三陸鉄道 全線つながる、震災から3年「復興のシンボルに」

望月社長が運行再開宣言
望月社長が運行再開宣言

 東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸鉄道(望月正彦社長、岩手県宮古市)が3年ぶりに全線開通した。4月5日には南リアス線の釜石―吉浜間(15キロ)、翌6日には北リアス線の田野畑―小本間(10・5キロ)が復旧し、地元住民らが沿線に集まり、列車を笑顔で迎え全線開通を祝った。6日に宮古市で開いた記念式典で望月社長は運行再開宣言とともに、さまざまな支援に対して謝意を述べた。復興がなかなか進まない厳しい環境で三陸鉄道は新たな一歩を踏み出した。
【増田 剛】

 北リアス線の全線開通を迎えた6日、午前5時15分の始発電車が出発する岩手県・久慈駅には、復旧を待ちわびた地元住民や鉄道ファン、海外からも台湾の観光客らでごった返した。沿線には列車に向かって大漁旗や手を振って喜ぶ多くの地域住民の姿が見られた。

 宮古市で開かれた全線開通を祝う式典で望月社長は「三陸鉄道は生活の足としての役割を果たすとともに、産業振興や地域の活性化に貢献することを誓う」と力強く運行再開を宣言した。

宮古駅前での記念式典
宮古駅前での記念式典

 太田昭宏国土交通大臣は「三陸鉄道は1984年の開業から30周年の節目の年に全線運行再開を迎えた。被災直後から想像を絶する苦労があったと思う」と労い、「明治三陸大津波の復興のシンボルとして先人が三陸鉄道を提案してから約120年が経った今、三陸鉄道は東日本大震災の復興のシンボルとして再び甦ろうとしている。全線復旧した三陸鉄道は被災地を勇気づけるとともに、復興の加速に向けた原動力になると確信している」と述べた。

手や旗を振り三陸鉄道の復旧を喜ぶ沿線の住民たち

 根本匠復興大臣は「安倍内閣では復興の加速化を最重要課題と位置付けている。被災地全体の復旧、復興事業が一日も早く進み、被災された方々が復興に希望を持つことができるよう復興庁が司令塔となり全身全霊を傾けていく」と強調した。

 達増拓也岩手県知事は「三陸鉄道が全線運行再開できたのは、国による支援、全国からの応援、地域の皆さんの熱意と尽力など地元の底力と、さまざまなつながりの力が合わさったもので感謝したい。『線路は続くよ どこまでも、いつまでも』という思いで、持続可能な発展へ未来に向かって進んでいく誓いの機会にしたい」と語った。

 三陸鉄道沿線地域を代表して山本正徳宮古市長は「三陸鉄道の復活を機に、山田線の復旧もしっかり成し遂げていかなければならない。さらにその先には大船渡線の復旧もある。これからも力を合わせ、三陸沿岸に一本の鉄道を通し、地域住民の足として守っていきたい」と述べた。

 全線開通に合わせてクウェートの支援により導入した新車両もお目見えした。

久慈駅で始発列車を待つ
久慈駅で始発列車を待つ

久慈から宮古へ開通
久慈から宮古へ開通

No.368 入湯税を活用した温泉まちづくり - 地域維持には「安定的財源」必要

入湯税を活用した温泉まちづくり
地域維持には「安定的財源」必要

 日本旅館協会は2月19日、東京ビッグサイトで開いた経営セミナーで、大分県・由布院温泉「玉の湯」社長の桑野和泉氏が「入湯税の活用による温泉地のまちづくり」について講演。桑野氏は「まちづくりには安定的な独自財源が必要」としたうえで、「目的税として利用客から預かった入湯税は有効に活用し、満足度を上げることでお返しをすることが使命」と述べ、由布院観光協会で会長を務める立場からも、長期的な視野に立ったまちづくりの重要性を語った。

【増田 剛】

 
 
利用客から預かった入湯税、還元できる環境整備が使命

 日本旅館協会の女性経営者委員会でメンバーが集まったとき、それぞれの温泉地で、入湯税の使い道についてあまり話題になっていないことがわかり、そこで事務局の協力を得て、約3200会員にアンケートを実施しました。年末の多忙時にも関わらず、483件の回答がありました。

 アンケートの回答を見ると、「市町村の税収額」について「知っている」が55%、「知らない(未回答含む)」が45%。「市町村の入湯税の使途」については、「知っている」が41%、「知らない(同)」が59%と、地域の中で約6割の方々がお客様からお預かりして納めている入湯税がどのように使われているかを知らないという結果になりました。

 また、「入湯税の使途について市町村へ要望を提出したことがありますか」では、「ある」が31%、「ない(同)」が69%。さらに「市町村での入湯税の会計上の取り扱い」については、「一般財源」が全体の57%を占め、「特別会計」は17%にとどまり、「未回答」は27%となりました。

 

※ 詳細は本紙1541号または4月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

人口減少で地域が荒廃 ― 旅館は「地域の文化的サロン」に

 東日本大震災から3年余り経て三陸鉄道が全線開通した4月5、6日に合わせて東京から二戸に新幹線で向かい、二戸から久慈までバスで行った。二戸駅は4月だというのに雪がちらちらと舞っていた。久慈までの道程は、ほとんど人影はなく、山道は少し荒廃していた。

 6日午前5時15分発の久慈駅発、宮古駅行きの始発列車に乗り、電車の車窓から北リアス線の海を眺めた。海の色が綺麗だった。大漁旗を振る地元の人たちや、ホームに集まって全線開通を祝う地域の人たちの笑顔を映して列車は通過して行った。

 全線開通記念式典までの時間、私は東洋大学准教授の島川崇さんと田老駅に降り、復興がなかなか進まない風景に佇んだ。駅に降りても立ち寄る場所も、人もいない。ただ、街を取り囲む万里の長城のような高さ10メートルの防潮堤の上に立ち尽くし、田老観光ホテルまで歩いて、言葉少なに駅まで戻った。

 今も全国から被災地観光として訪れる人がいるが、街そのものがなければ、数十分間そこに立ち止まり、そして去っていくだけだ。まちの復興には鉄道の復旧は欠かせない。しかし、観光客を迎え入れるには、そこに地域住民の生活や暮らしの匂いがなければ成り立たない。

 4月9日付の読売新聞1面の「東京はブラックホール」という記事は衝撃的だった。「東京」というブラックホールが地方の若者などを吸い取って地方を滅ぼし、自らも狭い住宅事情や薄い人間関係などで、結婚や出産を妨げ、衰退していく。2040年以降、全国の500以上の自治体が「消滅」する可能性があるという。国土交通省は50年には国土の6割が「無人」となると推計しており、過疎地域の荒廃がさらに進むことになる。読売新聞の記事では、島根県益田市が4月1日に「人口拡大課」を新設した山本浩章市長の危機感と「必ず人口を増やす」という決意を紹介している。

 大分県・由布院温泉「玉の湯」社長の桑野和泉氏は「観光をしっかりと取り組んでいれば地域の人口は減らない」と語る。由布院市も人口約3万5千人の小さなまちである。しかし、全国から「由布院に行きたい」と思わせる強い引力を持っている。中谷健太郎氏や溝口薫平氏など若き個性的なリーダーがまちの破壊を命懸けで守り、新たな価値観を創造していった。現在は、桑野氏が観光協会の会長として由布院温泉のまちづくりの良き伝統を継承し、さらに若い世代へと引き継ごうとしている。やはり魅力ある人が地域にいなければ、人を惹き付けるまちづくりはできない。

 都会で生活する若者や、リタイア層を地方に移住させる取り組み自体はいいことだと思う。しかし、移住する建物が安っぽいおざなりな造りであったりする。自然は豊かでも周りに文化的なものがなければ誰も移住しない。2、3日の旅行と違い、移住は生活である。地域の人口を本気で増やそうと考えるのならば、小手先の割安感を打ち出した政策などでは通用しない。

 地域には文化的な背景が必要であり、その意味で、全国から人を引き寄せる力を持つ旅館は「地域の文化的サロン」としての役割を担う存在でもある。有名作家を招いての講演会や、一流音楽家による演奏会、世界的なシェフによるお食事会などを定期的に開くことも大切だ。文化的な薫りを地域に振り撒いてほしい。

(編集長・増田 剛)

大学で何を学ぶのか

 学観連の前4年生による「これからの観光教育学生会議」が行った観光系学部・学科生への調査によると、観光業界以外へ就職した学生の7割がもともとその業界が第1志望だったという。この数字をどう見るかは意見が分かれるところだが、観光教育に対しては、「大学で観光を学ぶ意義を明らかにしてほしい」という意見もあった。

 大学教育を就職の前段階ととらえるか、もう少し大きな枠で「人生の糧」を得る機会ととらえるか。あまり勤勉な学生ではなかった僕は、就職のことを何も考えずに、ただただ「大学生」になりたく進路を決めた。しかし、大学で学んだ国際政治の知識と関心は、その後、現場に触れる「旅」へと自身をいざない、回りまわって今の自分の基礎を作ってくれた気がする。進路選択の判断基準は人それぞれで、経験に無駄なことは1つもないのではないかとも思う。

【伊集院 悟】

王宮 道頓堀ホテルなど、「おもてなし経営」28社選出(経済産業省)

選出28社の代表者が記念撮影
選出28社の代表者が記念撮影

 経済産業省は3月27日、東京都内で2013年度「おもてなし経営企業選」の選出記念式典を開き、28事業者を表彰した。観光部門では、大阪府で外国人旅行客の思い出づくりに徹し、稼働率9割を維持するビジネスホテル「王宮 道頓堀ホテル」や、“自律型感動人間”を育む取り組みや社員・顧客満足と、生産性が両立している点などが評価された「スーパーホテル」が選出された。

 おもてなし経営企業選は、各地域で価格競争に陥ることなく、顧客ニーズに合致したサービスを継続的に提供し、顧客や社員、地域社会から愛されている経営を実現している企業を選出。多くの事業者に自らの高付加価値化や差別化に向けた取り組みのきっかけとなることを期待し、経済産業省が12年度から実施している。

 13年度は165事業者が応募し、28事業者が選ばれた。なお、おもてなし企業選ホームページ(http://omotenashi-keiei.go.jp/)に28事業者の取り組みが掲載されている。

 選出された28事業者は次の通り。

 ソプラティコ〈スポーツ施設〉北海道小樽市▽十勝バス〈旅客自動車運送事業〉北海道帯広市▽アポロガス〈エネルギー〉福島県福島市▽ワイズティーネットワーク〈飲食・小売卸業〉栃木県宇都宮市▽カネパッケージ〈製造業〉埼玉県入間市▽オオクシ〈理美容業〉千葉県千葉市▽浜野製作所〈製造業〉東京都墨田区▽古田土経営〈会計事務所〉東京都江戸川区▽春江〈廃棄物処理業〉東京都江戸川区▽きものブレイン〈衣服縫製修理業〉新潟県十日町市▽サイベックコーポレーション〈製造業〉長野県塩尻市▽アイジーコンサルティング〈住宅・不動産〉静岡県浜松市▽鍋屋バイテック〈製造業〉岐阜県関市▽OHANA〈飲食業〉愛知県半田市▽安城自動車学校〈自動車教習所〉愛知県安城市▽万協製薬〈医薬品製造業〉三重県多気郡▽清川メッキ工業〈製造業〉福井県福井市▽王宮〈レジャー〉大阪府大阪市▽スーパーホテル〈宿泊業〉大阪府大阪市▽ゆめはんな会ヨリタ歯科クリニック〈医療・介護・福祉〉大阪府東大阪市▽レック〈写真事業・婚礼事業〉兵庫県神戸市▽島根電工〈工事業〉島根県松江市▽操風会岡山旭東病院〈医療・介護・福祉〉岡山県岡山市▽西精工〈製造業〉徳島県徳島市▽寿芳会芳野病院〈医療・介護・福祉〉福岡県北九州市▽新日本製薬〈小売業〉福岡県福岡市▽プレースホーム〈住宅・不動産〉佐賀県神埼市▽大浦会〈医療・介護・福祉〉熊本県熊本市

翻訳版「100選」冊子を発行、台湾400旅行社に配布(旅行新聞新社)

 翻訳版「100選」冊子
翻訳版「100選」冊子

 旅行新聞新社は、1月に発表した第39回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選(以下、旅館100選)」のランキング一覧や入選施設の情報を翻訳した冊子を発行しました。台湾の訪日旅行を取り扱う旅行会社400カ所に無償配布します。

 本紙主催の旅館100選は39回を数え、観光業界で最も歴史のある事業として広く認知いただくようになりました。旅行商品造成はもちろん、さまざまな企業の販売促進キャンペーンなどにも活用いただいております。

 翻訳版旅館100選冊子の発行は今回で3回目となります。4月中旬に本紙と提携する台湾の旅行業界専門誌「旅奇」を通じ、台湾内の訪日旅行の取扱資格を持った旅行会社本社、営業所など400カ所に無償配布いたします。本紙購読の皆様には、見本としてお届けしましたのでご覧ください。

左党も注目のショップが大阪に

 この4月30日、大阪・梅田の地下街「ホワイティうめだ」に新潟県のアンテナショップがオープンする。同県が関西圏でアンテナショップを展開するのは今回が初めて。日本酒や米、米菓など、同県自慢の物産品約400アイテムを取りそろえるという。

 「笹だんご」や布海苔(ふのり)を使った「へきそば」といった定番の新潟名物はもちろん、新潟限定販売とされている亀田製菓の「サラダホープ」など、関西初上陸の商品も多数登場。日本酒は、「越乃寒梅」をはじめとする有名銘柄に加え、樋木酒造(新潟市)の「鶴の友」など、県外の店頭ではなかなかお目にかかれない蔵元の地酒も豊富に取りそろえるのだとか。

 新潟県のことをよく知らないという関西在住の方々、まずは新潟自慢の味覚に触れてみては。

【塩野 俊誉】

13年度31・8%増に、5年で90万人泊、100億円(JATAもう一泊)

JATAもう一泊

 日本旅行業協会(JATA)は3月26日、国内宿泊プレゼントキャンペーン「もう一泊、もう一度」の2013年度の応募状況の発表と抽選会を行った=写真。13年度の応募数は前年度比31・8%増の17万3443通となった。宿泊数は32万3987人泊。同CPは今回で終了となるが、5年間の延べ宿泊数は90万2598人泊、販売高に換算すると100億円を超える結果という。

 同日開いた会見で、JATA国内旅行推進委員会の吉川勝久委員長は5年間のCPを振り返り、「過去にない試みだったが、ムーブメントとして大きな成果があった」とし、販売拡大など目的を達成できたと総括。13年度、応募数が伸長した要因については、キャンペーンの認知度向上に加え、スカイツリーや伊勢神宮など話題性に富んでいたこと、経済の好転などを挙げた。

 国内旅行全般については「近年、減少傾向にあったが、昨年ようやく上昇に転じ、今年に入っても比較的好調だ。これを継続させるべく、JATAとしてもバックアップしていきたい」とし、「国内旅行の基礎の数字を大きく伸ばすことが業界にとって重要だ。今後もさまざまな展開を考えていく」と意気込んだ。

資格者数トップに、世界遺産スペシャリスト(ジャルパック)

世界遺産アカデミーから特別表彰を受ける二宮社長(右)
世界遺産アカデミーから特別表彰を受ける二宮社長(右)

 ジャルパック(二宮秀生社長)はこのほど、「世界遺産スペシャリスト」の資格を持つツアーコンダクター(添乗員)数が旅行業界でトップとなった。同社専属のツアーコンダクター51人中、25人が資格保持者と約半数にのぼる。

 同資格は、トラベル・カウンセラー制度推進協議会が、世界遺産アカデミーの協力で、「世界遺産検定1級」以上の合格者で、世界遺産訪問歴など一定の要件を満たした人を「世界遺産スペシャリスト」として認定しているもの。協議会が認定するテーマ・スペシャリストの1つ。同スペシャリストの全認定者数は84人。

 また、スペシャリストの認定要件になっている「世界遺産検定1級」でも、昨年12月の試験で全合格者79人のうち、11人がジャルパックだったことから、認定を行っている世界遺産アカデミーは3月10日、同社を特別表彰した。同社では2011年から検定に挑戦しているが、社内講習会を自社講師で開催するなど、人材育成と資格取得者の排出に取り組んでいることが評価された。一般の1級の合格率は20%と難関だが、同社の受験者の合格率は50%という。

 同社は今後、専属のツアーコンダクター全員が、世界遺産スペシャリスト資格保持者になることを目指す。同スペシャリストが添乗するコースも造成しており、同社の強みとして積極的に打ち出していく。

観光資源のブランド化へ(NPO法人ふるさとオンリーワンのまち)

津田理事長があいさつ
津田理事長があいさつ

全国にオンリーワンのまちを

 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は3月26日、東京都千代田区の東京會舘で2014年度定期総会を開いた。今年度はNPO法人の名称を従来の「ふるさとICTネット」から、事業の柱である「オンリーワンのまち認定」を前面に出した組織名へと変更することで、事業と法人名の両方が全国に広く浸透していくことを目指す。事務手続き終了後、正式に名称変更する。

 津田理事長は「今年で4年目を迎えるが、観光資源のブランド化に取り組む『オンリーワンのまち』認定事業は順調に進んでおり、今年も幾つかの候補が上がっている。今後、全国にオンリーワンのまちを増やしていきたい」とあいさつした。

 「オンリーワンのまち」認定事業はこれまでに第1号として、千葉県鎌ヶ谷市の「雨の三叉路」、第2号として静岡県御前崎市観光協会の「海・風・波 地形を生かしたまちづくり」を認定してきた。5月には新たに2件を認定する予定だ。秋にはセミナー開催も計画、会員増大にも取り組んでいく。