評価制度導入へ、有識者13人が観光産業を激論(観光立国推進ラウンドテーブル)

有識者13人が議論
有識者13人が議論

 観光庁が主催する観光立国推進ラウンドテーブルが1月29日に開かれ、「観光産業の今後について」をテーマに、宿泊業や旅行業のトップ、まちづくり従事者や大学教授など幅広い分野の有識者がテーブルを囲んだ。(1)個々の事業者の収益力アップ(2)国際競争力の強化(3)人材育成――の3点に的を絞り議論。なかでも評価制度の導入について多くの意見があがった。宿泊施設業界の一部からは懸念の声も聞こえるが、今後、観光庁を中心に評価制度の導入へ向け動き出しそうだ。議論の一部を紹介する。

【伊集院 悟】

200人収容の会場は満席となった
200人収容の会場は満席となった

 モデレーターを務めた首都大学東京都市環境学研究科観光科学域特任准教授の矢ケ崎紀子氏は議論のポイントを(1)個々の事業者の収益力アップ(2)国際競争力の強化(3)人材育成――の3点に絞り、進行した。

 「個々の事業者の収益力アップ」では、北海道観光振興機構の副会長も務める鶴雅グループ代表取締役社長の大西雅之氏が、「利益を生み報酬を社員に払える企業水準にしなくてはいけない」と問題提起。ネットで周りの宿の価格を見て値段を下げあっている宿泊業界の「進み過ぎた低価格競争」について指摘した。また、地域が疲弊し、新しい観光地を目指す財源がない現状を報告。「街に余力がなくなっており、財源を見直す必要がある」と語り、阿寒湖で入湯税を上げて、それを地域で環境整備などに使うシステムを検討していることを紹介した。

 ホテル事業を手掛ける森観光トラスト代表取締役社長の伊達美和子氏は税制の問題も指摘し、「宿泊業は装置産業なので当然投資が必要だが、その体力がない。税制の補助制度なども必要ではないか」と語った。

 観光産業政策検討会で座長を務める一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏は日本航空(JAL)の好業績を例に、製造業の仕組みを観光業に取り込む重要性を提起。「日本の製造業の管理体制は世界でも大変優れている。生産効率や管理システムなどをいかに観光業に組み込めるかが次のステップだ」と語った。

 4月に全旅連青年部第21代部長に就任する「ほほえみの宿 滝の湯」専務の山口敦史氏は旅館業法の問題点を指摘し、「学校などの公共施設から100メートル以内に旅館があってはいけないと決められている。旅館業が公序良俗に反するという考えはおかしすぎるのではないか」と語った。

 日本旅行業協会会長でワールド航空サービス代表取締役社長の菊間潤吾氏は、世界の観光業界の中で日本が「ユニークカントリー」と揶揄されている現状を指摘。「取消料は60日前からが世界スタンダードだが、日本は30日前からのため海外の宿泊・観光施設をパッケージに組み込みにくく、海外に対し取消料を30日前からにしてくれないかとお願いしているのが現状だ。世界のスタンダードからズレすぎている」と語った。また、インバウンドにおいては、登録制度の必要性を訴え、「法規制がないため、訪日事業は誰がやってもいい状況になっている。外国人が来日するのに、日本にいる親戚が代理店を通さずにすべて手配するようなことがOKとされる状態。ランドオペレーターの認証制度を作り、正規のバス会社やガイドを使って高品質の旅行を提供する必要がある」と語った。

 また、事業者の収益力アップの議論のなかでは、評価制度導入について多くの意見が出た。評価制度導入へ口火を切ったのは、群馬県みなかみ町でキャニオニングツアーなどを手掛けるキャニオンズ代表のハリス・マイケル・ジョン氏。「顧客の満足度を上げるため、評価制度があった方がよい。ベンチマークで質が上がる」と語った。

 大西氏も「日本人は格付けされたものを好む割に、自分が格付けされるのを嫌う傾向がある。皆が同じ基準で5つ星を目指すのではなく、多くの座標軸のなかで評価されることで、よりその宿の特徴や強みが浮き彫りになってくるのでは」と評価制度導入の利点を強調した。

 観光庁長官の井手憲文氏も「外からの評価は大切。評価されることから逃げずに、自信を持った経営をすることが重要ではないか」と肯定意見。

 山内氏は東京都内のタクシー業界でランク分け評価制度が導入されたことを例にあげ、「ランクが低かった事業者も上を目指し、よりサービスに力を入れるようになった」と紹介した。

 評価軸について早稲田大学商学学術院教授の恩藏直人氏も、朝日新聞の企業イメージ調査で、「一流」の項目では「TOYOTA」などが上位となったが、「身近」の項目では「キューピー」がトップとなったことを紹介し、「ある評価軸では低くても、別の評価軸では高いなど、評価の軸はたくさんあれば差別化や強みにつながる。評価軸の立て方も重要」と語った。

 伊達氏は評価制度のあり方について「すでにネット上で、社会が口コミで評価をしているので、いまさら評価されることに躊躇することはないのではないか。ただ、ミシュランなどのマーケット評価に顧客が付いてくる現状もあるので、評価制度を導入する際には、公的(社会)評価とマーケット評価のすみ分けが必要」と指摘した。

 国際競争力強化の議論では「マーケティング」や「チーム力」などのキーワードがあがり、ユナイテッドツアーズ代表取締役社長の越智良典氏は韓国と比較し、「観光庁以外にも外務省や文部科学省の海外交流事業、経済産業省のCOOL JAPAN事業、在外公館の事業などそれぞれがさまざまな動きをしている。オールジャパンという標語はいいが、実際にうまく機能していない」と指摘した。

 地域活性・観光振興のコンサルティングに多数関わった日田市観光協会事務局長の佐藤真一氏は「成功事例が見えない」と指摘。観光庁が進める観光圏事業を批判し、「全国47カ所に予算を分散するのではなく、予算の選択と集中で、3、4カ所に一点集中し、成功モデル・成功理論を作ってほしい」と意見した。

 人材育成の分野では、ドン・キホーテグループ全体のインバウンドと地域連携事業を手掛ける社長室ゼネラルマネージャーの中村好明氏が学校教育の重要性を語り「子供に旅の楽しさや旅文化を教え、将来観光業界に就きたいと思わせなくてはいけない。『外貨を稼ぐための観光業』をしっかりと認識し、高度な観光業を学ぶことも大切」と語った。

 恩藏氏は、「大学に観光講座を設けるだけでなく、観光業界が大学・教育に目を向けて、単なるインターンシップではなく、もっと踏み込んだ中身のあるものを作る必要がある」と一歩進んだ産学連携の重要性を語った。

No.332  JNTOがセミナー実施 - ムスリム客を日本へ呼びこめ

JNTOがセミナー実施
ムスリム客を日本へ呼びこめ

 訪日市場で近年急成長を遂げているASEAN。東南アジアからの訪日は03年の30万人から12年には69万人まで伸び、13年は100万人を目指す。シンガポール、マレーシア、インドネシアにはイスラム教徒も多く、食事や礼拝など宗教上の留意点がある。日本政府観光局(JNTO)は2月1日、ジャパン・ムスリムツーリズム・セミナーを開いた。「ムスリムフレンドリー」などのキーワードや、受け入れのポイントなどを紹介する。

【伊集院 悟】

 

  

 

 

JNTOシンガポール事務所長
足立 基成 氏

ハラル食と礼拝の確保

 観光庁は13年の訪日外客数目標に1千万人を掲げ、FITの増加とMICE強化、送客元の多様化をはかる。そこで注目が集まるのがASEAN。東南アジアからの訪日外客数は急拡大しており、13年は100万人を目指す。

 同市場で、訪日観光旅行が可能なのは、世帯可処分所得が年間1万5千ドル以上のアッパーミドル層と、年間3万5千ドル以上の富裕層といわれる。インドネシアのアッパーミドル層は09年の551万9千人から、15年には3345万4千人と約6倍に増加。マレーシアとインドネシアを合わせた富裕層とアッパーミドル層は09年の1594万3千人から、20年には1億人に達する見込みで、訪日の大きな市場として期待がかかる。

 

受け入れの事例を紹介
受け入れの事例を紹介

 できる範囲でのハラルを、若者は柔軟で日本文化興味あり

 パネルディスカッションには、アジアムスリム圏の訪日旅行を手掛ける旅行会社フィールドジャパンwith K代表取締役の岸田武雄氏、マレーシアアウトバウンド協会副会長を務め自身も旅行会社を経営するシュハイダ ボルハン氏、北海道でムスリム旅行者の受け入れを積極的に行うリゾート施設やホテルを運営する加森観光社長室長の仙野雅則氏、京懐石でハラルメニューの提供も行う美濃吉外商部マネージャーの八杉よう子氏、沖縄県でムスリムツーリズムに積極的に取り組む沖縄県文化観光スポーツ部観光振興課主査の山城憲一郎氏の5人が、ムスリム訪日旅行者への対応事例と受入サービスの充実に向けて語った。コーディネーターは観光庁国際観光政策課課長の柏木隆久氏。 

 

※ 詳細は本紙1493号または2月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

ICTが普及 ― 土地の魅力はどこに?

 ICT(情報通信技術)が普及して良いところは、都市生活と田舎暮らしの間の情報格差があまり大きくならない点だ。大都市に生活や仕事の場を拘束されずに済む。

 今後さらに、LCCなどの交通網が発達すれば、格安の料金で遠距離の移動も可能となる。物価の安い田舎で生活しながら、都市ともつながるという生き方もできる。自分の人生をどのように生きていくかという選択肢も広がり、生きる自由度も飛躍的に増すのではないかと思っている。

 先端的な人は、東京を離れ、北海道や東北、首都圏近郊では房総半島や伊豆半島、関西や九州、沖縄など、自分が生まれ育った町や、生きてきたなかで好きになった町で暮らしながら、東京で仕事があれば上京するという人が増えている。ゆとりある時間と空間のなかで農業をしたり、子供と遊んだり、豊かな生活を満喫している。

 一昔前の作家をみても、温泉宿をこよなく愛した川端康成は言うに及ばす、坂口安吾は京都・伏見や小田原、取手、伊東などを転々とした。太宰治も甲府で静かな生活を送り素晴らしい仕事をしている。谷崎潤一郎も関東大震災後、生まれ育った首都・東京から、京都、兵庫に移住し関西文化にのめり込んでいった。アーネスト・ヘミングウェイはパリの甘美な蜜を充分に吸い取ったあとは、フロリダのキーウエストでフローズン・ダイキリと釣り三昧の日々を送った。インターネットのない時代で、日本の田舎町や世界の外れで素晴らしい仕事をしている。自分の生き方に合った文化や風土を持つ土地に魅せられて暮らし、人生を楽しんだ人たちだ。

 地方都市を訪れ、空港や駅舎、劇場、旅館を眺めていると、都会的なデザインを拝借してスタイリッシュに仕上げている光景を目にする。だが、残念ながら「無個性」である。機能性重視の時代においては、建築物の無個性化は世界的な傾向であり、やむを得ないのかもしれない。しかし、それでは、その土地で暮らす「人」が魅力なのだという結論になってしまう。

 更地に何かを築き上げる場合、どこかの素晴らしいモデルを真似ることが可能だ。しかし、その土地の魅力が何であるかを掘り起こすには、他所の真似ができない。土着性と深くつながらなければ、誰も足を止めない。

(編集長・増田 剛) 

宮城・名亘を追加、観光地域づくり支援事業(観光庁)

 観光庁はこのほど、広域的な連携による滞在型観光を推進しつつ、観光を通じた復興をはかる「2012年度観光地域づくりプラットフォーム支援事業の復興支援型に、宮城県名取市、岩沼市、亘理市、山元町からなる「仙南沿岸地域名亘観光圏協議会」を追加した。

 観光庁では、観光を核とした地域の再生・活性化をはかるため、観光圏整備法に基づき、2泊3日以上の滞在型観光が可能な観光圏の形成を推進。地域の資源を活用した着地型旅行商品の企画・販売などを行うため、市場と地域のワンストップ窓口機能などを担う「観光地域づくりプラットフォーム」の形成を推進している。

 今回の補助採択によって、同支援事業の復興支援型としては、盛岡・八幡平広域観光圏、南会津着地型観光推進協議会、石巻圏周遊観光促進協議会に続く、4地域目となる。 

東京で観光魅力発信、沖縄ナイトに1500人集う

仲井眞知事
仲井眞知事

 沖縄県と沖縄観光コンベンションビューローは1月29日、東京都内のホテルで、沖縄観光キックオフ・プロジェクト2013「沖縄ナイト」を開き、旅行会社など約1500人の出席者に一層の沖縄観光への協力を呼びかけた。

 仲井眞弘多知事は「昨年は復帰40年の節目。今年3月には新石垣空港の開港がある。さらに政府閣議で那覇空港の第2滑走路増設が決定した。工期も予定より短縮され、5年程度でもう1本滑走路が供用開始となる。沖縄にとって観光リゾートは大きな産業でありもっと飛躍する予感がある。沖縄の新しい魅力を発見してもらい、さらに発展させたい」と述べた。

 続いて山本一太沖縄担当大臣、岸田文雄外務大臣が登壇し「沖縄振興予算や那覇空港新滑走路の工期短縮など安倍首相の沖縄への思いを感じとってもらったのではないか。沖縄には大きな可能性がある。日本を引っ張っていくような沖縄にしていくため政府も振興に向け頑張りたい」(山本大臣)「何度も沖縄を訪れているが、幾度に魅力を感じている。沖縄ナイトのひと時で盛り上がり沖縄の元気を感じてほしい」(岸田大臣)と祝辞を述べた。

 さらに送客側代表として植木義晴日本航空社長、伊東信一郎全日本空輸社長も「沖縄には人々のホスピタリティあふれるもてなし精神がある。沖縄のさらなる魅力アップの手伝いをしていく」(植木社長)、「全日空は18の支店から那覇空港、3つの支店から石垣空港に路線を持っている。今後も沖縄の発展に少しでも寄与できればうれしい」(伊東社長)と語った。

 会場には観光や物産、農産物を紹介するコーナーが設けられたほか、琉球舞踊のアトラクションも披露された。

昼に行われた大博覧会
昼に行われた大博覧会

 同日午後には「沖縄観光&MICEコンテンツフェア~オールおきなわ大博覧会~」も開かれ、沖縄の自治体や観光協会、宿泊施設、運輸、ブライダル関連企業などがブースを出展、旅行会社との商談に臨んだ。

食文化で外客増加を、KANSAI国際観光YEAR2013(近畿6府県)

説明会のようす
説明会のようす

 近畿6府県首都圏観光連絡協議会は1月30日、東京都千代田区の都道府県会館で観光情報交換会を開き、旅行会社や報道関係者に最新の情報を紹介した。関西全体の話題は、関西広域連合を中心に、今年1年間展開する「KANSAI国際観光YEAR2013」。関西の食文化をテーマに世界に発信し、外国人観光客の増加をはかる。

1104-1

 「KANSAI国際観光YEAR2013」は、プロモーション事業として関西広域連合や各自治体、経済団体などが行う海外プロモーションやファムトリップで関西の食をキーワードにした海外観光客誘致活動を実施。また、キャンペーン事業は共通ロゴマークで関西への誘致につながるキャンペーンを実施するほか、空港や駅、ホームページを活用して、食文化や体験できる場の情報を発信する。

 イベントは4月26日―5月6日の「’13食博覧会・大阪」をコア事業に、期間中に関西で実施される食関連イベントを結集し、1年を通じて体験の場を提供する。

 各府県別の情報は、兵庫県が大河ドラマ「八重の桜」の話題で、新島八重の最初の夫・川崎尚之助の故郷を旅するモデルコースを提案。また、神戸市・湊川神社の神幸「楠公武者行列」が5月26日、6年ぶりに開催されることを紹介した。南北朝時代の歴史絵巻を再現するもので、参加者を一般募集している。

 大阪府は南泉州地域を中心に紹介した。とくに、泉佐野市は観光庁が全国で14カ所を選定している訪日外国人旅行者の受入環境整備に係わる地方拠点の1つ。地域全体の魅力は体育の日を中心に、だんじりなど各種の祭が行われることや、海と山の両方を楽しめることをアピールした。

 京都府は、新島八重の夫・新島襄が設立した同志社や夫妻が暮らした旧邸があることなどゆかりが深い。そのゆかり地のなかでも、国の重要文化財に指定されている府庁などを紹介した。

 滋賀県は、3月21日に開館する「ヤンマーミュージアム」を売り込んだ。ヤンマー創業100周年を記念し、創業者・山岡孫吉の出身地の長浜市に設立するもので、建機を動かす体験から船の操縦シュミレーション、自然環境体験のビオトープ、足湯までさまざまな体験ができる施設。教育旅行にも最適だという。

 和歌山県は15年に開創1200年を迎える世界遺産・高野山をPR。2月16日は、港区の高野山東京別院で「高野山カフェ・プチ修行in東京別院」が開かれ、阿字観瞑想などが体験できる。

 さらに奈良県は十一面観音を8体巡り、人生の厄災から救われるという信仰の「八十八面観音巡礼」を紹介。全国に7体ある国宝の十一面観音像のうち、県内にある3体と、重要文化財の十一面観音像5体を巡る。長谷寺東京出張所の小林観秀主事は「十一面観音は、さまざまな表情があり、人間に最も近く、気持ちを汲んでくれる仏様として慕われている。8カ寺が連携し、1泊2日で満足感や達成感を味わっていただくとともに、奈良のコアな部分に自然と入っていけるようにと考えた」と今回の取り組みを説明した。

「スマホ」に注力、専用ページ拡充へ(楽天トラベル)

楽天トラベル・岡武社長
楽天トラベル・岡武社長

 楽天トラベル(岡武公士社長)は2月4日、東京都内で新春カンファレンス2013を開いた。岡武社長はモバイル経由の流通が順調に伸張しているとし、スマートフォン専用のモバイルページを充実させ注力していく方針を示した。

 岡武社長は、「モバイル経由の流通は、スマートフォン(スマホ)の比率が70%を超えている。今後、スマホやiPadなどを使用した旅行予約が重要になってくる」と述べた。同社では、パソコンとスマホの利用者を別に考え、スマホ専用の宿泊施設などの主要ページ作成、操作画面などのカスタマイズ編集、最適化の必要性をポイントとした。同編集機能は、1月末に発表され、施設側が編集を始めている。マーケティング強化は、楽天市場と楽天トラベルの2つのサービスを使い、検索エンジン対策とアプリのダウンロード数の促進をはかる。

 岡武社長は13年のキーワードとして、(1)モバイル(2)オンラインカード決済(3)ダイナミックパッケージ(4)ユーザビリティの向上(5)システム連携の強化(6)チャンネルの拡大(7)インバウンド(8)海外展開――の8点を挙げた。

 楽天市場のモバイル・タブレットシェア流通総額は、2013年末に42%以上になると予測。各店舗のスマホページの編集は96%が編集済みとし、1店舗あたりの平均売上高は、編集したパーツ数に比例したかたちで上がっている。

楽天・三木谷会長
楽天・三木谷会長

 楽天代表取締役会長の三木谷浩史氏は、「日本の携帯電話が、スマートフォン、タブレット化してきた」と話し、「今後は、スマホ機能の向上を目指し、GPSやアクティビティ情報、グーグルMAPなどの充実をはかる。パソコンで実現できなかったものを『いつでもどこでも』の利点をもったスマホでかたちにしていく」と述べた。

 インテル社の共同創業者であるゴードン・ムーア氏の「ムーアの法則(18カ月ごとに倍になる)」を引き合いに出し、「スマホの計算力は1・5年で2倍になり、10年後には100倍になる。近い将来、手の中にスーパーコンピューターを持つ時代になる」と語った。

 

創立60周年盛大に、茨旅協

木村進会長があいさつ
木村進会長があいさつ

木村会長「さらに前進」

茨城県旅行業協会(会長=木村進・木村トラベル社長)は1月24日、群馬県・草津温泉の草津白根観光ホテル櫻井で、創立60周年記念式典を開いた。会員や賛助会員、協会関係者約200人が参加した。記念講演は鈴木宗男新党大地代表が「わが道・天国と地獄を見た男」と題した講演を行った。

 

 式典に先立ち、木村会長は「60年という長い歴史を振り返り、会員も増え、発展できたのも諸先輩や、会員、賛助会員の協力のおかげであり、感慨ひとしお」と述べた。さらに、「創立60周年を契機に今まで支えてくれたお客様、関係者に感謝の気持ちを忘れることなく、さらに前進していきたい」と誓った。

 来賓として、二階俊博全国旅行業協会会長の代理として鈴木明治副会長をはじめ、國谷一男全国旅行業協会関東地方協議会議長・栃木県旅行業協会会長、武田将次郎茨城県旅行業協会賛助会会長、武井哲郎群馬県旅行業協会会長がそれぞれの立場で祝辞を述べた。

 このほか、木村茂男全国旅行業協会参与、浅子和世埼玉県旅行業協会会長、斎藤忠義千葉県旅行業協会会長、玉川明茨城県空港対策副参事、黒岩信忠草津町長、山田寅幸草津温泉観光協会会長らが来賓として出席した。

 式典では協会創立60周年を期して、会員、賛助会員の特別功労表彰も行われた。

会長賞はNOEに、東北の企画コンテスト(JATA復興支援プロジェクト)

吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)
吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)

 日本旅行業協会(JATA)は1月30日、昨年12月に実施した「JATA東北復興支援プロジェクト」に参加した会員が、東北の企画を競う商品企画コンテストの結果を発表した。132コースの応募のなかからJATA会長賞にはエヌオーイーの岩手県の商品が、国内旅行推進委員長賞にはジャルパックの山形県の商品が選ばれた。

 昨年12月3、4日の1泊2日で実施したJATA東北復興支援プロジェクト「行こうよ!東北」は、会員会社の社員など約1千人が東北の各県に分かれて視察を行い、震災以降の変化や新しい観光スポットについて情報収集を行った。コンテストはこの成果として、具体的に東北への旅行需要拡大をはかるために実施するもので、優秀企画の12コースは実際に商品化される。

ジャルパックの二宮社長(右から2人目)
ジャルパックの二宮社長(右から2人目)

 選考は(1)企画内容が斬新で、東北の新たな魅力を引き出しているか(2)円滑な旅程スケジュールか(3)代金設定がリーズナブルか――の3点を中心に、全132コースのうち各県2コースずつ、計12コースを各県賞に選出。そのなかから、JATA会長賞としてエヌオーイーの「いわて・みやこソウルフード&B級グルメ満喫!コンパクトでも内容ギッシリ1泊2日」と、国内旅行推進委員長賞としてジャルパックの「高畠・楢下宿と50年に一度の御開帳『山寺』を専門家と巡る旅」を表彰した。

 発表同日に開いた表彰式で、JATA副会長で国内旅行推進委員会の吉川勝久委員長は「これを契機に我われJATAの旅行会社それぞれが、しっかりと東北地方へ送客をしていきたい。今後、どのようなことができるかは検討中だが、旅の力での東北復興は継続していかなければならない」と東北支援に今後も注力することを語った。

 また、表彰を受けたエヌオーイーの林田建夫社長は、「JATAがこれほど大きなプロジェクトを行ったことはこれまで記憶になく、それだけ東北に懸ける想いが我われに伝わってくる。大災害から2年近くが経とうとしているが、東北はまだまだ復興途上だ。この企画を商品化して、さらに復興の一助となればと思っている」と述べた。ジャルパックの二宮秀生社長は「この企画を含めてしっかりと商品化し、送客をすることで本業である旅の力で復興支援の後押しをさせていただきたい」と語った。

 表彰式に出席していた岩手県東京事務所の大久保立氏に企画について聞いたところ「被災地に加え、B級グルメもあり岩手のディープな魅力を盛り込んでいただいた」とコメント。山形県東京事務所の須藤英克氏は「山寺は50年に一度の御開帳なのでアピールできてうれしい。期間は4月27日―5月31日と短いが、多くの人に訪ねてもらいたい」と話した。

 2社以外の優秀賞は次の各社。

 【青森県賞】ユーラシア旅行社▽びゅうトラベルサービス【秋田県賞】近畿日本ツーリスト▽イーホリデーズ【岩手県賞】毎日企画サービス【宮城県賞】京王観光▽ユーラシア旅行社【山形県賞】風の旅行社【福島県賞】クラブツーリズム▽日本旅行

前橋ドームに5千人、地旅大賞の表彰式も(ANTA国内観光活性化フォーラム)

二階俊博会長があいさつ
二階俊博会長があいさつ

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)が主催する「国内観光活性化フォーラムin群馬」が1月23日、グリーンドーム前橋(前橋市)で開かれ、全国の旅行会社など約2千人と一般客約3千人の合計5千人が集まった。今年は初めて観光・物産のPRブースを一般開放し、地元紙への折り込みチラシなどでPRした結果、一般客が大勢来場した。

 開会式で二階会長は「ようやく東北を中心とする東日本の観光復興の兆しが見えてきたところ。このフォーラムを全国津々浦々で開き、観光の輪を広げていきたい」と語り、開催都市群馬について「群馬は観光資源がたくさんあり、発展させることができる。このフォーラム後に群馬の観光がより活性化するよう、皆で群馬に送客をしよう」と呼びかけた。

福田康夫元首相
福田康夫元首相

 群馬が地盤の大会名誉実行委員長の福田康夫元内閣総理大臣は「群馬は東京から1時間強と近く、ここ前橋から車で30、40分も行けば、たくさんの温泉地がある。全国から集まっている会員の皆さんはぜひ全国で群馬をPRしてほしい」と呼びかけ、「二階会長は、9・11の際はブッシュ大統領の依頼でニューヨークへ2千人の訪問団を連れ、靖国問題で日中関係が揺れたときには6千人を北京へ連れていった。外国からの信頼も厚く、観光業界で果たしてきた役割は大変大きい」と二階会長を讃えた。そのほか、来賓の井手憲文観光庁長官や大澤正明群馬県知事、山本龍前橋市長があいさつをした。

 シンポジウムでは、井手長官が「国内観光旅行の推進」について講演し、東北観光推進機構の長谷川博樹国内事業部長が「東北の観光の現状」について報告した。

地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長
地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長

 第3回地旅大賞の表彰式では、大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀代表らへ株式会社全旅の池田孝昭社長から賞状が手渡され、後藤社長は「『地旅』は本当に小さな旅。今後も地元のボランティアガイドと一緒になって楽しい旅を作っていきたい」と喜びを語った。

パネリスト
パネリスト

 続いて、コーディネーターにまちづくり観光研究所の奥坊一広所長、コメンテーターに全旅の池田社長を迎え、青森地域社会研究所の末永洋一特別顧問、井門観光研究所の井門隆夫代表、五木田・三浦法律事務所の三浦雅生弁護士、群馬女将の会の塚越裕子会長の4人がパネリストとして「『地旅』と地域活性化の方向性」についてディスカッションした。末永氏は、「地元の人しか知らない体験・物語をどう商品化していくのか。地旅は地元に密着した旅行会社じゃないと作れない」とANTAが地旅に取り組む意義を語った。井門氏は「これからの日本経済・観光を支えるのは中小企業。大手旅行会社は2、3年で転勤する人ばかりで、その土地の良さを売る企画力はない。ずっと地元にいる中小の旅行会社なら地元の良さを知りつくし、企画力がある」と強調。「観光協会が着地型旅行に取り組み始めているが、2次交通の手配ノウハウがなく、店終いも早く、最少催行人数も高くてなかなか良いものができず、(1)そば打ち(2)農業体験(3)まち歩き――のありきたりな3つしかできない」と現状を指摘し、「その点旅行会社なら手配力もある。もっともっと着地型商品に積極的に取り組んでほしい」と語った。

 翌日には、富岡製糸場や城下町小幡、ブラジル町大泉など県内各地をめぐる7コースのエクスカーションが実施された。

 次回の「第10回国内観光活性化フォーラムin和歌山」は14年2月11日に和歌山ビッグホエールで開かれる。

 第3回地旅大賞の各受賞商品は次の通り。

 【大賞】「古代ロマンが漂う田舎でボランティアガイドが活躍!歴史人に触れ合い古代の自然に触れ合う旅」日本海トラベル(山形県)

 【優秀賞】「郷土愛深い『語り部』がご案内――町家で食す郷土料理と華麗な犬山祭屑山」ツアー・ステーション(愛知県)▽「四季折々の美しい景観と村人との触れ合いを何度も楽しむシリーズの旅――南阿蘇村7不思議の旅」アースランド観光(熊本県)

 【特別賞】「お祝い膳にて還暦祝い――廃校利用同級会プラン」アールエイチ企画(福島県)▽「役者がご案内する浅草ガイドツアー全3コース」セグラスツーリズムエージェンシー(東京都)▽「三嶋大社正式参拝ツアー」三島市観光協会(静岡県)▽「環境船めぐみで行く『冬の湖北・余呉の食と暮らし』を訪ねる旅」地域観光プロデュースセンター(滋賀県)