No.414 注目集まるLGBT市場、国内の該当層は7.6%

注目集まるLGBT市場
国内の該当層は7.6%

 電通ダイバーシティ・ラボは4月、国内のLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)など性的少数者(セクシュアルマイノリティ)層に該当する人は7.6%、市場規模は5兆9400億円と発表した。東京・渋谷区は同月、日本で初めて「同性パートナーシップ条例」を施行。世界では6月、全米で同性婚が合法化されるなど世界的に多様性を受け入れる動きが加速している。今後、ますます訪日外国人観光客が増えるなか、LGBT市場にも注目が集まる。
【飯塚 小牧】
 

 
 電通のダイバーシティ(多様性)課題対応専門組織「電通ダイバーシティ・ラボ」は4月、全国の6万9989人を対象に「LGBT調査2015」を実施。前回の12年に行った同調査ではLGBT層が5・2%だったのに対し、今回は7・6%と増加した。人口比率では964万人となり、これはAB型の血液型の人と近い割合という。

 また、総務省の家計調査と家計消費状況調査データを踏まえ、LGBT層の商品・サービス消費市場規模は22カテゴリーで5兆9400億円と試算。このなかで、国内旅行費は762億円、海外旅行費は290億円。

 さらに今回はLGBT該当者の消費だけではなく、周辺の一般層でLGBTを支援、支持することにより生じる消費に注目。セクシュアルマイノリティ活動のシンボルとして世界的にレインボーが使われることから、同社はこれを「レインボー消費」と名付けた。今後は、多様性が社会に受け入れられることで生まれるレインボー消費の調査を進めるという。…

 

※ 詳細は本紙1604号または10月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

スポーツの秋 ― “泥くささ”に心動かされる

 “スポーツの秋”である。観光もスポーツと密接なつながりがあり、交流人口の拡大などにおいても、大きな影響力を持っている。また、2020年の東京オリンピックに向けて、スポーツの重要性はもっと増すだろうし、地域活性化にとっても、自分たちの誇りとなるスポーツチームが地元にあることも、とても大事になってくる。

 面白いのは、人それぞれに好きなスポーツがあるし、実際に自分がやっていた競技には思い入れが強い。それがマイナースポーツであれば、自己紹介で目立つことができるし、飲み屋での会話も盛り上がる。そして、スポーツは人を熱狂させる。地球の裏側まで弾丸ツアーで駆けつけるファンも多い。また、テレビ観戦でも、それがたとえ深夜であろうと「明日の仕事に差し支えてもいい」と開き直り、朝まで声をからして応援する。

 スポーツに魅了されるのは、すべての人の「人生と同じ」でなかなか上手くいかないところ。一瞬、一瞬が真剣勝負。もどかしくもあるし、敗北すれば苦い思いをし、悔し涙も流れる。それゆえに勝利したときには、歓喜の雄叫びを上げるほどに心を動かされる。

 チームプレーでは、脚光を浴びるポジションがある。サッカーなら常に得点を狙うフォワードだろう。一方、90分間全力で削り合うなかで、何度も何度もピンチを救い、チャンスにつなげる役どころがある。ボランチやディフェンダーだ。相手が強敵ならば、身体はボロボロだ。それでも相手に食い下がっていく。ワールドカップブラジル大会を制したドイツなどの強豪国は、精緻なパスで華麗にゴールを奪うイメージがある。だが、どんな強豪国であろうと、それほどものごとが上手くいくはずはない。アルゼンチンは、マラドーナやメッシなど才能豊かな選手が脚光を浴びるが、実に“泥くさい”サッカーをしている。日本が世界的にまだまだ強くなれない理由は、パスの精度や戦術なども言われているが、強豪国のサッカーと比べて“泥くささ”が足りないせいなのだと、いつも思う。

 かつてサッカー日本代表の香川真司がイングランドの名門クラブ、マンチェスター・ユナイテッドでプレイをしていたとき、同僚の世界的なフォワード、ウェイン・ルーニーが自陣のゴール前まで全力で転がり込みながら守ったかと思うと、すぐに立ち上り、今度はエースとして全速力でゴールを果敢に奪いに行く。笛が鳴るまで繰り返す姿に、泣きそうになった。

 ラグビーワールドカップで日本代表の活躍もあり、ラグビーがメディアに登場するシーンが多くなった。旅館業界でも全旅連青年部の桑田雅之部長が元ラガーマンだけあって、ひと際ラグビー熱が伝わってくる。ラグビーは、“泥くさい”イメージがある。実際、全身泥まみれになるからかもしれないが、なりふり構わないひたむきさが胸を打つ。泥くさいには「洗練されていない、野暮ったい、田舎くさい」などの意味があるが、私は泥まみれになった姿の比喩としての“泥くさい”という語感が好きだ。

 仕事が良くできる人は、大抵“泥くささ”を表面上には見せない。しかし、ルーニーのように、誰よりも走り回っている。その泥くさい部分がちらりと見えるときがある。その瞬間が、妙に人間くさく、そして美しい。

(編集長・増田 剛)

旅行予算減少が54%、旅行3社の卒業旅行調査

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 卒業旅行予算減少が54%――。学生の内定・卒業シーズンが近づき、旅行会社各社は、卒業旅行に関する旅行調査を発表し、分析にもとづく商品も売り出している。エイチ・アイ・エス(HIS)、JTB、楽天トラベルの旅行動向調査をまとめた。

 HISは、就職活動の環境変化に注目。同社の就職内定者アンケートによると、「企業の選考解禁月が前年に比べ4カ月繰り下がり、卒業旅行の資金源であるアルバイトの時間が減少した」と結果が出ており、これにともない旅行予算も低下。HISは9月25日から価格重視の「学生さん限定プラン」や「出世払い」などを販売している。

 JTBのeコマース事業を担当するi.JTBは、SNSのLINE上で卒業旅行に関するアンケートを実施。卒業旅行の有無に関しては、「行く予定」(もしくは行ったことがある)の回答が68%。性別で見ると女性の旅行意欲が高い。旅行回数の回答の平均は1・7回。回答者の約半数は1回、3割が2回、残りの2割が3回以上となった。

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 卒業旅行の計画開始時期は国内外ともに3カ月前が最も多く、卒業シーズンが2―3月にあたるため、11―12月に計画を練ることが多くなるとJTBは予想している。

 思い出になった行き先(国内)のトップは「テーマパーク」、続いて「関東」「近畿」「北海道」「九州」「沖縄」「中部」「中国・四国」の順。とくに男女別では「テーマパーク」が女性に人気で1位だったが、男性のトップ5にはランクインしていない。

 卒業旅行(国内)の予算は1万円以上3万円未満が38%。半数以上は3万円以上の予算。

 JTBでも9月25日から学生専用の「ガクタビ」を中心に卒業旅行の特集ページの公開や各種キャンペーンを展開している。

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 楽天トラベルが18―24歳を対象にしたアンケート調査では、男性の旅行目的のトップは「観光地巡り」、続いて「癒し」「料理」「文化・歴史」が続いた。女性の旅行目的では「癒し」がトップとなり、「観光地巡り」「料理」「同行者と過ごす時間」「遊園地・テーマパーク」の順。

 楽天トラベルによると、男性は自身の経験値や知識の向上に結び付ける旅行目的が上位にあり、とくに1人旅の形態が多くなっていると分析した。女性は1人旅の回答が0人で、旅行形態は圧倒的にカップルが多い結果となっている。

和服で参拝

 天孫降臨の地、高千穂峰をはじめとする数々の神話に彩られ、さらに国内有数の温泉地としても知られる鹿児島県霧島市。なかでも、建国神話の主人公、ニニギノミコトを祀る霧島神宮は近年、パワースポットとして若い女性の人気を集めるほか、“和”の空間を求める多くの外国人観光客でにぎわっている。

 そんな女性の注目を集める霧島神宮で10月1日から、着物のレンタル企画「和服で参拝、ぶらり霧島神宮。」が始まった。霧島市観光協会が実施するもので、神宮そばの観光案内所で着付けを行い、着物姿で神宮や周辺の散策を楽しむことができる。着物は約30種類から好きなものが選べ、和傘も用意する。女性対象で料金は1人3千円。日本独特の空間で和装が体験できるとあって、外国人の注目度も高いとか。

【塩野 俊誉】

茅葺集落の保存と活用、6号認定は新潟県高柳町、 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち

かやぶき集落荻ノ島の春日理事長(左)と、 ふるさとオンリーワンのまちの大越副理事長
かやぶき集落荻ノ島の春日理事長(左)と、
ふるさとオンリーワンのまちの大越副理事長

 無形物を含む地域の「オンリーワン」な観光資源の表彰事業などを行うNPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は9月4日、新潟県柏崎市高柳町・荻ノ島集落における茅葺集落の保存や活用のための取り組みを「ふるさとオンリーワンのまち」第6号として認定し、現地で認定式を開いた。

 高柳町は新潟県柏崎市南部の稲作地帯に位置し、冬は豪雪地帯としても知られる。荻ノ島集落は茅葺きの家屋を含む民家が水田を囲む「環状集落」の形態を取る地域で、茅葺家屋は宿泊施設として利用できる。高柳町では荻ノ島集落のほかにも、門出集落にも宿泊滞在可能な茅葺集落がある。

 今回の認定を推薦した松蔭大学観光メディア文化学部の古賀学教授は「高柳町は目新しいモノがある観光地ではないが、生活文化そのものを守り、継承していく活動をベースに、さらに観光振興に活かしている。当たり前のものを当たり前のように活かし継承することで、日本の集落の原風景を継承する、大変すばらしい取り組み。交流活動や町出身者との連携活動、農業ベースの観光振興など、試行錯誤の連続だが、常に何かが起きている地域」と推薦の理由を述べた。

 表彰式では同NPOの大越信行副理事長が同町で茅葺屋根の保存活動を推進するNPO「かやぶき集落荻ノ島」の春日俊雄理事長に認定証を授与した。春日氏は認定を受け、「私どもがコツコツと地域資源や環境、農業など足元を見ながら積み上げてきたこと、地域と向き合ってきたことを認定していただき、やってきてよかったと改めて感じる。地域の身の丈にあった取り組みを今後も続け、次の時代に引き渡しせるようにしたい」と語った。

 海外からも注目の高柳町

 高柳町はSNSの活用などで、海外からの問い合わせも増えている。春日氏は「去年は香港からシェフが来た。『高柳町は香港から仁川、仁川から新潟。そこからレンタカーなのですぐ到着する。香港にはもうこんな風景は残ってない』と言っていた。最近では、ポルトガルの大学生が荻ノ島集落のフェイスブックを見て『生活風景の勉強の一環で高柳町に滞在したい』とのことで高柳町に長期滞在の問い合わせもあった。地域はダイレクトに世界とつながるようになったと感じますね」と述べた。

 高柳町について

 高柳町は稲作が困難な休耕地でそば栽培を進めており、旅館を改装したそば屋「ふかぐら亭」(同町山中地区)では幅1センチほどある「ござそば」を楽しむことができる。味が濃く、そばの香りがしっかりと伝わってくることから、そば好きに人気の一品となっている。

ござそば
ござそば

 また、同町には国の名勝「貞観園」(同町岡野町地区)もある。豪雪の影響で開園期間が6―11月と短いが、開園から夏にかけての木々と苔生した地面が重なる独特な景色や、秋口から閉園までの紅葉がみどころ。冬の積雪の重さに耐えられる巨木が立ち残り、低木は雪の重みで地を這うように成長するため、中間層の木々が少なく、空間を広く感じられることも特徴。

貞観園
貞観園

旅と出会いを提供、“未来像”描く新店舗誕生(HIS)

店舗外観
店舗外観

 エイチ・アイ・エス(HIS、平林朗社長)は10月6日、同社が描く店舗の未来像として、「まだ見ぬ理想の旅と、出会える場。」をコンセプトとした店舗「H.I.S.旅と本と珈琲と」を東京・表参道にオープンさせた。同日開店に先駆けて行われたオープニングセレモニーでHISの平林社長が、近年日本からのアウトバウンドがマイナス成長を続けていることなどを踏まえ、「日本人がここに訪れることで、海外に出かけてみたいと思えるような情緒あふれる店舗にしたい」と期待を述べた。

 同店舗は、商品を買うための場から、人と人とのコミュニケーションや居心地のいい空間など「リアル=本物」にこだわった店舗づくりを行い、3つの価値の創出に取り組んでいく。1つ目は「多くの人を、まだ見ぬ旅へ誘う『きっかけ』の創出」。同店舗は誰もが気軽に入店できる店構えを演出するため、日本初の珈琲ブランドとして名高い「猿田彦珈琲」を誘致。季節ごとのテーマに沿った旅の魅力を表現したコーヒーを用意し、コーヒー目的で来店した人たちにも、思いがけない旅との出会いを提供する。

地域ごとに分かれた本棚
地域ごとに分かれた本棚

 2つ目は「まだ見ぬ理想の旅が見つかる『情報』の創出」。旅のイメージが膨らむ情報を厳選して提供するために、本を切り口とした情報のプロであるBACH(バッハ)代表でブックディレクターの幅允孝氏をスーパーバイザーに起用。店舗内には、幅氏がセレクトした約1500冊の旅に関する本が用意されており、本から旅につなげる工夫がなされている。

 最後に「想の旅がカタチになる『旅体験』の創出」として、15カ国以上の旅行経験を持つコンシェルジュが、一人ひとりの理想の旅を具体化する手助けを行う。また、ビジネス・ファーストクラスの専門店「CLASS ONE」、ワンランク上の旅を提供する「QUALITA」、秘境旅行専門店の「ネイチャーワールド」、ウェディング専門店の「Avanti&Oasis」と4つの専門セクションをそろえ、どのようなニーズにも応えられる布陣で、理想の旅を形にしていく。

(左から)幅氏、平林社長、大塚氏
(左から)幅氏、平林社長、大塚氏

 同セレモニーにはゲストとして、猿田彦珈琲代表取締役の大塚朝之氏とブックディレクターの幅氏も出席。大塚氏は「自分たちがきっかけとなって、お客様に、旅=感動体験を提供したい」と意気込みを語り、幅氏は「ここにある本はすべて購入できるので、自分にとって楽しい行き先を見つけてほしい」とアピールした。同セレモニー後に、平林社長、大塚氏、幅氏の3人によるテープカットが行われ、HISの新たなコンセプトショップが誕生した。

グランプリは比企さん、ツアコン・オブ・ザ・イヤー

比企真由美さん
比企真由美さん

 日本旅行グループ会社「ジャッツ」の添乗員の比企真由美(ひき・まゆみ)さんが、日本添乗サービス協会(TCSA)選定の「ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー」のグランプリ(国土交通大臣賞)を受賞した。9月25―27日に東京ビッグサイトで開かれたツーリズムEXPOジャパン2015の会場で表彰された=写真。

 比企さんは、添乗日数3409日(うち海外3284日)、添乗経験年数24年のベテラン。今年4月のヨーロッパ添乗中において「特別な配慮を必要とするお客様」への献身的な応対に最大限の力を発揮したことが高く評価された。

 比企さんは「旅のなかで、いかにお客様に寄り添えるかは私たちにとっての永遠のテーマ。その寄り添い方は時代に合わせて変化し、お客様によっても変わる。少しでも旅行を楽しみ、ご満足いただけるよう、今回の受賞を励みに、さらなる精進をしていきたい」と受賞のあいさつをした。

伊香保演芸場オープン、毎週末に「石段落語」開く

伊香保演芸場の外観
伊香保演芸場の外観

 伊香保地区への観光促進を目的に、今年5月1日に発足した「伊香保観光促進プロジェクト」(委員長=森田耕司古久家常務)が中心となり、木造の空き家を演芸場にリニューアルした。会場面積は約45平方メートル、収容人数は最大で約60人。

 伊香保演芸場での石段落語は、落語芸術協会所属の落語家・柳亭芝楽を中心に、毎週金・土・日曜の夜8時から9時まで開催する。入場料は大人1千円、子供(小学生)500円。

演芸場客席のようす
演芸場客席のようす

 なお、昼間は口上ができる落語家が伊香保にいる間、当面は見世物小屋を不定期で開催する予定という。

 問い合わせ=伊香保観光促進プロジェクト(古久家内) 電話:0279(72)3322。

移住希望者に心構えなど、ゲストハウス経営者語る(長野県)

ゲストハウスオーナーとの懇談会
ゲストハウスオーナーとの懇談会

 長野県は9月26日、東京都・銀座のアンテナショップ「銀座NAGANO」で、長野県のゲストハウスオーナーによる移住に関する懇談会「信州暮らしの始め方」を開いた。自らIターンで長野県に移住した経験を持つオーナーらが移住を希望する首都圏在住者に心構えを語った。

 来場者は長野県への移住希望者や観光事業に関心の高い首都圏在住者のほか、実際に長野県のペンションにインターン研修した跡見学園女子大学の学生も参加した。

 参加者はゲストハウスオーナーから移住の素晴らしさ、ゲストハウス運営の難しさなどさまざまな話を聞いたあと、「Iターンで飛び込んで地元の人とうまく付き合えるのか」「都会に戻りたいと思うことはないのか」など、移住に対する疑問や不安を質問した。

 ゲストハウスオーナーは「好き放題に地域に提言するとうまくいかない。いきなりこちらから地域に飛び込んでいくことになるので、これまで地域の歴史を作ってきた方からどんな見方をされるのかを考えてアプローチしていく必要がある」「田舎の良さと都会の良さは両極端に位置するものではないので、田舎が嫌になったとしても都会に戻りたいと思うことはない。『都会に疲れたので田舎に行きたい』という相談者に言っていることだが、都会も田舎も関係なく、その場所での生活スタイルが合っているかどうかが問題」と回答した。

 実際にインターン研修に行った跡見学園女子大学の学生は「自分の生活が仕事になっていると感じた」「ゲストハウスは色々な人に出会えて得ることが多かった」など感想を語った。

 県の担当者は今回の懇談会について「ゲストハウスオーナーを呼ぶことは、自らのIターンの経験をお話ししていただけるだけでなく、ゲストハウスでの『お試し移住』を参加者に提案することもできる良い機会になった」と語った。

磯貝政弘氏 跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 教授
磯貝政弘氏
跡見学園女子大学
観光コミュニティ学部 教授

≪キーパーソンに聞く 磯貝 政弘氏≫

 ――大学として地域移住にどう関わっているのか。 

 峰の原高原(長野県須坂市)はペンション経営の後継者不足が問題になっている地域。そこで観光による地域活性化の一環として、学生にペンションのお手伝いをしてもらい、その経験を地元の人々や行政にフィードバックする、というかたちで本校は動いている。

 ――学生にはどのような指導を。

 土地の魅力がどう活かされているのか、ペンションという宿泊事業の在り方も含めて率直に感じてほしいとの思いでインターンシップに送った。今後は現地で得た経験や意見をまとめ、提言していく。

 我われ大人は経験を積んでしまっており、どうしても先入観で物事を見てしまうが、学生は我われが失ったみずみずしい感性を持っている。その感性が移住に対してどのような意識を持つかが、地域活性のポイントになる。

 先生が逐一指導するやり方も良いが、それこそ先入観を植え付けてしまう恐れがある。観光に対する先入観を持ちすぎているのは、日本の観光全体の現状でもあると思う。

 だからこそ、私は学生に大半の時間をメモも取らせずに、とにかく感じ取ってもらう。そのなかで記憶に残った部分が何らかの成果となる。それをまとめるのが我われ経験を積んできた大人の仕事だ。

 ――移住と言うと観光と少し見方が違うのでは。 

 単純に「日常生活から離れて非日常的体験をする」という意味では、移住と観光の違いは滞在期間が長いか短いかの差だと思う。また、「景観の魅力」や「人の魅力」といった総合的な「土地の魅力」が観光にせよ移住にせよ人を引き寄せる。この魅力を見てくるように、と学生には言っている。

 ――これまでにないまったく新しいことを地域で行う可能性も出てくると思いますが、地域との折り合いは。

 難しいところで、地域のほかにもペンションのオーナーさん一人ひとりの意見もある。ただ、今回の活動が「峰の原」というコミュニティで将来を考えるきっかけになるのではないかと期待している。また、1回限りの「イベント」にするつもりはなく、今後は学年を超え、活動をフィードバックしながら後年につなげたい。

8カ国語と無料Wi―Fi、2階建て定観バスに導入(はとバス)

 はとバス(中村靖社長)は10月1日から、東京都内の定期観光バスで8カ国語対応自動ガイドシステムと車内無料Wi―Fiを導入した。2階建てオープンバス「オー・ソラ・ミオ」設置のGPSガイドシステム「TOMODACHI」の対応言語を現在の英語・中国語・韓国語・スペイン語の4カ国語から、タイ語・インドネシア語・フランス語・ベトナム語を加えた8カ国語に変える。

 はとバスは創業6年目の1953年から英語、2005年から中国語の2カ国語で通訳案内士が案内する外国人向けコースを運行。12年には訪日外国人の増加にともない、オープンバスの運行コースに自動音声案内のガイドシステムを導入した。今回は訪日数が増加するアジア圏の言語を中心に対応言語を8カ国語に増やしたほか、車窓観光中もスマートフォンなどでの情報収集やSNSの利用を希望する外国人利用者の声もあり、Wi―Fiのアクセスポイントをバスに搭載した。利用は手持ちのスマートフォンなどの設定をWi―Fiに切り替え、利用規約に同意するだけで無料Wi―Fiが使用できる。

 8カ国語対応自動ガイドシステムと無料Wi―Fiサービスに対応するコースはオープンバスの1時間車窓案内コース「TOKYOパノラマドライブ」「ベストビュードライブ東京スカイツリー」「東京摩天楼」。