英・オートキャンプ団体、日光や京都めぐる訪日ツアー(日本オートキャンプ協会)

(左から)堺廣明氏とバーバラとネルソン・レーシ夫妻、
小島有三氏(JAC観光部会)、鈴木孝幸氏

 英国でオートキャンプの普及に尽力するNPO団体「The Camping and Caravanning Club」のネルソン・レーシ氏とバーバラ・レーシ氏夫妻が来日した。同団体傘下の旅行会社Worldwide Motorhoming Holidays社が主催する19日間の訪日キャンピングツアーの案内役を務める両氏。6月1日、芝パークホテル(東京都港区)で日本オートキャンプ協会(JAC)の堺廣明事務局次長や鈴木孝幸氏、キャンプコーディネーターの佐久間亮介氏と対面。日本での旅程や、キャンプの現状をめぐって意見交換を行った。

 キャンプ文化が根付く英国。日常の延長として楽しむ人が多く、日本のキャンプ場設備の充実を希望した両氏。堺次長は「電気の供給など先進的なサービスが知られていないことも多い。訪日キャンパーの取り込みが進めば、周知は進むはず。さらなる設備の充実も果たしたい」と応じる。旅は6月20日まで。一行17人は車で京都を目指し、日光や白川郷(岐阜県)などを経由。厳島神社(広島県)も訪れ、奈良を経て帰京する。

仏誌「ZOOM JAPON」と提携、日仏の“橋渡し役”に、毎月21日号に翻訳記事掲載(次号から)

クロード・ルブラン編集長

 本紙は6月21日号から、フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)」最新号の特集記事の翻訳に加え、「現地編集部」発の最新動向や、トピックスを発信する。フランスでは現在、日本のどのような事象やモノ、人物に注目が集まっているのか。また、フランスの政治、経済、文化、ファッション、観光などの情報も本紙で紹介する。同誌創刊者で編集長のクロード・ルブラン氏の巻頭言も掲載する。

 ルブラン氏は、フランス屈指の日本のエキスパート。世界と日本を熟知する社会派ジャーナリストとして広く知られている。

 ズーム・ジャポンは、2010年6月に創刊。毎月1日に発行している。A4判24―40㌻で、フランス国内のレストランや公共施設などで配布されているフリーペーパー。フランスでは紙媒体の信頼性が高く、著名なジャーナリストも記事を寄稿する。現在はフランスだけでなく、英国、イタリア、スペインでもそれぞれの言語で日本専門の情報誌を発行している。

樫尾岳氏

 本紙は今後、ズーム・ジャポン誌と連携しながら、日本とフランスの“橋渡し役”を目指していきます。記事や同誌への広告出稿などへの問い合わせ等がありましたら、旅行新聞編集部 電話:03(3834)2718までご連絡ください。
 
 
 
 
 
 

クーポンアプリを企画、観光食事、土産物100選を訪日客に

台湾の展示会でもアプリをPR

 旅行新聞新社はワールドビズネット(石川恭子社長)と業務提携し、同社が開発・運営する外国人旅行者向けスマホアプリ「iTrippy(アイトリッピー)」に、観光・食事、土産物施設100選入選施設のクーポンを掲載する企画を始めました。

 旅館100選に続く、100選事業の海外PR第2弾として、現在7施設9軒のプレゼントや割引クーポンを掲載。4月19―23日に台北市内で開かれた「台湾文博会」でアプリを紹介し、期間中のダウンロード数は6千件に達しました。

 アイトリッピーは海外からの旅行者向けにデジタルクーポンを配布するアプリで、6言語(日本語、英語、中文繁体字、中文簡体字、マレー語、タイ語)に対応。ダウンロード後は、Wi―Fiや携帯通信環境がなくても利用でき、店舗までの誘導など、必要なものだけを提供するシンプルな仕組みが特徴です。クーポンを選ぶ「行き先」の1つとして「観光・食事土産物施設100選」カテゴリを新設し、選ばれた施設であることの訴求力を高めています。現在、新規掲載のキャンペーンを実施中。

 問い合わせ=電話:03(3834)2718。

新たな旅のカタチ誕生、温泉+地域の魅力で活性化(ONSEN・ガストロノミーツーリズム)

山本大臣や行政関係者、会員自治体の首長らをシュバリエに任命
涌井史郎会長

 その土地ならではの食を歩きながら楽しみ、歴史や文化を知る旅を、ガストロノミーツーリズムという。昨年、このツーリズムに温泉を組み合わせた新たな試みが日本で誕生し、4月から活動を本格化させた。「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」(涌井史郎会長)が進めるこの取り組みは、温泉地の魅力を国内外に発信し、活性化させるのが目的。涌井会長や佐藤恵企画部長に聞いた同推進機構の事業内容を中心に、このツーリズムを紹介する。
【後藤 文昭】

 ONSEN・ガストロノミーツーリズムは、日本が世界に誇る温泉を巡りながら、周辺の土地の風土性豊かな食材と地酒を、景観や自然とともに楽しむもの。温泉地の価値を滞在・体験型の観光拠点へ展開し、地域交流をはかることが目的だ。地域振興とも密接にかかわり、日本にこの新たな運動が根付けば、温泉地の活性化にもつなげられるという。

 推進するのは、「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」。ANA総合研究所(ANA総研)とぐるなびが設立時に会員となり、日本観光振興協会の特別協力のもと昨年立ち上げた社団法人だ。5月現在、サントリー酒類や、プリンスホテル、大和リースも会員となり、機構の活動を支援している。5月15日には東京都内で初の総会を開き、会員間で意見交換を行うなど、取り組みを加速させている。同機構は、コース認定や情報発信、自治体の支援などの役割を担い、5年以内に100自治体の会員化を目指す。また、個人会員からなるONSEN騎士団(シュバリエ)の結成などを通して、人材の育成にも取り組んでいく。自治体からは、5月現在で温泉地を有する9カ所が会員として同機構に参加している。

 会員自治体は、年1回地域と連携してイベントを主催し、機構とともに全国から参加者を募る。運営には地域住民も協力し、参加者との交流を通してイベントを盛り上げている。参加者がSNS(交流サイト)にウォーキング中の体験や感動を投稿することで、温泉地や地域の魅力が世界中に広がることも期待されている。

 昨年11月に初めて行った大分県別府市のイベントには、約300人が参加。長野恭紘別府市長は「リピーターを増やす、満足度を上げるなどの面でこの取り組みは有効」と語り、「地元の人が食べているものを食べたい、同じ温泉に浸かりたいなど、生活と密接した部分まで入ってくるのが最近の観光の傾向。次回はまち中を歩き、本当の別府の良さを実感していただけるコースを用意する」と意気込んだ。

その後も、熊本県阿蘇市・内牧温泉や天草市・下田温泉、秋田県・大館温泉郷など続々とイベントが行われ、7月1日には新潟県新潟市・岩室温泉、15日には山口県長門市・俵山温泉での開催も決定。今後の予定などは、機構のホームページ(onsen-gastronomy.com/)で紹介される。

 温泉行政を所管する環境省の山本公一大臣は、機構の総会で「(機構の取り組みは)温泉地のにぎわいの創出を目指す環境省の方向性に合致しており、同省としても引き続き協力していく」とし、「温泉の魅力を外国人観光客にもわかってもらいたい」と意見を述べた。

 観光庁の田村明比古長官は5月の会見で、「旅館の食事が宿泊客に選択肢を与えられていない」と現状の課題を指摘。この取り組みに対し、「温泉地やその周辺地域がその土地の美味しい食材を使った料理を提供することで、国内外の旅行者の宿泊需要を喚起できると期待している」と語った。

 時代は「集」から 「個」の時代に

 涌井会長は、旅行形態などが「集」から「個」に移るなか、観光産業は一部を除いて「集」を対象にするビジネスモデルのままであることを指摘。食事などの場面で多くの選択肢を用意する「個」を対象にしたビジネスモデルに転換しなければ、多くの温泉地がますます苦しい立場に置かれることになると、改めて警鐘を鳴らした。

 同氏は、「個」を対象にするビジネスモデルに転換し、成功している場所として「兵庫県・城崎温泉」を挙げる。同地は、駅を玄関、街並みを廊下、個々の旅館を寝室と位置付け、街ぐるみで1つの旅館を形成。そのため、外食や外湯が当たり前になっており、国内外から多くの観光客を集客することができているという。

訪日、23日早い1千万人、ビザ緩和“東北の伸び”期待(田村観光庁長官)

 田村明比古観光庁長官は5月19日に行った会見で、5月13日時点で訪日外客数が1千万人を突破したことを報告。昨年の1千万人突破は6月5日だったが、昨年より23日早い1千万人突破となった。4月の訪日外客数は単月として過去最高となり、13市場で単月として過去最高を記録。また、全市場で4月として過去最高値となった。

 田村長官は単月で250万人を突破した要因について、「昨年3月末だったイースター休暇が、今年は4月に移動したことが大きいと感じている。加えて、大型クルーズ船の寄港回数の増加なども寄与している」とコメント。そのうえで、引き続きこの勢いを継続できるように、〝できることはすべてやる〟という姿勢で、さまざまな策を講じていく旨を報告した。

 ■日帰り消費額増加、 要因は“休日減”

 2017年度1―3月期の日本人国内旅行消費額は、前年同期比0・1%増の4兆4154億円とほぼ前年並みだったが、日帰り旅行消費額は、同5・7%増の1兆758億円と大きく増加。1人1回当たりの旅行単価で見ても、同8・3%増の1万5828円と昨年よりも1208円増加となった。

 日帰り旅行の消費額が増加したことについて、田村長官は「昨年はうるう年だったということもあり、休日が多かった。今年は1―2月の休日が少なかったため、宿泊よりも日帰りを選択しやすかった」とし、休日減の波が旅行消費額に大きな影響を与えていることを言及した。

■中国人向けビザ緩和、「東北への訪日に期待」 

 5月8日に中国人に対するビザの発給要件が緩和。東北3県(岩手県、宮城県、福島県)の数次ビザの対象訪問地が、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)まで拡大され、これまで一定の経済力を有する人に課されていた「過去3年以内の日本への渡航歴要件」も廃止となった。

 中国は近年、団体旅行から個人旅行へと旅行スタイルが変化する傾向が強まっており、中国からのリピーター数も増加している。今回、東北3県から6県へと適用範囲が拡大されたことを受け、「震災以降、訪日の伸びが鈍化している東北に、これを機に多くの中国人観光客が訪れてほしい」と、ビザ緩和の効果を期待した。

 中国からの訪日者数は、ここ2カ月ほど1ケタの伸びが続いており、かつて「爆買い」が流行語となった15年などと比較すると、伸び率は徐々に落ち着いてきている状態だ。

 このことに関し「転換点に差し掛かっている」と述べ、市場ニーズに的確に対応していくことが今後のカギとなるとした。

■地方の免税店数、「目標達成さらに努力」 

 観光庁は、今年3月28日に閣議決定された「観光立国推進基本計画」のなかで、18年に地方の免税店数を2万店規模へと増加させることを目標に掲げている。しかし、現状の伸びではこの1年でかなりの積み上げをしなければ、目標達成は難しい。

 田村長官は「目標達成にはさらなる努力が必要」と捉えたうえで、今年10月から施行される酒税に関する免税制度が、全国の酒蔵に適用されることで、免税店数の増加に一定の効果が得られると語った。

 観光庁では引き続き、コンビニエンスストアなど、免税店数の増加に意欲を持っている商店などに対し、積極的に働きかけを行っていく。

【特集No.462】風望天流太子の湯 山水荘 “働き方”を変えて単価アップへ

2017年6月1日(木) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第13回は、福島県・土湯温泉「風望天流太子の湯 山水荘」の渡邉和裕社長が登場。いづみ専務(女将)、利生常務も出席して、働き方を変えるだけで単価を上げ、残業を減らしていく取り組みついて、内藤氏と語り合った。

【増田 剛】

 ◇

 渡邉(社長):もともと渡邉家は土湯温泉の真ん中で「いますや旅館」を営業していました。1953年10月に、新たな宿「山水荘」を造りました。祖父には2人の息子がおり、長男(父)が山の方にある山水荘を経営し、温泉街のいますや旅館を身体が弱かった弟が継いだのです。しかし、翌54年2月の大火で土湯温泉全体が焼けてしまいました。幸い、山水荘は温泉街から少し離れていたため、焼けずに残されたのです。私は渡邉家の20代目で、山水荘は祖父、父を継いで3代目になります。

 内藤:いますや旅館の規模はどのくらいでしたか。

 渡邉(社長):20室ほどだと思います。山水荘を53年に建てたときは木造の9部屋でした。

 内藤:その後、どのように部屋を増やしていかれたのですか。

 渡邉(社長):大火の後、父は大火への反省から、60年に木造の建物をすべて壊し、鉄筋コンクリートに切り替えました。5年も経たないうちに部屋をどんどん増築し、これまで7回ほど設備投資しました。その間にプールを造ったり、護岸工事や橋を架けたりもしています。最後に増築したのは97年で、現在は71室です。
 面積は1万平方㍍以上ありますが、客室数は中規模旅館です。地形的に三方を崖に囲まれており、先代は庭に池を造ったり、ニワトリやハクビシン、クジャクを飼ったりしていました。私自身も建物と、池のある庭が自然なかたちで溶け合う、そのような空間がある旅館を理想としています。

 内藤:3代目を引き継いだのはいつですか。

 渡邉(社長):48歳のときです。
 23歳で土湯温泉に戻ったとき、若い人たちの集まりがありませんでした。そこで、飲食店や他の業種と連携して青年団のようなものを組織し、“まちづくり”を主体に動いてきました。旅館の経営も大事ですが、地域をどうするかということを第一に考えてきました。
 土湯の今の若い世代は、「若旦那カフェ」などに取り組んでいますが、私たちのころは、荒川の清掃活動や、ジャズフェスティバルを企画したり、毎晩お酒を飲みながら熱く語り合っていました。

 内藤:土湯温泉のように、他業種を含めてまとまりがあるのは珍しいと思います。

 渡邉(社長):当時、多くの温泉地では、旅館の経営者がワンマン化する傾向がみられ、なかなか地域ぐるみの取り組みができていませんでした。土湯は大型旅館もなく、小さい温泉地なので、あらゆる業種がまとまって一緒に取り組まないと生きていけないのですが、親の世代も同様の傾向がみられました。そういうのが嫌だったので、40代になったとき、観光協会や旅館組合のトップを若い世代が奪い取りました。いわゆる「下剋上」によって、自分たちの世代が中心となって土湯温泉を動かしていきました。

 内藤:戦後の土湯温泉はどのような感じでしたか。

 渡邉(社長):59年に磐梯吾妻スカイラインが開通しました。高度経済成長期に入り、大型バスがどんどん来るようになりました。小さな湯治場だった温泉地が、団体型の観光地に急速に変わっていきました。
 その後、団体客が減少するなかで依然として、団体型のスタイルを引きずっていました。2011年3月に東日本大震災が発生し、当館も時間が止まったような状態になっていました。
 周りを見ると、インバウンドの受け入れや少子高齢化も進み、年配のお客様も従来の和室よりもベッドルームや、食事もテーブルを求めるようになってきました。新しい時代に対応した投資をしていかなくてはならないなか、「さて、どうしようか」と悩んでいるときに、日本旅館協会が主催する「生産性向上セミナー」(16年9月)に出席しました。そこで、これから取り組んでいく方向づけとして「生産性が高まるような仕組みをつくっていこう」と思いました。
 料理についても「温かい物を温かいうちに出せる仕組みづくり」などもまだ始まったばかりですが、「これから全社一丸となって取り組んでいこう」という段階まではなんとか漕ぎ着き、今はまさに試行錯誤している状態です。

 内藤:東日本大震災後はどのような状況でしたか。

 渡邉(社長):私は会合で福島市にいましたが、宿が心配になって戻りました。岩盤の上に建っているので、建物に直接的な被害はなかったのですが、停電したまま、お客様は3日間帰れずに滞在していました。電気釜も使えず、食料が尽きました。テレビも付かず、1台のラジオで情報を収集しました。ガソリンが残っているうちに、お客様を福島市までバスで送っていきました。
 お客様が帰ったあと、観光客は来ないし、「もうこれで終わりかな」と思いました。すると一本の電話がかかって来て、3月下旬から200人を超える機動隊を受け入れることになりました。その後、8月まで浪江町の被災者約1千人を土湯温泉全体で受け入れました。観光客を誘客しても来ないので、被災者に向けてイベントを実施したりしました。
 9月には16軒中6軒の旅館が休・廃業しました。3年間で3軒の宿を解体し、5年かけて土湯温泉街に共同浴場を造るなど再構築する仕事と、もう一つ、将来の収入源となるような仕組みづくりとして株式会社を設立し、バイナリー発電事業などにも取り組んでいます。
 旅館軒数も減り、土湯温泉全体の入込数は震災前に比べ、65%ほどです。とくに震災後は、まちぐるみの事業に取り組まないと土湯温泉が生き残れない状況にありました。

 内藤:施設のリニューアルや集客よりも、どうして生産性に目を向けられたのですか。

 渡邉(社長):以前からトヨタ自動車の「改善」など、生産性向上については多少勉強していました。
 宿でも毎月1回、改善会議というものを設置し、仕事の改善を行っていました。しかし、社員が集まって議論すると、お客様へのサービス向上とは多くの場合が相反する状態になってきました。極端なことを言うと、お客様にコーヒーカップに受け皿を添えて提供するよりも、そのままカップだけで出す方がラクという風に考えるようになっていきました。「お茶を出すのをやめよう」など、「改善」と言いながら、お客様にとっては実質的には「改悪」になっていました。
 「品質を上げ、お客様満足度を高めることによって宿泊単価を上げていくことと、生産性向上は同じことですよ」と説明しています。その部分をしっかりと変えていくには、就業規則や給与体系などすべてを変える必要がありました。
 日本旅館協会のセミナーに出席しただけでは一歩も前に進みません。「この方向だ」と思ったなら、スタッフと一緒に改革していく方が、より早く成果が出ると考えました。

 内藤:現場では小さな一つのことをちょっと変更するだけで、すべてに影響を与えてしまいます。色々と新しい試みを始めても、すべての作業プロセスにつながっているので、歯車の回転を変えていこうと試みても、たった一つでも動かないと、すべてが止まってしまうことがあります。大変な作業だと思います。

 渡邉(社長):料理の出し方など「ソフト的なものをどのように変えるか」を前提にして、次の投資につなげていかなければなりません。毎回設備投資をする際には、「これを今やらなければ明日はなくなる」と考え、自分を追い詰めて決断しています。

 ――改善会議は何年前から実施されていたのですか。

 渡邉(社長):震災後からです。月に1回、総務部長の管轄で行っています。経営者が指示してばかりいると、人材はなかなか育ちません。当館のような規模では、ピラミッド型よりも、各部署の課長を横に配列するナベブタ型組織がいいのではないかと思っていました。本来なら管理職になると、管理業務が仕事の中心になっていくべきですが、部長になっても課長時代の仕事内容とあまり変わらないケースもありました。だから山水荘では職務権限規程をつくって、経営者も部長の管理すべき仕事を明確に理解したうえで、育てていくことが大事だと思っています。

 内藤:そういう考えが根底にあって、職務権限規程を新しく作り、それぞれの役職者の仕事を決めていかれたのですね。
 就業規則はどのような状況ですか。

 渡邉(女将):私が山水荘に嫁いで来たのが1984年の5月。とにかく団体のお客様がすごく入っている時代でした。大女将がいらして、従業員も年配の方が多かったですね。
 私は、家業の状態を「少しずつ企業的な経営に変えていきたい」という思いがありました。社会保険労務士の先生と一緒に学校回りをしながら、就業規則や労務管理、賃金規程も考えていきましたが、すごく雑多な感じを覚えていました。しかし、生産性向上のセミナーに出席して、目から鱗が落ちました。まず「仕事の生産性を上げることで8時間労働が可能になる」ということが大きな驚きでした。そこから最初に着手したのが就業規則の見直しでした。
 新しい就業規則は、異業種の部分も取り入れながら仕事の基本の部分を作ったので、働く側も労働時間が分かりやすくなり、経営者側も管理しやすくなりました。効率化も理解され、給与体系もしっかりと明確化されたことで、社員にとって会社が目指す方向が分かりやすくなったと思います。

 内藤:具体的にどのように変わったのですか。

 渡邉(女将):以前は変形労働時間制でしたが、繁忙期などは「長く働けば、その分残業代が多く得られる」と考える社員もいました。基本給を決めても、自分で残業代を計算して働くという傾向もありました。

 内藤:最近はどうですか。

 渡邉(女将):就業規則の労働時間の管理方法を変えてから、時間外労働がほとんどなくなりました。社員がさらに身体をしっかりと休められるよう、年間の休日も「105日」にし、1年を通じて週休2日になるように明確化しましたので、社員にとっては働きやすい環境になりました。

 渡邉(社長):以前は繁忙期の10月や11月と、閑散期の1月、2月の残業手当の総額が大して変わらないという、会社として現場を管理できていない状態でした。社員も残業代に頼らずに、基本給でしっかりと生活ができる水準にしていかなければならないと考えています。

 内藤:繁忙期も閑散期も同じくらいの残業代を払っていたのですね。

 渡邉(女将):生産性向上に取り組み始めたことで、繁忙期の時間外手当でさえも、今は以前の3分の1に減っています。

 内藤:就業規則の見直しなど、取り組みは早かったですね。

 渡邉(女将):若い常務が新しい感覚で現場に入っていけたのも大きかったですね。以前は社会保険労務士の先生の教えの通りにやっていたので、どちらかというと、労働基準監督署側の目線での就業規則と、給料体系でした。

 渡邉(社長):サービス業のために就業規則を新しく作ったのではなくて、製造業の8時間労働のモデル規則をそのままサービス業に当てはめただけだったのです。

 ――新しい就業規則はすぐにスタッフの方々に理解されましたか。

 渡邉(社長):若い社員は変化に対応しやすいのですが、年配の社員は従来のやり方を大きく変えるわけですから、若い社員が板ばさみになってしまったこともありました。

 渡邉(女将):今は根底の部分では理解してもらっています。お客様の個人化や、それに伴って料理の品質を上げていくことも並行して取り組んでいます。

 内藤:作業を一つひとつ個別に改善していく方法では、時短は進みません。数珠つなぎになっている作業のプロセスをどう組み変えるかが大事です。
 社員一人ひとりによって取り組まれている作業プロセス自身が商品そのものなのです。渡邉社長がコーヒーを例におっしゃったように、作業を変えると商品が変わって、作業を省略して少なくしようとすると、商品が悪くなっていくということが起こってしまうのです。作業のプロセス全体の見直しが必要になってきます。
 団体から個人へのマーケットの流れに対応するために、具体的に、何をやられているのですか。

 渡邉(女将):今の改革は、朝食バイキングでは、ごはんを炊飯器に変えて時間ごとに炊き始め、でき立てのごはんを食べていただくようにしています。味噌汁は小分けにして、作り立てを提供しています。お客様から「どんな味噌を使っているのですか」と声を掛けられることも増えてきました。こういった声は改善してから効果がてきめんに表れました。

 内藤:パンに付けるジャムも大きく変えましたね。

 渡邉(女将):簡易パックに入ったものを提供していましたが、瓶詰めのジャムに変えました。今では30種類近くそろえ、お客様が好きなものを選べるようにしています。「たくさんのジャムを選べてうれしかった」といった声もいただいています。ミルクや砂糖も、一つひとつのパッケージでお出ししていたので、「半分残してあとは捨てる」という大きなムダがありました。今はポットに入れてそれらを提供し、お客様は好きなだけ使えるようにしています。ヨーグルトのジャムや、ソースもシェフが手作りしたものをお出ししています。
 夕食もお膳出しから1品出しの料理に変え始めました。そして、お客様には「夕食時間を6時、6時半、7時からお選びください」から、「5時半から7時までの間で好きな時間に食べてください」というように変えました。
 すると、お客様が一度にまとまって来られる塊がなくなり、それによって社員たちの現場作業も平準化され、料理がスムーズに流れるようになりました。1品出し料理も、できないと思っていたのが、できるようになりました。朝のバイキングと同じように、お客様が召し上がられたお皿を下膳しながら次の料理を提供します。
 これと同時に洗浄していくことで、洗浄時間が短縮して早く片付けが終わるようになりつつあります。どうして早くからこんなことに気づかなかったのだろうと思っています。

 内藤:次の課題は何ですか。

 渡邉(女将):1品料理のコースを作り、お客様に提供していき、1泊2食の料理単価を上げていくことです。私自身も接客をするなかで「料理が美味しくなったね」「バイキングが変わりましたね」などと、リピーターのお客様も気づいて下さっています。次の予約もされて帰られるお客様も増え、本当にうれしく思っています。

 内藤:以前のお膳出しから、今はお客が席についてから1品出しに切り替えられました。「品質を上げていく」ということに躊躇がなく、非常にこだわっていますね。現場では「総論賛成、各論反対」というケースが多いなか、品質を上げていけば、効率化も進んでいくということが腑に落ちているという印象を持ちました。あまり疑わずに、議論ができているためにスピーディーに変化しているのだと思います。

 渡邉(常務):1品出しを提供することで、お客様も切り立てのお刺身を召し上がられます。新鮮さがまったく違うわけです。新鮮なお刺身をお客様の前にお出しすると、サービスしている方も気持ちがいいですね。今のお客様はすごく目が肥えていますので、一目で新鮮か、美味しそうかを判断されます。

 ――スタッフから提案も出てきたりしますか。

 渡邉(常務):出てくるようになりました。こちらも、「こんな課題が出てきたので一緒に考えていこう」と試行錯誤しながら進めています。一番大きく変わったのは、これまで新しいものを作っていくときに上から指示を出していましたが、今は一緒になって作っていこうという協力体制ができていることです。

 渡邉(女将):大きく変わったのは新しく就業規則と職務権限規程を作ってからですね。料理長を含め、4人の部長は管理していくうえでの責任感も、より強くなっています。社員の声と、経営者の想いも中間で理解してもらい、実行していただいています。

 ――施設を新設するのではなく、料理の1品出しもコースを作ることによって、客単価を上げていく考えですね。

 渡邉(女将):料理の質を上げながら、その単価も上げていきたいと考えています。

 内藤:料理の材料を変えずに、作り方と出し方を変えることによって単価を上げていこうと取り組まれています。つまり、働き方だけで単価を上げることが可能なのです。働き方を変えることによって、残業を減らしながら品質を上げていこうということが今回の改革ですね。
 前もってセットしないようにしていますが、これはどうですか。

 渡邉(女将):事前のセッティングは大変でした。最初は会食場でも「女将さん、早く来ないと間に合いません」と午後1時からセッティングの準備をしていました。
 一方で、高単価のとくに女性のお客様は鍋料理を見て、「これ全部自分でやるんですか」と言われました。そのときに「個人のお客様が求められる料理はこれではないのだ」と思いました。個人型のお客様への対応は難しいですね。宴会と個人のお客様の料理を分けていなかったので、そのままセッティングの時間が長いままでした。

 内藤:お膳出しと、1品出しのコース料理は、どちらが提供するまでの作業が大変ですか。

 渡邉(女将):1品出しのコース料理の方がラクですね。社員から「もうセッティングしなくていいのですね」という声を多く聞くようになりました。

 内藤:実際にやってみた結果、「お客様に食事の時間を聞かない」「事前セッティングせずに、1品出しコース料理の方がラクだ」と理解できたのはいいことだと思います。後は、細かい仕組みをどう作っていくかですね。

 渡邉(社長):細かいところはまだ課題があるのですが、あとはこれに合わせて予約担当が単価のアップを考えていけるようになればと思っています。1品出しをできるようになれば、自信を持って単価を上げられるようになります。

 内藤:価格は自分との戦いです。「多くの旅館経営者は単価を上げなければならない」と言われますが、私は「上げたらいいじゃないですか」と申し上げています。ただそのためには、まず品質を上げなければなりません。

 渡邉(社長):「中身が良ければ単価が上がってもいい」と思われる客層は、予想以上に多くいらっしゃいます。しかし、その客層に旅館側が団体と同じ感覚でいると、単価は上げられないですね。

 渡邉(女将):今後オープンキッチンなども取り入れていけば、板前もお客様が召し上がる状況などが分かりますので、よりお客様に作業の位置も、時間も、情報も近づいていけると思います。

 内藤:人手不足はどうですか。

 渡邉(常務):以前は何かを始めようとすると、「人が足りないから無理ですよ」と言われていましたが、今はそのような言葉はほとんど聞かれなくなりました。
 「働き方や品質を上げていく。そのために智恵を出し合って、そこにいる人間でできるようにし、人手が足りないなど言えない」といった感じに意識が変わっていきました。

 渡邉(社長):お互いにフォローし合う関係ができてきました。

 内藤:忙しいのはほんの一瞬、一瞬なのです。

 渡邉(常務):旅館は縦割りになっているので、お互いの協力体制が築けていません。一連の協力体制が築ければ、一瞬の人手不足は解消できていくと思います。「この時間帯は忙しいから助けに来て」と10分、15分の多忙な時間を指定してお互いにコミュニケーションを取り始めたので、社員同士の関係性も良くなってきました。

 渡邉(社長):お互いの仕事を手伝うと、他部署の仕事も見えるようになります。見えないために文句を言っていた部分もあったと思います。どの時間帯がどんな風に忙しいかをお互いに理解すると、その時間帯は協力し合うという関係性ができてきます。とくに若い世代が馴染みやすいようです。

 渡邉(女将):残業も大きく減り、管理はしやすくなりました。賞与も出せるようになりました。

 渡邉(社長):「基本的に人件費を減らそうという考えはないよ」と言っています。さまざまな工夫で残業が減ったりして、人件費が落ちた分は賞与として還元しようという考えです。

 ――清掃は外注ですか。

 渡邉(社長):震災前は外注に出していましたが、今はすべて内製化しています。清掃担当のパートさんを雇い、責任者を置いて管理しています。

 内藤:以前は派遣社員がいましたが、今はどうですか。

 渡邉(女将):繁忙期には来ていただいていましたが、今年も新卒の社員が入社して若いスタッフも増えていますので、もう必要ないと思います。

 渡邉(常務):現場改革をしていくなかで、派遣社員に頼らないで、忙しい時期を乗り切っていける体制を目指しています。人材派遣会社にお金を払うより、社員に還元したいという気持ちは強くあります。

 渡邉(社長):少し前までは「大卒は来ないだろう」と最初から考えていた部分がありました。企業説明会などに積極的に参加し始めると、大卒が多く集まるようになってきました。

 渡邉(常務):中小企業に大卒が来ない理由はないと思っていました。企業の合同説明会などで夢などを語ることはできるのですが、いつも壁にぶち当たるのが労務環境や、基本給の水準などでした。
 現在進めている現場改革は、人材確保をするうえでも有益な取り組みだと感じています。今では「週休2日です」と、長時間労働への改善にも取り組む企業と胸を張って言える状況になり、ほかの旅館からも「山水荘には若い社員が多いね」と言われるようになりました。

 渡邉(女将):就業規則を変えて、休日、長時間労働の問題に取り組んでいなければ、若い社員も集まらないし人手不足の状態は変わらなかったと思います。

 内藤:定着率はどうですか。

 渡邉(女将):ありがたいことに、若い社員の定着率もとても高くなりはじめていますね。若い世代が多くなると、お互いを助け合う輪ができるのだと思います。柔軟性があるので、新しい取り組みにもスムーズに入っていけます。

 ――改善の会議は今も続けているのですか。

 渡邉(女将):続けています。社長をはじめ、幹部社員も入って、検証をしながら、今後のお客様の動向や、売上の数字の見える化などにも取り組んでいます。

 渡邉(社長):ずっと以前の改善会議は節電の結果、光熱費がどのくらい下がったとか、そういったことばかりに目が向いていました。捨てるゴミが増えたか、減ったか、という話で会議は終わっていました。最近は改善に向けた議論の中身も変わってきています。お客様アンケートの評価も上がっていますので、自分たちが取り組んでいることへの意識がさらに上がってくると思います。

仏誌「ZOOM JAPON」の情報も発信 ― 海外メディアと提携、世界とつながる

 フランスでは、紙媒体に書かれた記事は、ネット情報に比べて高い信頼性を勝ち得ているという。また、日本ではそれほど根づいてはいないが、フリーペーパーが市民権を得ており、有力なジャーナリストや高名な作家も記事を寄稿する。

 パリを歩くと、日本人が立ち寄りそうなレストランや公共の場所に「Ovni(オブニー)」というフランス在住、あるいは同国を観光する日本人向けの新聞に出会う。私も2年前に同紙を手にして大変興味を持ち、スーツケースに入れて日本に持ち帰った。

 本紙は間もなく、フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)」の最新情報や翻訳記事を掲載する予定だ。実はズーム・ジャポンはオブニー紙から派生した雑誌なのだ。編集長のクロード・ルブラン氏はフランスでも著名な編集長で、日本好きが高じてフランスをはじめ、英国やイタリア、スペインでも日本専門情報誌を発行している。

 現在、本紙は台湾の旅行専門誌「旅奇(TRAVEL RICH)」と提携し、毎月11日号で翻訳記事を紹介している。今度は、欧州で最も日本への関心が高い・フランス人の視点から、日本に関する情報も翻訳して紹介する。「欧州各国にPRしたい」と考える自治体や、旅館・ホテルなども少なくない。日本とフランスの“橋渡し役”の一端を担えたら、うれしい。

 先日、北陸に在住の観光関係者と話をしていたときのことだ。「東京の地下鉄や電車に乗ると、みんなスマートフォンばかりを見て、新聞や雑誌を読んでいる人がほとんどいないことに驚きました。私は電車で本を読んでいたのですが、なんだか時代遅れのような、少し恥ずかしい感じがしました」と言うのだ。そこにいたのは、私を含め、

旅行ガイドブックなど紙媒体を発行する編集者3人。捉え方の違いに驚いてしまった。

 私など編集者3人の一致した意見は、「電車の中でスマートフォンを眺め続けることは少なからず恥ずかしい感覚を持っている」ということだった。

 逆に、本を読む方が断然知的なのだ、と強調した。

 ありとあらゆる情報や知識が、手のひらに握るスマートフォンからほぼ無料で得られる。わざわざ書店に行って、書籍を購入するよりも、ネットで検索した方が早いし、お金もかからない。数千円もする「ハイエンド」な専門書籍を読むことは、知の分野への貪欲な投資と冒険(旅)に外ならない。

 本社は現在、紙媒体の「旬刊旅行新聞」に加え、フェイスブック、そしてこの1カ月の間に、新たな試みとして、ツイッターやインスタグラム、ブログなどSNS(交流サイト)での情報を積極的に発信し始めた。 国内だけではなく、世界中の読者とつながるには、「新たな発信手段が必要だ」と判断したためだ。現在、ホームページのリニューアルに向けても動き出している。

 私たちは日々、観光業界の方々と接している。伝えなければならないことがたくさんある。より多くの人たちに有益と感じてもらえる情報を発信したいと思う。旅行・観光業界の専門紙ではあるが、より広く情報発信ができる仕組みづくりが急務となった。だが、そのためにはまず、観光業界で一番愛される新聞を目指して、頑張っていきたい。

(編集長・増田 剛)

増加率が伸び悩む、消費税免税店数、18年までに残り4千店

 観光庁がこのほど発表した2017年4月1日時点の都道府県別消費税免税店数によると、前回調査(2016年10月1日)から地方部は774店増えて1万5601店だった。政府は18年までに2万店規模を目標にしている。ただ前回調査時は9・8%増で今回は5・2%増。残り4399店と迫ったが、増加率が伸び悩んできた。

 切り札になるのは酒税免税制度。今年10月に酒蔵で販売する酒類の消費税に加え、酒税を免税とする制度が適用される。昨年4月時点で酒蔵の消費税免税店は45カ所と少ないが「全国で酒蔵は3千件以上あり期待している」(田村明比古長官)。今後は、許可を受ける酒蔵を増やしていきたい考えだ。

 このほか免税店を増やす意欲があるコンビニエンスストアなどに、働きかけを強めて政府目標の達成を目指す。

 なお、全国の免税店数は16年4月1日からの1年間で5330店(前年度比15・1%増)増の4万532店と初めて4万店を突破した。

ツルだけにあらず

 鹿児島県北西部、熊本県との県境に位置し、ツルの飛来地として知られる出水市は、薩摩藩の外城(郷士の住宅兼陣地)として整備された広大な武家屋敷群が今も残る歴史のまちでもある。

 その「出水麓武家屋敷群」の一画に今年5月、出水麓の歴史をジオラマ模型や映像、貴重な資料などで紹介する「出水麓歴史館」が誕生した。近くには、一般公開されている「税所邸」と「竹添邸」があり、共通入館券(大人500円・小中学生300円)で3施設すべてを見学できる。ちなみに、入館券はバッジになっており、記載された年内であれば、何度でも入館できるという太っ腹仕様。武家屋敷群では浴衣(5―9月)や着物(10―4月)の着付け体験を行っており、こちらは外国人観光客にも人気だとか。

【塩野 俊誉】

経済効果は5905億円、MICEで観光に追い風も(観光庁)

2015年国内の国際会議の経済波及効果は約5905億円に上る――。観光庁はこのほど、数値の算出を初めて行い「日本経済にもたらす影響は大きい」と期待感を示した。算出と合わせ聞き取り調査も実施。外国人参加者の約68%が「開催前後に観光予定がある」と答えた。国際会議を含むMICEの誘致が観光消費の追い風になりそうだ。

 外国人参加者は3大都市圏で観光する割合が高く、宿泊日数も伸びる。外国人参加者の平均宿泊数は約6・0泊だったが、3大都市以外は1―2割ほど低下した。「3大都市以外は滞在や観光活動を促す情報提供やプログラムを作ることが重要だ」と指摘。

 国連世界観光機関(UNWTO)の観光サテライト勘定(TSA)によれば、内部観光消費は3045億円だった。このうち外国人参加者のみは462億円。国際会議の地方開催で、地域の活性化にもつなげたい考えだ。

 世界の国際会議の情勢も報告された。15年の開催件数は06年比で約1・4倍。ただ参加平均人数は1・3倍で、小規模化が進んでいる。

 これに伴いホテルでの開催が拡大。15年の開催件数は3倍以上になった。「小・中規模の会議に対応でき、パーティーなどを行える点が需要と合致した」とみている。

 ヒアリングでもホテルは開催に好意的だ。「収益面だけでなく、人材育成でもメリットがある」(JRホテルクレメント高松担当者)。英語で打ち合わせやハラル食などへの異文化対応が「貴重な経験になる」という。

 一方で日本は国際会議の誘致対策に遅れが目立っている。アジア・中東・オセアニア地域の開催件数シェアは、直近10年間で18・4%から15・4%に落ち込んだ。上位10都市の開催件数を比較すると東京は8位(80件)で、1位のシンガポール(156件)の約半数だ。伸び率も中位につけた。

 新興国などの都市が誘致を強化するなか、盤石な地位を築けていない。「都市のポテンシャルに見合う存在感があるとは言い難い。一層の対策が必要」との見解を示した。

 今回の「MICEの経済波及効果及び市場調査事業」は日本政府観光局(JNTO)の基準に沿う国際会議2847件を調べた。今年度には企業会議と企業の報奨・研修旅行、展示会も調べ、同調査と合わせて、MICE全体の経済波及効果の算出を行う見通し。