店舗や施設が対象に、国際おもてなし認証開始(JHMA)

斎藤理事長(中央右)とJHMAメンバー
斎藤理事長(中央右)とJHMAメンバー

 日本ホスピタリティ推進協会(JHMA、斎藤敏一理事長)は3月4日に東京都内で、訪日外国人に的確なホスピタリティを実践する飲食や宿泊、小売など幅広い業種の店舗・施設の認証制度「国際おもてなし認証」の発足を発表した。同協会は1992年に発足。ホスピタリティの啓発・普及に取り組み、また人材育成事業として「ホスピタリティ・コーディネータ(HC)」の資格認定や教育研修などを定期的に実施している。

 国際おもてなし認証は、個人の接客パフォーマンスではなく、サービス従事者が一体になり、サービス標準としておもてなしを実践している店舗・施設単位で認証する制度。認証を受けるには、店舗・施設にHCのインバウンド対応版「グローバル・ホスピタリティ・コーディネータ(GHC)」か「グローバル・ホスピタリティ・アソシエイト」が最低1人在籍することが条件。

 認証の流れは、エントリー後2週間から1カ月でプレ審査が始まり、専門審査員によるおもてなし実践状況の点検や確認を行う。

 プレ審査の3週間から1カ月後に外国人審査員の覆面調査が行われ、さらに2週間後に従業員へのホスピタリティ浸透を確認するインタビューなどの本審査が行われ、認証が決定する(認証期間は有期)。GHCの第1回認定試験は3月に開始されており、第1号は早ければ5月ごろに認証される見込み。

 斎藤理事長は「この認証は今後、地域認証の一部としても利用を検討している」と意気込みを語った。1年後に100施設、2020年までには1千施設の認証目標を掲げる。試験は現在、東京・大阪のみだがニーズが高まれば全国展開や観光機関への進出も考えているという。

中村好明委員長
中村好明委員長

「宣伝活動の前にホスピタリティ」、中村好明氏

 JHMAグローバル戦略委員長で、ドン・キホーテグループ、ジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長の話。

 2月のタイ国際旅行フェア(TITF)で改めて痛感したのは、物凄い勢いでプロモーションをしていた東アジア近隣国ブースが唖然とするほど元気がなかったこと。短期的に人気になった国でもリピーターにつながらず、タイからの訪問者が減り、プロモーションの費用対効果が得られなかったためだと思われる。

 ドン・キホーテのブースではタイの観光客にアンケートを取った。日本への旅行に15回も来たことがある人などリピーターが多く、その理由はやはりホスピタリティ。プロモーションの前にまずホスピタリティが重要だと熱く感じた。また、外国人を特別扱いすることなく、ユニバーサルなおもてなしができるように、宗教や文化などの多様性を尊重しつつ、日本の素晴らしさを伝えられるグローバルなホスピタリティが必要だ。

一葉が通った質店取得、地域創造に産学連携(跡見女子大×文京区)

山田徹雄学長
山田徹雄学長

 跡見学園女子大学(山田徹雄学長)と東京都文京区(成澤廣修区長)は3月12日、同大学文京キャンパスで合同記者会見を開いた。文豪・樋口一葉に関する区内の文化財「旧伊勢屋質店」を3月11日に同大学が取得。地域創造の産学連携の取り組みについて発表した。

 旧伊勢屋質店は明治時代に建造された蔵・見世・座敷からなる歴史的商家建築。樋口一葉が生活に困窮した際に何度も通った質店で、文学史跡としても貴重な建築とされる。これまでは個人の所有だったが建築の存続が危ぶまれる状況になったため、これまで保存活動に取り組んできた同大学が土地と建物を取得した。取得費用は約1億3千万円で、文京区が約4千2百万円を支援。区民を対象にした「一葉募金」も開始しており、区・大学・区民が協力し旧伊勢屋質店を活用する。

成澤廣修区長
成澤廣修区長

 成澤区長は「事業委託の形で、大学には建物の公開や観光案内事業など進めてもらいたい」と活用ビジョンを語った。山田学長は「4月に開設する『観光コミュニティ学部』の実践的な地域創造の場として利用を進めていく」と述べた。
 
 
 
 
 
 
 

【観光庁・タビイチ】新しい観光地づくりを、“資源なくとも工夫次第”

観光庁・山口次長
観光庁・山口次長

 観光庁は2月26―27日、新しい観光地づくりを支援する事業「タビの産直イチ」(タビイチ)で造成した観光企画の商談会を東京都内で開き、26日にはとくに優れた地域を表彰した。新たな観光資源創出に取り組む地域を紹介していく。
【丁田 徹也】

 事業の流れとして、まず「タビイチ」の前事業「日本タビカレッジ」で、観光地の再建・強化を目指す78観光地がモニターツアーや地域情報の発信。その後、より実践の場を目指す45地域が「タビイチ」で観光地の魅力開発や旅行商品化を推進した。対象者を絞ったニッチな企画や、ソフト面にこだわった観光地づくりなど既存の観光地づくりに見られない新たな要素を駆使した事業が見られた。

水口ニューツーリズム推進官
水口ニューツーリズム推進官

 観光庁の山口由美次長は「訪日観光は好調だが、ゴールデンルートなど限られた市場でのみ活気がある。国内旅行も依然として厳しい状況。資源を世界に発信できる観光地域を作り、国内外の旅行者を津々浦々に向かわせてほしい」と鼓舞した。

 同庁観光資源課ニューツーリズム推進官の水口幸司氏は「観光資源を持たない地域でも工夫次第で魅力的な観光商品ができる」と事業を総括し、「今後は地域サイトやSNSを頻繁に更新してほしい。また、収益を今後の商品の磨き上げにも使えるように常に検証しながら、PDCAを回してほしい」と述べた。

 受賞地域は次の通り。

 【総合部門】1位 別海町観光協会(北海道)▽2位 防府市観光資源活性化協議会(山口県)▽3位 須磨観光協会(兵庫県)
【一般投票部門】1位 福岡やるばい観光!人とまちづくり協議会(福岡県)▽2位 カワイイ北海道ツーリズム推進協議会(北海道)▽3位 Tatton事務局(宮城県)
【旅行ジャーナリスト部門】1位 中央区観光協会(東京都)▽2位 八ッ場ふるさとエコツアー実行委員会(群馬県)▽3位 久慈広域観光協議会(岩手県)
【プレゼン部門】東日本1位 中央区観光協会(東京都)▽西日本1位 須磨観光協会(兵庫県)

パンフレット
パンフレット

【地域事例(1)】「カワイイ」が資源、北海道をゴスロリで観光

 カワイイ北海道ツーリズム推進協議会は「カワイイファッション」で小樽や札幌を歩く観光客に注目し、カワイイファッション愛好家向けのモニターツアーを造成した。

 「カワイイファッション」は、中世ヨーロッパの服装をアレンジした「ゴシック&ロリータ」などのファッションの総称。小樽運河や札幌の情緒ある街並みが服装とマッチングすることからカワイイファッション愛好家の間で有名になった。

 同協議会事務局長の石田哲也氏(メガ・コミュニケーションズ取締役)は「北海道の歴史的景観や風景に何か一味足して新しい旅行商品を作ろうと考えたときに、カワイイファッションで小樽運河や札幌のレトロな街並みを歩く人の存在に気づき事業化した」と語る。

 ツアーは、プロカメラマンによる撮影やクラシカルな館での晩餐会、お茶会専用のスイーツの提供などカワイイファッション愛好家に焦点を定め、こだわり抜いた。

 参加者は東京・大阪など都市圏が多く、20―40代の若年層が多いことが特徴。「このツアーで初めて北海道に来た」「雪のない北海道に初めて来た」という声も多い。さらに海外からの熱狂的なファンも多く、インバウンド向け観光の潜在要素もある。今後は一般観光客向けのファッションを体験しながら北海道のレトロの街並みを楽しめるツアーも検討中という。

 カワイイ北海道事務局=メガ・コミュニケーションズ 電話:011(644)8581。

昨年のツアーパンフレット
昨年のツアーパンフレット

【地域事例(2)】未開発の地域活用、七時雨山をトレラン

 七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会(岩手県八幡平市)は、スキー場開発されずに牧草地となった七時雨山(ななしぐれやま)周辺地域に注目し、トレイルランニング(トレラン)と結び付け、地域の魅力を発信している。

 モニターツアーでは、トレラン以外にも国内での生産が少ない短角牛を使ったバーベキューを取り入れており、「地域限定」にこだわったツアーを楽しめる。

 また、今年で3回目を迎えるトレランレースは、受付開始から2週間で予約が定員に達するほどの人気。とくに若年層の参加者が多いことが特徴で、30代未満の若者が参加者全体の10%、30代が41%を占めている。県外参加者も多く、首都圏からの参加者もいるという。

 事務局の谷彩音さんは「トレランは新たなハード整備が必要なく、むしろ古道や牧場など地域の魅力を活かせるところが良い。開放的な牧場を走ることができるのは七時雨ならでは」と語る。

 「七時雨マウンテントレイルフェス」のホームページ(http://www.nanashiguretrail.jp/)のプロモーションビデオからは七時雨山の大自然や、牧草地を走るようすが見ることができる。

 七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会 電話:080(5560)7070。

【地域事例(3)】山口の方言を観光に、「幸せます」で人を呼ぶ

 防府市観光資源活性化協議会(山口県)は山口県の方言「幸せます」を観光に取り入れ注目されている。「幸いです・うれしく思います・助かります・ありがたいです・便利です」という意味で使われる方言に「幸せが増す」の意味を付与し、地域ブランド化した。

 「幸せます」活用のきっかけはテレビ放送で方言として紹介されたこと。それまで方言だと意識されていなかったが、地域資源としての活用の声が地元の高校から挙がり、防府商工会議所が「幸せます」を商標登録し、防府市の統一コンセプトとしてまちづくりやイベントに活用している。

 その一つが梅の名所「防府天満宮」での市民ボランティア「幸せ写し隊」。プロや学生などのボランティアカメラマンが観光客のカメラのシャッターを押し、おもてなしするという取り組み。市民が参加しやすいように、活動バッジの製作も検討している。

 地域商品は「買った人やプレゼントされた人が幸せになること」を第一に考えて開発した。つぼみから桜の開花が楽しめる盆栽ギフトや上手く育たない場合は手厚いサポートも行う野菜栽培セットなどユニークな商品がそろう。

 防府商工会議所 電話:0835(22)4352。

4月12日開催、第1回ピンクリボンの日(道後プリンスホテル)

 愛媛県松山市道後温泉の道後プリンスホテルは4月12日、「第1回ピンクリボンの日」を開く。

 当日は大浴場を無料開放するほか、午後1時からは松山赤十字病院の乳がん看護認定看護師による特別講演を開催。また主催する池山メディカルジャパンの人工乳房の装着入浴体験をはじめ、協賛メーカーによる各種イベントも行われる。

 開催時間は午前11時から午後3時で、参加希望者は事前予約のこと。昼食時には、限定30食で“体の中から美しく元気になる”ことをテーマにしたランチ(要予約・税込3240円)を用意する。

 問い合わせ=道後プリンスホテル 電話:089(947)2000、池山メディカルジャパン 電話:0120(758)113。

【4月12日開催】道後プリンスホテル「第1回ピンクリボンの日」

イベント参加申し込み書
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 愛媛県松山市道後温泉の道後プリンスホテルは4月12日、「第1回ピンクリボンの日」を開く。

 当日は大浴場を無料開放するほか、午後1時からは松山赤十字病院の乳がん看護認定看護師による特別講演を開催。また主催する池山メディカルジャパンの人工乳房の装着入浴体験をはじめ、ウィッグの相談や下着のフィッティングなど、協賛メーカーによる各種イベントも行われる。

 開催時間は午前11時から午後3時で、参加希望者は事前予約のこと。昼食時には、限定30食で“体の中から美しく元気になる”ことをテーマにしたランチ(要予約・税込3240円)を用意する。

問い合わせ=
 道後プリンスホテル 電話:089(947)2000、
 池山メディカルジャパン 電話:0120(758)113。

 

東武トップツアーズへ、理念は「ありがとうの連鎖」

「人が最大の財産」を表現
「人が最大の財産」を表現

東武トラベルとトップツアー合併

 東武トラベル(坂巻伸昭社長、東京都墨田区)とトップツアー(同、東京都目黒区)は4月1日付けで合併し、「東武トップツアーズ」(同、東京都墨田区)として始動する。両社の特性と経営資源を融合させることで、収益基盤の確立をはかることなどが目的。

 新会社の経営理念は「 “Warm Heart”~ありがとうの連鎖を~」。「人」を最大の財産として経営の根幹に据え、ロゴマークでもそれを表現した。経営ビジョンは、高度な専門性と高い付加価値で感動を創造することや地域の発展に寄与し、社会に貢献すること、仕事を通じて従業員と家族の生活を豊かにし、夢と誇りを与え幸せにすることなどを掲げる。

 具体的には、東武トラベルが強みとする教育旅行・宗教旅行営業とトップツアーの強みの全社一系のネットワークを活かした各種法人営業を融合し、団体旅行の営業力を高めて収益の向上を目指す。また、拡大するアジア市場を狙い、新規現地法人の設立など海外ネットワークを充実させ、インバウンド営業を強化。東武沿線への送客力とシナジー効果の向上をはかる。このほか、自社海外商品の多方面展開や趣味趣向型の新商品など商品力の強化をはかるほか、ローコストオペレーション体制を構築する。

 商品ブランドは、15年度上期は国内・海外ともに東武トラベル「ユニック」、トップツアー「CUTE」を存続させ、新ブランド商品は下期以降となる予定。国内は、現在の両社商品をベースに方面別や商品別に区分。重複商品の整理や一部は廃止をするが、商品は増加していく。海外も両社商品をベースに、台湾やハワイなどは両ブランドで展開する。

 組織体制は、「管理統括本部」と「営業統括本部」の2統括本部制をとる。営業統括本部は専門性の高い営業をさらに強化するため、「営業支援機能」と「支店所管部署」を分離し、支店所管部署は法人営業本部と個人営業本部直下の支社・統括部となる。店舗ネットワークは同じ地域に店舗を構える18店舗は営業の拡大と効率的な運営を目指し、統合する。

春の素晴しさを堪能 ― 桜を愛でながら温泉に浸かる「贅沢」

 春らしくなってきた。春は別れや出会いの季節であり、花も咲き、薫り、大好きな季節なのであるが、花粉症にかかって以来、春の到来が憂鬱になっていた。しかし、今年はクスリが体質に合ったのか、あまり花粉症に苦しまないで済んでいる。私はこのクスリを開発してくれた人に感謝している。なぜなら春の素晴らしさを久しぶりに堪能できているのだから。

 酒を愛した李白の『月下独酌』という詩が好きだ。

 「花が咲く木陰に酒壷を持ち出したものの、相伴してくれる友もなく、ひとり手酌で飲む。そこでふと見上げると月がいた。杯を挙げて、月を招き、自分の影も含め、三人で心いくまで春を楽しむ。自分が歌えば、月はそれに合わせて動き回る。自分が舞えば、影もゆらめく。楽しい時間だが、酔いつぶれてしまえば別れ別れになる。いつまでもこんな清らかな交遊を続け、いつか天の川で再会しよう」というような感じの詩だ。

 春は、花と酒が似合う。月もどこか朧気で、趣がある。花と言えば、桜だ。そして桜に合う酒は、やはり日本酒である。この春は美味しい日本酒を買って来て、たくさん飲み、桃色の花びらを杯に浮かべ、花に酔おうと思う。

 春の訪れを花に感じるが、都会の街角にも春を感じさせる瞬間がある。それは街を歩くOLたちが黒いロングコートから、春色のスプリングコートに着替えるころだ。

 昔、まだ私が大学生のころ、ある女性と知り合った。その人は私よりの一つか二つ年下だったが、会社勤めをしていたので私よりも随分オトナだった。学生の私は自堕落で、夕方ごろに目覚め、新宿で彼女と待ち合わせた。間抜けな格好をした私と、朝からしっかりと働いたあとの疲れ気味の彼女は、口開けのバーでビールやジンを飲んだ。しかし、彼女は社会人で、私は、友もいない夢想的な大学生。話はいつもあまり噛み合わなかった。それでも、私が誘えば、彼女は「いいよ」と仕事が終わると会ってくれた。顔はブスで、性格はねじ曲がっていたが、体つきがいやらしかったので、若い私は少し夢中になった。しかし、そのような関係も長くは続かず、最後に駅で別れたときの彼女の着ていた春コートが可愛らしかったことだけ、いつまでも鮮明に覚えている。春の思い出。不思議なものだ。

 旅先で花と触れ合う「フラワーツーリズム」という旅行スタイルもある。近年は、春の桜の開花に合わせ、外国人旅行者が多く訪れるようになっている。

 桜並木の下で繰り広げられる花見の宴会のさまに、外国人は驚くかもしれない。私は桜の下で、赤ら顔になって陽気にはしゃぐ光景が、能天気で、馬鹿に見えるがゆえに好きだ。あくまでも人間が中心で、桜が背景で楽しそうな人たちを盛り上げているような感じがいい。

 しかし、桜の名所と言われるところはどこも混雑している。喧騒を離れ、李白のように一人で静かに酒を飲みたい人には、自分だけのお気に入りの桜木があれば最高だ。露天風呂や客室から桜を眺められる宿は日本には数多くある。夜桜を独占的に愛でながら、温泉に浸かることは、「贅沢」の一言に尽きる。 

 風景とは、心が映し出すものであり、桜もさまざまな姿となって人の目に映る。同じ花でも毎年違って見える。不思議な花だ。

(編集長・増田 剛)

訪日入門書プレゼント、やまとごころ提供

やまとごころ

 やまとごころの村山慶輔代表が、インバウンドビジネスのノウハウをまとめた1冊「訪日外国人観光ビジネス 入門講座~沸騰するインバウンド市場攻略ガイド」(翔泳社)を、抽選で読者5人にプレゼントする。訪日外国人観光客の基本から施策まで網羅した図解入門書。

 希望者は住所、氏名、電話番号、会社名、タイトルには「インバウンド書籍希望」と明記のうえ、メール(support@yamatogokoro.jp)で応募する。

 応募締め切りは3月31日。
 
 

No.397 やまとごころ・村山社長に聞く、訪日客に宿はどう向き合うか

やまとごころ・村山社長に聞く
訪日客に宿はどう向き合うか

 2020年に訪日外国人観光客(インバウンド)2000万人達成を目指し、順調にインバウンドが増加している傍らで、インバウンドビジネスもまた活発化している。「株式会社やまとごころ」はインバウンドに特化した情報サイトやコンサルティングなどを展開するインバウンド事業のプロフェッショナル。代表取締役の村山慶輔氏に、インバウンドビジネスの現状や、訪日外国人旅行客を受け入れる宿泊施設の課題などを聞いた。

【丁田 徹也】

 
 
 

 ――貴社について教えてください。

 当社では訪日外国人旅行に関連する事業を複数展開しています。情報サイト「やまとごころ.jp」では、インバウンド事業に取り組む地域や商業施設、飲食業などさまざまな組織や企業、それを支えるプレイヤーの動きを発信しています。

 また、インバウンド求人情報サイト「やまとごころキャリア」では、外国人や外国語のできる日本人向けの求人情報を掲示しています。マーケット自体は非常に小さいのですが、インバウンドビジネスに絞り込んでいるため、ミスマッチが少ないことが大きな特徴です。

 ――どのような業種からの募集が多いですか。

 ホテルや旅館、ゲストハウスなど宿泊施設が多くなっています。とくに大きな宿泊施設になると接客での外国語対応だけでなく、海外での営業やインバウンド向けのインターネット宿泊予約など多くの業務があり、インバウンド関係の仕事で活躍できる機会も広がっています。

 ――求人登録をしている人の傾向を教えてください。

 旅行会社や宿泊業経験者が多いのですが、観光業に直接関係のないメーカーなど、異業種からの転職希望者も多いです。さまざまな企業がまさに今、訪日観光に目を向けているところですね。

 ちなみに、現在当社に登録している約800人の求職者のうち、3割ほどが外国人です。さらにその半分は中国の方です。

 ――外国人求職者に人気の職種はあるのでしょうか。

 当社では、…

 

※ 詳細は本紙1580号または3月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

佐賀県と早稲田大が連携、学生の目線で課題発掘

学生が課題や新ルートの提案などを行った
学生が課題や新ルートの提案などを行った

「駐車場不足」「旅館の役割大きい」

 佐賀県は早稲田大学と連携して、羽田や成田空港と結ぶ佐賀有明空港を活用した旅行需要の喚起と認知度アップを目指し、同大商学学術院商学研究科ビジネススクールの戸崎肇教授の講義を受講している学生を対象に、現地調査を実施した。大学生(若者)の視点から問題点の発掘と、新たなアイデアや提案をしてもらうことが狙いで、昨年11月に続いて今年の2月に、学生たちはLCCの春秋航空日本を利用して2泊3日の日程で佐賀県内を現地調査した。

 3月11日に早稲田大で行った最終報告会では、空港と各観光地を結ぶアクセスの課題や、実際に観光して感じた改善点などを、レンタカー班と、公共交通機関班に分かれて発表した。

 レンタカー班は、多くの観光名所で駐車場の整備や、観光地の表示看板の不足などを指摘。「慣れないクルマの運転で、カーナビを見ながら細い路地で駐車場を探すことが大変だった」などの感想を述べた。戸崎教授も「今の東京の学生は公共交通機関に慣れ、クルマを運転する機会は減っているので運転技術は未熟。佐賀県もレンタカーを利用した観光キャンペーンを展開されているが、安全・快適な旅への意識と整備が必要」と強調した。

 一方、公共交通機関班は、荷物を持っての移動を避けるため、リムジンタクシーによる移動のメリットを上げる一方で、「運行ルートをもっと柔軟に対応してほしい」などの意見が出された。

 また、意見交換の場では「学生の金銭感覚はシビアだが、こだわりのあるものにはお金を払うことを惜しまない」とし、「LCCを利用することで移動のお金が節約できた分、旅館に泊まり『プチ贅沢』の気分にも浸れた。学生旅行はメンバーと楽しむ時間と空間も必要で、旅館の役割は大きい」という声もあった。

 さらに、「旅の移動では、ガイドブックを活用した。学生はSNSから情報を得ると思われがちだが、SNSは情報が些末で、どれが重要なのか判断しづらい」とし、手っ取り早く必要な情報が手に入る観光情報雑誌(ガイドブック)の有用性を強調した。

 佐賀県からは、空港課の田中憲尚参事が「これまでさまざまな施策やキャンペーンなどを展開してきたが、『メニューは提示してきたがショーケースに飾っていただけ』という面があったかもしれない。学生たちの貴重なアイデアや提案を参考にしながら、もっと使いやすく工夫する必要性を感じた。首都圏の方々に佐賀有明空港から県内をもっと回っていただけるように改善していく」と話した。

 おもてなし課の中尾政幸課長は「有明海など自然に恵まれた佐賀は食で売って行こうと思っている。首都圏から来ていただくには何が必要なのか、学生の皆さんの提案を聞きながらメモしていると、問題点が20個くらい見つかった。一つずつ課題を潰していきたい」と語った。

 首都圏営業本部の光武香織副本部長は「たくさんの気づきをいただいた。地元の目線から『クルマがなければ県内の観光は難しい』と思い込んでいたが、公共交通を利用した旅も学生から概ね好評を得たのは予想外だった。県としてもリピートしてもらえるよう、積極的にPRしていきたい」と述べた。