を想定したロールプレイングを行った。受講者同士でこれまでの経験で得た知見などを共有した。

 次回7月9日の会合では、今年初となる首長と制作者による商談会を実施する予定だ。

大友監督が考えるロケ誘致に大事な要素 人との縁が決定打

 協議会による事例発表の後、映画監督の大友啓史氏が登壇した。

 同氏は、同協議会を通じた自治体や企業、製作者らの取り組みを評価する一方で、「縁やタイミングもあるので、ロケ誘致は難しい」と語り、そのための準備の大切さを強調。「即効性を求めるのではなく、地域のいいものを探し、磨き上げ、SNS(交流サイト)など通じ発信し続けるなど、継続することで結果が生まれていき、人との縁ができる」と持論を展開した。

 これに加え、「ロケを誘致する側もドラマや映画に詳しくなり、同じ目線で作品を見てほしい」と思いを語った。

 「選ばれるロケ地とは」という問いに対しては、「我われはその土地の人しか知らない穴場を見たいし、誰も見ていないシーンを見せたいと思っている。なので、地域のオンリーワンの形容詞があるかは大事。それに加え、その土地のことを極めている人を育ててほしい」と要望。

るろうに剣心シリーズの撮影が行われた彦根城(ロケーションジャパン編集部提供)

 映画「るろうに剣心」シリーズの重要なシーンの多くを滋賀県で撮影したことに触れ、「大がかりな仕掛けを使った撮影などは受け入れてくださる人の協力が不可欠。最後の決定打は、やはり人の縁といいロケーションになる」とまとめた。

新企画「温泉宿・ホテル総選挙2021」 6月1日(火)からエントリー開始(温泉総選挙)

2021年6月1日(火) 配信

「温泉総選挙」は6月1日(火)、「温泉宿・ホテル総選挙2021」のエントリー受付を始めた

 観光地の活性化プロジェクトを行う「温泉総選挙」は6月1日(火)、温泉総選挙の企画として「温泉宿・ホテル総選挙2021」のエントリー受付を始めた。日本全国にある温泉地と宿・ホテルの相互的な魅力を発信し、旅行需要の創出を目指す。

 応募施設は、リゾートホテル部門や、絶景部門などの基本部門12部門から1部門と、露天風呂部門やワイン部門、アメニティ部門などといったこだわり部門26部門の中から3部門まで選ぶことができる。

 エントリーは6月28日(月)まで。全国の温泉宿とホテルがエントリー対象となる。投票期間は7月1日(木)~10月20日(水)まで。ランキングの発表は11月中旬を予定。表彰式は温泉総選挙表彰式と同日開催となる。

 同プロジェクトの主催は、旅して日本プロジェクト、運営事務局はジャパンデザインが務める。5省庁(内閣府、環境省、総務省、経済産業省、観光庁)が後援する。

 

全旅連青年部 コロナ禍で「今、宿がやっていること」リポート 「食事の時間・内容の工夫」「チェックイン・アウトの柔軟化」など

2021年6月1日(火) 配信

提供する食事の時間や内容を工夫する宿が多いようだ(写真はイメージ)

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(星永重部長)はこのほど、コロナ禍で「今、宿泊施設がやっていること」について会員施設にオンライン調査を実施した。新たな旅のスタイルや生活様式が進むなか、「提供する食事の時間・内容に工夫」や「チェックイン・アウトの柔軟化」に取り組む施設が多いことが分かった。

 また、厳しい環境のなかで、「経営体質の改善、見直し」と「地域間の連携強化」の必要性を強く感じている結果となった。

 オンライン調査は今年2~3月に実施し、270施設が回答。新型コロナウイルスの影響で、売上高が前年比40~100%減少した施設は全体の74・8%を占めた。このような厳しい状況のなか、新たな取り組みも始まっている。

 「提供する食事の時間・内容に工夫」している施設は56・7%(複数回答)と最も多かった。従業員と宿泊客の安心安全のために、個室や客室での提供を増やしたり、感染対策を強化した提供方法に変えたり、さまざまな工夫がみられる。

 次いで、「チェックイン・アウトの柔軟化」(29・6%)、「ワーケションやリモートワーク向けのプランの開発」(26・7%)と続く。

 コロナ禍以降、前向きになれた瞬間については、「客足が戻り始めたとき」が70・0%、「お客様から『ありがとう』『来てよかった』などの声を掛けられたとき」が69・3%(いずれも複数回答)という結果に。

 「旅行者への批判をやめてほしい」の声も

 一方、今後お客や多くの人に期待すること(複数回答)では、「気に入った施設への口コミ拡散や再訪」(49・6%)がトップ。「旅行者への批判をやめてほしい」(48・9%)にも、多くの声があった。

 さらに、「従業員への温かい声掛け・励まし」が42・2%と、自社スタッフへの気遣いが感じられる。また、「来てもらえるだけでも十分」という切実な声も35・6%に上る。

 コロナ禍の厳しい環境において、今後事業者に求められること(複数回答)では、「経営体質の改善、見直し」と「地域間の連携強化」が、ともに64・4%で最も多かった。マイクロツーリズムの定着に向けて、地域と連携した集客やプラン開発などに着手する傾向がみられる。

 「団体中心から個人中心への転換」を上げる施設は45・2%。「小さな旅館ならではの対応強化と、より個人客向けへのシフトチェンジへのいい機会と捉えている」といった意見もあった。

 「趣味の分野を宿泊と連携することで、コロナ禍でも底堅いニーズがあると思った」や、「『いかに経費をかけずに集客するか』を従業員にアイデアを募り、実行している」など、コロナ禍でも前向きな姿勢を貫く施設も多いようだ。

JTBパブリッシングがプロデュースの「粋福グルメ」、6月1日から福井市内で提供開始

2021年6月1日(火) 配信

第1弾の「粋福(ふくいっぷく)」グルメは、ごはんとパフェ

 JTBパブリッシング(今井敏行社長)が福井県福井市(東村新一市長)の「福井ジェニック事業」においてプロデュースした、写真映えする「粋福(ふくいっぷく)」グルメが6月1日(火)、市内の飲食店で提供を始めた。第1弾は、「粋福ごはん」と「粋福パフェ」をレストランやカフェで展開する。

 「粋福ごはん」は、福井の海の幸や山の幸をふんだんに使い、枡に詰め込めこんだメニューで、器も県内で沈金技術を手掛ける山嘉商店が作成したオリジナル枡を使用する。提供店舗は「旬香酒燈 煙や」や「くずし割烹ぼんた」などで、料金は3300~4400円(税込)となっている。

 「粋福パフェ」は、市民に広く知られている炭酸飲料「ローヤルさわやか」を使用した「ローヤルさわやかジュレ」や「羽二重餅」など福井銘菓を使い、レトロ風なクリームソーダに仕上げた。店舗は「一乗谷あさくら水の駅」、「ごーる堂」、「GIORNO Fukui,(福井駅前・片町)」、「村中甘泉堂」にて、486~1500円(税込)で提供している。

ご当地のグルメ素材を使用したパフェ

 「粋福」グルメは、北陸新幹線福井開業を前に福井市が行っている事業で、JTBパブリッシングは“福井らしさ”を柱に写真映えするメニューを製作している。「粋福(ふくいっぷく)」のネーミングの由来には、旅の途中で一休みする「一服」と、奥ゆかしく深みがある素材の「粋」、福井の日々の暮らしにあふれている様々な幸福という意味での「福」を2文字で表現している。また、「ふくい」での旅の途中に「いっぷく」してもらいたいという思いを、読み方で表現している。

 第2弾は今秋、「粋福スープパエリア」「粋福こびり」の提供を予定し、粋福グルメ4メニュー(ごはん、パフェ、スープ、こびり」が揃う見込みとなっている。

【精神性の高い旅 ~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その2- 源頼朝の二所詣(1)箱根神社(神奈川県・箱根町) 清々しい神水が湧き出る 心身ともに祓われる場所

2021年6月1日(火) 配信

 
 2022年のNHK大河ドラマの舞台は鎌倉時代、第2代執権北条義時が主人公だそうだ。日本人は「判官びいき」なので、源頼朝よりも源義経の方が人気があり、義経の悲劇性からも、頼朝は実の弟も斬り捨てる冷酷非情な人物との印象が強い。

 
 一方で、頼朝ゆかりの地を訪問してみると、実は情に篤い人間であるという伝説が残っているところが多いことに気づく。来年の大河ドラマでは、三谷幸喜氏の脚本でどのような頼朝像が描かれるのか、楽しみである。

 
 頼朝は1180年に伊豆で平氏打倒の兵を挙げたものの、石橋山における初戦で壊滅的な敗北を喫し、真鶴から安房に逃れたのち、態勢を整えて再度平氏に対して挑み、勝利を収めた。

 
 その後、鎌倉幕府を開いた頼朝は、自身が不遇の身であったときに大変お世話になった箱根権現(現在の箱根神社)と伊豆山権現(走湯大権現ともいう、現在の伊豆山神社)を関東の鎮護神として篤く崇敬し、この2カ所を巡拝する「二所詣」を実施した。

 
 

 二所を連続して参詣するというのは大変縁起がいいこととされ、伊勢神宮も内宮と外宮を総称して二所大神宮と言うのもこの風習からである。ちなみに、二所ノ関部屋という相撲部屋があるが、これは旧奥州街道の関東と奥州の境を挟んで住吉神社と玉津島神社二所がセットで「境の明神」と呼ばれており、そこを通っていた南部藩お抱えの力士がこの場所にちなんで「二所ノ関」を名乗り、それが部屋の名前として現代に伝わっている。

 
 頼朝は、箱根権現、伊豆山権現に加え、軟禁状態に置かれていた伊豆滞在時代に崇敬していた三嶋社(現在の三嶋大社)も含めて「二所詣」として新年の恒例行事として毎年参詣した。

 
 頼朝は石橋山の合戦で敗れ、わずか7人の手勢で逃避行を続けていくなかで、箱根権現の僧侶である行実と永実によって匿われ、命拾いをしたことから、生涯その恩を忘れることはなかった。 

 
 「権現」とは、そもそも神道の八百万の神々は実は仏教のさまざまな仏が仮の姿として日本の地に現れたものとする考え方で、それゆえに、箱根権現に僧侶が住んでいるのである。まさに神仏習合である。この体制が明治初期の廃仏毀釈運動が起こるまで継続されていた。

 

芦ノ湖に面した地に鎮座する九頭龍神社本宮の鳥居。海賊船からも見える

 頼朝がどのような想いで箱根権現を参詣していたのかを想像しながら現在の箱根神社を訪ねた。精神性の高い旅は、想像力を最大限に高めながら歩くのだ。

 
 まず感じるのは、清らかさだ。水が境内のそこかしこにこんこんと流れている。箱根山を源として湧き出てくる清冽な水だけでなく、温泉も湧いている。箱根神社は、757年に萬巻上人が村人を苦しめていた芦ノ湖に棲む9頭の龍を調伏し、龍神として鎮斎したことにその起源を見ることができることから、手水舎も9つの龍の頭から神水が流れ出ており、これで身を清めてから参拝することになる。

 

9つの龍の頭から神水がいただける手水舎

 箱根神社と芦ノ湖の湖尻のちょうど中間あたりに、九頭龍神社の本宮が鎮座している。芦ノ湖の遊覧船からその鳥居を見ることができるが、箱根神社を参拝したら、ぜひ歩いて九頭龍神社の本宮にも足を伸ばしてみてはいかがだろうか。その道中、車が通らない遊歩道を歩いて行くのだが、しいんとしたなか、だんだん湖面に浮かぶ鳥居が近づいてくるのが清々しい。九頭龍神社本宮の手前に、小さいけれど、白い鳥居が印象的な白龍神社も鎮座する。白龍神社を参拝すると、神社というものは、本殿や鳥居の大きさに圧倒されて、その勢いに押されて信仰心が生まれてくるのは本質的な信仰心ではないことが理解できる。

 
 ここには異心を祓う清々しい何かがあると訪れるたびに実感させられる。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授、日本国際観光学会会長。「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。

 

「観光革命」地球規模の構造的変化(235) ワクチン接種と東京五輪

2021年6月1日(火) 配信

 東京五輪が目の前に迫ってきたが、現実には政府による3度にわたる緊急事態宣言の発令にも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大に収束の兆しはまったく見えない。菅政権は「安全で安心な大会を開催できる」と繰り返し表明しているが、各種メディアによる世論調査では「東京五輪の中止・延期」が多数を占めている。

 欧米のメディアは、東京五輪が「一大感染イベント」になりかねないという論調を強めており、米紙ニューヨーク・タイムズは東京五輪について「危険なまやかしを止めるときだ」という寄稿を掲載している。欧米メディアは日本におけるワクチン接種の極端な遅れを問題視している。5月中旬の時点での日本のワクチン接種率(1回接種を含む)は約3%に留まり、発展途上国レベルの世界110位前後に低迷。米国のワクチン接種率は約46%であり、接種率約53%の英国では5月中旬から飲食店の屋内営業を再開し、6月には大半の規制を解く予定と言われている。

 そういう状況の中で、5月24日に大きな変化が生じた。先ず米国のCDC(疫病予防管理センター)は、日本の感染状況について最高レベルの「極めて高い」と認定し、「ワクチン接種を終えた人でも変異株に感染し、感染を広めるリスクがある」と勧告した。これを踏まえ、米国国務省は日本への渡航警戒を最高位のレベル4「渡航中止・退避勧告」に引き上げた。また同日に開催されたWHO(世界保健機関)の年次総会で国連のグテーレス事務総長は「世界は新型コロナウイルスとの戦争状態にある。コロナ対策の必要な武器(ワクチン)の不公平な分配に対して戦時体制の論理で対処が必要」と演説した。

 グテーレス事務総長は富裕国10カ国に75%のワクチンが集中している事態を批判したものであるが、日本の一部の識者は「戦時体制」という発言に注目して「参加者の安全が深刻に脅かされている場合(戦時)にはIOCに対して五輪開催の返上が可能であり、賠償金の支払いは不要」と主張している。

 いずれにしてもワクチン接種に全力を投入し、医療体制の万全を期すことで、早く平穏な日常生活を回復させることが政府に課せられた至上命題であり、安心して旅行に出掛けることのできる日々の到来を祈念している。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

別府温泉 杉乃井ホテル 新棟「虹館」7月開業 ツイン中心5タイプ155室

2021年6月1日(火) 配信

新宿泊棟「虹館」

 大分県別府市の「別府温泉 杉乃井ホテル」は、新しい宿泊棟を7月1日に開業する。

 「虹館(にじかん)」と名付けられた新棟は、ホテル敷地内にある屋内プール「アクアビート」に隣接し、地上8階建てとなる。

 ツインルームを中心に、ホテル初となるメゾネットタイプのロフトルームや、2段ベッドなどを配したファミリールームなど、全5タイプ全155室を備える。

 ツインルームはテーブルやイスなどを壁面収納にし、快適なスペースを確保した。安心して小さな子供の添い寝ができるよう、ベッドは1600㍉と1400㍉幅のものを配した。

 ロフトルームやファミリールームは、家族・グループ利用に最適。室内は間接照明で雰囲気を高める一方、カラフルなインテリアを取り入れるなど、カジュアルでわくわくするような空間演出を施した。

ロフトルーム

 1階ロビーラウンジには、非接触型の自動チェックイン機を設けた。エントランス近くには、宿泊客は無料で利用できるロッカーを設置し、チェックイン前に、アクアビートや大展望露天風呂「棚湯」を利用する際の利便性を高める。

 虹館の宿泊料金は2人1室で1人1万5千円から(夕・朝食付き)。食事は人気のバイキングレストラン「シーダパレス」となる。

 虹館オープンに合わせ、ホテルロゴマークを刷新。「乃」のフォントに温泉の湯気を感じさせる「ゆらぎのモチーフ」を加えるなど、シンプルで上品なロゴになった。

 同ホテルは2025年の工事全面完了を目指し、大規模リニューアルを実施中。虹館とは別に、もう1棟の客室棟や立体駐車場を新設するほか、既存の「Hana館」も建て替える予定だ。

NAA、2004年の民営化後初めて赤字 営業収益は約7割減に

2021年5月31日(月) 配信

営業損失は約575億円。新滑走路建設のため次期も赤字を見込む

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)がこのほど発表した2020年度連結決算(20年4~21年3月)によると、営業収益は同69・7%減の718億800万円と2期連続の減収で、04年の民営化以降、最低となった。新型コロナウイルスの拡大による各国の出入国制限や、国内の移動自粛要請などが影響した。

 運用の効率化をはかり、最大限のコスト削減に努めたが、営業損失は575億2300万円(前期407億6700万円の利益)、経常損失は573億3800万円(同391億4600万円の利益)、当期純損失は714億5300万円(同244億2300万円の利益)といずれも民営化後初の赤字となった。

 次期連結業績予想は営業収益が前期比11・4%増の800億円と3期ぶりの増収を見込むが、営業損失620億円、経常損失660億円、当期純利益は670億円と予想する。

 同社は日本国民の多くがワクチンの接種を終えた今秋以降に、国内線から国際線の順に需要が増加すると予測。「本格的な回復は22年度になる」とみる。

 業績予想は最悪の状況を想定しており、今後上向く可能性を踏まえて算定している。

 田村社長は営業損失と経常損失の予想を今期よりも悪化させたことについて、「(NAAは)利用者が収束後、コロナ前より増えると見越している。29年度までに3本目の滑走路を建設しなければならない」と述べた。

 また、東京オリンピックの収益については、海外観客を受け入れないことから「売上への貢献はわずかだろう」との見通しを示した。