基本計画に東北復興、13、16年数値目標見直し

会見する溝畑宏長官
会見する溝畑宏長官

 観光庁では観光立国推進基本計画の見直しを進めているが、溝畑宏長官は11月18日の会見で、基本計画に福島を中心とする東北復興や、震災後に議論を中断している休暇改革について盛り込む意向を示した。年内に骨組みを固め、年度内の閣議決定を目指す。

 数値目標については、2019年に訪日外客数2500万人、その後3千万人という長期的目標については変わらないことを説明。ただし、13年に1500万人、16年に2千万人という中期的目標に関しては「原発事故の影響もあり見直しの可能性もありうる」(溝畑長官)と示唆した。また、基本計画には東北復興への支援策も重点的に盛り込む考え。溝畑長官は、「とくに福島の問題が大きく、福島の復興が大きな課題」と力を込めた。そのほか、「選択と集中」や「競争力」をポイントにあげ、「受け入れ環境の底上げも含め、アジアのマーケットのなかで日本の独自性をアピールできる競争力を身につけなくては」と語った。

 同じく基本計画に盛り込む予定という休暇改革については(1)祝日法の改正による休暇の分散化(2)家族の時間づくり(3)ポジティブ・オフ運動の3つを柱に挙げる。休暇改革では昨年度から議論を進め、全国を2、3ブロックに分け、秋に大型連休を作るという当時の民主党案で概ね固まっていたが、3月の震災を受け一時議論をストップ。溝畑長官は「ライフラインや物流が正常化した時点で議論を再開する」と話し、タイミングを見て議論を再開する方針という。

“事前通知と承諾を”、第4項追記で合意

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長)と旅行予約サイト「じゃらんnet」を運営するリクルートは11月17日、リクルートが同サイトに掲載する旅館・ホテルのフェイスブック公式ページを一方的に作成した問題について、同サイト「宿泊施設等予約受付システム利用約款」の第21条に、掲載施設への2週間前の事前通知と承諾を得ることを明文化した第4項を追記することで合意。これをもってフェイスブック問題にはけりをつけ、お互いのさらなる発展のため協力していくことを確認した。

佐藤会長(左)と冨塚カンパニー長
佐藤会長(左)と冨塚カンパニー長

 7月1日、リクルートは旅行予約サイト「じゃらんnet」に掲載する旅館・ホテルのフェイスブック公式ページを、宿泊施設側への告知なしに一方的に作成し公開した。これに対し、旅館業界が不信感を抱き猛反発。多くの旅館・ホテルを組合員に持つ全旅連は8月19日に、公開を希望していない組合員施設のフェイスブック公式ページの削除を要求。さらに、(1)他の情報媒体に施設情報を掲載する際の、掲載2週間前までの掲載内容の通知(2)施設情報の掲載により営業活動に影響を及ぼす場合の、書面による具体的な説明(3)施設の営業活動に制限や影響を及ぼす場合の、掲載前の宿泊施設への承諾(4)21条が、リクルートが施設の営業主体を名乗り、情報を掲載することを許容するものではないこと――という4点の要望をリクルート側に通知した。

テーブルに着く全旅連側とリクルート側
テーブルに着く全旅連側とリクルート側

 9月30日には、フェイスブック公開の意思を示している宿泊施設以外の削除が完了。リクルート側から全旅連が要求した4点について協議申し入れがあり、10月19日に問題解決へ協議会を実施。協議を重ねた結果、今回の第21条への第4項追記の合意に至った。

 全旅連の佐藤会長は「4点の要望に対し誠意をもって対応をいただき、ネット販売がますます発展するよう今後、協力して協議していきたい」と語った。

 リクルートカスタマーアクションプラットフォームカンパニーの冨塚優カンパニー長は「お互いにWIN―WINの関係が作れるよう意識してやってきたが、今後、お互いと日本の観光のさらなる発展に寄与できるよう前向きに議論し、取り組んでいきたい」と語った。

 今回追記される第21条の第4項は改定日を11月18日とし、適用開始は12年1月1日となる。両者は今後、お互いの意思疎通や双方の発展のため、年4回程度の協議会を開き、コミュニケーションをはかっていくという。

 追記された第21条の第4項は以下のとおり。

 当社が第1項に規定する施設情報の利用許諾に基づき、ガイドブック等を作成する場合において、掲載施設による作成と誤認される可能性が高い方法でなされる場合には、掲載施設に対し掲載の2週間程度前をひとつの基準として、事前通知のうえ、承諾を得るものとする。

No.297 Google Insights for Search - 検索データを有効活用

Google Insights for Search
検索データを有効活用

 日々、多くの人がパソコンやモバイルで"ググる"。世界中で考えればその検索数は膨大な量になり、まとめれば最も規模の大きなマーケティング調査になり得る。それを誰でも無料で利用できるサービスが、Googleが提供する「Google Insights for Search」だ。グーグル・広告営業本部の小川淳営業統括部長は、これらのデータを有効活用することで効果的なプロモーションや集客につなげられると主張する。活用方法などを聞いた。

【聞き手=増田 剛、構成=飯塚 小牧】

<自社集客強化のツールに>

 1998年に米国で誕生したグローバル企業のGoogle。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」という理念のもと、検索のみならず、さまざまなサービスを展開してきた。その間、各国にも事業を拡大し、2001年8月に日本法人を設立。今年10周年を迎えた。

グーグル広告営業本部 営業統括部長
小川 淳氏

 広告営業本部の小川淳営業統括部長は旅行業、小売業などをまとめているが、そのなかでも旅行業の営業担当者は10人以上が在籍する最大規模のチームだ。「ある程度の規模がある国では、業界別に営業担当者が分かれており、新しいオフィスの立ち上げの際にはまず、旅行業の担当者が置かれます。グーグルの広告主のなかでも、重要な業界の1つです」。実際のモノを売るわけではなく体験を売るという旅行業は、ほかの業界と比べてインターネットとの相性がいいという。

 

※ 詳細は本紙1444号または日経テレコン21でお読みいただけます。

田舎と都会の魅力を知る ― 本気でカッコイイ宿(12/1付)

  本紙11月21日号の連載コラム「トラベルスクエア」で、松坂健さんは「旅の醍醐味とは、旅をやめること」と書いている。「どんな都市も観光地も、そこが『留まる』に値するような価値を持っているかどうかが評価軸」と主張している。「旅で訪れた地に暮らす」という究極の旅の醍醐味を、旅慣れた松坂さんらしい旅人の視点から逆説的に語っている。先日、「秘湯・古湯をめぐりて」という本を出版した桂木誠志さんと夜、会食した。その際に、桂木さんは「今夏の定年を機に、来年故郷の熊本県天草市に戻って若者が生活できるようなまちづくりをしたい」と熱弁をふるった。「観光客もいいけど、それだけでは単なる消費にすぎないからね」。
「田舎」と呼ばれる多くの地域は、第一線をリタイアした都会暮らしの熟年や高年層向けに、自給自足可能な田畑とともに定住できる民家の提供などを行っている。一過性の旅による消費ではなく定住なので、受け入れる自治体としてはありがたい話ではあるが、桂木さんは若者の定住にこだわる。「若い人が天草で働き、結婚し出産して生活していく。そのためには若者がしっかりと働き、生活できる雇用の仕組みを創り出していかなくてはならない」という。難題には違いないが、挑戦しがいのある取り組みである。
一橋大学の学生で、学生社会団体TI―RAの代表を務める知花喜与丸さんは、自分が生まれ育った沖縄では、若者が「未来に不安を感じている」と危惧し、「沖縄を担う次世代の若者がちゃんと就業し、活躍できる市場・価値・文化を持った沖縄になるように」と、地元の大学生を集めて「沖縄県活性化ビジネスアイデアコンテスト」を実施した。今後もさまざまなイベントを企画していくという。多くの地域では、若者がやりがいを感じて働く場が少ないので田舎を捨て上京し就職を求める。
しかし、東京だって全国の若者が競って安定的な企業を目指してくるから就職難で、今春の大卒の就職率が61・6%という信じられない数字が出ている。
大事なのは、田舎と都会の両方の魅力を知ること。そのうえで地域に根差し、地域の若者たちの雇用を確保しながら、都市生活者たちが憧れる豊かで文化的な空間と時間を築き上げる旅館などは、本気でカッコイイと思う。

(編集長・増田 剛)

山梨ヌーボーが解禁、都内でPRイベント実施

横内知事(左)、齊藤会長
横内知事(左)、齊藤会長

 山梨県ワイン酒造組合(齊藤浩会長)は11月3日、東京都港区の日比谷公園で山梨県産の2011年の新酒ワイン解禁を祝うイベント「2011山梨ヌーボーまつり」を開いた。試飲コーナーには県内のワイナリー36社が丹精込めて醸造した60銘柄以上のボトルが並び、解禁されたばかりの新酒ワインを楽しもうと多くの人が集まった。

 齊藤会長は「今日はお披露目の第1日目。美味しい新酒ワインをゆっくりと楽しんでいただきたい」とあいさつした。また「名誉ソムリエ」の称号を持つ横内正明山梨県知事も登壇し、「山梨のワインはヨーロッパをはじめ海外でも高い評価を得ている」とアピールした。日本ワインを愛する会の副会長でもある俳優の辰巳琢郎さんも駆けつけ、新酒の解禁を祝った。

 山梨県ワイン酒造組合は08年からボージョレー・ヌーボーに先立つ11月3日を「山梨ヌーボー解禁日」として独自に設定。PRの一環として行われた本イベントでは入場時(入場料2千円)にもらえる専用グラスで新酒ワインを楽しめる試飲コーナーや、気に入った銘柄を購入できる販売ブース、甲府名物の鳥モツ煮やヤマメの塩焼きなどが並ぶ特産品販売コーナーなどが設けられた。同イベントは19、20日に甲府市でも実施された。

約4万人が来場、秋田のごま餅がトップに

<アンテナショップフェスティバル>

エントリーしたスイーツ群
エントリーしたスイーツ群

 福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」と、新潟県のアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」は共同で、都内23道県のアンテナショップが両会場に集まり、各道県が誇る代表的な食品を試食・販売する大型イベント「アンテナショップフェスティバル」を11月3―6日に開催。4日間合わせて延べ、3万9200人が来場した。

 目玉企画である「アンテナショップスイーツ№1決定戦 ASS―1グランプリ」では、24県の自慢のスイーツが一同に介し、大試食会を開いた。300を超える投票の結果、秋田県の「まち子姉さんのごま餅」が1位に選ばれ、4年連続の人気№1を獲得。2位に北海道の「赤いサイロ」、3位に福井県の「大福あんぱん」、4位に山口県の「荻・夏みかん菓子かおり」、5位に鹿児島県の「おさつほっこり」、6位に徳島・香川県の「鳴門うず芋」、7位に山梨県の「大吟醸粕てら」、8位に香川・愛媛県の「母恵夢」、9位に高知県の「塩けんぴ」、10位に富山県の「白えび紀行」と続いた。

23道県の物産展
23道県の物産展

 そのほか、震災で大きな被害を被った岩手・宮城・福島の東北3県を応援するため、「東北3県応援コーナー」を設置。都内の他県アンテナショップ同士が協力し、3県の選りすぐりの美味しいものを販売した。

 参加アンテナショップは以下のとおり。

 北海道/北海道どさんこプラザ▽青森県/あおもり北彩館▽秋田県/あきた美彩館▽山形県/おいしい山形プラザ▽茨城県/黄門マルシェいばらき農園▽山梨県/富士の国やまなし館▽新潟県/表参道・新潟館ネスパス▽新潟県佐渡市/丸の内佐渡特選館▽石川県/加賀・能登・金沢・江戸本店▽福井県/ふくい南青山291▽富山県/いきいき富山館▽奈良県/奈良まほろば館▽島根県/にほんばし島根館▽鳥取県/食のみやこ鳥取プラザ▽山口県/おいでませ山口館▽香川県・愛媛県/香川・愛媛せとうち旬彩館▽徳島県・香川県/徳島・香川トモニ市場▽高知県/まるごと高知▽大分県/坐来大分▽宮崎県/新宿みやざき館KONNE▽熊本県/銀座熊本館▽鹿児島県/かごしま遊楽館▽沖縄県/銀座わしたショップ

12年秋に運行開始、東京の水陸両用バス

勢いよく入水する水陸両用バス
勢いよく入水する水陸両用バス

 日の丸自動車興業(富田浩安社長)は、このほど東京初の運行となる水陸両用バス「SKY Duckスカイダック」を導入し、11月14日に報道発表会と試乗会を行った。

 富田社長は「陸の観光に加え、水辺の観光を楽しんでもらいたい。水しぶきをあげての迫力の入水は、アトラクション感覚で楽しんでもらえるのではないか。このバスが江東区を走ることで観光客が増え、町がにぎわい発展してくれたら」とあいさつ。江東区の山﨑孝明区長は「東京は運河の町として栄えてきて、なかでも江東区は一番川が多い。137個の橋があり、運河・河川の総延長は50キロにも及ぶ。この水辺を生かす水陸両用バスに期待したい」と語った。

 江東区では2012年秋に水陸両用バスの入出水可能な「川の駅」が出来る予定。日の丸自動車ではこの「川の駅」を利用したスカイツリーや東京駅隣接地の運行ルートを企画している。

北海道中心に視察、中国のブライダル関係者

史団長(左)と大西社長
史団長(左)と大西社長

 中国のブライダル産業関係者ら36人が11月3日から1週間の日程で日本国内を訪れ、北海道を中心にリゾートウェディングの候補地を視察した。

 北京や重慶、河北省、四川省などで事業を展開するオーナーで組織された「中国婚慶協会視察団」(史康●団長)が来日した。中国では08年、道東を舞台とした映画「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」が歴代興行成績1位を記録。ヒットを機に中国国内でロケ地めぐりツアーが相次ぎ造成されるなど、北海道ブームが勢いを増していた。

 震災後、来道者数は減ったが、「年1200万組の挙式が行われる中国で、挙式や新婚旅行の候補地として、北海道に魅力を感じている」(史団長)という。

 一行は函館や定山渓、富良野などを訪れた後、11月7日に道東の阿寒湖に到着。湖上遊覧や映画撮影に使われた「居酒屋」などを見学した。夕刻からは宿泊先のあかん遊久の里鶴雅で歓迎会も開かれ、地元関係者と懇親を深めた。鶴雅グループの大西雅之社長は「阿寒の雄大な景色を伝えることができた」と、今後に期待を寄せる。

※●=ウかんむり+丁

アクセスが復旧へ、旅行会社に安全性アピール

鉄道・道路の復旧状況も説明
鉄道・道路の復旧状況も説明

 和歌山県の白浜町、白浜観光協会、白浜温泉旅館協同組合、白浜町商工会は10月24日、関西圏の旅行会社やマスコミを招き、観光振興対策会議を開いた。9月に発生した台風12号に伴う道路の復旧状況などを視察し、受け入れ態勢に問題がないことをアピールした。

 白浜温泉は直接の被害はなかったものの、南紀エリアの幹線道路の一部が寸断されたことで、高野山や熊野古道などを巡るツアーを中心に、キャンセルが相次いだ。

 当日は、道路の復旧状況を知ってもらうため、高野山から高野龍神スカイライン、国道311号線を経由して白浜温泉へ向かい、大型バスでの移動に問題がないことを確認した。

 ホテルシーモアで開かれた会議には、JR西日本和歌山支社の今井克己支社長も出席し、紀伊天満―那智駅間で一部橋脚が流失した那智川に架かる橋の復旧状況などを説明。「全線復旧後には、特別企画商品なども提供していきたい」と強調した。

 JR西日本によると、紀勢線は12月3日に全線再開する。

 白浜観光協会の沼田久博会長は「白浜は実害がないにもかかわらず、9、10月は前年より3割ほど減少した。エンドユーザーに大丈夫と思ってもらうことが大事。今回、皆さんに復旧状況を見ていただき、問題がないことはわかってもらえたはず。県内のほかの観光地と一緒に“まけるな和歌山”を合い言葉に取り組んでいく。引き続きご支援とご協力をお願いしたい」と述べた。

12年ぶりに仙台で開く、全旅連青年部

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部の第20回東北ブロック大会in宮城大会が11月14日、仙台国際ホテルで開かれた。仙台市でのブロック大会開催は12年ぶりとなる。

 冒頭、一條達也東北ブロック長(時音の宿 湯主一條)は「旅館業である私たちは、現実から遠ざかるのではなく、現実のみを見て、地域のリーダーとして地域を引っ張っていかなければならない。地域から逃げることができない私たちだからこそ、できることを今年から積み重ねていき、5年、10年経ったときに『あのときこういう判断をして良かった』と思える青年部、そして会社経営をしていきたい」とあいさつした。

 全旅連青年部の横山公大部長は「昨日は『宿屋の若旦那大集合~全国うまいもん博覧会』を福島県南相馬市で開いた。夢未来創造委員会が先頭に立って、青年部の力を結集したイベントとなった。地元小学生が笑顔で走り回る姿を見て私たちも元気をもらった。末長い支援を続けていきたい」と語った。

 基調講演にはS・Yワークス代表取締役の佐藤芳直氏が登壇。「宿は、主(あるじ)の主体性に触れる喜びを感じる場。お客が学び、成長できる環境を提供し、思いを馳せ合う関係を築くことが大事」とし、「お客はまだまだ荒れていく。宿としてどういう客と生きていきたいのか。思いを馳せ合える客を、たとえ血を流してでも守る“顧客定義”が不可欠」と強調した。

 続いて福興市実行委員長、ヤマウチ代表取締役の山内正文氏が「これからの南三陸の復興に向けて」をテーマに講演した。