No.365 東日本大震災から3年 - 観光で「東北復興支援」加速を

東日本大震災から3年
観光で「東北復興支援」加速を

 国土交通省観光庁や東北6県などが主催する「東日本大震災から3年~東北観光がんばります!!」シンポジウムが3月2日、宮城県仙台市で開かれた。青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島の東北6県の知事が一堂に会したパネルディスカッションでは、東北観光の現状や復興状況を報告。また、国土交通大臣政務官の土井亨氏とともに、今後の展開や、風評被害対策、さらには観光によって「東北復興」に取り組んでいくことなどを熱く語り合った。その一部を紹介する。

【増田 剛】

 
 
 
≪「官民一体で復興に取り組む」 ―観光庁長官 久保成人氏≫

 観光庁の久保成人長官は主催者あいさつとして「東日本大震災から3年が経とうとしている。震災は被災地域の観光資源や、観光産業にも甚大な被害を与えた。その後、風評被害も追い打ちをかけ、国内外の観光客が減少し深刻な影響を及ぼした。一方で、国内、海外から寄せられた復興に向けた支援の輪は、ボランティアと地元の方々との間に多くの交流も生み出した」と振り返り、「震災から3年が経った今、観光というソフトの面からの復興支援、東北支援に官民が一体となって加速化し、取り組むときだ」と力強く語った。

≪東北6県の知事登壇「東北観光がんばります!!」≫
 

情報発信の予算増強を ―青森県知事 三村 申吾

4月三陸鉄道全線開通 ―岩手県知事 達増 拓也

仙台空港民営化を計画 ―宮城県知事 村井 嘉浩

文化やスポーツと一体 ―秋田県知事 佐竹 敬久

「雪」で東北周遊可能に ―山形県知事 吉村 美栄子

福島の元気教育旅行で ―福島県知事 佐藤 雄平

「東北は安心」強力発信 ―国土交通大臣政務官 土井 亨

 

※ 詳細は本紙1537号または3月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

東日本大震災から3年 ― 観光は大きな“地域回復力”を持つ

 未曾有の大災害となった東日本大震災から3年が経った。大きな犠牲と引き換えに、大きな教訓を得た。2011年3月11日の「あの日」まで気づかなかったことや、「あの日」を境に知ったこと、見えるようになったものが、たくさんある。

 3月2日、宮城県仙台市で東北6県の知事が一堂に会したシンポジウム「東北観光がんばります!!」に参加した。現実的な課題を山のように抱えながら、各県の知事は、しっかりと前を向き、自らがセールスマンとなって観光による地域復興の意気込みを熱く語っていた。NHKが放映したドラマ「八重の桜」や「あまちゃん」が人気を博し、全国から多くの観光客が集まった事例についても、知事たちはうれしそうに話した。「物語」が持つ力の大きさを感じ取った。

 JR各社は震災後から東北各エリアでデスティネーションキャンペーンを展開し、多くの観光客を東北に送って来た。さまざまなイベントや企画を行い、大々的な観光PRを今も継続的に行っている。また、全国の旅行会社や、航空会社なども東北復興ツアーを造成し、協力もしてきた。4月には三陸鉄道が全面開通する。日本中をつなぐ新幹線の「希望を乗せる」力、そして、小さなローカル鉄道が地域の人々の生活や、街に活力を与える役割の大きさも、震災によって改めて知ったことの一つだ。

 さらに、エネルギー問題も震災後、大きな問題として浮かび上がってきた。観光業界では国際観光施設協会が唱える「省エネ化ではなく、消費エネルギー自体を小さくする小エネ化」への取り組みの必要性が今後ますます高まる。とくに旅館・ホテルでは、自然との共生を考慮しながら、知恵と工夫による「小エネ」の研究や取り組みを、今後一層進めてほしいと思う。

 震災から3年が経った今、観光客が被災地を訪れることがこれまで以上に重要になっている。東北各県の知事は外国人観光客が未だ震災以前の水準に戻っていないことを課題に挙げ、国にも積極的な情報発信を強く要望した。震災後から、大きな文化・スポーツイベント、国際会議を東北で開く努力を官民一体で行ってきたが、今後も継続的に取り組むことが重要だ。

 東北の魅力あふれるツアーを作ることは、旅行会社や鉄道会社、航空会社の腕の見せどころである。JR九州の豪華観光列車「ななつ星」が九州を一つのブランドとしてまとめる一端を担っているように、「東北を一つ」に結びつける創造性あふれるアイデアや、より強力な連携が必要になるだろう。

 被災した地域を復興に導く原動力となるのは、観光による人の交流である。観光が持つ地域経済の回復力がこれほどまでに大きいことを、東日本大震災から3年が経過した今、改めて気づかされる。想像してほしい。被災地に誰一人訪れることのない姿を。これほど空しい風景はない。旅行業界は「モノ」を売る商売ではない。売る「モノ」は何もない。けれど、一見何もないところにも「価値を生み出す」魔法の力を持っている。日常生活の中ではこの素晴らしい魔力は鳴りを潜めている。埃を被っている。だが、大きなものを失い、未来の再生に向け立ち上ろうとするとき、この不思議な力が鮮やかな虹のように希望をもたらし、大きな力を発揮するのだ。

(編集長・増田 剛)

社員の満足度も大事、加賀屋・小田女将が語る(おもてなし研究会)

加賀屋の小田真弓女将が講演
加賀屋の小田真弓女将が講演

 観光庁と日本観光振興協会は2月7日、東京都内で地域の観光協会などの現状や求められる役割について議論する「観光おもてなし研究会」を開いた。2回目となる同研究会では、「おもてなし」を理解するために、石川県和倉温泉の加賀屋の小田真弓女将を招き、小田女将が「お客様の満足度だけでなく社員の満足度も大事」など加賀屋流のおもてなしについて講演した。

 小田女将は「お客様のニーズは多様化しており、これといった100点満点のおもてなしはない」と語り、顧客のニーズを読み取ることや、時代・年齢・国籍などにあわせたおもてなしをするために事前に勉強しておくことなどを述べた。また、「笑顔が出るような職場作りのためには、お客様の満足度だけでなく、社員の満足度も大事だ」など、社員への気配りがおもてなしにつながることも強調した。

 講演についての意見交換で、新たに研究会のメンバーに加わった新潟観光カリスマでフリーバスガイドのなぐも友美氏が、顧客のニーズを読み取る難しさについて小田女将に質問。小田女将は利用客の動きやコミュニケーションのなかから顧客のニーズを探すことなどを挙げた。また臨機応変に即応することも強調した。同メンバーで日中コミュニケーション取締役の可越氏は小田女将の講演から「おもてなしとは、喜んでもらうためにいかに心を込めるかということではないか。文化や宗教が違っても一生懸命な姿が伝われば相手は感動してくれる」と意見を述べた。

 同研究会委員長で首都大学東京都市環境学研究科観光科学域特任准教授の矢ケ崎紀子氏は総括として、「観光に携わる人自身がやりがいをもって仕事ができているか」など課題を挙げ、事業者の仕事に対する満足度や、利用客について勉強をすることの重要性を確認した。

 3月はおもてなしの総論、4月はテーマを絞った討議を行っていく予定。同研究会の模様は第1回と同様に動画配信サイトのニコニコチャンネルで生中継された。

トラブルで見える真価

 「クレームやトラブルのあったお客様が、その後の対応次第で、リピーターになることも多い」。先日、本社主催のイベント「もてなしの達人」の表彰式で、おもてなしの現場に立つ達人から聞いた言葉が、強く心に残った。

 2014年3月11日。震災から丸3年が過ぎる。あの非日常の極みともいうべき状況のなか、各々がさまざまな環境で、多くのことを感じ、考えさせられた。この小欄の初回で書いたのだが、当時私は仕事で青森にいた。陸路が断絶され、キャンセル待ちの人で埋め尽くされた青森空港での、スタッフの心ある対応と、仕事に向かう真摯な姿勢には、思い出すと今でも頭が下がる。マニュアル通りが通用する日常よりも、トラブルやイレギュラー時にこそ、その人や企業の真価が問われるのかもしれない。日ごろからの弛まぬ訓練と、人や仕事にまっすぐ向き合う「心」に尽きる。

【伊集院 悟】

ロック界の大御所たち

 昨年11月、11年ぶりに来日したポール・マッカートニーを皮切りに、ロック界の大御所たちが、挙って日本公演にやってきている。

 まずは来日40周年記念公演のエリック・クラプトン、8年ぶりの来日公演となるザ・ローリング・ストーンズ、4年ぶりのジェフ・ベック、まさかのボブ・ディラン、さらにあのジョニー・ウィンターまで再来日するという夢のような大物ラッシュが続く。

 これだけそろいもそろって来日されると観に行く公演も絞り込む必要に迫られる。ストーンズはたぶんこのメンバーで来日するのは今回が最後だろうし、3月に70歳を迎えるクラプトンもツアー引退を表明しているので今回が最後かもしれない。悩んだ挙句、クラプトンの武道館最終日に決めた。最後まで渾身の熱演に感涙至極。

【古沢 克昌】

45件の取り組みを選定、観光地ビジネス創出支援(観光庁)

 観光庁はこのほど、「観光地ビジネス創出の総合支援」について、73件の応募の中から45件の取り組みを選定した。

 同事業は観光地域づくりの主体の自主財源確保を目指す取り組みを支援するもので、13年度補正予算で4億円を計上。具体的には、12年度補正予算「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」で選定された78地域が実施したモニターツアーを活かした内容で、自主財源の確保や拡大のための観光地ビジネスの具体的な計画を公募していた。

 選定案件は次の通り。

【北海道】
 「食観光とOMOTENASHI日本一を目指すフードツーリズム推進事業~カメラ女子も冒険女子も美食女子も集まれ!日本最東端の別世界を体験するプレミアム女子旅~」別海町観光協会▽「カワイイファッションでもっと北海道を楽しもう!『カワイイ北海道ツーリズム』」カワイイ北海道ツーリズム推進協議会▽「北海道の地域資源を活かしたサイクリング観光ビジネス創出事業」サイクル・ツーリズム北海道推進連絡会

【青森県】
 「奥津軽文化のルーツ 青森ひば材で栄えた明治の豪商を探るトレイルの旅のビジネス化」NPOかなぎ元気倶楽部

【岩手県】
 「北限の海女が潜るまち 海女的北三陸探訪 シーズン2」NPO久慈広域観光協議会▽「七時雨・アウトドアと短角牛の美味しい関係♪体験プロジェクト」七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会

【秋田県】
 「行ってみる?来てみて!ほット(温かい人)しあ(会)える旅。(旅行代理店の商品造成サポートによる観光ビジネスプロジェクト)」にかほ市観光振興プロジェクトチーム

【山形県】
 「目指せ!フラワー長井線ランド」山形鉄道▽「ワインとぶどうの物語 見て、ふれて、食べて感じる赤湯温泉」NPO南陽市観光協会

【宮城県】
 「発酵女子会inみやぎ大崎 働き女子の旅サプリ」NPOおおさき地域創造研究会▽「東北に生まれる新しい観光資源“純国産の綿花”が繋ぐ未来『Tattonプロジェクト』体験ツアー」Tatton事務局

【福島県】
 「『幸』って不幸なすがた?」喜多方観光協会

【茨城県】
 「未来空間での街歩き~セグウェイシティツアーinつくば~」つくば観光コンベンション協会

【栃木県】
 「魅力発掘・足利銘仙プロジェクト“足利道楽・楽ジュアリーツアー”」足利商工会議所

【群馬県】
「八ッ場ふるさとエコツアーを軸にした草津温泉との観光連携ビジネス」八ッ場ふるさとエコツアー実行委員会▽「“ブラジル文化”と“日本文化歴史”の異文化交流ツアー」大泉町観光協会

【東京都】
 「伊豆大島『ネイチャー・テーマパーク化』構想(伊豆大島ジオパーク馬車プロジェクト)」大島観光協会(東京都)▽「本物を知る!!『お江戸満喫まち歩き』拡充事業」中央区観光協会(東京都)

【神奈川県】
 「城下町&宿場町の魅力満載! 今日は『小田原まち歩き』」小田原市観光協会

【千葉県】
 「いすみスタイル体験プランによる観光ビジネス創出事業」いすみ市役所商工観光課地域産業戦略室

【山梨県】
 「『河口湖~新御坂トンネル~笛吹』やまなしウェルネス街道(仮)女性にやさしい『美と健康と癒し』」NPO日本国際ふれあい協会

【新潟県】
 「にいがた『夏の雪旅』ビジネスの創出」にいがた「夏の雪旅」推進協議会

【富山県】
 「地域誘客×大学生 “星に一番近いリゾート”立山キャンパス開講!」たてやま

【石川県】
 「金沢プレミアム ほんものの工芸にふれる旅」金沢市経済局営業戦略部プロモーション推進課

【愛知県】
「知ること多き半島 恵み旅“ちためぐ”」半田商工会議所

【三重県】
 「青のレストラン『リストランテ・フィールド・答志島』ツアー」鳥羽商工会議所

【滋賀県】
 「ビワイチ!トレイルランニングプロジェクト」ビワイチ!トレイルランニング協議会

【大阪府】
 「富田林寺内町及び周辺地域における観光ビジネス創出事業」JTB西日本大阪中央支店

【兵庫県】
 「神戸発・日本初“イルカたちと過ごす感動の二日間”」須磨観光協会

【和歌山県】
「おさかなリゾート『和歌山加太』~魅力アップ・元気アップ作戦~」加太観光協会▽「伝統が息づく筏流しとじゃばらを活用した北山村自主財源創出プロジェクト」和歌山県北山村

【鳥取県】
 「『住まうように旅する』リフレッシュ、リチャージ鳥取スタイルエコツーリズム進化への挑戦」大山観光局

【島根県】
「出雲の地、まつえ縁の旅」松江観光協会

【山口県】
 「幸せますのまち防府“大河ドラマの世界観”発見ツアー」防府市観光資源活性化協議会

【広島県】
 「まちのいいね!をかたちにする世羅高原観光まちづくりラボラトリー事業」世羅高原観光まちづくりラボラトリー(農事組合法人世羅高原農場内)▽「瀬戸内・松山新観光ビジネス創出事業」瀬戸内・松山ツーリズム推進会議(愛媛県・広島県)

【高知県】
 「『ベースボール国際交流ツーリズムを創造する』~夢追い人国際交流・応援プロジェクトwith越知町」高知ファイティングドッグス球団

【福岡県】
 「福岡 恋と黄金 旅物語(観光ツアービジネスプラットフォーム)」福岡やるばい観光! 人とまちづくり協議会(事務局:Eまちラボ)

【長崎県】
 「世界遺産候補『長崎の教会群』を訪れる“祈りと学びの旅”」世界遺産候補『長崎の教会群』を訪れる“祈りと学びの旅”協議会

【大分県】
 「『味力全開!さいき結旅(仮)』推進体制確立プロジェクト」佐伯市観光協会

【宮崎県】
 「東九州自動車道の開通を契機とした ひむかの
『神話物語』、『伝統文化』をむすぶ旅」ひむか日豊海岸観光推進協議会

【鹿児島県】
 「いぶすきの輝き再発見&深発見! いぶすき海洋浴『きら★旅』発見で、日本人も外国人も女子力アップの旅づくり」指宿市観光協会▽「世界自然遺産登録の風を掴め! 観光地域づくりでシマ(集落)をおこす!」鹿児島県奄美市

【沖縄県】
 「田舎のおもてなしで心の贅沢を味わう旅in石垣」石垣島田舎体験プロジェクト実行委員会▽「草野球キャンプIn宮古島2014」宮古島観光協会

あべのハルカスに、海旅専門店オープン(KNT個人旅行販売)

ハルカス海外旅行サロン
ハルカス海外旅行サロン

 近畿日本ツーリスト個人旅行販売(田口久喜社長)は3月7日、大阪市阿倍野区に同日グランドオープンした日本一の高さ300メートル、地下5階地上60階建ての超高層複合ビル「あべのハルカス」の17階に海外旅行専門店「近畿日本ツーリストハルカス海外旅行サロン」(反保布美子所長)をオープンした。同社の海外旅行専門店は東京・有楽町に続き、2店舗目。

 同サロンは18、21―36階のオフィスフロアにつながる17階オフィスロビーに位置し、ハルカスで働くOLやビジネスマンのほか、シニア・富裕層などをターゲットにする。営業時間は平日午前11時から午後7時30分まで(土・日・祝日は7時)。

 「ワンランク上のプレミアム感」をコンセプトに、海外挙式、ハネムーン、クルーズ、海外留学、ロングステイなどテーマ性のある旅行を提案する。店内は木の風合いを取り入れた落ち着いた空間。壁面にポスターなどを貼らず、パンフレット設置も通常店舗の3分の1程度に抑えることで、ゆったりとしたサロンの雰囲気を創出している。

 スタッフは5人で、4人がウェディングコーディネーター(社内資格)、1人がクルーズコンサルタントの資格を持つなど経験豊富なスタッフが常駐。ネットから予約できる来店事前予約制度を導入し、来店時には現地情報や各種資料などを取りそろえ、顧客を迎える。

 サロン内では旅行説明会・セミナーを随時開催するほか、高層ビルの眺望を活かし、夕陽の時間帯にワインテイスティングやフラダンスイベントなども行い、交流スペースの機能も持たせる。

 同社関西営業本部の杉浦洋一営業部長は「人生の感動体験をデザインするという当社のコンセプトを象徴する店舗。万全のおもてなしで、お客様の記念旅行を提案したい」と話し、反保所長は「家族構成や趣味などをリアルにイメージしたシンボル顧客像を作り、提案のシミュレーションを繰り返している。お客様目線で旅のプロデュースに取り組みたい」と意気込む。

学生視点で観光企画、立教×鳥羽市×近ツー個人

立教大学の学生と安島教授(中央)
立教大学の学生と安島教授(中央)

 立教大学と三重県鳥羽市、近畿日本ツーリスト個人旅行はこのほど、国内企画旅行商品「三重県鳥羽の“ふところ”へ」を共同企画し、2月19日に東京都内で商品発表会を開いた。「答志島路地裏ラリー」など、学生ならではの視点から鳥羽市の観光を企画した。同商品は近畿日本ツーリスト「メイト」で4月1日―9月30日まで販売される。

学生がデザインしたパンフレット
学生がデザインしたパンフレット

 発表に先立ち、鳥羽市観光課の山下正樹課長が「式年遷宮で注目されるなか、新たな客層を誘客しようと学生の自由な視点を取り入れ企画した」と経緯を説明した。

 続いて学生から発表があり、「これまで学んできた学問と違い、理想と現実との格闘が多々あった」など苦戦したようすを語った。立教大学観光学部の安島博幸教授は「学生の取り組みがきっかけとなり、鳥羽市が少しでも変われば」と期待を述べた。

 また、近畿日本ツーリスト首都圏第2国内企画センターの山田幸一支店長は「パンフレットから鳥羽市の皆さんや学生の心意気が伝わってくる。この経験を将来社会のために役立ててほしい」と力を込めた。

 発表後のインタビューで、立教大学観光学部観光学科3年の浦塚未来さんは「三島由紀夫の『潮騒』の舞台になった神島に行ったとき、物語どおりの場所で感動した。観光施設でもなんでもない一般の方の家が小説のモデルになっていたが、訪問させていただけてうれしかった」など、現地でのエピソードを語った。

 なお、同商品の送客目標は500人、売上目標は2千万円に設定している。

タイ語指さし集作成、タイ人観光客増加で(北海道観光機構)

 北海道観光振興機構と北海道国際観光テーマ地区推進協議会はこのほど、「タイ語指さし会話集」を作成した。ホームページにも掲載し、「道内だけでなく、全国の事業者に使ってもらいたい」(観光振興機構)と呼び掛けている。

 一昨年、週3便で就航した、新千歳―バンコク(タイ)線は、利用が好調なことから昨年10月から毎日運航となった。道を訪れるタイ人観光客も増えるなか、タイ語を話せなくても意思疎通ができるように会話集を用意した。基本会話に加え、交通や宿泊、飲食、買い物などの場面で、フレーズや単語を、指で示しながらやり取りできる。

 会話集は印刷物のほか、無料のPDFファイルも用意。観光振興機構ホームページ(http://www.visit-hokkaido.jp/)の組織情報のなかにある統計・資料からダウンロードできる。

旅館の繁盛法公開、“おもてなし”を再強化 (観光文化研究所)

旅館経営者など約50人が集まった
旅館経営者など約50人が集まった

 観光文化研究所(大坪敬史代表)は2月17日、東京都内で旅館業経営者向けに「今こそ“おもてなし”を再強化! “おもてなし”דマーケティング”で旅館が繁盛する法大公開セミナー」を行った。

 同社は本紙でも繁盛旅館の秘訣やおもてなしについてのコラムを連載し、宿泊施設など観光業のコンサルティングを行っている。

本陣平野屋の有巣栄里子女将
本陣平野屋の有巣栄里子女将

 第1部では、飛騨高山で2つの価格帯の旅館「本陣平野屋 花兆庵」「本陣平野屋 別館」を経営する有巣栄里子女将が、スタッフ教育やおもてなしのクレーム対応など、繁盛旅館の秘訣を語った。両館は年間客室稼働率90%を誇り、全55室で年商11億円を達成。JTBの評価は17年連続で90点以上を獲得し、ネット口コミも常に満点に近い評価を得ている。

 有巣女将はクリーンスタッフについて「客をもてなすという意識はない」とのことから、社員教育の一環として、毎日朝礼を行い、ヘビーユーザーの情報なども共有しているという。また、接客するうえでの重要点として「お客様と仲良くなろうという思いを持つことが大切」と話す。「若い人は会話のキャッチボールがまだ下手なので、『そうなんですか』で終わりがちだが、その先が大切」と強調した。顧客から高評価を受けるスタッフへは、褒めることを大切にし、「具体的にどこが伸びたのか、良かったのかを気楽に話すようにしている」という。

 

観光文化研究所の井川今日子氏
観光文化研究所の井川今日子氏

 第2部は、観光文化研究所の井川今日子氏が繁盛旅館が行うおもてなしとマーケティング事例を紹介した。井川氏は「おもてなしの現場にいる人は、集客の苦労を分かっていない人が多い」と指摘。平野屋が行うジョブローテーションを紹介し、「別の立場から見ることでいろいろと見えてくることがある」とすすめた。

 ホームページ関連については、「お客様は部屋や食事への関心が高いが、スタッフの顔が見えているところのクリック率が高い」とデータを紹介。Web上でもおもてなしを「見える化」することでアクセス数アップにつながるという。キーワード検索対策の重要性にも触れ、鬼怒川温泉では東武鉄道のキャラクター「鬼怒川みやび」というキーワード検索に対応している事例を紹介。「ニッチなキーワードを取りこぼさないことも大切」と語った。

 採用ページは「宿の経営理念を示す良い機会」とし、「おもてなしを大切にしている旅館ということをお客様にアピールすることもできる」と説明。求職者だけでなく、顧客を意識したページ作りの大切さを説いた。

 また、近年さまざまな方面で指摘される「ゆとり世代」について、「悪気なく悪いことをする素直で良い人」と特徴付け、社員教育では「常識が通用しないと思い、当たり前のことから教えていくしかない」とアドバイスした。

 続く第3部は、同社の大坪代表が、販売チャネルの再構築やマーケティング戦略などによる売上倍増法など、エリア、施設規模、客単価別に、おもてなしから、集客とリピーター化へつなげる手法を伝授した。