JR長野駅、新駅ビル全面開業へ

「MIDORI長野」外観イメージ
「MIDORI長野」外観イメージ

3月7日、「MIDORI長野」
 JR長野駅の新駅ビルMIDORI長野(長野市)が3月7日にグランドオープンする。昨年11月に一部先行オープンした45店に、土産品や食料品などを取り扱う67店が加わり、合計112店となる。県内初出店や各社にとって新業態となる店舗も多く、3月14日の北陸新幹線(長野経由)金沢延伸で増加が見込まれる観光客に信州の魅力を発信する。

 新たにオープンするのは、改装で休業中の既存駅ビル地下1階と1階、建設工事が進む新駅ビル1階と2、3階の一部。全面開業時の延べ床面積は2万5600平方メートル、総売場面積は1万1500平方㍍となる。県内初出店は12店。

 新駅ビルの1階は名称を「MIDORIマルシェ」とし、生鮮食料品や総菜店など19店が出店。新駅ビル2階には県内各地の名産品を販売する25店が並び、和洋菓子やおやき、日本酒やワインなどをそろえる。明治亭(駒ヶ根市)は、ソースカツ丼を広く発信しようと弁当販売の専門店を初出店。桜井甘精堂(小布施町)は、数種類のあんみつなどを提供する和風喫茶「甘味屋幾右衛門」を初出店する。

 飲食店7店が集まる新駅ビル3階では、信州そばや県産野菜の料理を味わえる。県内市町村による観光PRや、住民が交流イベントを開催できるコミュニティースペースも3階に設ける。

 MIDORI長野は昨年11月21日に改装した既存駅ビルの2―4階と新駅ビルの2、3階の一部が先行オープン。服飾雑貨店が中心で、東急ハンズ(東京)が北信越地方で初めて出店した。

VJ大使に新バッジ授与、「金メダルで頑張ろう」(観光庁)

久保長官(中央)とビジット・ジャパン大使
久保長官(中央)とビジット・ジャパン大使

 観光庁(久保成人長官)は1月16日、観光庁でビジット・ジャパン(VJ)大使に新デザインのロゴバッジを授与した。デザインはVJ大使でデザイナーのコシノジュンコ氏が手掛けた。金色のバッジを手にしたコシノ氏は「まずはこの金メダルで、東京オリンピックに向けて頑張りましょう」と力を込めた。

 新ロゴは金・赤・白の3色を使い、太陽と富士山をイメージ。コシノ氏は「ロゴは理屈抜きでわかるように、日本そのものを表した。バッジの色は金色で、これを金メダルと思い、誇りを持ってバッジを活用し、活動していただきたい」と語った。

 バッジを授与した久保長官は、「2020年は『日本』オリンピック・パラリンピックを目指しており、この機会に東京以外の地域を見てほしい。VJ大使は各分野、各地域で活動していただいているので一層のご協力をお願いしたい」と期待を込めた。

【2月3日まで】試写会に15組30人招待、五島列島舞台「くちびるに歌を」

©2015『くちびるに歌を』制作委員会©2011中田永一/小学館
©2015『くちびるに歌を』制作委員会
©2011中田永一/小学館

 長崎県・五島列島を舞台にした映画「くちびるに歌を」が2月28日から、全国公開される。これを記念して、2月9日に東京都中野区で開かれる試写会に読者15組30人を招待する。

 同映画の原作は、全国学校音楽コンクールの課題曲にもなった「手紙~拝啓 十五の君へ~」の作者・アンジェラ・アキさんのテレビドキュメンタリーをもとに、小説家・中田永一氏が書き下ろしたもの。物語は、天才ピアニストだったと噂される柏木ユリが五島列島の中学校に臨時教員として赴任。合唱部の顧問となり、コンクールを目指す部員に「15年後の自分」へ手紙を書く課題を出すところからはじまる。

 主人公を演じるのは女優・新垣結衣さん。合唱部の部員は全員、オーディションで選ばれ、半年の合唱練習を経て撮影に臨んだという。監督は「陽だまりの彼女」などを手掛けた三木孝浩氏。

 
【読者プレゼント】

試写会は2月9日、なかのZERO大ホール(中野区中野2―9―7)で午後7時開演。
読者プレゼントは官製ハガキに住所、氏名を記入のうえ、次の住所に郵送する。2月3日必着。
(※当選者は発送をもってかえさせていただきます)。

◆応募先
 〒104―0061  東京都中央区銀座7―2―22 同和ビル5階
  株式会社マンハッタンピープル
   「旬刊 旅行新聞『くちびるに歌を』試写会」プレゼント係。

風刺画 ― 敬意を払わぬ言動は共感できない

 人は無意識のうちに他人との間隔を50センチほど開けて近づかないのは、“その人への敬意”なのだとテレビ番組で言っているのを聞いて、腑に落ちた。家族や仲間、恋人のように親しい間柄ではない人が、馴れ馴れしく近づいてくれば、誰もが不快な感覚を抱く。それは自分への敬意を無視されているからだ。

 なぜ、ネクタイを締めるのか。それは、“その場への敬意”のためである。しかるべきレストランに食事に行くときに、女性が綺麗に装い、テーブルで慎重にナイフとフォークを動かし、唇をソースで汚さないように品良く食事をする姿は見ていて心地よい。男性もスーツとネクタイで、背筋を伸ばして食事をする。料理人への敬意であり、素晴らしいテーブルと空間を用意してくれたレストランという「場」、そして相手の女性への敬意の表れだろう。

 義父が生前、我が寓居を訪れるとき、日曜日の午後であるのに、いつも白いシャツとスーツ姿だった。めったに来ることはないが、田舎の父が来る時もスーツを着て来る。少々堅苦しいと感じていたが、狭く、汚い生活空間だが、「場」に対して敬意を表してくれていたのだろうと思う。

 サッカーのワールドカップや国際親善マッチの前に、両国の国歌斉唱を行う。かつて政治的な問題を抱えるアジアの国で開催された国際大会で、「君が代」が流れたときに、ブーイングを受けた。日本で開催する国際試合で、相手国の国歌が流れているときに、ブーイングを浴びせる行為は絶対にすべきではない。好きではない国であっても、いや、問題を抱える国だからこそ、相手国の国歌に対して敬意を表して最後まで黙って聴こうではないかと思う。

 相撲が好きでよく見るのだが、ときどきハワイやモンゴルなど外国出身力士と、日本人力士が優勝をかけて戦うことがある。そのときに、「ひいきの力士」というわけでなく、「日本人力士だから」という理由で、館内が一体となって声援する場面に出会う。自国の力士を応援したくなる気持ちはわかる。ただ、その応援の仕方が相手の外国人力士に対して敬意を損ねるほどの異様なムードになるときがあり、なんだか居心地の悪い不気味さを感じてしまう。

 外国や日本の地方を旅するとき、旅人はその地のしきたりや習慣に従うだろう。その地域でやってはいけない戒律などがあるのならば、できるだけそれに沿うようにしたいと思う。自分たちとまるっきり文化が違い、いつもやっていることと正反対の行動であっても、その人たちが長い歴史の間そのように生きてきたのなら、そのことを面と向かってバカにしたり、笑ったりはしない。

 フランスの週刊新聞「シャルリー・エブド」がイスラム教の預言者ムハンマドを風刺した画を掲載し、イスラム社会では反発の声が高まっている。もちろん、テロ行為は許されるものではないが、“表現の自由”を標榜するシャルリー・エブド紙のイスラム社会への敬意のない風刺画を見ても、共感できない。相手への敬意を払わない言動は戦争に直結する。とてもレベルの高い“ジャーナリズム精神”とも思えない。私は、山口瞳氏の「ジャーナリストとは、他人のファイン・プレイを探して世の中に紹介する職業だと私は思っている」という言葉が好きである。

(編集長・増田 剛)

観光関連1%増の99億円、VJはJNTOが実施主体に(15年度予算)

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 政府は2015年度予算案を1月14日に閣議決定した。過去最大となる96兆3420億円のうち、観光関連は14年度予算(98億1100万円)比1%増の99億1千万円となった。観光庁が8月にまとめた概算要求では、14年度予算比84%増となる180億700万円を要求しており、厳しい財政状況を受け予算額を抑えられたが、前週に決まった過去最大となる14年度補正予算42億4600万円を合わせると、同44%増の141億5600万円となる。また、復興庁計上の「復興枠」は同12%減の4億8千万円で、観光関連の合計では前年並みの103億9千万円となった。
【伊集院 悟】

 項目別では「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」分野に同1%減の84億5100万円、「観光地域づくり支援」分野に同20%増の6億2800万円、「観光産業振興」分野に同3%増の6億2千万円、「観光統計の整備」に同7%増の4億6千万円。事業内容は、基本的に概算要求時通りとなった。復興枠は前年度と同じ「東北地域観光復興対策事業」と「福島県における観光関連復興支援事業」。観光庁の担当者は「財源が減っている厳しい状況のなか、なんとか前年超えを確保できた。過去最大の補正予算と合わせて考えれば、十分な予算を確保できたのではないか」と感触を語った。

 「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」のうち、訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進、日本政府観光局(JNTO)運営交付金は合わせて同5%減の80億2900万円。15年度からビジット・ジャパン(VJ)事業とMICE関連は、地方連携などの一部を除いてJNTOが事業の実施主体となることから、VJ事業とMICE事業は単独では減額となっているが、その分、これまではほぼ人件費だけであったJNTOの運営費交付金が、大幅な増加となっている。担当者は「JNTOが主な実施主体となることで、JNTO海外事務所で現地ニーズを踏まえ、直接契約できるようになり、効率的になる。より少ない額で同様の効果が出せるようになるはず」と語る。

 ビザ要件緩和を契機とした集中的なプロモーションや、航空路線・クルーズ船寄港拡大と連動したプロモーションなどを行っていく。なお、既存の重点14市場にフィリピン、ベトナム、インド、イタリア、ロシア、スペインの6市場が追加され、重点市場は20市場に拡大した。

 新規事業の「広域観光周遊ルート形成促進事業」に3億400万円、「ICTを活用した訪日外国人観光動態調査」に1億円。訪日外客の動態調査を実施し、新たな広域観光周遊ルート造成などに活かす。そのほか、「通訳ガイド制度の充実・強化」に同6%増の2千万円となった。

 「観光地域づくり支援」分野では、新規事業の「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に2億9千万円を計上。継続事業の「観光地域ブランド確立支援事業」に同6%減の2億5700万円、「観光地ビジネス創出の総合支援」に同39%減の4400万円、「観光地域動向調査事業」に同4%減の3800万円。

 「観光産業振興」分野では、新規事業の「旅館の経営改善・情報発信促進事業」に2700万円を計上。前近代的な経営からの改善を促すため、大学と連携し、旅館経営の専門家や行政など産学官のワーキンググループで「旅館経営モデルカリキュラム案」を作成・普及していく。また、認知度向上のため、外国人への情報発信に力を入れていく。継続事業の「ユニバーサルツーリズム促進事業」は同4%減の3500万円となった。

No.391 旅館経営教室(3)―「労働時間管理」 - 「稼働対応労働時間制」を提案

旅館経営教室(3)―「労働時間管理」
「稼働対応労働時間制」を提案

 社会の目が長時間労働や未払い賃金に対して厳しさが増すなか、宿泊業界も現場でサービスを提供するスタッフの「働き方」の問題が大事になっている。今回は「旅館経営教室」の第3弾として、「労働時間管理」をテーマに、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が新たに「稼働対応労働時間制」を提案する。細かく変動する現場の稼働状況に機敏に対応でき、これまで以上にサービス産業の“現場の実態に合った”労働時間管理が可能になる画期的な方法だ。

【司会=本紙編集長・増田 剛】

 
 
 

 旅館やホテルでは、商品や単価、集客などについて、これまで数多くの議論が展開されてきました。しかし、今後の宿泊業界では、これらに加え、実際にサービスを現場で提供しているスタッフの「働き方」の議論をもっと蓄積していかなければ、会社はいずれ足元から淘汰されます。これは、宿泊業のほとんどのサービスが、結局のところ、現場で働いているスタッフたちの人手によって提供されているからです。

 同時に、昨今の若年労働力の深刻な不足から、仕事を求める人も、これまで以上にこの働く条件を厳格に見定めるようになっています。何か不安な情報がちょっとあるだけで、会社になかなか良い人材が集まらなくなるだけでなく、今いる有能なスタッフまでもがより良い労働条件を求めて離職していきます。つまり、より能力が高い人材で、より良い品質のサービスを、他社よりも効率的に提供していこうとすれば、会社はこの働く方法や環境、条件の整備により一層の努力をしていかなければなりません。…

 

※ 詳細は本紙1574号または1月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

過去最大の42・5億円、宿泊経営の改善にも着手(観光関係14年度補正)

 政府は1月9日、2014年度補正予算を閣議決定した。国土交通省全体の予算5451億円のうち、観光関連は「地方が直面する構造的課題等への実効ある取り組みを通じた地方の活性化」のなかの「観光の振興」に42億4600万円を計上し、過去最大の額となった。

 観光関連の内訳は、「地域観光振興緊急対策事業」に5億3千万円、「訪日2千万人に向けた新規インバウンド需要創出事業」に34億1600万円、「地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業」に3億円を計上した。

 「地域観光振興緊急対策事業」では、地域の観光振興をはかるため、(1)広域観光周遊ルートの形成に向けた取組体制の早期構築(2億7千万円)(2)観光分野における地域経済の「見える化」の推進(1億円)(3)「ふるさと休日」等の設定に向けた休暇取得促進に対する取組支援(1億円)(4)観光産業における人材の育成等(6千万円)――に取り組む。

 「広域観光周遊ルートの形成に向けた取組体制の早期構築」は、15年度の通し予算にも盛り込まれ、前倒しの実施となる。東京周辺やゴールデンルートに集中する訪日外国人が不便を感じずに地方を周遊・滞在できるように、ニーズ調査や、地域の課題把握などの基礎調査をはじめ、協議会の設立、計画策定、受入環境の整備・滞在コンテンツの充実、情報発信などを行う。

 「観光産業における人材の育成等」では、宿泊業経営者を対象に、経営に関する知識やノウハウ習得、意識啓発のための教材を作成。年度内の3月末までにそれらを活かしたセミナーやシンポジウムを地域ブロックごとに開催し、15年度以降につなげる。

 「観光分野における地域経済の『見える化』の推進」では、5―10のモデル地域を選定し、公的統計個票データと大学・地域金融機関などによる民間独自データの集計・分析を実施する連携プロジェクトを支援。先進事例の調査・分析手法の普及をはかる。

 「訪日2千万人に向けた新規インバウンド需要創出事業」では、年度予算による途切れを解消し、切れ目のない集中的なプロモーションを目指す。(1)桜のシーズンなどに向けた集中プロモーション(2)ビザ緩和と連動したプロモーション(3)航空路線の新規就航などと連動したプロモーション(4)中国沿岸部・内陸部の強化、重点市場追加の前倒し(5)日韓観光交流強化に向けた集中プロモーション――を行う。

 「地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業」は、総務省、経済産業省、外務省と連動して、放送コンテンツの海外展開支援とプロモーションを行う。地方局による海外と共同での旅番組の制作や、日本の映像コンテンツへの字幕づけなどを支援する。

北原茂樹氏が立候補、全旅連次期会長

北原茂樹氏
北原茂樹氏

2月17日、信任投票へ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は昨年12月1日に開いた選挙管理委員会(住友武秀委員長)で、次期全旅連会長に立候補の届け出のあった常務理事で、京都府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長の北原茂樹氏(旅館こうろ)の届出書類の審査を行い、受理した。立候補者が1人のみのため、2月17日に東京都千代田区の砂防会館で開く理事会の席上で信任投票を行う。

 北原氏は所信表明で、佐藤体制8年間のなかでNHK受信料の取りまとめ委託業務の締結や、全国旅館会館の耐震補強工事によるテナント収入の安定的な確保など、財政基盤の立て直しへの取り組み、固定資産評価の見直しの前進、東日本大震災にともなう東京電力との損害賠償交渉の成果などを高く評価。そのうえで、今後小規模施設も対象とされる可能性のある耐震補修工事について、補助金による補填などを、日本旅館協会など関連団体や国会議員などと連携、協力しながら粘り強く闘い抜く覚悟を述べ、「国土強靭化」「防災大国日本」「世界一安全な観光立国の実現」を旗印に、旅館・ホテルが防災拠点であり、最適な避難所であることを訴え、国民の理解を得ていくことを最優先課題として上げた。

 重点事業としては、(1)地方創生(2)人材育成――を掲げる。また、組織強化として執行部の若返りや、事務局の効率的な運営にも取り組んでいく。

 北原氏の主な経歴は次の通り。

 1985年6月京都府旅館環境衛生同業組合理事、86年6月同青年部長、95年6月同会計理事、2001年京都府旅館生活衛生同業組合副理事長、03年6月全国旅館生活衛生同業組合連合会常務理事、07年6月同参与、09年6月同理事などを経て、11年6月から京都府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会常務理事を務める。

400年の時を越えて

 徳川家康公薨去400年を迎える2015年。生誕の地である岡崎から、出世を遂げた浜松、大御所となった静岡へ。節目の年である今年は各地でイベントも開かれ、ゆかりの地をめぐり、家康公の描いた軌跡を辿るのも面白い。

 家康公は都市計画や文化醸成でも功績を残した。江戸城を中心とした街並みは現在の東京の都市基盤となり、遺言により造営された日光東照宮は、世界遺産に認定された。その場所が今、世界各地から訪れる観光客でにぎわうようになるとは、まさか夢にも思わなかったかもしれない。

 はるか400年の時を越えて人々が集い、変わらぬはずの場所に、また新しい光を観る。歴史をめぐる旅は、今を見つめる旅でもある。時空を経たからこそ、出会える風景がそこには広がっている

【森山 聡子】

観光大国の元年に、全産業の総力結集へ(JATA・田川会長)

今年の抱負を語る田川会長
今年の抱負を語る田川会長

 日本旅行業協会(JATA)は1月7日、2015年初の定例会見を開き、田川博己会長が今年の市場動向の見通しやJATA活動の方向性について語った。田川会長は「観光大国」という大きな目標に向けて、今年は節目の元年になると言及。「ツーリズムだけではなく、全産業の総力を結集できるような流れを作るため、JATAとしても発信していきたい」と抱負を述べた。

 昨年の14年については、国内旅行が順調に推移したことを報告。「1年間の旅行需要を見て、旅行そのものに対する考え方が少し変わったと感じる。震災を経て、日本をもう一度見直そうという機運もあり、ライフスタイルのなかにしっかり旅行が入り込んだ印象がある。また、団塊の世代が65歳を超え、本格的に動き出したという感想を持った」と振り返った。一方、海外旅行は「円安が吹き荒れた年」と総括。取扱高はハワイや欧米が好調であまり影響はないが、中・韓国の不調などもあり、海外旅行者数は1700万人を割る可能性もあるとした。

 15年の市場動向は「インバウンド、アウトバウンド合わせて3千万人が現実のものとなり、3千万人双交流時代が到来する。将来、ターニングポイントだったといわれる年になると思う」と展望した。訪日旅行は引き続き数を伸ばすとともに、富裕層の旅行者が増加し、海外旅行は日韓・日中の政情が安定すれば旅行者数は回復するとみる。「円安は当面続くと思うが燃油は下がっているので、海外旅行の単価が上がる要素はあまりない」と述べた。国内旅行は3月14日の北陸新幹線の開業が大きなインパクトになると強調。「日本の真ん中を周遊する新しいルートができる。また、高野山開創1200年や姫路城の改築、秋の5連休など好材料がある」と期待した。

 JATAの15年の活動については、国内は「東北の復興なくして国内旅行の再生はない」とし、10年、15年のスパンで継続して東北の旅行需要回復に取り組んでいく。宿泊旅行の拡大は、外国人旅行者を地域へ送ることで数の増加を目指すとしたが、訪日旅行は質が大きな問題だと指摘。「JATAが展開するツアーオペレーター品質認証制度が世界にうまく伝わっていないので、しっかりと取り組みたい」と述べた。

 海外旅行は需要喚起と政策提言に注力する。「本格的に海外旅行者数2千万人達成の施策に取り組む必要がある。海外旅行の政策提言はJATAにしかできない。改めて、なぜ日本人は海外旅行をする必要があるのかを考えたい」とし、MICEやビジネス需要を中心に議論していく考えを示した。