広報センター開設、ブランドイメージ確立へ(九州観光推進機構)

正確な情報を発信
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 九州観光推進機構(石原進会長)は6月1日、九州ブランドイメージ確立のため、機構内(福岡市中央区)に広報、マーケティング、戦略構築を担当する「九州観光広報センター」を開設。同日に石原会長らが出席して開所式が行われた。

 センター長には機構副本部長の村岡修治氏が兼任。海外担当の若林宗男副センター長などスタッフは4人でスタートし、7月から5人体制となる。

 石原会長は「2005年に機構が発足し、九州一体で観光振興に取り組み12年目になるが、戦略的機能やメディア広報機能が足りない。沖縄や北海道と比べブランドイメージの確立が出来ていない」と課題を指摘。「総力を挙げてブランドイメージ確立に注力し、観光戦略を強力に推進するため、マーケティングや7県観光情報の支援化を進めていきたい」と広報センター設立の意義を強調した。

 また、村岡センター長は「震災でやるべきことが明確になった。正確な情報と元気な姿を発信していく」と意気込みを語り、「データに基づいたマーケティングと戦略の構築が使命」と抱負を述べた。

 センターでは、ITを活用した発信として「九州観光復興ポータルサイト」を立ち上げ、震災後の観光地の元気なようすを発信していく。

 コンテンツ第1弾として各県のイベント情報、震災関連情報、交通復旧情報など伝える「九州の観光掲示板」。旅館の女将やボランティアガイドなどの「人」に焦点を当てた「頑張ってます、九州」、物産を販売する各県サイトと繋ぐ「物産サイトバナー」で構成する。

世界基準へ、一段と、旅行会社と関係強化・改善(OTOA)

(左から)速水氏、ホルト氏、大畑氏、荒金氏
(左から)速水氏、ホルト氏、大畑氏、荒金氏

 日本海外ツアーオペレーター(OTOA、大畑貴彦会長、147会員)は6月8日、2016年度通常総会を霞が関ビルディング(東京都・千代田区)で行った。今年度は、セミナーを通じての法令順守の徹底や会員への新着情報の発信を重視。ツイッターを活用し、ツアーオペレーターの認知向上もはかる。各旅行会社との関係については、グローバルスタンダードを標語に、強化と改善に一段と力を入れる。

 総会冒頭、大畑会長は近ごろの事故やインバウンド状況に触れ、「一部の悪質な業者の行為によって会員は大変迷惑している。今後、協会会員は、安全管理の徹底をはかり、質の高いサービスの提供に努める必要がある」と述べるとともに、「観光産業を支えるのは、多くの業種による協働である。そのことを、関係者すべてに訴えていく」と強調し、社会における協会会員の地位と認知のさらなる向上をはかる考え。

 これを受け、来賓の西海重和観光庁観光産業課長は、「ツアーオペレーターの認定制度に関する議論もあるなか、今後、協会会員の活躍の場について、法整備を含め真剣に考えていきたい。ぜひ、皆様の強いネットワークを活かして、インバウンドなど新しい分野にも取り組んでほしい」と激励した。

 総会後のプレスインタビューには、大畑会長、荒金孝光副会長、ゲライント・ホルト副会長、速水邦勝専務理事の4人と媒体各社が参加。

 長年、協会会員と各旅行会社との間にある温度差を埋める努力を重ねてきたOTOA。「近年の感触など、具体的な変化はあるのか」という記者からの質問に対し、荒金副会長は、「中国人観光客が全世界に及ぶなか、旅行会社側が、ツアーオペレーターの要望に耳を傾けざるをえないことも多くなってきたことは確かだ」と述べ、世界的な旅行潮流を受け、現地オペレーターの意見が尊重されはじめたとの認識を示した。

 大畑会長は、「取り引きに関して言えば、我われ自身が襟を正さなくてはならない部分もある」と述べ、問題に対して主体的に向き合うことで改善できる部分はあるとの考えを示すとともに、「小規模で運営する協会会員も多く、その場合に関しては、旅行会社の方から歩み寄るかたちで、取り引き慣習などを改善すべき」ときっぱり語った。

 速水専務理事は、「大部分の旅行会社とは良好な関係を築いている。一方、そうではない会社も存在する」と述べつつ、「今年度は、協会から講師を派遣するJATAのニューデスティネーションセミナーで、海外旅行を復活させられるような新しい切り口を持った企画を、プランナーに提案していきたい」と語り、JATAや旅行会社と協力し、魅力的な商品造成に、率先して役割を果たしていく構えだ。

 ホルト副会長は、「10年前と違い、今は完全に個人の力だけで旅行ができてしまう」と語り、ビジネスの大きな変化に注目。世界基準の達成には、観光業界の一致団結が不可欠という認識。

横須賀、呉、佐世保、舞鶴、日本遺産活用へ協議会設立(旧軍港市)

多々見良三会長
多々見良三会長

 神奈川県横須賀市と広島県呉市、長崎県佐世保市、京都府舞鶴市は各市の観光協会、商工会議所などと連合し、「旧軍港市日本遺産活用推進協議会」を6月7日設立した。あわせて規約、会長の承認が行われ、舞鶴市長の多々見良三氏が会長に就任した。

 横須賀市と呉市、佐世保市、舞鶴市には旧帝国海軍の鎮守府が置かれ、日本の海の護りを担うとともに、軍港都市として発展、各市では多くの文化財が保存、利用されている。また4月21日には「鎮守府横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」として、4市は日本遺産に認定された。

 設立総会で会長に就任した多々見氏は同会で、「今後旧軍港4市が日本遺産ブランドを活かしたさまざまな観光プロモーション事業を行う組織として、旧軍港市日本遺産活用推進協議会を設立した」と設立趣旨を説明し、「日本の近代化の象徴ともいうべき建造物や構造物、水道施設や鉄道などの都市インフラが今なお数多く残り、その一部は今でも現役で活躍している」と述べた。そのうえで「日本近代化の歴史を体験できるホンモノの資産を持つまちとして日本遺産に認定されたことは、まちの成り立ち、歴史そのものが日本遺産として唯一のものであると認められたことで、将来インバウンド観光の候補地として選ばれる観光地として大きなアドバンテージになると期待している」と語った。また「4市の観光振興において何よりも大切なのは4市の住民が自分たちのまちの魅力を見直し、誇りを持って観光客魅力を語ること」だと強調した。

関係者の集合写真
関係者の集合写真

 同協議会では今後、ガイドブックの作製や10月末予定の現地見学会、11月開催予定の首都圏フェステバルなどの活動を行い、4市のPRを行っていく予定だ。

JR東とメトロが連携、東京五輪の輸送をサポート

(左から)青木氏、奥氏、森氏、冨田氏、鳥原氏
(左から)青木氏、奥氏、森氏、冨田氏、鳥原氏

 東日本旅客鉄道と東京地下鉄はこのほど、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会オフィシャルパートナー契約を結んだ。選手から観光客まで、鉄道で移動することが多いと予想される東京大会。安全と安心に尽力してきた2社は、大会の成功を輸送面でサポートする。観光客のさらなる増加が見込まれるなか、2社は利用者に対する声かけ対応からバリアフリー対策まで、ソフトとハード両面から開催後も見据えたサービスの向上を目指す。また、五輪における1業種2社での協賛は珍しく、契約に至る経緯を、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が語った。

 JR東日本の冨田哲郎社長は、「当社はバリアフリーにも配慮した鉄道インフラの整備の取り組みを着実に進めてきた。東京2020大会を控え、取り組みをさらに加速させ、ハンディキャップを持つ方から外国人観光客まで、すべてのお客様の安全と安心を向上させていきたい」とオフィシャルパートナーとしての抱負を語った。また、JR東日本が行う、声がけ運動についても、「外客をはじめ駅で困っている利用者を積極的にサポートする取り組み」と説明し、同社の観光対策への意識の高さを強調。

 東京地下鉄の奥義光社長は、「スポンサーシップ契約を受け、今後は、沿線地域や関係各所と連携を深めながら、東京の案内役と東京圏の交通ネットワークのつなぎ役としての職務を果たし、国内と海外すべてのお客様に東京のさまざまな魅力を楽しんでもらえるよう努めていく」と述べるとともに、エレベーターの設置やホームの多言語案内の充実など、五輪に向けた現在の取り組みを紹介した。

 これを受け、日本オリンピック委員会の青木剛副会長は、「東京2020大会では、世界から訪れる選手や観客らが安心して滞在できるよう、オフィシャルパートナーとなった2社や関係各所と一緒になって、邁進していきたい」と2社の取り組みに信頼の意を示した。日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は、「パラリンピックには、共生社会への変革がうながされる、それならではの価値がある。その価値を最大限に高めるためにも、満員の観客で大会を盛り上げることが必要。運輸を担う2社が、オフィシャルパートナーとなったことは心強い」と語った。

 また、1業種1社を原則としているなか、同業2社でのスポンサー契約となったことについて、森会長は、「オリンピックを成功に導くためには、輸送や地域観光など付随するさまざまな事業とも縁を深めていかなくてはならない。今回の1業種1社制を超えた契約は、そのことを考慮した結果だと考えている」と述べ、2社と一致団結することが、4年後の成功をより確かなものとする見解を表明した。

〝できることは全てやる〟、支援プログラムが決定、九州観光復興へ

 政府は5月31日、4月14日以降の熊本地震により、九州全域で宿泊予約のキャンセルなどが相次いでいることを受け、九州の観光復興をいち早く遂げるため、安倍内閣が掲げた「できることは全てやる」という方針のもと、「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」を取りまとめた。

 応急的な取り組みとして、(1)日本政策金融公庫等による既往貸付の返済条件緩和等を実施(2)金融機関に対して、返済の猶予等顧客の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずるよう要請(3)直接的・間接的被害を受けた中小企業者等向け貸付・債務保証制度の拡充(4)雇用調整助成金の事業活動縮小の確認期間の短縮化等に加え、助成率引上げの特例を実施(5)雇用保険の失業給付の特例を実施(6)旅館・ホテル等の施設・設備の復旧費用に対する補助――などを行っていく。

 旅館・ホテルの施設・設備の復旧を補助する「中小企業等グループ補助金」では、熊本地震で被災した中小企業等グループの復興事業計画に基づき、グループに参加する事業者が施設復旧工事などを行う場合、その費用の2分の1または3分の4(うち国が3分の1または2分の1、県が6分の1または4分の1)を補助する。また、商業機能回復のため、共同店舗の新設や街区の再配置などに費用を要する場合に関しても、同様の補助を受けることができる。同補助金の公募開始は6月中を予定している。

 短期的な取り組みとしては、180億円投じ「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」を創設。九州7県に対し、旅行プランの割引・販売費用やキャンペーン費用を助成する交付金を交付するほか、九州運輸局・九州観光推進機構が中心となって、周遊観光を促進するプロモーションを展開していく。

 さらに長期的な取り組みでは、九州を代表する熊本城などの観光施設や、文化財の早期復旧のため、「九州観光活性化ファンド」などを立ち上げ、観光産業の活性化に資する成長投資に必要な資金を供給していく。

雨の季節 ー 宿をもっと知ってもらえるチャンス

 全国的に梅雨入りした。雨の季節である。

 雨が降ると、テーマパークなどは、客足が鈍るため、雨の日には特別なプレゼントを用意する施設も増えた。会社近くのイタリアンレストランも、雨の日には、クッキーをプレゼントする。粋なことをするもんだな、と思った。

 旅館やホテルは、季節ごとに魅力的なプランを販売する。春ならば桜、夏は自然体験、避暑地、家族プランなど。秋は紅葉、冬は雪などをテーマに誘客をはかる。だけど、6月の梅雨時期はあまり積極的にアピールをされていないように感じる。

 6月は、祝日がない唯一の月である。ゴールデンウイークと、夏休みに挟まれ、確かに「旅の季節」というムードを醸しづらい。観光業にとって難しい季節であるが、雨はそんなにマイナスなのだろうか、とも思う。需要の平準化が観光産業全体、そして一つひとつの旅館・ホテルにも大切である。雨季をいかに需要に結びつけるか、智恵の絞りどころでもある。

 クルーズ客船は、乗客に向けてさまざまなメニューを提供している。海原の旅のため、天候は常に不安定だ。デッキで海を眺めたり、屋外プールで遊んだりできない日もある。そういう日には、船内でシアターやバー、レストランなどで楽しめるアトラクションやゲーム、知的好奇心をくすぐる講義など多数プログラムを用意している。大型旅館やホテルでは、参考になる部分は多い。一方、小規模の旅館などは、「なかなかそこまではできない」と思われるかもしれない。しかし、それでも雨の日に宿で過ごす魅力を伝えることは可能だ。

 私は会社勤めの身なので毎日スーツを着て雨の中を電車に乗って通勤しなくてはならない。このため、雨は優鬱な気分にさせることがある。だが、これが休日で、どこか風情のある温泉街の宿で過ごすとなれば、返って雨の日を歓迎したくなる。

 6月の木々の緑は鮮やかである。重い雲に覆われた銀色の世界に、蛍光色のように新緑の葉が輝く。雨が降れば涼しい。宿の窓辺に座り、雨樋を伝い、軒下に落ちる雨音を聞きながら、庭や森林、海をぼんやり眺めるのは贅沢である。

 温泉も、雨の日がいい。木々や土、岩の濡れた匂いが懐かしさを呼び起こす。地中から湧き出る温泉に浸かりながら、長い時間自然との対話ができるのも、この季節ならではだ。

 子供づれが少ない6月は、「大人が静かに過ごせる季節」として売り出すのも一つだ。にぎやかなGWや夏休みにはない、宿の過ごし方を好む層にアピールできる。

 館内のラウンジやバーでも、季節の落ち着いた料理やドリンクのメニューを提供する。夜には、照明を落とし、静かにジャズやピアノの演奏をする。

 繁忙期には忙しくてできなかったが、やりたいと常々思っていた企画を、この時期に思い切って試すこともできる。スタッフも少し余裕が生まれるので、宿泊客とのコミュニケーションをいつもより少し多めに取ることも可能だ。

 旅館やホテルにとって、雨の日は自分たちの宿をもっと知ってもらえるチャンスでもある。「長逗留して、何もしない時間」の魅力を教えてほしい。

 6月は、大人が宿で静かに過ごす時間として定着することを願う。

(編集長・増田 剛)

No.433 「100選旅館」 台湾でアピール、熊本地震直後の情報発信

「100選旅館」 台湾でアピール
熊本地震直後の情報発信

 旅行新聞新社(石井貞德社長)は4月22-25日まで、台湾の台北市で「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」入選旅館と日本の観光をPRするプロモーションを展開した。旅館100選40周年を記念し、昨年から実施しているもので今年が2回目。台湾の旅行会社と商談会を行うとともに、台北世界貿易センターで開かれた「ギフショナリー台北」に出展して、一般消費者に100選旅館と日本観光の魅力をアピールした。

【九州支局長・有島 誠、企画営業部・鈴木 克範】

 
 
 旅館100選プロモーションには、北は東北から南は九州まで16旅館19人が参加。4月14日に発生した熊本地震の影響で、対応に追われる九州からも、鹿児島県指宿温泉の旅館3軒が「今だからこそ正確な情報を伝えたい」と参加し、元気な姿をアピールした。

 プロモーション初日の22日は、台北市内のホテルに台湾の旅行会社を招いて商談会を行った。商談会は本紙と提携する台湾の観光業界専門誌「旅奇」(TRAVEL RICH)の協力を得て実施。42社67人が出席して旅館との個別商談会に臨んだ。

 冒頭のあいさつで、旅行新聞新社の石井貞德社長は「旅館100選は日本で最も歴史のある催し。今は国内のみならず、台湾の皆様からも注目いただくようになった」と強調。「昨年は約370万人が台湾から来日したが、今年は前年を大きく上回り、好調に推移している。皆さんの力をもって400万人を目指してほしい」と期待を込めた。

 会場では中央に旅行会社が着席。周囲に参加旅館ごと16のブースを設け、旅行会社が自由に各ブースを訪ねてじっくり個別商談できるようにした。進行はまず、旅館側の自己紹介からスタート。ティー休憩を取りながら、商談は約2時間にわたった。旅行会社側が順番待ちするブースや、旅館1人と旅行会社数人が面談するなど盛況で、熱心な交流が続いた。…

 

※ 詳細は本紙1631号または6月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

12年ぶりの東京事務所、「夏までに必ず完全復興」 (別府市)

長野恭紘別府市長
長野恭紘別府市長

 大分県別府市(長野恭紘市長)は5月31日、東京都内で12年ぶりとなる東京事務所開所のレセプションを開いた。長野市長は「熊本地震の影響で宿泊客のキャンセルが相次ぎ、経済的に大きな打撃を受けた。しかし、観光で生きる街として、その分市民の結束は強まった。別府はいつもどおり、変らず元気だ」と笑顔を見せ、「つらい時期こそ互いに励まし合い、協力する。必ず夏までに完全なる復興を成し遂げる」と語った。

 地方創生については「日本には少子高齢化など課題が多数あるなか、どこにも真似できない世界一の『尖ったまち』を作ることで、地方創生を実現していく」と強調した。

 また、11月21―22日の2日間開催される別府ONSENアカデミアについて」、「日本一の源泉数と湯出量、多様な性質を誇る温泉市別府の地域資源を活用し、温泉文化をさらに発展させていきたい」と述べた。

 さらに現在、温泉と言えば「ホットスプリング」と連想することに触れ、今後は「横文字の『ONSEN』をさまざまな価値のそろった、ただの温泉ではないという意味を世界へ発信し、世界共通言語にしたい」と高調した。同イベントではこの「ONSEN」を具体的に知ってもらうために、温泉を介して美容や健康、食、芸術、文化、エネルギー、歴史、伝統などを体験できるさまざまなプログラムを予定している。

 レセプションでは、鳥天や地獄蒸しプリンなど別府の美味しい地元の料理も提供され、誘客を呼びかけた。

 別府東京事務所開所レセプションは盛大に行われた
別府東京事務所開所レセプションは盛大に行われた

600万人の早期実現を、17年開催地は四国(日台観光サミット)

 日本旅行業協会(JATA)は5月26日に定例会見を開き、5月19―22日に日本観光振興協会と台湾観光協会とともに実施した「日台観光サミットin 宜蘭」の活動報告を行った。9回目となる今回は、相互交流600万人を早期に実現するため、「双方向交流拡大検討会議」を新設し、2020年の日台間の双方向交流のビジョン策定を行うことなどを決定した。そのほか、17年の開催地は四国とし、「鉄道観光フォーラム」を新たに催すことも発表した。

 越智良典理事・事務局長は、台湾から日本への渡航者数が約367万人と、日本からの渡航者数約163万人を大きく上回っていることに触れ、「日本から台湾への渡航者数も伸ばすことが、日本と台湾にとっての共通認識だ」と語った。そのうえで、「台湾当局との交流関係は良好で、定期的に対話する場も設けている。キャンペーンなども、相談をしながら実施を決めてきた」と述べ、日本からの渡航者数増加についても、対話の場のなかで検討していく方針を表明した。

 四国デスティネーションキャンペーンも実施される17年、「日台観光サミット」は、香川県と愛媛県での広域開催となる。開催には、両県の同サミットに対する関心の高さも影響している。越智理事・事務局長は、「日本と台湾にとって、地方を盛り上げていくことが共通課題であるなか、2県にまたがっての広域開催は、地方への観光客誘導につながるもの」と述べ、日本の観光資源の再発見につなげられるよう、広域開催を成功させたい考えを示した。

 「鉄道観光フォーラム」は、東武鉄道や京浜急行電鉄、江ノ島電鉄と台湾鉄路管理局間の相互交流が活発なことも影響し、10回目となる節目における新たな試みとして、開催が決定した。動向が注目される。

取消料の特約可能に、受注型BtoB約款、7月から

 日本旅行業協会(JATA)は5月26日に開いた定例会見で、7月1日から申請可能な相手方が事業者の場合に限り、両者の合意で取消料を設定できる「事業者を相手方とする受注型企画旅行契約約款(通称=受注型BtoB約款)」について、背景や特徴、注意点などを説明した。

 標準旅行業約款は1982年の制定時からほとんど変わっておらず、現行の取消料規定と実務が合わなくなっていることから、JATAは2011年に観光庁に標準約款の見直しを要望。検討会が開かれたが、「取消料規定」「旅程保証制度」の見直しは消費者庁との合意に至らなかったため、それぞれの問題に対し、観光庁は「個別認可」で対応してきた。このなかで、14年7月には、旅行サービス提供機関が旅行会社に課す取消料・違約料実額の合計額以内の額を旅行の取消料にできる「受注型実額精算約款」(通称)、15年8月にはLCC運賃を含むPEX運賃の取消料・違約料を旅行の取消料に反映できる「募集型ペックス約款」(同)、グレードアップされた宿泊機関への変更は変更補償金の支払い対象とはしない「旅程保証約款」(同)を制定。7月からは「受注型BtoB約款」が定められることになった。

 背景にはJATA会員へのヒアリングの結果、受注型企画旅行のうち、海外旅行は87・1%、国内旅行は99・1%が団体旅行が占め、旅行会社はホテルなどに対し早期に予約金を支払わなければならない一方、標準約款の取消料収受期間前に取り消しになった場合、旅行会社は相手方からは取消料が収受できず、背負うリスクが大きいという問題があった。しかし、内容は招待旅行や報奨旅行など、契約の相手方は事業者が多く、情報量や交渉力の格差から保護すべき消費者との契約ではないという解釈から「事業者間の契約」の場合に限り特約で取消料を定めることを可能にした。リスクを軽減することで、高度な企画の提案を促す。

 取消料の特約は、旅行会社と事業者間で定められるが、招待旅行などで事業者が旅行参加者と参加を取りやめた際の負担金を定めている場合、それが標準約款の規定の上限を超える負担になっていると、消費者保護の観点から、旅行会社と事業者間の特約も無効となる。このため、JATA法務・コンプライアンス室の堀江眞一室長は「旅行会社は事業者と旅行参加者の契約をよく確認すべき」と注意喚起する。また、例として招待旅行の招待者に全額自己負担で参加する同行者とは、受注型BtoB約款とは分けて契約する必要があることなども注意点として挙げた。

 なお、今回の個別認可を受けた場合、約款の構成は今までの5つの部に、「事業者を相手とする受注型企画旅行契約の部」を追加し、6部構成に変更する必要があり、「別紙『特別補償規程』」の前に挿入する。