海外人口は過去最高 訪日ロングは2W以上と定義 ロングステイ財団

2017年11月21日(火) 配信

弓野克彦理事長

 ロングステイ財団が11月8日に発表した「ロングステイ調査統計2017」によると、16年のロングステイ推計人口は海外が過去最高の158万6598人となった。国内は前年から77万人減の769万人。また、今回はインバウンドについて初めて定義し、2週間以上の滞在をロングステイとした。人数などは把握できていないが、欧米地域は2週間以上の滞在者が50%を超えるという。

 同日、東京都内で開いた発表会で弓野克彦理事長は、海外ロングステイ人口は200万人を目指しているとし、「達成にはシニア層だけではなく現役世代に広げていかなくてはならない」と言及。調査でも12年から16年までの推移をみると、40―59歳の現役世代の海外ロングステイ人口は成長しており、期待感を示した。

 一方、国内はロングステイの需要はあるが、長期滞在できる宿泊施設などが不足していることを指摘。調査では、キッチンや家具などの設備や長期滞在に有利な料金設定を求める声が多かった。需要が伸びると予測されるインバウンドロングステイも、顧客となる欧米人が滞在する環境がないとし、インフラ整備の必要性を強調。「経済波及効果の高いロングステイを今後も推進していく」と意気込んだ。

 調査動向を発表した事業部の川嶋彩氏によると、国内ロングステイのキーワードは「コト消費」という。必要な情報として「体験ツアー情報」を挙げた人が36・1%と最多となり、「ロングステイ先で何ができるかが重要」とした。

 滞在目的別にみると、希望都道府県の総合トップ10に入っていない地域が1位になる項目もあった。例えば好きな地域1位の愛媛県は総合19位、趣味・スポーツ1位の岡山県は総合16位となっている。「ターゲットを明確にし、強みを生かしたマーケティングが成功の鍵」。

 また、移住への関心がロングステイ経験者は未経験者よりも18・8ポイント高いことから、「移住促進にはまずはロングステイヤーを増やすことが有効だ」と述べた。

 ロングステイ市場の伸びには、働き方改革のワーク・ライフ・バランスも重要になってくることから、今後はテレワーク協会などとの連携も進める。発表会には同協会の富樫美加事務局長を招き、働き方改革について語り合った。

観光促進税 身近な人たちが旅行しやすい環境に

2017年11月21日(火) 配信

出国時に1000円を徴収する新税は、「観光促進税」という名称に決まった

 新たな観光財源の確保を目的に、日本を出国するたびに1人当たり1千円を徴収することが、11月16日に開かれた自由民主党の観光立国調査会で決議された。「出国税」ではなく、名称は「観光促進税」となるようだ。日本経済新聞の11月17日付の報道によると、「自民党内に『出国税という名称はイメージが良くない』との声があったため」とされている。観光庁は「日本人海外旅行者も受益するような使途を検討する」と説明したという。

 外国人観光客に対しては、消費税を免除する免税店の整備を行っている。また10月から酒税の免除制度もスタートした。レンタカーを利用した高速道路も、JRも外国人旅行者に割安のパスが存在する。

 観光庁には外国人旅行者への受入整備を進めることが、日本人の旅行者にも旅行をしやすい環境になるとの考えが基本姿勢にある。しかし、それにしても日本人の国内旅行活性化への取り組みの影の薄さはどうしたものだろうか。     

 エアビーアンドビーは独占禁止法違反の疑いで、同社の日本法人が立入検査された。宿泊業界が反発する中で来年6月15日には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。しかし、残念なことに民泊を推進していく大手民泊仲介サイトが遵法精神から離れている。

 “ヤミ民泊”も横行している。しっかりと取り締まりができるのだろうか。無許可営業者の罰金上限の3万円を100万円に引き上げるなど、旅館業法の一部改正の法律案の成立も見通しが立たない。多くの国民も不安に思っている。

 民泊関連での犯罪も全国各地から聞こえてくる。脱法行為によって莫大な利益を得ている悪徳業者が儲かり、遵法精神に則った旅館やホテルなどの観光業界が不利益を被る社会になっては、観光立国とは言えない。

 新たな税金を徴収するのなら、その使途として、国内の違法行為を本気で取り締まるために使われた方が余程、説得力がある。

 観光促進税で400億円規模の税収が見込まれるが、今後、海外に向けた訪日誘客への宣伝事業に巨額の税金を投入する必要性があるのだろうか。また、外国人観光客への多言語化などの取り組みも、過剰な状況はないだろうか。

 今はスマートフォンのアプリも充実しているし、通訳の機器も小型化し、高性能になっている。過度な多言語化への税金投入よりも、まだまだ進んでいない国内観光における環境整備もあるはずだ。訪日外国人数の数値目標に目が奪われ、本当に整備が必要な部分が見えなくなっては、本末転倒である。

 先日、神奈川県の三浦半島をオートバイで走り、途中の公共の休憩場所でひと休みした。すると、そこで車イスの青年がトイレの中から腹這いになって出てくるのを目にした。トイレが狭いため車イスを入れることができなかったのだ。母と青年の2人だけのドライブ旅行の途中なのだろう。少し遠くで年老いた母親は青年が男性トイレの中で車イスに乗り込むのを見守っていた。冬間近の寒空の中、私は胸が潰れそうになった。

 観光促進税の使い方はまだ定かではない。きらびやかな海外宣伝もいいが、足元の身近な人たちがもう少し旅行しやすい環境をつくれないかと、心から思った。

(編集長・増田 剛)

ふるさとオンリーワンのまち 飯島町の産業祭でPR

2017年11月21日(火) 配信

津田理事長(右)も参加して認定事業をPR

 長野県・飯島町(下平洋一町長)が10月28―29日の2日間開いた「いいちゃん産業まつり」に、NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)が参加。これまで「ふるさとオンリーワンのまち」に認定した各地域の商品の販売などを行い、事業を積極的にPRした。

 飯島町は、長野県南部の下伊那郡にあり、中央アルプスと南アルプスの2つのアルプスを望む自然豊かな町。14年11月にはふるさとオンリーワンのまちの第5号に認定されている。

 「いいちゃん産業まつり」にはNPOから津田理事長をはじめ、石井貞徳専務理事、水野洋蔵理事、本橋範子理事らが参加してブースを出した。NPOのオリジナルポスターや、パンフレットなどを掲示して活動内容を紹介したほか、第2号認定の静岡県御前崎市観光協会も参加して、地元特産品などの販売も行った。また、飯島町についてのアンケートも実施した。

ご当地ラーメン案内 背脂ラーメンタクシー誕生 燕三条の中越交通

2017年11月21日(火) 配信

中越交通の「背脂ラーメンタクシー」

 新潟県三条市のタクシー会社「中越交通」が、燕三条エリアのご当地ラーメンを案内する「背脂ラーメンタクシー」を10月2日から開始した。

 燕市の背脂ラーメンは、地元新潟のソウルフード。同市で盛んな洋食器の町工場の職人がさっと食べられるように作られた。日夜汗をかいて働く職人が好むしょっぱい醤油ベースに、出前でも伸びにくい極太麺。豚の背脂をスープに浮かべて冷めにくくしているのが特徴という。地元にラーメン店は約60軒あり、県外から訪れるラーメン通も多い。

 背脂ラーメンタクシーは、専任のドライバーがご当地ラーメンについて楽しく解説しながら、乗客の希望するラーメン店へ案内する観光タクシーのサービス。車体に赤い暖簾を描き、屋根の行灯を「ラーメンどんぶり」のかたちの専用車両を用意。タイヤホイールにはナルト柄のデザインも施され、遊び心も散りばめられている。

 運転手は客の好みを聞いたうえで、お薦めの店を紹介。要望があれば、ラーメン店以外に名所旧跡や道の駅、ガイドブックにも載っていない地元民しか知らないスイーツ店なども案内してくれる。

 運転は社内の筆記と実務検定に合格した自他ともに認める「ラーメン好き」ドライバー4人(うち女性1人)が担当する。検定では「ラーメンの起源」「県内のラーメン消費量」「主要なラーメン店の定休日」などが出題され、車内でこれらのうんちくも披露される。

 利用料金は2人で利用の場合、120分コースで1人6千円(2人で1万2千円)、180分コースで1人9千円(2人で1万8千円)となる。

 予約・問い合わせ=中越交通ラーメンタクシー係 電話:0256(38)2021。

記者はドライバーお薦めの「福来亭」白山町店に案内された

全国から1841人が参加 観光地以外の観光模索 全国商工会議所観光振興大会

2017年11月21日(火) 配信

表彰式のようす
アレックス・カー氏

 既存の観光地ではない都市での観光の可能性探る――。日本商工会議所は前橋商工会議所との共催で、11月9―11日まで、群馬県前橋市で「全国商工会議所観光振興大会2017」を開いた。全国515商工会議所のうち、北は北海道、南は沖縄まで234商工会議所から1841人が参加。「見つけよう観光、磨こう観光~地域から新しい風を吹かせ~」をテーマに、地域に眠る観光素材の生かし方などを模索した。

 10日の全体会議で日商の三村明夫会頭は「観光は関連する産業の裾野が広く、どこの地域でも取り組める地方創生の有効な切り札。豊富で多様な観光資源を、誇りを持って磨き上げ、その価値を分かりやすく発信することが大切だ」と今回のテーマの実践を訴えた。

 大会では、9日の分科会と全体交流会から、10日の全体会議、エクスカーションとさまざまなプログラムを行った。そのなかの基調講演で、東洋文化研究家で古民家の再生などを行っているアレックス・カー氏が登壇。観光客は何を求めているのかをしっかり見極め、景観を大切にすることの重要性を強調した。「看板1つでも景観は壊れてしまう。観光は国内でも世界でも競争産業」と魅力を損なえば競争に負けてしまうと警告。仏教の教え「明珠在掌(めいじゅたなごころにあり)」を例に、地域にある魅力を見直し大切にしてほしいと訴えた。

 また、全体会議内で17年度「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」の表彰を実施。大賞は長野県・上田商工会議所の「NHK大河ドラマ『真田丸』放送を最大限に活用した地域振興事業」が受賞した。同商工会議所は09年から、大河ドラマ実現に向け署名活動などを展開。16年の「真田丸」放送効果による同年の上田市の消費総額は67億9千万円に上った。現在は、ゆかりの地の新潟県・上越商工会議所と山梨県・甲府商工会議所と観光の「三国同盟」を締結し、事業を進めている。

 大賞以下は次の通り。

 【振興賞】新庄商工会議所(山形県)▽鳥取商工会議所(鳥取県)【観光立“地域”特別賞】函館商工会議所(北海道)▽長浜商工会議所(滋賀県)【奨励賞・単会】美幌商工会議所(北海道)▽浜松商工会議所(静岡県)▽熊野商工会議所(三重県)▽柳井商工会議所(山口県)▽西条商工会議所(愛媛県)【奨励賞・広域連携】登別商工会議所・室蘭商工会議所・伊達商工会議所(北海道)▽桐生商工会議所(群馬県)・太田商工会議所(同)・館林商工会議所(同)・足利商工会議所(栃木県)・佐野商工会議所(同)

日本人客増は4割に 515商工会議所に観光調査

須田寛共同委員長

 観光振興大会に先立ち、日本商工会議所は11月9日に会見を開き、7月に全国の515商工会議所へ調査した2016年度の観光振興の取り組み状況を報告した。これによると、日本人の観光客数が増えていると答えた商工会議所は40・0%となった。外国人観光客が増加していると答えたのは48・1%。

 地区内人口の規模別にみると、日本人観光客が増えていると答えた割合が最も高かったのは「5万人以上10万人未満」の都市の商工会議所。中小都市への回遊も増えていることがうかがえる。ブロック別では、東北が51・1%と最も高く、中国も49・0%と増加が目立った。

 外国人観光客が増えていると答えた商工会議所は前回から7・4ポイント減少し、伸びはゆるやかになっている。ブロック別にみると、中国は60・8%が増えていると答え、最も高かった。東北も57・8%と高く、前回から20ポイント増と大幅に伸びた。関東と東海、関西は前回から減少し、ゴールデンルートからの分散もみられる。

 17年度に観光振興に取り組んだ商工会議所は79・8%と前回から1・9ポイント減少。取り組まなかった商工会議所は「取り組むための体制ができていない」「十分な予算がない」「興味を引く観光資源が見つからない」という理由が多かった。

 一方、調査から浮かび上がった課題は地域における旅行者への安全確保の対応や、観光サービス関連事業者の人手・人材不足、観光情報の発信など。これに対し、観光委員会の須田寛共同委員長は、「観光シーズンに大規模な震災が発生した場合、多くの帰宅困難者が出るが、地域の対策は進んでいない。いざというときには、地域や国の信用失墜にもなる」と早急な対応が必要だとした。

 また、人手・人材不足については「観光業界は老若男女が活躍できる業界だ。今後の人口減少でいずれは仕方ないが、今人手不足というのは時期尚早。工夫不足ではないか」と指摘した。

 

 

「島川崇の観光・日本再生の道 第80回」出国税に怒れ! 日本人

2017年11月21日(火) 配信

出国時に新たな税金が徴収される

 出国税の議論があたかも終わったような様相である。こんな暴論はどうせすぐ反対にあって立ち消えになるだろうと思っていたら、反対意見が思った以上に出ないので驚いている。

 出国税が提言された「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」がとりまとめた報告書を要約すると、2020 年に訪日外国人旅行者数を4千万人、訪日外国人旅行消費額を8兆円とする。さらには 30 年にそれぞれを6千万人、15兆円とする目標を実現するために、出入国を円滑化、交通サービスの利便性の向上、海外プロモーションの改革、観光資源の整備を進める必要があり、それには現在の観光予算では足りないので、独自財源が必要であるという論理である。

 この内容を日本人はよく見てほしい。日本人にとってのメリットは何もないではないか。実際に外国人観光客誘致に大きく舵を切ってから、日本人はその恩恵を得るどころか、負担を強いられてばかりではないか。

 日本人が文句を言わないから徴収作業が簡易になるということで日本人と外国人に区別をつけないとしているが、なぜこのようなことに日本人が負担をしなければならないのか。

 増え続ける外国人観光客によって日本人は迷惑なことばかりである。東京や大阪は外国人観光客が増えてホテルが取れず、本当だったら1泊して一杯やりたかったのを我慢して日帰りで帰ることが多くなった。地方でのんびりしようと思ったら、横暴な外国人客ばかりでうんざりし、従業員も外国人が多くなって日本なのに日本語が通じなくなった。主要国際空港が混雑して、出入国にも時間がかかり、空港の周りには中国人を迎える白タクが列をなし、渋滞するから車やバスを使うことに躊躇するようになった。

 かつて外国人観光客がもの珍しかった時代ならいざ知らず、なぜ日本全国の新幹線を含むJR全線に外国人は2万9千円などというふざけた金額で7日間も乗り放題になるのか、なぜ日本全国の高速道路を外国人は2万円というふざけた金額で7日間も乗り放題になるのか。我われ日本人の高額負担で、JRや高速道路で外国人に恩恵を与えている意味が分からない。

 外国人観光客が増えて直接的経済効果があるというが、関連する店だけは潤うが、我われの生活は一向に上向かない。それどころか、違法民泊が増え、違法白タクが増え、通訳案内士資格を持たない違法ガイドが増え、この人たちは収入に対して税金なんか払ってないから、本来日本国が得るべき税収を取りこぼしている。

 まずこれらインバウンドに違法に絡んでいる外国人を取り締まり、払うべき税金を払わせることから始めるべきだ。

(東洋大学国際観光学科長・教授 島川崇)

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

東洋大学国際観光学科長・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部を経て、現在、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。観光で被災地の復興に貢献する枠組みの構築を現在のテーマとしている。

九州北部 豪雨被災地が連携 復興に向け決意表明

2017年11月21日(火) 配信

県境を越えた連携を強化する

 九州運輸局は今年7月に発生した九州北部豪雨に伴う風評被害の払しょくに向けた被災地域の取り組みを後押しするため10月27日、福岡県朝倉市・原鶴温泉の「泰泉閣」で「九州北部豪雨からの観光復興シンポジウム」を開いた。会場には観光関係者など約70人が集まった。

 シンポジウム第1部では、先立って行われた被災地域を巡るファムトリップに参加した活字媒体やwebメディアの編集者・ライターらが登壇し、「情報発信のあり方」をテーマにパネルディスカッションを実施。参加者からは「うきは・朝倉地区は、山梨に匹敵するフルーツ王国」といった感想や、「情報発信の主役である若者を内部に取り込むべき」といった情報発信する際のポイントなどが挙げられた。

 第2部では「観光復興への道」をテーマにしたパネルディスカッションが行われ、今回の豪雨で被災した各地の観光協会長らが、これまでの取り組みや、直面している課題などを発表。続いて、昨年の熊本地震に伴う風評被害を経験した阿蘇・別府地域の観光協会長やホテル経営者などが「できるところから始める。人が来なければ、こちらから出ていけばいい」「大変な人に対して周囲は遠慮しがちになる。大変なときこそ、元気であることを示す必要がある」など、自身の経験を踏まえたアドバイスを披露した。

 最後は、うきは市観光協会の久次辰巳会長、あさくら観光協会の井上善博会長、日田市観光協会の冨安裕子会長、由布市まちづくり観光局の森光秀行専務理事の4人が登壇。県境を越えて互いに連携を強化し、観光復興に向けて取り組んでいく決意を表明した。

シンポジウムのようす

 

月間1千人を突破 仙台空港―松島・平泉 岩手県北自動車

2017年11月21日(火) 配信

仙台空港から松島・平泉をめぐる路線バス

 岩手県北自動車(岩手県盛岡市)が運行する「仙台空港―松島・平泉線」の月間利用者が9月に1千人を突破した。

 同線は今年1月25日、仙台空港を起点に日本三景の松島、世界文化遺産の平泉をガイド付きで運行する路線バスとしてスタート。

 空港からの直行便という利便性とガイド付きのバス旅の楽しさ、インバウンドに関しての英語・中国語・韓国語・タイ語のアナウンスシステムの導入、ネット予約とネット上でのカード決済が可能、無料Wi―Fi対応などを実現している。

 さらに、バス利用者の松島(松島観光物産館)と平泉(平泉レストハウス)での手荷物無料預かりによる手ぶら観光などの取り組みや、同線周辺のみどころを紹介する専用ホームページ(5言語対応)も設けている。

 同社では今後も一層のプロモーションを展開し、東北の王道ルートとしての成長を目指す。

〈観光最前線〉にぎわう熊本城

2017年11月21日(火) 配信

熊本城(2017年11月2日撮影)

 今月初め熊本城に行ってきた。震災から約1年7カ月。平日にもかかわらず多くの観光客でにぎわうようすに驚いた。依然として大部分が立ち入り禁止区域になっているものの、城の大外を回る周遊が可能。少しずつ公開エリアも拡大され、今夏には大きく被災した戌亥櫓を間近で見ることができるようになった。

 天守閣はシートですっぽり覆われ、白い屋根がかかっている状態。熊本市は「復興のシンボル」として、天守閣復旧工事を先行させ、2019年の完成を目指している。

 19年といえばラグビーワールドカップ。同市も開催地の1つで、組み合わせ抽選では熱狂的なサポーターが多いトンガ、ウェールズなどの試合が決定。多くの外国人客の訪熊が想定され、復旧した天守閣を見てもらう良い機会になりそうだ。

【土橋 孝秀】

【特集 No.478】はなまき朝ごはんプロジェクト 農家と連携「宿で地元野菜を」

2017年11月21日(火) 配信

 花巻温泉郷(岩手県花巻市)の温泉旅館の若旦那3人が2014年7月に、「はなまき朝ごはんプロジェクト」を始動。地元農家の青年らと協力して、花巻産の季節の野菜を共通食材に、それぞれの宿が朝食メニューとして提供している。現在は5館が参画。リピーターが増えるなど同PJの知名度は徐々に上がっている。農作業体験も人気だ。現在は花巻産の野菜を使ったカレーやジェラートなどの商品の開発を視野に、“花巻色”を一層強め、宿の売上アップにも貢献していきたい考えだ。 【増田 剛】

はなまき朝ごはんプリジェクトに取り組む5人の若旦那たち
(左から)松田氏、久保田氏、安東氏、清水氏、藤井氏
(左から)優香苑支配人 安東慎吉氏、愛隣館社長 清水隆太郎氏、藤三旅館専務 藤井大斗氏

若旦那が“花巻の魅力創ろう”

 「自分たちの世代では各宿が切磋琢磨しながら、地元・花巻の魅力を創って発信していくことも必要ではないか」――。はなまき朝ごはんプロジェクトは、湯の杜ホテル志戸平(志戸平温泉)の久保田龍介常務と、藤三旅館(鉛温泉)の藤井大斗専務、結びの宿愛隣館(新鉛温泉)の清水隆太郎社長の3人の“若旦那”世代が2014年の4月に集まったことがきっかけとなった。「何かやりたいね」という話の中で、「花巻なりの朝ごはんプロジェクトを始めよう」と久保田氏から提案があった。同年7月に「はなまき朝ごはんプロジェクト」が始動。早い展開だ。

 地産地消はどの宿も意欲はあった。「方向性が一緒だったのでスピード感を持って始めました」と愛隣館の清水氏。「地域の宿がまとまって取り組むことで大きなパワーが生まれ、発信力も大きくなる」と、単館だけの取り組みを超えるメリットを上げる。 

現在は5軒が参加

 3館からスタートして、今年6月に松田屋旅館(台温泉)の松田忠専務と、優香苑(山の神温泉)の安東慎吉支配人も加わり、現在は5館が参加している。

 優香苑の安東氏は「もともとメンバーとは顔見知りでしたが、今年の春にお声掛けをいただき、6月から正式に参加しました。花巻のエリア全体が元気になるためにスクラムを組むことはすごくいいこと」と話す。

 朝ごはんプロジェクトは、旅館だけの取り組みではなく、地元の農家と一緒に活動していることが特徴だ。「農家さんと連携して掛け算の『農商工連携』というかたちで取り組んだのが良かったと思います」と清水氏は強調する。

 県の「いわて農商工連携ファンド」の助成金を活用しながら、活動している。現在は愛隣館が事務局の役割を担うが、今後は株式会社化や、組合にするのかなど、組織のあり方を5館で検討している。3年目の今年度は助成事業の最終年度。次年度からは花巻市の助成事業に申請している。また、プロジェクトの事業によって本格的に収益を上げていけるように、今から準備を進めている。

旅館と農家をつなぐ地元商店が橋渡し役

 プロジェクトをスタートする前からメンバーは、野菜は直接農家さんから買いたいという思いがあった。人のつながりによって、花巻市農村青年クラブの若手メンバーとの連携が叶った。月に1度の会議では、同プロジェクトの取り組みをPRするタブロイド紙の内容や、農家との共同イベントなどの打ち合わせ、さらに動画での発信も準備しており、細部の確認や議論を行っている。

 旅館と農家の連携は利点も多い。農家は、農協などにも出荷しているが、旅館に出荷するメリットとしては、少々曲がっていても旅館は調理するので大きな問題はないし、利幅も大きい。一方、旅館も八百屋で購入するよりも少し安く仕入れることができる。

 各旅館が農家に野菜を取りに行くのも大変。このため、花巻南温泉峡の入り口にある「松倉商店」という小さな八百屋兼商店がすべての農家との橋渡し役になっている。各旅館が松倉商店を経由して注文し、農家が育てた野菜をダイレクトで納品している。「松倉商店の若旦那も私たちと同世代で、想いも同じ。すぐに私たちの取り組みに賛同してくれました。携わっている人が皆、花巻を盛り上げようと同じ想いを持っているのがうれしい」(藤井氏)。

農家での農作業体験も人気

「足りないときは、足りなくてもいい」

 とくに大型旅館では必要な分量の野菜が納品できないこともある。「足りないときは足りなくてもいいじゃないか。お客様に誠意を持って説明すればいいという姿勢で、気軽に始めたのが良かった」と清水氏は話す。

 朝食は、その時期に収穫できる野菜2品目を共通素材に決めて、朝食の献立を作る。ごはんはひとめぼれを使用する。

 農家とは大まかな年間スケジュールを立て、朝ごはんプロジェクトに提供する野菜を事前に決めている。朝ごはんプロジェクトの活動をPRするタブロイド紙「TSUKURU」では、野菜収穫カレンダーも掲載し、アピールしている。…

若旦那と花巻市農村青年クラブが地元を盛り上げる

※詳細は本紙1693号または11月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。