戦略転換を語る、彦根キャッスルで一圓氏が講演

彦根城を望む大浴場
彦根城を望む大浴場
講演する一圓泰成社長
講演する一圓泰成社長

リョケンが旅館大学セミナー

 ホテルや旅館の経営について学ぶ「旅館大学セミナー」が7月15・16日、滋賀県彦根市の彦根キャッスルリゾート&スパで開かれた。旅館やホテルの経営コンサルティングを手がけるリョケン主催。

 15日は、全国約170カ所で記念写真撮影サービスを行う文教スタヂオと、同ホテルなどを経営する一圓興産の社長、一圓泰成さんが「彦根キャッスルリゾート&スパの戦略転換を語る」と題し講演した。

 リョケンの佐野洋一社長はあいさつで、「一圓さんの話から深い感銘を受け、経営に取り組む勇気や考え方のよりどころを見つけられるはず。有意義な勉強の場にしてほしい」と述べた。

 講演で一圓さんは、今春全館リニューアルした同ホテルにかける思いを語った。ビジネスホテルだった同ホテルは、周辺の宿泊施設との価格競争など課題が山積みだったことから、改装に踏み切ったという。

 宿泊単価が低いことなど儲からない理由を考え、「儲かるようにすべてを変える」というテーマで、改装の計画を進めた。宿泊客のアンケートから、「大浴場がほしい」「部屋から眺めが見えにくい」といった改装に生かせる声をピックアップし、東京の建築事務所に相談。同ホテルに視察に訪れた建築事務所の関係者から、「彦根城という歴史的遺産の前で、このやり方はもったいない」と指摘を受け、「国宝の門前にふさわしく、上質な寛ぎを演出するお城下ホテルに生まれ変わろうと決意した」と振り返った。

 リニューアルでは、大浴場を新設したほか、足の悪い人の要望から、和室宴会場を洋室の宴会場に変更。彦根城を望む景観を最大限に生かそうと、通行人や車が隠れるよう黒塀を設置したり、城側すべての客室のガラス窓を大きくしたりするなど、増築せずに改装した。リニューアルの投資額は6億1300万円で、年間売り上げも同額を目指していることを明かした。

 そのほか、多角化経営のなかで、社員のモチベーションを保つための取り組みを紹介した。文教スタヂオでは予算達成チームの表彰や、全国から社員が集まり業務の成功例を発表する「クリニック研修会」などを展開。数年前に開催した文教スタヂオ開業60周年記念パーティーでは、調理やサービス、余興などすべて社員に担当させたといい、「若手が自分の会社の未来のイメージを膨らませることが大切」とし、「社員は自分で計画をしたことは自分で責任を取ろうとする。大変なことをあえて選択する社風を今後も培っていきたい」と締めくくった。

参加人口4年ぶり増加、団塊ジュニア参入で750万人(オートキャンプ白書2014)

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 日本オートキャンプ協会(吉田章会長)がこのほど発表した「オートキャンプ白書2014」によると、13年のオートキャンプ参加人口は、人口ボリュームの多い「団塊ジュニア世代」の参入で4年ぶりに前年(720万人)を上回り750万人となった。キャンプの経験年数は、「キャンプ経験1年」が22・6%と前年の20・4%を上回り、新規参入キャンパーの増加を示している。キャンパーの平均年齢は団塊ジュニア世代にあたる41・5歳。
【増田 剛】

 13年のキャンパーの平均年齢は、12年の40・7歳から0・8歳上がって41・5歳。この10年の平均年齢を見ていくと、03年の38・7歳から上昇傾向にある。

 年齢の分布では、40―49歳が37・7%、30―39歳が37・1%と子育て世代が74・8%と全体の約4分の3を占めている。また、20代が前年の4・1%から6・8%と大きく伸びたのが特徴で、若い世代の参入も目立っている。

 自宅から利用したキャンプ場までの距離をみると、「50キロ圏内」は26・5%、「100キロ圏内」は24・1%と合わせて5割を超える人が自宅から100キロ圏内でキャンプを楽しんでいることがわかった。

 また、13年のキャンプ場の平均稼働率は11・1%と、12年の10・8%を上回った。また、東日本大震災前の10・9%を超えて全国的に好調のようだ。

 オートキャンプの将来性についても、「拡大発展すると思う」が18・2%と、12年の17・1%に比べ1・1ポイント上昇するなど、期待も高まっている。

 13年のキャンパーの特徴としては、「グループ利用が増えた」(29・3%)が最も多く、(2)デイキャンプが増えた(20・4%)(3)シニアの利用客が増えた(18・2%)(4)女性グループの利用が増えた(15・9%)(5)手ぶらのキャンパーが増えた(15・6%)(6)3世代キャンパーが増えた(13・7%)(7)外国人の利用が増えた(10・2%)――などで、女子キャンプや外国人の利用増といった新しい動きも出てきている。

 13年にキャンプ場に泊まった数「延べキャンプ泊数」は平均5・3泊で、12年の5・5泊から0・2ポイントの減少となった。最も多かったのが「1―2泊」の36・1%。次いで「3―4日」が23・1%、「5―6日」が13・5%、「7―10日」が12・5%、11泊以上が9・6%の順となっている。

 ペットの対応では「ペットOK」が71・0%、「ペット禁止」が28・0%、「無回答」が1・0%で、この割合は08年以降大きな変化はないという。

 そのほか、キャンプ用品の市場規模(登山用品・ウェア・シューズを除く)は前年比6・0%増の499億円と3年連続で上昇傾向にある。

運転手不足に対応、バスに特化した求人支援(どらなび)

成定竜一氏
成定竜一氏

 人材採用支援サービスを展開するリッツMC(中嶋美恵社長、東京都港区)と高速バスマーケティング研究所(成定竜一代表、神奈川県横浜市)は7月1日、バス運転手の求人支援サービスを開始した。近年、運転手の高齢化や規制強化、訪日外国人観光客の急増などを背景に、国土交通省でも有識者会議を設置するほどバス運転手不足は深刻化している。新サービスはこれに対応するためのもので、バス業界や運転手に特化した採用支援は国内初という。

 新サービスは求人情報サイト「バスドライバーnavi(どらなび)」の運営や人材紹介サービス、採用に向けたコンサルティング、新人運転手研修などを展開し、運転手不足の短期的課題と長期的課題の両面にアプローチする。「どらなび」の求人サイトは、求職者が検索する機能として勤務地や年収などのほか、路線バスや貸切バス、高速バスなどの職種、車両タイプやメーカーなど運転手ならではの特色ある項目を設けているのが特徴。また、特集ページを設置し、女性運転手の活用に具体的な取り組みを行っている会社や、未経験者向けに免許取得支援制度を導入した会社などを紹介し、新たな運転手の発掘も支援する。掲載求人数は約100社で、3年後の2017年までに250社程度の掲載を目指す。なお、10月までは求人広告を特別価格で掲載でき、各特集は無料。

中嶋美恵氏
中嶋美恵氏

 6月30日には報道関係者を対象にした会見とバス会社向けの採用セミナーを開催。成定氏は運転手不足の背景について、バス運転手の仕事の特性である1台に必ず1人の人員が必要なことや安全確保のため規制が厳格なことに加え、直近の規制実効性の強化や訪日観光客の急増などの環境変化があると説明した。また、男性運転手の10年の平均年齢は46・2歳と全産業男子平均年齢の42・1歳に比べて高齢化が進んでいるほか、運転手に必要な大型2種免許保持者は02年から09年で12%減少している。

 成定氏はバス運転手確保に向け必要なのは「女性」と「若者」の活用だと提案。「女性に不向きなわけではないが、従来から男社会のため、職場環境が女性に対応していない。また、大型2種は21歳から取得可能だが、鉄道や航空が当たり前に自社で人材育成するのに比べ、バスは転職が前提にあり、自社養成に消極的だった」という。現状、女性運転手の割合は1・4%と著しく低く、バス運転手の新卒採用はない。こうした状況を踏まえ「どらなび」は両者の活用に向けた環境づくりや効果のでる求人広告戦略のコンサルティングから、求人活動、研修などの定着戦略まで一貫して行うことで、運転手不足の解決をはかる。

 これまで医療・福祉関係の人材支援サービスを行ってきたリッツMCの中嶋氏は、サービスの1つ人材紹介について「バス業界ではあまりなく、1つの新しい方向性だと思う」と自信を見せた。また、集まったバス会社の採用担当者に向け、これまでの経験から採用効果を上げる求人広告について「ネットも紙媒体もスペースが大きいほど、質のいい人材が集まる。しかし、応募人数は少ないので、人数を集めたい場合は中くらいのサイズ」などポイントを伝授。情報内容の注意点としては、「労基法上の問題が出てくる」とし、「当社規定により優遇」や「シフト制・変形労働時間制」など曖昧な表現は避け、はっきりと記載することを呼び掛けた。

特急しなの運休対策、宿泊者へ無料バス運行、8月10日まで(木曽町)

 7月9日に発生した台風8号による長野県南木曽町の土石流災害で交通網にも影響が出ているが、国道19号は7月12日に通行止めが解除され、現在は通常通り開通している。架線流失によるJR中央線の不通区間は14日から野尻駅―坂下駅間で代行バスの運行が開始された。

 一方、木曽町では特急しなの運休対策として、名古屋駅と木曽福島駅を結ぶ直行の無料シャトルバスを7月28日―8月10日まで2週間の期間限定で1日1往復運行すると発表した。利用対象は木曽町宿泊者限定で、大型バス1台(受付人員44人先着順)完全予約制。期間中は毎日運行するが増便の予定はない。JR利用の宿泊客のアクセス確保とキャンセル防止が狙いという。

 運行スケジュールは、往路が名古屋駅名鉄バスセンター4階乗車ホーム21番を午前10時に出発し、木曽福島駅前には午後1時ごろ着。復路は木曽福島駅前を午後4時出発、名古屋駅名鉄バスセンター4階に午後7時ごろに到着となる。

 無料シャトルバスは完全予約制のため、事前に木曽町観光協会へ電話にて申し込む。インターネットでの予約受付はない。

 予約・問い合わせ=木曽町観光協会 電話:0264(22)4000(午前9時―午後6時)無休。

ゲストハウスを開設、バス会社・平成エンタープライズ

わさびの入り口に立つ田倉貴弥社長
わさびの入り口に立つ田倉貴弥社長

 バス事業を中心に展開する平成エンタープライズ(田倉貴弥社長、埼玉県富士見市)はこのほど、東京・東日暮里に宿泊施設「ゲストハウス WASABI わさび」をオープンした。運輸から宿泊まで複合展開することで付加価値を創造し、サービスの向上をはかる。同社の狙いや施設の概要を紹介する。
【飯塚 小牧】

複合展開で付加価値、サービス向上はかる

 同社は東京―大阪などを中心に高速バス「VIPライナー」を運行するほか、貸切バスや埼玉県内での路線バス、旅行事業などを手掛けている。もともと同社はバス利用者などへの休憩所として全国6カ所でラウンジを展開しており、宿泊業への参入もバス利用者へ休憩所を提供したいという発想から生まれた。狙いはサービス向上だ。

 田倉社長によると、昨年の新高速バス移行後、高速バスは競争が再度激化したという。「パイが減っているのか分からないが、最低価格が下がっている。リピーターを増やすため、別のサービスを展開して、利用価値を生み出したい」と語る。高速バス利用者は休憩所として無料で「わさび」を利用できるほか、宿泊者が同社バス以外の交通手段で移動しても、旅先の同社ラウンジでサービスを受けられる。

 当初、大阪のVIPライナー停留所の前に宿泊施設をオープンしようと動いていたところ、東京にも物件が見つかり、先に東京が開業することになった。施設は「格安で提供でき、高速バス利用者とリンクする」とドミトリータイプの施設にした。「わさび」は男女別の相部屋で、料金は1人2800円。

富士山絵のある大浴場
富士山絵のある大浴場
和を感じる化粧室
和を感じる化粧室

 訪日外国人観光客が増えていることも追い風だ。「旅行会社には高速バスとドミトリー、東京から成田の空港リムジンバスが付いたユニットとして販売し、ツアーの一部に組み込んでもらうかたちにしたい」と意気込む。また、個人の外国人観光客で高速バスを使う場合、ゴールデンルートの東京―大阪間が最も多い。同社もこの路線を多く持っており、バスと宿泊をパッケージにして売り出したい考えだ。「貸切バス事業もあるので、宿泊者に富士山の日帰りツアーに参加してもらうことなどもできる」と展望する。宿泊施設で集客し、そのほかの事業へつなげていくことが目標だ。「わさび」の内装は大浴場に“銭湯絵”の富士山を描いたほか、化粧室の壁紙もそれぞれ和を感じられるものに仕上げ、個人のSNS発信なども集客ツールとして期待する。

 外国人だけではなく日本人の家族旅行なども取り込んでいく。「わさび」にはドミトリータイプのほか、個室も用意。8部屋のうち、和室の3部屋は3人まで宿泊可能で、料金は3人利用で9千円。「地方から家族で東京ディズニーリゾート(TDR)に行くととてもお金が掛かってしまい、カプセルホテルに泊まる家族もいるそうなので、そういった人たちにも利用してもらいたい」と話す。

 今後は、9月の開業を予定する大阪のほか、国内外の観光客の多い浅草や富士山、京都、TDR周辺の葛西などに宿泊施設の展開を検討しているという。「東京もラウンジを含め山手線内に転々と拠点を作っていきたい。その各施設の前にバスの停留所も作れるように努力していく」と夢は広がる。なお、宿泊施設のコンセプトはそれぞれで、大阪はイタリア風の造りになる予定という。

映画「二十四の瞳」製作60周年、多彩な記念イベント実施、香川県・小豆島

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 木下惠介監督・高峰秀子さん主演の不朽の名作映画「二十四の瞳」が1954年9月に公開され、今年で製作60周年を迎えるなか、映画のロケ地となった香川県小豆島では今夏、多彩な記念イベントが予定される。
 8月24日には、「二十四の瞳映画村」(小豆島町田浦)プロデュースによるトークイベント「喋楽苦(しゃべらく)」が開催される。イラストレーターや俳優などマルチに活躍するリリー・フランキーさん、映画監督・橋口亮輔さん、スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんの3人を招き、木下監督や二十四の瞳などについて、喜怒哀楽トークを繰り広げる。リリー・フランキーさんが主演し、橋口監督がメガホンを取った映画「ぐるりのこと。」の上映も行う。
 土庄町立中央公民館で午後1時45分から6時10分まで。入場無料で先着800人限定。
 一方、「二十四の瞳映画村」では8月24―30日の7日間、「月のしずくと映画のしらべ」と題し、村内のライトップと映画上映などの夜間営業を行う。夜間営業は午後6時30分から9時30分まで。
環境に優しい畜光石を地面に埋め込み、村内の天満宮参道や花畑の周辺、ギャラリー松竹座映画館の周辺など135平方㍍をライトアップ。柔らかな光が、ノスタルジックな村内を一層神秘的に浮かび上がらせるという。畜光石に名前と願い事を書き、光の奉納箱に入れる「願い石」の仕掛けもある。
 二十四の瞳を常時上映する映画館では、鈴木敏夫さんが推奨する映画「風の中の子供」、橋口亮輔さんが推奨する映画「故郷」を特別上映。風の中の子供は同3時30分から、故郷は夜間営業となる同6時45分から。
夜間営業の入村料は大人(中学生以上)500円、小人(小学生)250円。通常営業入村の場合は当日入場券の提示で再入場可能。
 映画村の有本裕幸専務理事は「製作60周年を迎え豪華映画人を迎えてのトークショーや上映会、それに連動した映画村のライトアップなど、ぜひこの機会に小豆島の星空とライトアップをお楽しみください」と話している。

 写真は二十四の瞳映画村のライトアップ

『全国旅館おかみの集い』ページを更新いたしました。

『全国旅館おかみの集い』ページを更新いたしました。

 今年で25回目の節目を迎える全国旅館おかみの集い(全国女将サミット2014東京、佐藤幸子実行委員長)の参加案内と申込書を更新いたしました。

平成26年9月16日開催「女将サミット2014」の詳細をご確認いただけます。
詳しくはコチラから。(弊社の『全国旅館おかみの集い』ページへリンクしています)

 
☆「全国旅館おかみの集い」とは☆
 全国の旅館・ホテルの女将が一堂に集まり、互いに悩みや課題を話し合い、各界著名人による講演、分科会を通じて学び、併せて女将のネットワークづくりのための懇親を深める場です。(通称:女将サミット)

次世代の宿泊施設の一方向性 ― “アフリカ的”の日本的な解釈へ

 現在の旅館が最も重視しているのが「接客、おもてなし」とすれば、次のパラダイムは「意識的に接客しない『空間の価値』ではないか」と、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏は語った。これは7月9、10日に東京都内で開かれた「科学的旅館・ホテル経営フォーラム」の一コマである。

 内藤氏は「お客が感じているのに、旅館がまだ気づいていない新しい価値が出てきている」と指摘する。「宿の元々の価値は寝る場所を提供する『施設』。これに、『料理』が加わり料亭的なオペレーションが入ってくる。最近は『接客、おもてなし』が注目されているが、最先端を走る幾つかの旅館では、『空間の価値』を重要視し、『目尻では見ているけど、お客様に声を掛けられるまで何もしない』という姿勢が増えてきている」として、大洗の里海邸金波楼本邸や、日田市のホテル風早、能登半島の“いたらない、つくせない宿”を謳う「湯宿さか本」などの例を挙げた。

 一方で、「接客、おもてなし」の力のすごさを感じたフォーラムだった。内藤氏も「ニーズが多様化するなかで、お客様に『お聞きする』ことでムダがなくなる。接客、おもてなしの力を軽んじないほうがいい」と強調した。

 ビジネスホテル「ホテルナンカイ倉敷」は立地条件に恵まれないなかで、多くのリピーターやファンを獲得している。表面的には違いが見えなくとも、細部へのこだわりが顧客の心を掴む一つの例である。宿泊客は水島コンビナートで定期修理をする長期出張者が多いなかで、「お客様がテーブルで取りづらい調味料があれば、さっとお手元に近づけて差し上げます」という田中正子支配人の言葉に涙が出そうになるのである。数々の店で食事をし、宿にも泊まったが、取りづらい調味料を手元に近づけてくれた店はほんのわずかだ。これはホテルナンカイ倉敷の末端のおもてなしであるが、同時に全体を表している。旅行新聞新社が発刊した「いい旅館にしよう!」の中にもさまざまなエピソードが語られている。

 台風の影響でフォーラムに急きょ参加できなくなった鹿児島県・南きりしま温泉の天空の森の主人、田島健夫氏は「天空の森は人間性を回復する場所。人間も自然の中の一つであり、建物も自然と調和している。欧州の人からは“アフリカ的”だと言われたりします」と語っていたのが強く印象に残っていた。天空の森も「空間の価値」を重要視する極北であろう。

 そこで、再び、“アフリカ的”という言葉が頭に鳴り響く。私はアフリカに行ったことがないので、あくまでも想像の域を出ないが、私なりの解釈をすると、“アフリカ的”という表現は、「大地との密接な関係」のことではないかと考える。快適性を追求する都市生活者は、ますます大地の「土」から離れゆく。しかし、極限まで離れ過ぎると、「もっと大地に近づきたい」という動物としての本能が疼いてくる。

 近い将来、都市生活者は休息を求めるとき、高層ビルから一段、さらにもう一段、降りていき、大地と抱き合う、密接な関係が築けるリゾート空間を今以上に渇望するだろう。“アフリカ的”というキーワードが、今後日本的に解釈され、これまでになかった交配によって、新たな価値観を創出するのではないか。

(編集長・増田 剛)

No.377 女性が活躍する社会の実現 - “仕事継続をあきらめないで”

女性が活躍する社会の実現
“仕事継続をあきらめないで”

 政府は6月24日、成長戦略「日本再興戦略改訂版」を閣議決定した。第2次安倍晋三内閣は発足当初から女性の活用を掲げてきたが、改訂版では女性の就業率を2020年までに73%へ、指導的地位を占める女性の割合を約30%まで高めることを改めて明記した。各所で取り組みが進むなか、日本の次世代社会モデルを検討するプラットホーム「プラチナ社会研究会」の分科会では、女性が活躍する社会の実現に向け、女性視点で議論を展開。社会全体への提言のほか、女性自身にも「仕事継続をあきらめない」ことなどを提案する。

【飯塚 小牧】

 
 
 
人生の中で重点を変え、仕事も生活でも自己実現

 三菱総合研究所が事務局を務めるプラチナ社会研究会は、高齢化問題などを産業化することで、デフレと雇用問題を解決しようという「プラチナ構想」に基づき、次世代社会モデルを検討し、社会に提示していくためのプラットフォーム。2010年に設立され、14年5月現在、民間企業や自治体、教育機関など401団体で構成する。観光産業では、旅行業の近畿日本ツーリストやJTB、地方団体のやまなし観光推進機構などが参画している。

 同プラットフォーム内の「女性のライフスタイルから考えるプラチナワークスタイル分科会」(幹事=博報堂、凸版印刷、三菱総合研究所)は、…

 

※ 詳細は本紙1552号または7月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

国民意識の啓発を、無電柱化へ民間組織発足

小池百合子氏と実行委員会のメンバー
小池百合子氏と実行委員会のメンバー

 「景観・観光」「安全・快適」「防災」の観点から、民間の立場で無電柱化を推進する「無電柱化民間プロジェクト」実行委員会が7月10日に設立され、同日に東京都千代田区のホテルニューオータニで発足記者発表会を開いた。国民意識の啓発や新設電柱を原則禁止にする法律の策定を目指す。

 同委員会では、政府と自民党が推進する無電柱化の趣旨に賛同し、民間の立場から応援していく。

 実行委員長を務める日本芸術院会員で東京芸術大学名誉教授、大阪芸術大学教授の絹谷幸二氏は会見で、「諸外国は無電柱化が進んでいる。景観を損ねている面もあるし、震災などの際に電柱が倒れるリスクもあり、防災の観点からも無電柱化の意義は大きい」と語った。

 日本の電柱の本数は1987年に3007万本、2008年に3525万本、12年に3552万本と年々増加。世界の各都市の無電柱化率を比べると、ロンドンが100%(04年)、パリが100%(04年)、ベルリンが99%(12年)、ニューヨークが83%(11年)、ソウルが46%(11年)に対し、東京は32%(12年)と大きく遅れている。下水道普及率が約3%のジャカルタにおいてもコタ駅周辺で35%と無電柱化が進められている。

 同プロジェクトでは(1)工事経費抑制のための直埋設立の推進(2)地上機器を置く民地確保の手法確立(3)新設の電柱は「原則禁止」とする法律の策定――を今後の目標に設定した。(1)CSRで企業への協力依頼(2)民地の軒下に地上機器を配線するなど協力のお願い(3)予算の確保(4)税制による優遇(5)無電柱化基本法の策定――を活動方針に掲げる。

 また、来賓の自民党無電柱化小委員会委員長を務める小池百合子衆議院議員は無電柱化小委員会の中間とりまとめとして(1)新設電柱を原則禁止とするなどの「無電柱化基本法」の策定(2)技術革新(3)国民の意識改革――を挙げ、「無電柱化は景観だけでなく、防災や自転車・車イス・ベビーカーが通りやすくするという観点でも必要なこと。実行委員会の皆さんと連携しながら、国民全体の意識を変えていきたい」と語った。