2施設の支援を開始、経営の安定化などはかる(アゴーラ・ホスピタリティーズ)

浪漫の宿 井筒楼
浪漫の宿 井筒楼

 アゴーラ・ホスピタリティーズ(浅生亜也社長)はこのほど、新たに2つの宿泊施設の運営支援を開始。これによりアゴーラ・ホテルアライアンスは、国内12施設882室となった。支援を受けるのは、愛知県渥美半島の「和味の宿 角上楼」と「浪漫の宿 井筒楼」。同社は2施設に業務支援サービスを導入し、キャッシュフローの改善による経営の安定化などをはかっていく。

 同社は、加盟施設が必要とする業務サービスを個別に選び、利用することができる「カフェテリア方式」でサービスを提供。各分野のプロフェッショナルたちが、施設現場のさまざまな課題の解決を支援する。今回2施設が導入する同社のサービスは、商品企画や造成業務の「オペレーション企画」、広報代行業務の「広報サービス」、販促ツール、広告宣伝ツールのデザイン、製作業務の「クリエイティブ」、自社サイト構築、インターネット販売管理業務の「E―コマース」、セールスイベントの計画、エージェントセールス代行業務の「エージェントセールス」の5つ。

和味の宿 角上楼
和味の宿 角上楼

スヌーピーミュージアム、16年3月、六本木に誕生

スヌーピーミュージアム(イメージパース)
スヌーピーミュージアム(イメージパース)

 シュルツ美術館(米カリフォルニア州サンタローザ)と「PEANUTS」(以下ピーナッツ)の日本国内エージェントのソニー・クリエイティブプロダクツ(東京都千代田区)は、2016年3月に「スヌーピーミュージアム」を東京・六本木に開館する。

 スヌーピーファンの聖地と言われるシュルツ美術館の世界初のサテライト(分館)となる本ミュージアムでは、スヌーピーたちが活躍するコミック「ピーナッツ」の原画をはじめ、作者チャールズ・M・シュルツ氏の初期の作品、貴重なヴィンテージグッズや資料などを6カ月ごとに入れ替えて紹介する。

 敷地内にはモニュメントや楽しい仕掛けを配し、ハロウィンやクリスマスなど季節に応じた多彩なイベントを開催。ミュージアムショップでは限定品やオリジナルグッズを販売するほか、カフェでは「ピーナッツ」にちなんだスペシャルメニューを提供する。

 なお、本ミュージアムは期間限定で16年3月―18年9月までの開館を予定している。入場券の販売方法や展示内容の詳細については、 15年12月に発表する予定という。

No.409 ピンクリボンのお宿ネットワーク、第4回総会開く 127会員へ拡大

ピンクリボンのお宿ネットワーク
第4回総会開く 127会員へ拡大

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将、事務局=旅行新聞新社)は7月29日、東京都港区の浜松町東京會舘で2015年度の通常総会を開いた。設立から4年目を迎えネットワークの輪は全国各地に広がり、会員数は127会員となった。今年度も10月のピンクリボン月間に合わせて「ピンクリボンのお宿」の新冊子を発行するほか、ホームページをリニューアルし、積極的な情報発信を行っていく。
【松本 彩】
 

 
 
 
 畠会長は「この3年間、全国各地の女将さんから活動報告をいただくなかで、ピンクリボンの日を設けている旅館もある」と総会の冒頭、あいさつした。昨年10月に10万部発行したピンクリボンの冊子は、会員の宿や全国約800カ所の病院に配布され、多くの人の手にとってもらっていることを報告し、「2016年度版は80ページに増え、現在発行に向けて製作している」と伝えた。さらに「これからもウェブやマスコミなどを通じ、情報発信をするとともに、全国の病院や医療関係者、乳がん患者団体とも連携して、旅館・ホテルで快適な宿泊や温泉入浴ができる環境づくりに向け努力していきたい」と語った。…

 

※ 詳細は本紙1596号または8月20日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

避暑地が恋しい ― 自然を体感できる快適空間への欲望

 今年の夏は暑い。全国的に猛暑に襲われているみたいだが、とりわけ東京は気温の高さに加え、異様に蒸し暑い。もはや長時間の外出は難しく、年々夏が観光に適さなくなってきているのを感じる。

 そうなってくると、「避暑地」が恋しい。日本の避暑地としてすぐに頭に浮かぶのは、軽井沢や上高地、那須塩原、富士五湖、洞爺湖などがある。地理的に九州など南の方であっても、高原などでは気温がぐんと下がり爽やかに過ごせるので、とくに夏は人気が高い。

 個人的にも、夏は好んで東北に旅行した。北へ、北へとクルマを走らせ、十和田湖畔や小岩井農場近くの温泉地で涼しく過ごした日々を、汗まみれの東京で思い出すと、貴婦人のような避暑地の面影を追ってしまう。

 今、グラマラスとキャンピングを掛け合わせた造語である「グランピング」というスタイルが世界的に流行っている。

 多くの人は、大自然の魅力を満喫したいが、虫が嫌いだったり、道具を準備するのが面倒だったりする。「自然を全身で体感したい」「野生動物を間近に見たい」と思っている一方で、どうしても人間は、危険や不快な思いは極力避けたいという相反する欲望を持つ。グランピングは2つの欲望を同時に解決する試みでもある。極言すれば、アフリカのサバンナの大地に突如豪華な部屋を設置する。真っ白いシーツのベッドに寝そべり、心地よい冷房の利いた部屋で高級シャンパンを飲みながら、窓の外でたむろしているライオンを眺めているようなものである。一挙両得の最高のエンターテイメントである。

 私自身、時折早朝バーベキューを行っていることを以前この欄で記した。大型テントを持たないので昼になれば太陽の直射日光を遮るものがなく、楽しみより苦痛の方が大きくなるため、夜明け前に家を出て、日の出前に火を起こし、朝食として焼肉を貪るように食べ、皆が河原にやって来る午前9時ごろには火を消して帰るという奇行を続けている。でも、ラグジュアリーホテルまではいかなくても、庇の広いログハウスでバーベキューをしながら、冷房の効いた部屋で休んだりできるといいなと思うことは多々ある。

 年々、夏は長時間出歩けないほど暑くなってきているが、だからといって、冷房の効いた室内に一夏閉じこもっていたいとは思わない。夏の日差しの明るさや自然の匂い、蝉の鳴き声などを感じながら、苦痛を感じる暑さから逃避できる空間も同時に確保したい。この身勝手な欲望を解決できる身近な場所は、どこにあるだろうか?

 旅館である。多くの旅館は山間地や高原、湖畔、渓谷、海辺など自然豊かな、涼しげな場所にある。そして冷房の効いた空間も提供している。だが、それだけでは足りない。必要なのは、「宿泊者が快適に自然を体感できる空間」なのだ。人工的に、一分のすきもないほど手入れをしている庭園もあるが、これは芸術であり、鑑賞用である。一方、まったく手を入れず天然の山や藪になっている場所には危険を感じる。旅館、あるいは温泉地が適度に手を入れることで、旅人が安心してデッキチェアに揺られながら、涼しげな木陰でうたた寝ができるような空間を提供できれば、身近な避暑地として、新たな旅行スタイルのニーズを掴んでいけると思う。

(編集長・増田 剛)

一定の意見反映へ、外務省の渡航情報が改定(JATA)

 外務省は9月1日から、13年ぶりに「渡航情報」の表現を改定する。年始のシリアでの邦人殺害テロ事件の発生で設置された「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」が5月に発表した提言を受けたもの。一方、日本旅行業協会(JATA)は提言発表時から海外旅行需要への影響を懸念し、全国旅行業協会(ANTA)と両会長名での要望書提出や、外務省担当者との話し合いなどを行ってきた。その結果、改定に一定の意見が反映されたことを8月6日の会見で明らかにした。

 外務省は提言で渡航情報の分かりやすい発信のあり方を指摘されたことから、名称を「海外安全情報」と改称するほか、現在、4つの段階で示している「危険情報」をレベル1―4とし、2段階目の「渡航の是非を検討してください」を「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」と改める予定だ。
 これに対し、JATAの越智良典事務局長はこれまでの経緯を説明。検討チームが提言書をまとめるなかで、JATAはヒアリングに参加したほか、独自の活動でリスクセミナーや安心安全部会の開催などを実施してきた。しかし、5月に提言が発表された際、ヒアリング段階では知らされていなかった渡航情報の見直しが含まれており、海外旅行の需要が減退することを懸念。ANTAと連携して両会長名で外務省の領事局長宛てに要望書を提出していた。

 越智事務局長は3月のチュニジアのテロ事件なども挙げ、日本人を取り巻く海外旅行の治安情勢が大きく変わったという基礎認識を示し、「それを踏まえて旅行の安全に取り組まなければならないということは重々承知している」としたうえで、危険情報の改正案については「全体のトーンが海外旅行は危険だから行くなというイメージ」と不安視。旅行会社の催行に関する義務付けに変更はなく、今まで通りレベル2でも各社の自己判断でツアーは催行できるが、大手はレベル2に引き上がるとツアーを中止する会社が多い。他方、専門的な会社ではレベル2にあたる地域に特化する会社もあり、会員の数社で年間2千人以上の影響が出ると試算。会員からも予想以上に不安の声が挙がり、「レベル2の表現を余地のあるものに変えてほしい」と、外務省の担当者らと折衝を重ねてきた。結果、レベル2の不要不急時の渡航中止の表現は変更できなかったが、同様の文字の大きさで「渡航する場合には特別な注意を払うとともに、十分な安全対策をとってください」という追記を加えることができたという。

 また、旅行会社の安全への取り組みに対する考慮として「危険情報の発出対象と安全対策」の項で、発出者の対象を一般的な個人旅行者を対象としたものと想定し、安全対策を講じている旅行会社による企画旅行とは異なるものであるという内容が盛り込まれた。さらに、旅行業界が観光庁の指導の下に旅行安全マネジメントを推進していることと、JATAは海外旅行の安心安全な実施のために独自のガイドラインを策定していることを紹介する記述も掲載。ガイドラインへのリンクも貼られている。

 これらに対し、越智事務局長は「100点満点は取れなかったが、お客様の安全を守りながら、旅行会社のツアー催行についてある程度担保できた」と評価した。一方、「安全対策が旅行会社の価値だと国がいってくれているので、より意識を高めなければならない」とし、これを機に海外企画旅行の実施ガイドラインの見直しも行った。レベル2時にツアーを催行する場合の安全対策について注記で具体例を示し、適切な対応を呼びかけている。

大賞は日本ブライト旅行、佐野の里山アートに注目、(株)全旅 地旅大賞

 株式会社全旅(中間幹夫社長)はこのほど、全国旅行業協会(ANTA)会員が造成した着地型旅行商品「地旅」を表彰する「地旅大賞」(5回目)を発表。大賞は里山アートに注目した日本ブライト旅行(石川直樹社長、栃木県)の旅行商品「アート街道66 暮らし・まるごと展」に決まった。

 商品は栃木県佐野市田沼町から群馬県桐生市へ通じる県道66号線沿いを中心に活動する芸術家団体「アート街道66」にスポットを当てたツアー。5月に開催するアートイベントに参加し、地域で暮らす人との交流や自然散策を楽しめる。

 選考審査委員長の井門観光研究所代表取締役社長の井門隆夫氏は受賞作品選定について「旅行業のプロが作る地旅は単なる素材の魅力で販売したり、ウォーキングで終わるのではなく、2次交通や宿泊を絡めて地域の価値を編集している点が強く印象に残った」とコメントしている。

 第5回受賞商品は次の通り。

【地旅大賞】
アート街道66 暮らし・まるごと展(日本ブライト旅行)

【優秀賞】
東の奥参り 出羽三山神社鏡池特別池中奉鏡(山形E旅)
びわ湖・長浜 観音の里めぐり2014(北びわこふるさと観光公社)

【特別賞】
海女ちゃんと三陸鉄道&ウニ丼まめぶ汁 北三陸号(岩手県北観光)
名工・石川雲蝶の作品を堪能するバスツアー(六日町観光協会)
雪の大谷が語る水と氷の物語(Travearth)
岸和田だんじり祭りスペシャルツアー(トーヨートラベル)

補助金で海外へPR、自治体の活用にも期待、アニメやマンガ、映画など

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 「J‐LOP+」は、経済産業省が地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業として設置した補助金(8月1日号に概要)。コンテンツの保持に関わらず、コンテンツの活用が補助金交付条件になり、海外に向けた地域情報発信に取り組む自治体や団体の活用が期待されている。補助金について、引き続き同補助金を運営する映像産業振興機構(VIPO)協力のもと解説する。

 補助対象となる事業は「コンテンツを有効活用して海外展開を促進する」事業で、「海外イベント主催・出展」=表=や「日本コンテンツ放送局への広告出稿」「海外プレスの日本招聘」などが挙げられる。ここで掲げるコンテンツとは、映像(テレビ番組や映画)、音楽、ゲーム、出版、キャラクターにあたる。現地が舞台の映画やテレビ番組、「ゆるキャラ」なども該当するため海外への地域PRに活用しやすい。

 ローカライズやプロモーションなどに係る費用が対象経費で、具体的には(1)渡航費、宿泊費などの「旅費」(2)出展費、スタッフ費、権利使用料、通訳費、出演料などの「運営費」(3)媒体仕入、宣伝印刷物、ノベルティ製作などの「広報宣伝費」(4)翻訳、編集作業費などの「ローカライズ費用」(5)現地著作権登録料、現地語の契約書作成などの「法務費」――が補助対象となる。

 補助率は、原則として対象経費の2分の1を補助するが、「地域経済活性化にとくに資する事業」「会社法で定める『大会社でない企業』か、その他法人、地方自治体」の2条件を満たしている場合は対象経費の3分の2を補助する。

 コンテンツの活用で同補助金を獲得し、海外イベントに出展する自治体は増えている。7月にフランスのパリで開かれた日本文化の祭典「ジャパンエキスポ」に出展した鳥取県と京都文化交流コンベンションビューローは、地域にゆかりあるアニメやマンガ、映画を活用し、対象経費の3分の2が補助されている。

 交付条件や活用方法についての問い合わせも多いことから、VIPOは補助金についての相談対応や説明会を開いている(要予約)。直近では、9月3日と17日にVIPO事務局(東京都中央区築地4―1―1 東劇ビル2F)で説明会を開く。説明会予約や以降の説明会日程、補助金申請はJ‐LOP+ホームページ(http://plus.j-lop.jp)から確認できる。電話での相談も受け付けている。

 問い合わせ=映像産業振興機構内J‐LOP+事務局 電話:03(3248)5567。

 補助金申請期限(推奨)は16年1月31日だが、補助金総額60億円がなくなり次第終了。7月31日時点での申請状況は、申請512件に対し採択398件。交付決定金額は34億7025万5千円。

 ※次回(最終回)は、実際に補助金を活用した海外展開事例を紹介する。

井波の新名物はガチャポン!?

 富山県の南西部、かつて瑞泉寺の門前町として栄え“木彫りの里”として知られる井波(南砺市)。その木彫刻の匠の技に触れることができる「井波彫刻総合会館」で、今ちょっとした木彫りグッズが人気を集めているという。

 会館前に設置された「獅子ガチャラ」がそれ。いわゆるガチャポンだが、カプセルに入っているのは「木彫りの獅子」。1個ずつすべて手作りのオリジナルグッズだ。

 井波彫刻をもっと身近に感じてもらおうと2010年から始めたものだが、1回500円という手軽さと、ここでしか手に入らない希少性が徐々に評判を呼び、今では遠方から買い求めに来る人がでるまでに。すべて手作りのため生産量が少なく、ときには品切れになることもあるとか。気になる方はぜひ事前に電話で確認を。

【塩野 俊誉】

旅行消費額9千億円弱、人あたり17万7428円支出(15年4―6月 訪日消費動向)

 観光庁がこのほど発表した訪日外国人消費動向調査(4―6月)によると、「訪日外国人1人あたりの旅行支出」は17万7428円で、前年同期の14万3903円から23・3%増加した。1人あたりの旅行支出と訪日客数を掛け合わせた「旅行消費額」は同82・5%増の8887億円にのぼり、6期(6四半期)連続で最高値を更新した。

 1人あたり旅行支出が増加した主因は、他の国籍・地域に比べて1人あたり旅行支出の高い中国(28万5306円)からの訪日外国人数が同137・1%増の125万5231人と大幅に増加し、結果的に全体数値が上昇したことが挙げられる。中国の1人あたり旅行支出も同34・7%増と大きく増加している。中国は訪日外客数と旅行支出が前年同期に比べ大幅に伸びたことから、旅行消費額は前年同期比で3倍以上拡大した。

 地域別の旅行消費額は中国が3581億円(構成比40・3%)、台湾1470億円(同16・5%)、韓国645億円(同7・3%)、香港606億円(同6・8%)、アメリカ526億円(同5・9%)の順。上位5カ国で全体の76・8%を占める。

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文化財にストーリーを

デービッド・アトキンソン氏
デービッド・アトキンソン氏

 文化庁(青柳正規長官)が6月29日に東京都・東京国立博物館で開いた日本遺産フォーラムで、認定審査委員が文化財に対するストーリーの重要性やこれからの観光のあり方を語った。審査委員を務める小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏の話を紹介する。
【丁田 徹也】

 昨年の訪日観光客数は約1300万人で、今年中には1800万人は届くと予測されていますが、私が観光状況を分析したところ、文化遺産や自然、食などのコンテンツのある日本は、現時点で外国人観光客が5600万人は来ていてもおかしくないという結果が出ました。現在の国際観光客数ランキングで日本は世界22位くらいですが、5600万人と考えると世界4位です。

 国際観光人口は1950年で2500万人、昨年は10億人を突破しています。30年には18億人になるとも言われています。現状の訪日客数では、18億人に対して0・9%のシェアも満たしていません。対してトップのフランスは8473万人(13年)。5600万人ベースであれば、2030年には8200万人に成長しているはずです。

 欧州で日本と同じような歴史・自然を持つ国であれば、国民数の4―5割が来るのは普通です。

先進国から来ない理由

 日本の歴史・文化や地方に関心を持つ先進国からの旅行客は200万人程度です。これは、日本を観光してもその価値を理解するための仕組みが整っておらず、彼らは何がどうなっているのか、つまり文化財のストーリーがわからないことから、日本を観光の選択肢から外しています。

 少し前に京都の竜安寺に行きました。(※アトキンソン氏は竜安寺の保存活動に関わっている)石庭の前で海外観光客が座っていてこんな会話をしていました。「この寺に国宝の庭があるらしいよ」。石庭を前にしたこの会話からすると、花の咲くお庭を期待していることがわかります。さらに「みんなが見ているシミだらけの汚い壁はなんだ」と続きます。衝撃的だったのは「これはもともと駐車場だったのかなぁ」です。「砂利が敷かれて障害物が置かれている。駐車場だ」と連想されたのかもしれません。

 彼らにとっては全然違う文化です。日本の文化や日本の良さを説明しなければ理解されることなく、単なる汚い壁と駐車場のままなのです。

お金を落とす仕組みを作る

 お客さんにお金を落としてもらわなければ観光は成り立ちません。お金を落とすチャンスを用意しなければなりません。それは観光ガイドや宿泊であり、そのためには一日楽しんでもらうための深いストーリーが必要になります。さっと観光してそのまま移動されては敵いません。外国人旅行者の支出の26%はホテル代です。日帰りだとJRが儲かるだけで地元にはお金が入りません。

相手の立場になる

 ここでもう一つポイントです。「来てもらいたい」という気持ちはわかりますが、相手の立場に立つことが大事です。単に「来てもらいたい」「お金を落としてほしい」というご都合主義では通用しません。

 遠い海外から来て、有休を使い、何時間も飛行機に乗り、そして何十万円のお金を使っていく、そんな人たちのために何をするのか、何を伝えればいいのかということを真剣に考えるべきです。深く長いストーリーを作らなくてはいけません。