8月の訪日外客数、前年同月比99.7%減の8700人 11カ月連続で前年下回る

2020年9月18日(金) 配信

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 日本政府観光局(JNTO)が9月18日(金)に発表した2020年8月の訪日外客数は、前年同月比99.7%減の8700人(推計値)だった。前年同月を下回るのは、11カ月連続となる。

 22市場すべてで訪日外客数が5カ月連続でほぼゼロに近い数字となった。引き続き、日本での検疫強化や査証の無効化、多くの国で海外渡航制限の措置が取られていることなどが減少の主な要因。

 一方で、今年4月から4カ月続いた同99.9%減からわずかに回復したようにもみえる。

 出国日本人数は同98.2%減の3万7100人(推計値)。今年4月の3915人を最少に、5月以降は増加している。

日光観光がお得なパスポート、LINEでも販売 東武トップ

2020年9月18日(金) 配信

「日光 2DAY パスポート」を企画

 東武トップツアーズはこのほど、栃木県日光市と連携し、世界遺産やテーマパークなどを割安で周遊できる2種類の「日光 2DAYパスポート」を売り出した。同社の店舗や現地の観光協会のほか、スマートフォンアプリ「LINE」でも販売を開始。新生活様式が求められるなか、非接触販売の手法として取り組む。

 「奥日光地区」パスポートは、日光の社寺や中禅寺湖遊覧船など12施設が対象。利用期間は9月19日から、11月30日まで。7410円相当のものが、2200円で購入できる。

 「鬼怒川地区」パスポートは、9月19日から2021年2月28日まで利用でき、江戸ワンダーランド日光江戸村や東武ワールドスクウェアなど9施設が対象となる。販売価格は5200円で、1万7700円相当分がつく。

 

日観振、新しい旅の仕方を動画で紹介 旅行者と地域、事業者の相互の安全安心を

2020年9月18日(金) 配信

佐渡・岩首昇竜棚田での地域住民との交流シーン

 日本観光振興協会(山西健一郎会長)はこのほど、新しい生活様式に沿った旅の仕方を紹介する「新しい旅のおもいやり」動画をユーチューブと協会ホームページで公開した。旅行者や地域住民、事業者の相互の安全・安心を目指し、広く啓蒙していく。

 今回の動画は「旅行者・地域住民そして観光事業者の相互の思いやりによる旅の安全と安心」をテーマに、「旅立ち編」「移動編」「お買い物編」「旅の出会い編」「お宿編」と、これらをまとめたフルバージョン1本の計6種類を用意。手指消毒やマスク着用の呼び掛けから、事業者による安全確保の取り組み、旅行者と地域の人との触れ合いのようすなどを盛り込んだ。また、観光事業者からの「おもてなし」と旅行者の「おもいやり」のポイントをアイコンで表示し、解説している。

 動画は、新しい生活様式下での旅行スタイル動画をいち早く公開した、新潟県・佐渡観光交流機構の協力のもと制作。佐渡旅行を見本ケースとして紹介する。

 日本観光振興協会は「これから旅行へお出掛けの皆様にはぜひ一度動画をご覧いただき、皆様の周囲の方への思いやりをもったご旅行へのご理解とご協力をお願いする」と呼び掛けている。

 なお、同協会は8月7日、観光関連団体や企業による旅の安全安心への取り組みを紹介するWebサイトを開設しており、情報登録の希望も随時募っている。

クラツー、テレ東番組をパッケージツアーに 「テレ東トラベル」ツアー売り出す

2020年9月18日(金) 配信

Webサイトを開設した

 クラブツーリズム(酒井博社長)はこのほど、テレビ東京グループで通信販売事業などを展開するテレビ東京ダイレクト(遠藤孝一社長)と共同で、テレビ番組にちなんだパッケージツアーを販売する共同プロジェクトを始めた。ツアーの販売サイト「テレ東トラベル」も9月17日(木)に開設し、テレビメディアともに新しい旅行サービスの開発を進めていく。

 テレビ東京グループが放送するバラエティや旅グルメ、ドラマなど多様なジャンルの番組から、両社が番組コンセプトにちなんだ旅行商品を開発。さらにクラブツーリズムが新型コロナウイルス感染予防策を施したパッケージツアーを造成し、販売、実施する。

 同プロジェクトの商品は今後、番組出演者をガイド役に据えた特別ツアーや、番組コンセプトを活用した国内・海外ツアーなどを予定している。既に販売を始めているツアーには、テレビ東京で放送しているお取り寄せグルメ番組「虎ノ門市場」(月~金、午前11時~、午後5時10分~放送)とタイアップし、生産者との交流や、グルメ商品を現地で味わう「体験ツアー」を盛り込んだ内容に仕上げている。

 これまで両社は、旅番組「ハーフタイムツアーズ」(月~金、午前8時~放送)で共同事業として旅行商品の販売を展開。同事業を発展させ、アフターコロナ時代を見据えた新しい旅行サービスの開発を行っていく。

LINEトラベルjp、「Go To」お得に探せる特設ページを公開

2020年9月18日(金)配信

最大2万円分がお得になり、さらにLINEポイントがもらえる旅行プランも

 「LINEトラベルjp」はこのほど、国内外の旅行会社が提供する「Go Toトラベル」対象プランをお得・便利に探せる特設ページを公開した。JTBやJR東海ツアーズ、ジャルパック、日本旅行、一休.com、Booking.comなど、大手旅行会社約20社をはじめとした各社の対象商品を検索できる。

 7月に官民一体型の地域活性化、国内観光需要喚起を目的とした「Go Toトラベル」キャンペーンが開始。このほど東京発着の旅行も追加される見込みにより、一層の増加が見込まれる旅行予約をサポートする。

 特設ページでは、「Go Toトラベル」による割引に加え、地方自治体が配布するクーポンを利用して、1泊最大2万円分引きとなる商品なども多数そろえる。ユーザーそれぞれによって最適な商品を簡単に探せる。また、10月1日から開始予定の「Go Toトラベル」キャンペーン第2弾の地域共通クーポンにも順次対応する予定だ。

 なお、特設ページ経由でLINEポイントの還元対象となる旅行を予約すると、割引やクーポンに加えてLINEポイント還元で、さらにお得に旅行を予約できるという。

新横浜プリンス 19日から「ブッフェダイニング」のディナー営業再開 各地の郷土料理をアレンジしたメニュー提供

2020年9月18日(金)  配信

出来立てのパフォーマンスメニューを届ける

 新横浜プリンスホテル(神奈川県横浜市)は9月19日(土)、新型コロナウイルス感染症の拡大や緊急事態宣言を受け休止していた「ブッフェダイニング ケッヘル」のディナーの営業を再開する。

 11月30日(月)までは、旅行に行き難い状況下でも旅行気分を味わえるよう、「JAPAN GOURMET FESTA-日本の美味しいを旅しよう-」を展開。ケッヘルの定番メニューに加え、鴨肉の治部煮 ケッヘルスタイル(石川県)など、各地の郷土料理をシェフがアレンジしたメニューが味わえる。

定番の料理と各地の郷土料理をシェフがアレンジしたメニューが楽しめる

 営業再開にあたり同ホテルは、コロナ禍でも安心、安全に利用できるよう従来のブッフェスタイルを変更。料理を個々に盛り付けるとともに、6エリアだったライブキッチンは8エリアに拡充し、出来立てのパフォーマンスメニューを届ける。また着席後にアミューズを提供することで、ブッフェライン混雑の緩和もはかる。

 このほか感染症対策として、ブッフェ台にはアクリルパネルやスニーズガードといった飛沫感染防止什器を設置。座席数はプリンスホテルが独自に策定した衛生・消毒基準「プリンスセーフティーコミットメント」に基づき、従来の256席から140席に変更した。

「さあ!香川キラリ旅 in Marunouchi」 9月24日スタート ポップアップカフェを開設

2020年9月18日(金) 配信

香川いりことセミドライトマトのオープンサンド(中央)などオリジナルメニューが味わえる

 高松空港と香川県、香川県観光協会、三菱地所が9月24日(木)~9月30日(水)、観光PRイベント「さあ!香川キラリ旅 in Marunouchi」を展開する。

 県が今秋スタートする「絶景」と「美食」をテーマにした観光誘客キャンペーン「さあ!香川キラリ旅」の事前周知イベント。期間中「Marunouchi Happ. Stand & Gallery」(東京都千代田区)にポップアップカフェを開設する。

 カフェでは、香川県の県産品「オリーブ牛」や「オリーブハマチ」、「いりこ」などを使用したオリジナルメニューを用意。県の絶景スポットはパネルや動画で紹介するだけではなく、首都圏から高松空港経由の絶景スポットまでの所要時間も表記する。

 また、カフェには高松空港直営店の「四国空市場(四空(YOSORA))」が出店し、人気の讃岐うどんやオリーブオイルなどの香川県産品を販売しイベントを盛り上げる。

 「さあ!香川キラリ旅」は、香川県と香川県観光協会が10月1日(木)~21年3月31日(水)まで実施する観光誘客キャンペーン。歴史ある名所からフォトジェニックなスポット、素材を生かした美食、忘れられない感動体験といった、「キラリ」と光る香川の旅を楽しめる企画を取りそろえる。

アクティビティジャパン、オンライン東京ツアーを発売

2020年9月18日(金) 配信

商品のイメージ
 HISグループのアクティビティジャパン(小川雄司社長、東京都新宿区)は10月5日(月)から、オンラインで東京の観光地を巡る「オンライン東京ツアー」を売り出す。同社は東京都と東京観光財団が取り組む「オンライン東京ツアー」事業の事務局として、東京都内の観光協会などが企画・主催するオンラインツアーの造成・運営、参加者へのサポートを行う。
 
 同ツアーは、都内街歩きをオンラインで体験することで地域と参加者をつなげ、持続的にコミュニティの創出が期待できる新しいデジタルコンテンツ。コロナ禍でも、自宅で現地を旅しているような体感が得られ、地域外の人に継続的に地域の情報を発信できることが特徴。
 
 同社は「能動的にヒト・モノ・コトの魅力に触れられ、地域への興味や購買意欲の向上につながる」(同社)とコメントした。
 
 ツアーは2020年10月中旬~2021年2月下旬まで実施。テーマは歴史や文化、自然など。ガイドが都内各地の魅力的なスポットを案内する。商品の数は18ツアー程度を用意する。1ツアーの募集人数は20人程度で事前予約制・先着順となる。参加料として、ツアー実施前に送付する地域の特産品代が掛かる。
 
 10月に実施するツアーの一例として、青梅市観光協会が主催する「青梅・西ノ猫町で猫とご朱印巡り 青梅宿で新たな魅力と出会う旅」が挙げられる。常保寺や昭和幻燈館、津雲邸など猫にまつわる施設を訪れる。
 
 同月には墨田区観光協会主催の「日本の国技『相撲』を知る旅 地元のガイドと巡る両国相撲ツアー」も開く。両国国技館や回向院、相撲写真資料館、相撲博物館などを巡る。
 

10月29日―11月1日開催 新しいMICEを提案しツーリズム復活目指す ツーリズムEXPOジャパン 旅の祭典in沖縄

2020年9月18日(金) 配信

9月17日に会見を開いた(JATA理事・事務局長の池畑孝治氏)

 日本観光振興協会、日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)は10月29日(木)~11月1日(日)の4日間、ツーリズムEXPOジャパン旅の祭典in沖縄を開く。「新しいMICEのカタチを提案し、今後のツーリズム産業の復活に寄与していきたい」(推進室)考え。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響が残るなかでの開催にあたり、①ニューノーマル時代のMICEの新しいカタチ②安心安全なイベントモデルを示す③国内旅行で地域経済を復活させる④国際交流復活の契機に⑤新しいツーリズムのカタチを沖縄から世界に発信――と5つの主旨を掲げた。

 商談会では通常のリアル商談に加えて、セラーがテレビ通話などで参加するオンライン商談会を初めて実施する。

 開会式では、渡航制限で来日ができない海外の観光大臣によるビデオメッセージを流す。在日大使はリアル登壇し、パネルディスカッションを行う。国際会議のようすは動画で配信を予定している。

 展示会は入場無料にし、初めて事前登録制を取り入れる。事前にQRコードを発行して、リアルタイムで入退場者を管理し、混雑状況を把握する。入場者数が上限(5千人または収容人数の50%以下)を超えないように調整する。

 会場外のフードコートでは、接触を極力避けるためにキャッシュレス決済を導入する。

 そのほか、新型コロナ感染症対策として、マスクやフェイスガードの着用を義務付ける。「新型コロナ接触確認アプリ COCOA」の取得を依頼する。すべての入り口で検温を実施する。

 JATAの池畑孝治理事・事務局長は、コロナ禍の影響で商談会や展示会が延期・中止になっていることを振り返り、「ツーリズムEXPOの責任として、感染拡大を防止しながら旅の力を皆様に感じてもらいたい」と力を込めた。

 国内の感染者が減少している現状にも触れ、「ニューノーマルな旅行は、感染拡大防止と旅による経済活動を両立できる。これからはオンラインも最大限に活用して、新しいカタチで旅行業界を盛り上げていく」(同氏)と語った。

【特集No.564】一棟貸し古民家の宿「まるがやつ」 “地域の財産”となる施設に

2020年9月18日(金) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の6回目は、千葉県・大多喜町で一棟貸し古民家の宿「まるがやつ」を改修し、運営する「人と古民家」代表・牧野嶋彩子氏が登場。「地域の財産となる施設に」との願いから、地元の“おばあちゃん”たちと触れ合う体験メニューを多数そろえ、コロナ禍を支えるリピーター化にもつなげている。

【増田 剛】

 ――古民家の再生を手掛ける「人と古民家」が運営する一棟貸し古民家の宿「まるがやつ」とはどのような施設ですか。

 牧野嶋:千葉・房総半島の中央部に位置する城下町・大多喜町で、築200年の古民家を買い取り改修しました。大多喜町は千葉県でも最初に過疎化指定された町で、「地方から日本を元気に」との想いから、2016年4月28日に古民家の再生を手掛ける「㈱人と古民家」を設立しました。同年秋に古民家を購入してから約半年で改修し、古民家の宿「まるがやつ」を17年4月にオープンしました。
 「まるがやつ」は古民家の屋号で、滞在中に里山での生活を体験できる、さまざまなメニューをそろえているのが特徴です。
 敷地には母屋の「萱―KAYA」(定員6―15人)と、離れの「蔵―KURA」(定員2―4人)、それにキャンプサイト「宙―SORA―」もあり、それぞれ1日1組限定です。「実家のように過ごしてほしい」との願いを込め、地元のおばあちゃんたちと一緒にかまど体験なども楽しむことができます。

 内藤:「まるがやつ」の運営を始める前は何をされていたのですか。

 牧野嶋:建築士を目指していたので、大学では建築工学を専攻し、設計事務所に就職しました。その会社は都市計画も手掛けていましたので、20代のころは地域おこしや、まちづくりの仕事にも関わっていました。 「建物単体が地域全体にどのような影響を与えるか」なども、テーマの1つとして仕事に携わっていました。
 30歳を機に独立し、東京で設計事務所を立ち上げました。その後、11年の東日本大震災のあと、東京都内から地元の千葉市に戻って設計事務所を開きました。
 それまで経営をしっかりと学ぶ機会が少なかったので、経営塾にも入りました。地元の経営者とのつながりができ、実践的なことも学びました。
 時を同じくして、大多喜町の古民家のリフォームの仕事が入り、新たなビジネスモデルを考えるきっかけになりました。
 私は個人的に、築100―150年前の「戦前」に建てられた民家を「古民家」と定義していますが、国の定義は築50年以上。千葉県内には国が定める定義では、約4万軒の古民家が現存しています。全国的にみても多く残っている方ですが、現状を見ると、どんどん壊されていっていますし、跡取りがいなくて空き家になっている物件も増えています。

 内藤:古民家のビジネスは、建築士としてもやりがいがある仕事だと感じたのですね。

 牧野嶋:古民家は建て方などが特殊です。実際に設計監理をしてみると、とても面白く、同時に「これは残すべきものだ」と強く感じ、古民家ビジネスを1つの柱として展開していこうと考えました。

 内藤:具体的に、どういうところが面白く感じたのですか。

 牧野嶋:まず、現代の住宅と建て方がまったく違います。
 基礎の作り方を見ても、ベタ基礎を作って、その上に金物と構造用の壁で固めて強度を上げていくというのが今の工法の主流です。
 一方、古民家は釘を使わずに、木と木を彫り込んだものをつなぎ合わせる「仕口(しぐち)」と呼ばれる技法や、基礎も束石の上に柱が載っているだけといった、揺らぎながら力を吸収するという考え方も見られます。「しなやかさのある建物」だと感じられる工夫が随所に見つかり、1つひとつに新たな発見があります。
 学生の時に読んだ谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に感銘を受けましたが、古民家には「明るい部分」と「暗い部分」の対比が色濃く残っています。
 また、屋根は建て替えしやすい造りのため、釘を1本も使っていないなど、「昔の人は再利用の技術がとても発達していた」と思います。建物を移築したり、古くなったものを一部補修しながら建て直したり、再利用の精神が宿っていることを感じます。
 現代は50年経てば壊してしまう、スクラップ&ビルドの考え方が基本です。その真逆な考え方が建物に表れているところも魅力的です。

 内藤:改修を手掛ける前に、古民家に関心を持っていたのですか。

 牧野嶋:私が独立して最初の仕事として、実家のリフォームを手掛けました。茶道をやり、和の物が好きだった母と一緒に古材を新木場に買い付けに行きました。ハウスメーカーが建てた家でしたが、内装を古民家風に改築しました。
 そのように振り返ると、私は昔から古いものが好きでした。でも、建築として手掛けるにはハードルが少し高かった。大学でも古民家の設計は学ばなかったし、古民家を手掛けている設計事務所でなければ実際に携わる機会はありません。
 「まるがやつ」を手掛けるにあたっては、古民家の改修経験がある建築士の方々に話を聞きに行きました。
 すると、皆それぞれ独自のやり方で、先輩から「自分でやりながら覚えていくしかない」とアドバイスも受けました。

 ――「復元」を重視する建築士もいます。

 牧野嶋:古民家の改修は、「古いままであるべきだ」という考え方もあると思います。
 一方で、私が目指しているところは、昔の良さとミックスして、構造や断熱、水廻りも「現代の暮らしに合うようにリフォームにしたい」と考えています。水廻りや床下を現代の考え方にするのは、自分が「女性だから」というのもあるかもしれません。
 一棟貸しの宿を運営しようと思ったときに、女性の目線でさまざまな動線を考え、「最新の設備を整え、でも全体的な雰囲気は古民家だったら魅力的に感じるのではないか」と考えながら改修しました。
 「まるがやつ」は新しい設備と、古民家の風情を残した「宿兼ショールーム」にしようというのが第一の目的でした。

 内藤:経営を勉強され、当初はショールームにしようと考えた。しかし、ショールームはやらなかったのですね。

 牧野嶋:古民家の改修などを考えている方は、まずは「まるがやつ」に泊まりに来るケースが多い。古民家の「寒い」「暗い」「汚い」といったイメージが気になっているので、実際に使って泊まってみると、「とても清潔で、真冬でも断熱性能を高めれば快適に過ごせる」ことを確かめることができます。
 水廻りも現代の新築家屋と同じように利用できることが分かります。そのうえで、「古民家改修の依頼をする」という流れが自然だと思っています。その意味では、ショールームという働きも果たしていると思っています。
 「人と古民家」のビジネスモデルは、設計事務所と宿の運営の2本柱です。この2つが相互補完し合う状態を保ちながら、ビジネスを広げていけたらいいなと思っています。今は古民家だけではなく、新築物件も手掛けています。

 内藤:これまでにどのような課題がありましたか。

 牧野嶋:ショールームだけだと収益が上がっていかないので、「収益を上げるためにどういうやり方があるか」と思案したときに、最初は「企業研修の受入施設」としての活用を考えました。会員企業を集めて使ってもらう。現在は千葉県を代表する企業5社が出資金を拠出し、会員企業になっていただいています。
 銀行に提出した事業計画では、企業会員が7割、一般のお客様が3割と想定していました。しかし、蓋を開けてみると、約9割が一般の個人利用という状態です。
 距離的なこともあるのか、想定よりも企業の研修利用が少なく、平日の稼働を高めていくには企業の利用を増やすことも必要です。
 当初は3割稼働を目標にしていましたので、「月に10組は来てほしい」と思っていました。そうすると、企業会員だけで10組は難しいので、一般の方も旅行で使っていただけるように営業計画を練っていきました。
 「まるがやつ」では、体験を売りにしていますが、かまど体験や、天体観測など体験メニューで収益を上げていこうと考えました。

 内藤:体験に関心を持ったのはどうしてですか。

 牧野嶋:古民家の運営を考えたときに、「昔の日本人の暮らし」が体験できる施設だったら面白いだろうなと単純に思いました。
 現代社会は、火に接する機会が減っています。とくに都市部のマンションでは、灯油ストーブの使用が禁止されているところもあります。IH化がどんどん進んでいくと、ガスコンロの火さえ見ない暮らしになっています。
 「火のある暮らしは日本人らしい」との思いもあり、「まるがやつ」をリフォームするときに、かまどを造りました。火を起こしてご飯を炊いて、囲炉裏で魚などを焼きながらご飯を食べる。火をぼんやりと見ながら過ごす生活を私自身もあまり経験してきていないので、憧れがあったのかもしれないですね。敷地内での焚き火は、焚き火台の無料貸し出しも行っています。
 自分が家族で旅行したときは、その土地で何を覚えているかと振り返ると、陶芸体験や、そこで接した人たちのことが深く印象に残っています。宿泊客には「地元の人たちとの交流をしてほしい」という気持ちが強くあります。

 内藤:おっしゃるように、交流を大切にされていますね。

 牧野嶋:「まるがやつ」で働いてくれるおばあちゃんたちは、チェックイン、チェックアウトの対応のみだと、どこか物足りなさを感じてしまう。それならお客様がかまどでご飯を炊くときに、おばあちゃんたちが手伝ってあげると、交流が生まれると考えました。
 短い時間ですが、火を起こすのを手伝ったり、バーベキューをするときに薪を持って来たり、そこで会話が生まれます。

 内藤:働く方々は地元の方を雇用したいと決めていたのですか。

 牧野嶋:自分が20代のころ、都市計画をやっていたときに、「地域に対してこの施設がどうあるべきか」という部分は考えていました。「大多喜町の財産となるような施設になれば」という想いはありました。 
 ですから、東京などからスタッフを連れて来て運営をさせようなどとは考えませんでした。食事も最初は出すつもりはなかったのですが、地元の採れ立ての野菜などを、料理上手な地元のおばあちゃんたちが出してくれたら、大多喜ならではの体験になるのではないかと思い、「おばあちゃんの台所」というサービスも始めました。

 内藤:おばあちゃんたちは、どのように探したのですか。

 牧野嶋:「まるがやつ」をオープンしたときに、春になると近くでレンゲ祭りが開かれていました。そこで大多喜町の伝統工芸、紙の甲冑を展示しました。お祭りに来ていた地域の方々にも「まるがやつ」を知っていただく機会になりました。
 また、地元の銀行と大多喜町が主催して「古民家を生かした観光活性化」に関するシンポジウムを開催したときにも、「まるがやつ」という古民家の宿ができたことを地域の人たちにも知っていただく機会となりました。そのときに来てくれたおばあちゃんたちが働いてくれています。その後もおばあちゃん同士が紹介したり、大多喜町の広報誌などに募集記事を出したりしています。

 内藤:現在はどのくらいの方が働いていますか。

 牧野嶋:お料理を作ってくれる人や、庭の草刈り、お掃除など10人ほどがパートさんとして働いています。さまざまな体験の準備や、接客などもおばあちゃんたちが担っています。

 内藤:離れの「蔵―KURA―」も改修し、活用されています。

 牧野嶋:「蔵」はカップル2人での利用が多いので、カギは暗証番号を事前に知らせています。基本はお客様自身がカギを開けて、中に入ってもらっています。チェックアウトは立ち会ってお見送りをしています。

 内藤:支払いはどのようにされていますか。

 牧野嶋:現地で現金やクレジットで対応しています。現金精算もおばあちゃんたちにやってもらっています。このため、千葉県稲毛市にある当社の本部は、予約の管理業務のみです。「まるがやつ」の施設運営はおばあちゃんたちにすべて任せています。もちろん、業務をやりやすいように、当社がマニュアルを作成し、ムダな作業をなくして生産性を高めたり、備品の発注などもやっています。
 予約はすべて本部で受けます。お客様とのメールでのやりとりはしっかりとしています。何十回もメールを交わすこともあります。
 体験メニューの予約が入れば、そのシフトを作り、おばあちゃんたちに「このようなことを希望されているお客様です」と遠隔操作で細かく伝えます。
 定期的に本部から現地に来て、現金のチェックや備品の在庫確認などを行います。ミーティングをして問題があれば、改善もしています。
 本部から出向して責任者を置いて管理するよりも、おばあちゃんたちを信頼して運営をする方が上手くいっています。おばあちゃんたちも「地域のために働いている」という意識を持っていただいています。

 内藤:会員制については。

 牧野嶋:今は個人にも「まるがやつ」の会員になるシステムを作っています。「ふるさとをつくっていこう」という想いに賛同してくださる方や、古民家を後世に残していくことに価値を見出す方も会員になってくれています。
 コロナ禍でも訪れてくれるのは、リピーターの方が多いです。支えてくださっており、ありがたいと思っています。

 ――個人会員は会費がかかるのですか。

 牧野嶋:入会金も会費もありません。会員カードを送って、来られたときに割引などの特典もあります。
 かまどや囲炉裏体験のプレゼントなども好評です。会員さんが増えるのはすごく心強いですね。
 企業は幾つかのランクを設定して入会金をいただいています。

 内藤:オープン以来、色々な試行錯誤をされています。

 牧野嶋:母屋の「萱」をオープンしたあと、半年後に、離れの「蔵」をオープンしました。その次に裏庭でキャンプ場をやりたかったのですが、水が多いので散策路にしました。
 その後、納屋でのカフェを始めました。
 一棟貸しでのお食事サービスを「おばあちゃんの台所」として始めましたが、3割くらいのお客様からリクエストがあり、ちゃんとした台所が必要になりました。納屋を改装して営業許可を取得し、普通のレストランのように食事ができるようにしました。でもやっていくと、パートのおばあちゃんたちも高齢でシフトも難しくなり、「おばあちゃんの台所」をひとまずやめて、納屋をカフェとしてやっていこうと思いました。業務委託でやりましたが、難しかったですね。今は空いており、出張シェフが利用したりしています。

 内藤:「蔵」は別の建築家が手掛けたのですか。

 牧野嶋:中村好文先生という大学時代の恩師にお願いました。
 自分たちで手掛けてもよかったのですが、どうしても自分が造りやすいように設計したり、コストを優先したり、妥協が生まれてしまいがちです。しっかりとお金を掛けて、「作品性を高くしたい」と思ったのです。
 関東では中村先生が手掛けた宿はここだけなので、先生のファンが訪れてくれるようになりました。

 内藤:19年7月には貸し切りのキャンプ場をオープンしましたね。

 牧野嶋:この場所が「ビレッジのようになるといいな」と思いました。里山があって、大人数が泊まれる「萱」があり、少人数が泊まれる「蔵」がある。これらに加えて外で楽しめるキャンプ場という形態の異なる3つの貸し切りの施設が存在します。それらをつなぐのが、納屋と裏の里山というような構想を思い描いていました。
 キャンプ場は、週末の予約は早いですね。土曜日などは3カ月先まで埋まっています。平日は苦戦しています。「萱」と「蔵」はそれぞれ稼働率が6割程度、キャンプ場はまだそこまでいっていません。
 コロナ禍ではアウトドアのキャンプ場や、2人利用が多い「蔵」は比較的キャンセルが少ない傾向にあります。

 ――「萱」、「蔵」、「キャンプ場」はそれぞれ1日1組ですが、同じ日に3組が同時に宿泊されることもありますか。

 牧野嶋:週末にはあります。その場合は「同じ敷地内にあるので、他の家族の方もいらっしゃいます」と事前にお知らせします。それに対するクレームはほとんどないですね。
 「敷地すべてを貸し切りにしたい」という方もいらっしゃいます。

 内藤:今後の計画は。

 牧野嶋:大きな投資はオープン時で終わっていますので、接客と清掃の質を高め、ブラッシュアップしたいと思っています。リピーターのお客様に対するサービスを高めることや、体験メニューの充実も考えています。 裏庭の森の中に子供たちが木の上で遊べるツリーハウスを作りたいという想いもあります。

 内藤:リピーターには具体的に何が必要だと考えていますか。

 牧野嶋:やはり「特別感」を感じ取っていただければと思っています。
 おばあちゃんたちが出迎えるときも、前回利用されたときのことなどをしっかりと伝えることで、「お迎えを丁寧にしましょう」と話しています。「大多喜ならでは」のおもてなしをどこかに盛り込んでいくことも話し合っています。
 お礼状も以前は本部で作っていましたが、実際にお客様と接したおばあちゃんたちに書いてもらい、本部から発送しています。
 一棟貸しスタイルで「どこまで旅館並みにサービスを充実していけるか」と、悩んでいるところでもあります。リピーターを増やしていくには人との接触や体験などが必要だと感じています。

 ――ホームページにたくさん体験メニューを載せていますが、体験が目当てのお客も多いですか。

 牧野嶋:とても多いですね。体験メニューも少しずつ増えてきました。当初は1割程度でしたが、昨年は4割近くの宿泊者が何かしらの体験をされています。人気のメニューは囲炉裏と、かまど体験です。家族連れなどは「子供たちに土に触れさせたい」と苗植えや、サツマイモの収穫など農業体験も人気です。
 ここはWi―Fiはつなげていますが、テレビを置いていないので、雨の日も子供たちが水溜まりで遊んだりしています。そのような過ごし方をしてほしいと思っています。裏庭の池ではザリガニも釣れます。

 内藤:旅館はこの10―20年で料理を前面に出してきました。しかし、旅行者はホームページで宿を閲覧するときには、まず客室や風呂をチェックします。その意味では「空間」を作っていくというのがすごく大切なのだと思います。

 牧野嶋:「まるがやつ」は料理を付けないところからスタートしています。だから体験がメインになったのかもしれないですね。

 内藤:それは牧野嶋さんが外側の世界にいたからこそ、先入観なく自分の経験や基準からさまざまな判断ができたのだと思います。
 一般的には「お客様は一体何を求めているのだろうか」というコンセプトを決めて、そこから建物を建てますが、「まるがやつ」は逆です。ショールームのつもりが、宿になった。やりながら考えていく。そのなかでコンセプトができ上がっていく。

 牧野嶋:固定概念はなかったですね。宿に関しては素人の自分が料理人や、食材の在庫を抱えながらお料理を出すことは、とても無理だと思いました。「一棟貸しにこだわり、古民家を快適な空間にする」を第一に考えました。
 私も旅館に行くと、部屋からはきれいな海が見えて、豪華な美味しい料理が出てきます。大浴場や温泉も楽しめる旅館には、素人の私は到底敵わないと思っていました。だから、「いかに旅館と違うことをやるか」というイメージは持っていました。

 内藤:「まるがやつ」は人を常駐させないというところからスタートしているのが面白い。固定費が大きければ、現在のコロナ禍のような状況でお客が来ないと、経営を継続できないために値下げをしなければなりません。
 もう一つ、「リピーターは会社ではなく、人に付く」ということです。
 ホテルなどのネームプレートは、金色の小さなプレートに黒色でスタッフの名前が書かれているので、ほとんど見えません。それだったら、少々野暮ったくても大きく分かりやすい名札を付けた方がいい。お客とスタッフがお互いに名前を認識し合える関係になると、クレームが減ります。

 牧野嶋:お客様のアンケートでもパートさんの個人名で「滞在中に良くしてくれた」という意見も多くいただきます。
 「実家を作ろう」がコンセプトの「まるがやつ」ですので、お客様とスタッフとの距離もしっかりと考えていきたいと思っています。

 内藤:期待しています。

 ――ありがとうございました。

【全文は、本紙1806号または9月28日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】