山形旅ホ組 旅館ホテルを避難所に 組合員向け勉強会開く

 2020年10月31日(土) 配信

あいさつする佐藤信幸理事長

 山形県旅館ホテル生活衛生同業組合(佐藤信幸理事長)=写真=はこのほど、かみのやま温泉・日本の宿古窯で勉強会「避難所としてのホテル・旅館の活用について」を開いた。山形県内の組合員代表を対象に行い、山形県防災危機管理課の担当者を招いた。

 国は新型コロナウイルスの感染予防対策として、「3密」を避けるため、防災計画を見直した。避難所が不足した場合、旅館ホテルを活用することが盛り込まれた。また、高齢者や要配慮者の避難についての対応を記載。施設の借り上げ費用としての予算措置に、地方創生臨時交付金を充てることも決定されている。

 山形県は、同組合と災害時に旅館ホテルへ要配慮者を一時的に受け入れる協定を締結。地域でも一部の自治体と地区組合員が協定を結んでいる。一方、地域全体が被災した場合は広域的な避難となり、支部単位では対応できないため、今後の検討が必要だ。

〈旬刊旅行新聞11月1日号コラム〉コロナ禍で作業量が増加 客にも過剰に負担を強いていないか

2020年10月31日(土) 配信

コロナ禍で作業量が増加

 東京・山手線などの最終電車の時刻を繰り上げるというニュースが流れた。新型コロナウイルスによって、社会や生活、価値観がこれまでと大きく変わっていくだろうと思っていたが、これも変化の象徴的な出来事である。

 
 テレビで年輩の男性がインタビューを受け、「自分たちの若いころは終電まで働いていた」と話しているシーンを見た。我が身を振り返っても、1990年代まではそのような名残が強くあったような気がする。終電近くまで働いたことは少ないが、酒場で飲んでいたことは、かなりある。

 
 終電を乗り遅れて、仕方なく始発まで飲む夜もあれば、会社で仮眠して朝を迎えることもあった。「ニューヨークのように24時間電車が走っていれば、終電に乗り遅れることもないのに」と本気で思っていた。

 

 
 今は、夕方に定時で帰宅する流れが浸透している。そう考えると、大多数のサラリーマンが終電近くまで働いたり、飲んだりしていたころは日本史上“特殊な時代”だったのだ。

 
 どうして朝から夜遅くまで毎日働いていたのか。残業代が出る企業は「労働時間が長い方が、収入が多い」仕組みも一役買っていたかもしれない。

 
 新聞記者という仕事も、当時は写真1枚を取材先に借りに行くことも多々あった。電車に乗って相手の会社に「こんにちは~」と出向く。「ガキの使い」ではないので、少し世間話などをして、お礼を言って会社に戻ると午前中が終わってしまうこともあった。今はメールでのやりとりで空いた時間に1分もあれば、済むことである。

 
 校正作業も印刷所に出張し、1日がかりだった。しかし、その大半が校正室での待ち時間だった。そう考えると、生産性がとても低かったことを感じる。あの時代に戻りたいかと言われれば、答えはNOだ。生産性を上げて効率よく仕事をした方が精神衛生的にもいい。

 

 
 先日、北海道のある有名ホテルに宿泊した。チェックイン時に「3密を避けるため、大浴場に入るときにはQRコードから予約をしてください」と言われた。少し休んで温泉に入ろうと思い、スマートフォン片手に性別やら、名前、住所、電話番号、メールアドレスのほか、さまざまな個人情報を書かされ、まだまだ質問項目が続く。

 
 「パソコンやスマホと向き合う煩わしい生活から逃げ出そう」と思って、自然豊かな旅に出たのに客室でスマホ片手に数十分間、情報を打ち込まなければ温泉にも入れない状況に、私の我慢の限界が来た。

 
 客室からフロントに電話し、『そこまで色々と情報を入力しないと温泉に入れないのか』と聞くと、『すみません、この電話で受け付けとさせていただきます。大丈夫です』と言うではないか。そしてようやく広い大浴場に行くと、なんと私ひとりぼっちの貸し切り状態だった。

 

 
 IT化が進んでも融通が利かなければ、生産性は上がらないし、最も大事な客の満足度が下がってしまう。       

 
 コロナ禍においては、宿泊施設や観光施設では、検温や消毒、衛生管理など作業量が増えているだろう。一方、客との接触を最小限にするために、セルフサービスの割合が上がっている。「コロナ禍だから」という理由で、客の方にも過剰に負担を強いていないか、心配である。

 

(編集長・増田 剛)

 

約8割が国内でも海外気分望む エクスペディア、海外旅行の意識調査 

2020年10月30日(金)配信

海外旅行ができない代わりに国内旅行へ行きたい人を対象に調査

 エクスペディアは10月29日(木)、 8月に実施した全国男女400人を対象にした「海外旅行に関する意識調査」の結果を発表した。「国内旅行でも海外旅行気分や異国情緒を味わえたら嬉しいか」という質問には、約80%が「はい」と回答。旅行者の多くが国内旅行でも海外旅行気分や異国情緒など、非日常的な雰囲気を望むことが明らかになった。

 新型コロナウイルスの問題がなければ、「海外旅行に行きたい(どちらかと言えば含む)」との回答が82%。海外旅行ができない代わりに「国内旅行に行きたい(できれば行きたいを含む)」は91%。海外には行けない現状だが、旅行自体への関心が高いとわかった。

 海外旅行へ行きたいと回答した人の行きたい旅行先トップは、61%で「ハワイ」が選ばれ、日本人からの根強い人気がうかがえる。次いで、「台北やソウルなどのアジアの都市」「パリやロンドンなどのヨーロッパの都市」が、44%の同率で2番目に人気のエリアという結果になった。

 海外旅行を再開するためには、緩和すべき制限が多くある。調査の中で「海外旅行はどのように状況が変化したら行きたいか」との質問に、「ワクチンができたら」と回答した人が約60%で最も多かった。次いで「海外の渡航制限が解除されたら」「旅行先や空港、機内のコロナ対策が万全だと判断できたら」がほぼ半数となった。より安心できる環境となり、自由に旅行のできる条件が整ったら再開したいと考える人が多いようだ。

愛知県豊田市の観光CP第3弾、11月から開催 飲食店で抽選に当たるとその場で500円引き

2020年10月30日(金) 配信

「豊田市の美味しいグルメがお得に楽しめる抽選くじ」を実施

 ツーリズムとよた(太田稔彦会長、愛知県豊田市)は11月1日(日)~来年1月31日(日)まで、「Try it!さいこーにちょうどいい とよた」キャンペーンの第3弾「寒い冬は絶品グルメTRIP!」として「豊田市の美味しいグルメがお得に楽しめる抽選くじ」を実施する。

 豊田市内にある対象店舗で500円以上飲食した客を対象に、店舗に設置されたQRコードを読み取ると抽選くじに参加でき、当たりが出るとその場で500円引きとなる。対象店舗は、ツーリズムとよたのWebサイトで確認できる。

加茂ゴルフ倶楽部ゴルフ場沿いに山々を貫く「もみじ街道(加茂広域農道)」

 同サイトでは、キャンペーンの実施に併せて、豊田市のグルメを楽しみながら巡ることができる写真映えスポットも紹介している。自然豊かな下山エリアでは11月1日(日)~29日(日)まで、「熱気球係留体験」「SUP」「エアカヌー」「Eボート」「マウンテンバイク」「キャンプ」「魚釣り」などのアクティビティ体験を楽しめる三河高原アドベンチャーを開催する。

11月21日(土)アンテナショップ「ちばI・CHI・BA」が東京シティアイ パフォーマンスゾーンに期間限定オープン

2020年10月30日(金) 配信

昨年のようす

 千葉県は11月21日(土)~12月19日(土)、アンテナショップ「ちばI・CHI・BA」を東京駅近隣の東京シティアイ パフォーマンスゾーン(東京都千代田区)にオープンする。

 6回目となる今回は、「千葉のお宝大発見!『ちばの宝島』」をテーマに、県内各地域の“宝”である特産品の販売や地域の観光PRなど、千葉県の魅力を広く発信し、感染症対策に取り組みながら頑張っている物産・観光事業者を応援する。

 新たに、アンテナショップの商品をわかりやすく探し、購入できる特設Webサイトも開設し、出品者が自ら作成した動画で各商品の魅力を発信する。

 詳細は決定次第、発表される。

西日本の鉄道を58列車を乗り継ぐ21日間の一人旅 クラツーがツアー売り出す

2020年10月30日(金) 配信

乗車鉄道 イメージ

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)はこのほど、西日本の鉄道を舞台に58の列車を乗り継ぐ、ひとり旅「にっぽん鉄道三昧プレミアム ~GoTo西日本編~ 21日間」を売り出した。58の列車のダイヤをつなぎあわせるだけでなく、同社の貸し切運行の車両にも6回乗車するなど、個人では実現が難しい行程になっている。

 2021年1月11日(月)からの20泊21日のツアーで、旅行代金は111万円(GoToトラベル適用。支払い実額84万8000円)、定員は11人。西日本旅客鉄道(JR西日本)、四国旅客鉄道(JR四国)、九州旅客鉄道(JR九州)、私鉄各社が協力している。

 JR西日本エリアでは、北陸エリアの人気観光列車「花嫁のれん」、南紀エリアで「パンダくろしお」、山陰山陽エリアでは、デビューしたばかりの「etSETOra」、ツアー最終日は、日本最後の定期寝台特急である「サンライズ瀬戸」に乗車。JR四国エリアでは、車内で食事が楽しめる3つの「ものがたり列車」を一部貸切で特別運行する。

 JR九州エリアでは、デビューしたばかりの豪華観光列車「36ぷらす3」を筆頭に多彩なD&S(デザイン&ストーリー)列車に乗車。私鉄では、近畿日本鉄道の新型名阪特急「ひのとり」と、観光特急「しまかぜ」をそれぞれプレミアムシートで楽しめるほか、日本最西端を走る松浦鉄道では、同ツアーのための貸切列車を運行する。

 地域共通クーポン11万4000円分は、昼食や夕食などで使用できる。

 同社では12月中の販売に向け東日本編の造成も進めており、21年2月にツアーの催行を予定している。

旅程

サービス大賞が決定 観光関連から5者受賞、サービス産業生産性協議会

2020年10月30日(金) 配信

賞のロゴマーク。全30件が選ばれた

 日本生産性本部が運営するサービス産業生産性協議会は10月27日(火)、第3回日本サービス大賞を発表した。全762件から内閣総理大臣賞や国土交通大臣賞、優秀賞など30件を選出した。このうち観光業界関連から5者が受賞した。

 同賞は業界全体の革新を進めるサービスやAI(人工知能)・IoTなどのデジタルを駆使したサービス、地域に欠かせない存在となっているサービスなどが選ばれる。

 観光業界からは、イーグルバスの「ICTと地域観光興しによる持続可能な交通まちづくり」が、地方創生大臣賞を受けた。

 具体的な受賞理由は、積極的に行政などにまちづくりを働きかけることでバス事業の幅を広げたことや、日本の路線バスサービスの仕組みをラオスなどの海外にも展開していることなど。

 また、スタービレッジ阿智誘客足促進協議会が提供するサービス「日本一の星空 長野県阿智村『天空の楽園 ナイトツアー』」もは地方創生大臣賞を獲得した。

 ゴンドラ乗車前から山頂での星空観賞・エンターテイメントまで、参加者が徹底的に感動体験を味わえるサービスを提供している点や、村の人口の25倍に相当する年間16万人の観光客を呼び込み、10~20代の若者が4割を占めることなどが受賞ポイントとなった。

 森ビルとチームラボの展開する「さまよい、探索し、発見する共創型『デジタルアート ミュージアム』」は総務大臣賞に選出された。

 鑑賞者の動きを察知したコンピューターアルゴリズムによって、作品が次から次へと変化し、訪れたときごとに変わるデジタル映像アート体験を提供する双方向の超臨場映像サービスを確立したことが決め手となった。このほか、混雑を回避するよう入館スケジュールを最適化できるなど、顧客管理でもITシステムを自社で開発。コロナ禍にも柔軟に対応したことなどが受賞につながった。

 星野リゾートは「地域の魅力を掘りおこし新たな旅を創造する『ホスピタリティ・イノベータ』」として、国土交通大臣賞を受けた。

 ホテルスタッフが「魅力会議」という仕組みを通じて、シーズンごとに新たな旅の体験サービスを企画、提案し続けている点やコロナ禍で1年8カ月先までを想定して事業計画を組み直し、危機を乗り越えようとしていることが評価された。

 優秀賞を受賞したのは旅籠屋の「車社会のインフラとしての日本型MOTELチェーンを全国展開」。

 具体的には遊休地のオーナーに対する土地活用策が評価を受けた。また、従業員が柔軟に休暇取得できる店舗運営の確立と教育の徹底で接客品質を均質化。運営ノウハウの社内共有とスキル向上の好循環を実現したことなどが受賞理由となった。

  なお、大賞の内閣総理大臣賞は小松製作所の「土木建設サービス全体のデジタル業態革新『スマートコンストラクション』」。3D地形データ、ドローンなどを活用し、圧倒的な安全性と生産性向上の実現をはじめ、業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進し、労働力不足の改善をはかったことなどが評価された。

中日本高速道路、フォトコン審査結果を発表 来年の作品募る

2020年10月30日(金)配信

フォトコンテストのロゴマーク

 中日本高速道路(宮池克人社長CEO、名古屋市中区)は10月28日(水)、今年で13回目となる「NEXCO中日本 高速道路と風景フォトコンテスト」の入賞作品を決定したと発表した。あわせて、第14回フォトコンテストの作品募集を同日から始めた。募集期間は2021年8月31日(火)消印有効。

 13回目は、「高速道路と四季の風景部門」「あなたのとっておき風景部門」の2つのテーマで作品を募集した。同社では、写真を通じて高速道路を身近なものとして親しんでもらい、高速道路や沿線地域の魅力を再発見してもらうことなどを目的として、同フォトコンテストを08年度から毎年開催している。

第13回フォトコンテストの審査結果

 今回の最優秀賞は、「高速道路と四季の風景部門」が菊池和夫氏の作品「朝霧湧く」、「あなたのとっておき風景部門」が深野達也氏の「天空の空」が受賞した。

 次回の第14回フォトコンテストも、プロ・アマ問わずだれでも応募できる。募集する作品のテーマは、「高速道路と四季の風景部門」「あなたのとっておき風景部門」の2種類。同社が管理する高速道路やサービスエリア・パーキングエリア、インターチェンジ周辺のおすすめスポットやイベントなど、必須の被写体が写っている四季それぞれの季節感がある写真を募集している。

 入賞作品はテーマごとに、最優秀賞1点に10万円分の商品券、優秀賞4点(各季節1点)に5万円分の商品券、佳作3点程度に1万円分の商品券、入選3点程度に5千円分の商品券を贈呈する。

 募集作品のサイズは、四ツ切(ワイド可)またはA4。色は白黒もしくはカラーで、印画紙を使ったものに限る。結果発表は21年10月予定。

日本交通公社、「コロナ禍で日本人はどう動いたか」――など発表 旅行動向シンポジウム

2020年10月30日(金)配信

日本交通公社の末永安生会長があいさつ

 日本交通公社(末永安生会長、東京都港区)は10月27(火)、28日(水)の2日間、第30回旅行動向シンポジウムをオンラインで開いた。

 2日目は「コロナ禍の観光動向を振り返る」など3つのテーマを題材に、独自調査や研究成果を発表。コロナ禍での日本人旅行者・旅行市場の動向など、ゲストを招き対談や講演で紹介した。

 冒頭の主催者あいさつで同公社会長の末永氏は、「観光を取り巻く環境は楽観視できない状況が続いているが、この期間を効果的に活用してほしい。ウィズコロナ・ポストコロナ時代の観光について、考えを深めていくことが大切」と力を込めた。

(※1日目の内容は以下の記事から)

コロナ禍の観光動向を振り返る

 同公社戦略・マネジメント室長の守屋邦彦氏は「コロナ禍の観光の動向を振り返る」をテーマに、調査成果や観光関連の取り組みを発表した。今年1月以降のコロナ関連の社会的動向、地方自治体や地域事業者の観光分野における対応状況などを解説した。

 新型コロナ感染拡大が国内外に大きな被害をもたらしたなかで、守屋氏は「地域のブランド力、つながりを持っているところは危機に瀕しても強いとあらためて感じた。一方で、危機が避けられない状況を想定しなければならない。(同公社では)過去の取り組みも把握し提供していきたい」と振り返った。

コロナ禍での日本人旅行者を調査

左から立教大学観光学部の羽生冬佳教授、日本交通公社の五木田玲子市場調査室長

 同公社市場調査室長の五木田玲子氏は、「コロナ禍における日本人旅行者の動向」を解説した。

 今年1~9月期の国内旅行の発生状況について、「コロナ禍の影響による旅行のとりやめは4~5月がピーク。感染リスク回避が最大の理由で、4~5月は自粛要請の影響が大きかった」と語った。

 同期間の国内旅行の実態において、コロナ禍による旅行内容の変更は、活動内容や訪問先が最多となった。訪問先は温泉や自然、域内旅行が増加した一方で、まちなみ・歴史文化・都市など、人が密集する場所を避ける傾向がみられた。

 コロナ禍における旅行意識は、7割が旅行意向を示すも、女性・高齢層ほど不安が大きく、旅行意向が低いため、1割弱は旅行市場から欠落する可能性を報告した。

 五木田氏の報告と解説を受けて、立教大学観光学部教授の羽生冬佳氏と「コロナ禍における旅行市場の動向~変わらないこと・変わること~」をテーマに、ゲスト対談が行われた。両者はコロナ禍によって、(1)旅行者の年齢層(2)旅行・来訪経験(3)旅行先(4)旅行先での行動(5)旅に求めること――に変化があるかどうか意見を交わし合った。

 羽生氏は、これからの旅行は責任やコミュニケーション能力が求められていると指摘。旅行先も生活や自然があり、そこでの感染を拡大させないために、「旅にも能力が必要である。旅行者側も身に付けていく時代になってきた」と強調した。

過去の経験に学ぶ復興への展望

上段左から沖縄観光の未来を考える会の中村圭一郎事務局長、かまいしDMCの久保竜太サステナビリティ・コーディネーター、下段の日本交通公社の中島泰地域計画室長

 シンポジウム後半は、「過去の経験に学ぶ復興への展望」をテーマに、2人のゲスト講演が行われた。ゲストは、かまいしDMC(岩手県釜石市)サステナビリティ・コーディネーターの久保竜太氏と、沖縄観光の未来を考える会事務局長の中村圭一郎氏。両者は、観光を取り巻く困難な状況からどのように復興に向けて動き出していったのか、過去の実例を踏まえて紹介した。

 久保氏は、釜石市での東日本大震災からの観光復興について話した。「震災後に市が直面した復興課題に対して、行政の人手・専門性不足による公助の限界が大きな課題となった」と振り返る。まちづくり関係者間のミスコミュニケーションが復興を遅らせる要因だったため、コミュニケーションの隙間解消のために釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)の創設、釜石オープンシティ戦略などの策を講じたと明かした。その後、観光地域づくりの新たな局面に向けて、現在のかまいしDMCを設立したと説明した。

 一方の中村氏は、兵庫県神戸市出身で阪神淡路大震災に被災して自身も生き埋めを経験した過去を語った。「周りが更地になる『ゼロ経験』を自分自身もした。そういう機会から沖縄に移住して観光産業に従事し、海外で持続可能な観光や観光政策を経験してきた」と振り返る。今回の講演では、観光プロデューサーとして取り組んできた観光コンサルティングとしての活動を紹介した。

 講演後は、同公社地域計画室長の中島泰氏を加えた3者で対談を行い、意見を交わし合った。

【特集No.568】「妙高モデル」座談会 地域一丸で安全・安心な観光地へ

2020年10月30日(金)配信


 感染症対策と経済の活性化の両立をはかる「妙高モデル」の確立に挑戦する新潟県妙高市。DMOを構成する組織に「医療機関」が加わり、地域一体で安全・安心な観光まちづくりを実践。住民を主体とする「妙高モデル」を、新たな日本の観光地の「スタンダードモデル」にする。東京都内で10月12日、入村明市長をはじめ、ともに妙高モデルの確立を目指す観光庁、日本観光振興協会、学識者が「DMO」と「医療機関」の連携を柱に、「安全・安心な観光地」のカタチを話し合った。
【司会=本紙編集長・増田 剛、構成=後藤 文昭】

 ――妙高市の状況を教えて下さい。

 入村:妙高市内の宿泊業・飲食サービス業の事業所は、市の事業所全体の25%にあたる400事業所ありますが、半数は3―5月の売上が50%以上も下落し、市は大きな打撃を受けました。

 6月に入り、新潟県が「つなぐ新潟県民宿泊キャンペーン」をスタートしたのに合わせ、県民は市が指定する施設に宿泊すると2千円分のクーポン券がもらえる「妙高おでかけ応援キャンペーン」を実施しました。 

 さらに7月22日からGo Toキャンペーンも始まり、高価格帯の宿を中心に観光客が戻り始めています。

 市の取り組みとしては、懸垂幕や市報、防災行政無線などを通し、市民と事業者向けに新しい生活様式の周知に努めています。妙高ツーリズムマネジメント(DMO)とも連携し、観光客と観光事業者向け対策も進めています。  

 宿泊客への対策で喜ばれたのが①地元の酒蔵製造の手指消毒剤の代替品②地元制服メーカー製造の抗ウイルス成分内包のマスク③包括連携協定を締結しているモンベル社製のフェイスシールド――を配布したことです。「ここまでしてもらったのは初めてです」という声もいただき、本当にうれしかったです。 

 Go Toトラベル参加事業所へは、参加基準チェックのための実地調査も徹底しています。

 一方、観光事業者に対しては、市独自の「感染防止対策補助制度」を創設しました。

 9月23日には、市内でシンポジウムを開き、感染症対策と経済の活性化の両立をはかる「妙高モデル」の確立に挑戦することを宣言しました。

 ――「妙高モデル」とは。また、確立に向けての道筋は。

 入村:DMO組織に「医療機関」が加わり、地域一体で安全・安心な観光地域づくりを実践することを柱にしています。住民を主体とする「妙高モデル」を、新たな日本の観光地の「スタンダードモデル」にすることが狙いです。

 今回の本市の取り組みの特徴は5段階の観光戦略をステップごとに配置していることです。

【全文は、本紙1813号または11月5日(水)以降、日経テレコン21でお読みいただけます。】