No.423 第15回訪日フォーラム開く、拡大成長の4市場に着目

第15回訪日フォーラム開く
拡大成長の4市場に着目

 2015年の訪日外客数は1973万7000人と過去最高を記録。2000万人突破を目前に控え、日本政府は次なる目標として3000万人突破を打ち出した。日本政府観光局(JNTO)は1月27、28日に第15回「インバウンド旅行振興フォーラム」を開き、海外15事務所の所長らが東京に集まった。15年の最大訪日市場となった中国、釜山市場の成長が著しい韓国、中期戦略に癒しの旅を掲げた香港、LCC増便によりFIT層が増加した台湾(3面)の4市場の動向を紹介する。

【松本 彩】

 
 
 
【中国】

 中国訪日市場は、2015年の訪日旅行者数が499万3800人と、14年の240万9千人から倍増以上の伸びを示している。昨年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたように、中国国内からの訪日者数は年々増加傾向にあり、中国の旧正月である春節(2月7―13日)前後の大型連休に合せた訪日がすでにピークを迎えている。昨年、訪日中国人旅行者による爆買いによって人気が高まり、グーグルの「15年に世界で最も検索された日本の地名ランキング」で2位となった銀座では、今年も「爆買い」が繰り広げられそうである。

 昨年、訪日中国人旅行者が最も訪れた時期は、7―8月の夏季休暇時期。とくに昨年は8月単月で訪日者数が59万人と、非常に多くの人が日本を訪れている。夏期休暇以外に訪日者数が多かった時期は、3―4月の花見シーズンで、日本の桜の魅力が中国人のなかで浸透してきていることが伺える。…

 

※ 詳細は本紙1619号または2月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

“多様化で世界取り込め”、急増する国際観光人口、デービッド・アトキンソン氏

デービッド・アトキンソン氏
デービッド・アトキンソン氏

 世界観光機関(UNWTO)によると、2015年の国際観光客到達数は14年から5千万人増の11億8400万人となった。「新・観光立国論」の著者、デービッド・アトキンソン氏は、急増する世界の観光市場のなかで、訪日観光客は2030年までに8200万人に到達できる潜在能力があると評価する。一方で、観光の「多様性の実現」が進まず、世界の旅行者を取り込めていないとも指摘する。1月26日、東京都内で開かれた同書の山本七平賞受賞を記念した同氏の講演の内容を紹介する。
【丁田 徹也】

 デービッド・アトキンソン氏は「日本の観光の潜在能力について分析したところ、2020年に5600万人、30年に8200万人が訪れるだけの力を秘めていることがわかった」とし、「世界の観光人口は約11億3300万人(14年)で、このうちの5%弱の市場が取れる計算だ。UNWTOは30年までに世界の観光客が18億人に増えると試算しており、現在その予測を上回るペースで増加している」と語った。

 8200万人の潜在能力は「シェアが5%弱から4・5%まで下がると仮定したうえでの分析で、極めて保守的な数字」としている。15年に訪日外国人1973万人を達成したばかりだが、「伸び代はまだ充分にあり、日本の観光で取り組めていない『多様性の実現』でさらに上のステージに進める」と強調した。

 まず取り掛かるべき多様化は「国」とした。14年の国際観光客11億3300万人のうち、最も大きな市場は欧州で、5億7500万人を占める。次いでアジアが2億6800万人、米州の1億9千万人と続く。アジア2億6800万人市場のうち、日本のシェアは4・2%の1113万人を占めるが、訪日客のうち中国・韓国・台湾の3カ国が60%以上を占めており、「多様性が実現できているとは言えない」と指摘し、これから狙うべきは最も大きな市場の欧州とした。「国際観光市場の半分が欧州でありながら、日本には欧州から108万人しか来ていないところを見ると、最大のチャンスは欧州にある。海外市場はインバウンドの半分が近隣諸国から来ているので、8200万人の訪日客のうち4千万人をアジアの近隣国から、残り半分を欧州から来てもらうとバランスが良い」と語る。

 米州については、「日本は割とフォーカスしてきたが、市場が1億9千万人と欧州に比べて小さく、南米から米国への観光など内部での移動が多いため、外部への移動が約9千万人しかない。米国はパスポート取得が先進国のなかでも少ないということも関係しているだろう」と分析する。

 「国の多様化」が実現すると、次は「目的の多様化」の段階に移る。訪日観光は現在“買い物”が象徴的だが、観光は“スポーツ”や“文化”“農業”など多くの楽しみ方があり、「東京や大阪に買い物客が集中しているが『目的の多様化』が実現されると、例えば“文化”面で京都や奈良、和歌山などに観光の可能性が広がる」と強調した。

 「ハード・ソフトとその価格の多様化も重要」と語る。「欧州の文化財は平均入場料1980円だが、日本は平均で593円。1980円に慣れている欧州の観光客を取り込むならば、価格設定を考え直すと良い。イギリス・バッキンガム宮殿は約3千―6700円と幅のある入場料を5種設定しており、料金が高くなると説明のグレードも上がりガイドも付く」というものだ。

 「『発信の多様化』も求められるようになる」という。「日本の海外PRは日本人目線のアピールが多く、文化に頼りすぎる傾向があった。よく桜をPRしているが、1週間も咲くかわからない桜を全面的に出すことで『桜が咲く期間以外は見どころが無い』というメッセージを間接的に送っている危険性もある」とした。「春夏秋冬・東西南北の魅力についても考えるべきで、食べ物についても“和食”だけでなくさまざまな日本の食があることに留意すべき。世界72億人の属性の数だけ発信すべき情報はあるのに、あまりに文化に偏っていると、文化が好きな観光客しか来なくなる」。

 最後に「日本はいい国ですよと抽象的なPRをするのではなく、国・所属・趣味・目的・滞在期間・費用を分析し、より専門的にビジネスの感覚を取り入れることでPRの効果が高く表れる」と語った。

人と会う旅 ― 日々、心に響く旅を創り出している

 ドラマチックな旅とはどのような旅だろう。

 もちろん、人によって異なることは百も承知であるが、旅を考える場合、誰もが心のどこかにドラマチックな何かを求めているはずだ。いうまでもないが、ドラマチックでない旅は、憂鬱なだけだからだ。

 ちょっと想像すれば、旅は憂鬱になることばかりだ。出発の朝は大抵いつもよりも早く起きなければならない。荷物もやたら多く、そのうえ重い。目的地までに多くの交通機関に乗り換えなければならないし、足が棒になるほど歩くこともザラだ。身体は疲れるし、出費も半端ではない。新幹線チケットや、航空券、パスポートなどの事前の準備も面倒くさい。

 家で柿ピーを食べながら安ワインを飲むよりも多くの苦難が予想されるのに、「旅に出たい」と思ってしまう。なぜか?

 理由は一つしかない。それら苦難を凌駕するほどの楽しみや価値があると信じ、期待するからだ。

 ある人は、壮麗な世界文化遺産や雄大な自然に触れることを希求したり、美術館めぐりや、演劇やコンサートなどエンターテイメントを楽しんだりする。美味しい料理や、お洒落な店でのショッピングが目的の場合もある。世界的に有名なホテルで優雅な時を過ごす自分を夢見ることもあるだろう。いずれもワクワクさせる要素が満載だ。

 しかし、不思議なのは、これら素晴らしい景色も、美味しい料理も気が合わない人と一緒では、気分は高揚しない。一方、ありふれた観光地や、何度も行ったことがある目新しさのない場所であっても、好きな人との旅行となれば、料理も美味しく感じるし、見慣れた海や山も輝いて見える。旅の成否は、どこに行くかという「場所」よりも、誰と行くかという「人」の方に、より大きく関わっていることが分かる。

 初めて訪れた街は、よほど嫌な思いをしない限り、美しい思い出として胸に描かれる。だから、そこに再訪したいと考える。けれど、そのような楽しい思い出が詰まった旅先に再び1人で訪れるとき、言い知れぬ寂しさを感じてしまう。

 街や風景はそのままなのに、自分の心が以前とは変わっている。1人での再訪の旅で味わう、少し切なくなる瞬間だ。その場所に誰か知り合いがいれば、思い出を分かち合うことができるし、新たな思い出を作ることができる。そしてそのことこそが、旅の醍醐味である。

 旅先に「会いたい人がいる」というのは、幸せなことだと思う。さらに、「人と会うこと」が旅の目的であるならば、何とドラマチックな旅であろうか。

 久しぶりに会う旧知の友人と、美味しいレストランで一緒に食事をしてお互いの近況を語り合う。ディナーまでの空いた時間に、再会するシーンを想像しながら街を観光する。また、もし友人の自宅に招かれたりすることがあれば、それは最も素晴らしい旅の瞬間である。

 観光客誘致に向けて多くの地域が工夫をしている。そのなかで「優れた観光資源がない」「まったく知名度がない」などの悩みをしばしば耳にする。しかし、その街の住民たちは日々遠方の友人と小さなドラマチックな出会いをしているかもしれない。だとしたら、知らないうちに観光名所を眺めるより、もっと心に響く旅を創り出しているのだ。

(編集長・増田 剛)

観光人材輩出に産学連携、旅行会社と学生が意見交換(跡見女子大×JATA)

意見交換会のようす
意見交換会のようす

 大学は専門を学ぶ場であり、就職が直結する場だ。観光系学部を持つ大学をみると、観光業への就職率は低い。情報不足や産業と触れ合う機会が少ないといった原因が考えられ、将来の観光人材を輩出するための産学連携が求められる。跡見学園女子大学と日本旅行業協会(JATA)は旅行業界への就職についての意見交換会を1月14日に同大学文京キャンパスで開き、学生と旅行会社が疑問をぶつけ合った。

 意見交換会に出席したのは同大学観光マネジメント学部の学生約80人とJATA関東支部に所属する旅行会社10社。はじめに旅行業界の就職状況を説明し、続いて企画や仕入れなどの業務を各担当者が詳細に解説し、仕事の魅力を語った。女性の活躍に焦点を当てた女性社員の発表では、女性目線での仕事の魅力を成功談や失敗談を交えて紹介した。

 意見交換では会場の学生から「家庭と仕事の両立は難しいのではないか」という質問が挙がり、旅行会社側は「最近は働く環境が激変し、プライベートと両立できない環境はなくなっている」と答えた。また、JATAが進める女性の活躍向上の取り組みについても紹介した。

 「旅行会社が求める人材像」については、「おもてなしのこころで接客できる方。笑顔はお客様に喜んでもらうという気持ちがあれば自然と出るものなので『社交的で人が好き』であれば良い。そのあとに知識が必要になる」と語った。

 旅行会社側は「若者の旅行離れ」を質問。代表して答えた学生は「講義の出席確認が厳しくアルバイトなどを含めると旅行に使う時間がない」「スマホの料金支払いで旅行に行くお金がない」「身近に国内外の料理を食べられるので旅行に行かなくても良い」などの理由を挙げた。

 意見交換会を企画した同大学の篠原靖准教授は「観光を志す人材を業界に多く送り出したいが、観光業への就職希望者は卒業するまでに大きく減る。業界への不安やギャップを埋めるための意志疎通ができる場になってほしい」と語った。

前年比5千万人増、国際観光11億8400万人に(UNWTO)

 世界観光機関(UNWTO、マドリード)がこのほど発表した世界観光資料によると、2015年の国際観光客到着数は前年比4・4%増(5千万人増)の11億8400万人となり、6年連続で年平均成長率を上回った。

 上位送客市場の中国は、観光支出が04年以来2ケタ成長でアウトバウンドを牽引。米国や欧州に利益をもたらしたほか、日本やタイなどのアジアエリアにも恩恵をもたらした。一方で強力な送客市場だったロシアやブラジルの支出は、両国の経済的制約などにより大きく減少した。

 エリア別にみると、アジア・太平洋エリアが5%増の2億7700万人を記録。オセアニアが7%増、東南アジアが5%増と成長を牽引した。北東アジアや南アジアも4%の増加を記録した。

 米州エリアは5%増の1億9100万人。米ドルの為替レートの上昇が米国からのアウトバウンドを刺激し、カリブ海や中央アメリカが恩恵を受け、両地域とも7%の成長を記録。北アメリカと南アメリカは4%増と平均並み。

 欧州エリアは5%増の6億900万人。北ヨーロッパが6%増、南・地中海ヨーロッパが5%増、西ヨーロッパが4%増。中央・東ヨーロッパは昨年の低迷から回復し6%増となった。中東は3%増の5400万人に達する予測。

 16年の見通しは「過去2年に比べるとやや低いレベルとなるが非常に明るい」とした。国際観光客到着数は4%増加すると推定。エリア予測では、アジア・太平洋と米州が4―5%増、次いで欧州が3・5―4・5%増と期待される。アフリカと中東については2―5%増とした。

愛知の新たな女性専用旅館

 愛知県・西浦温泉の旅館「葵」が3月3日、女性のみが宿泊できる「姫宿・花かざし」としてリニューアルオープンする。女性専用の旅館は全国的にも珍しく、安心して気兼ねなく寛げるサービスとおもてなしを提供する。

 館内には、打掛やドレス衣装などを着用できる「お姫様なりきり写真館」を新設。かぐや姫やシンデレラのような姿で自由に記念撮影を楽しむことができる。また、風水占いや折り紙教室、演奏会などの各種イベントも企画。戦国武将ゆかりの地である愛知でお姫様気分を満喫できる。

 愛知県は、名古屋城や岡崎公園などのおもてなし武将隊、徳川美術館の刀剣展示が女性の戦国ファンに好評。女子旅で武将観光ならば一日をお姫様気分でゆったりと過ごすプランはいかがだろうか。

【長谷川 貴人】

新入社員研修を実施、東京のみビジネスマナーも(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は4月中、入社3年未満の社歴の浅い会員会社社員を対象にした「新入社員基礎研修」を東京と仙台、広島、福岡で実施する。今回から、東京のみ新たに「ビジネス・接遇マナー」を追加した。申込締切は3月18日までだが、定員になり次第終了する。

 同研修は主に中小企業が対象で、それぞれの会社で旅行業法の研修が不十分なまま現場に配属せざるを得ないという意見が多いことから毎年実施している。また、一般常識やビジネス、接遇マナーの研修を希望する声も多く、今回は東京で従来からの「法令・約款」に加え、「ビジネス・接遇マナー」研修も実施する。

 受講料は「ビジネス・接遇マナー」が1万円、「法令・約款」が5千円。申し込みはHP(お申し込みはこちらをクリック)から。

宿帳をデジタル化、フロント業務を大幅減(ワコム)

予約情報を表示し、サインでチェックイン
予約情報を表示し、サインでチェックイン

 ワコムが販売する液晶ペンタブレット「DTU―1141」が、ナバック社が提供するホテル向け顧客管理システム(PMS)の「BizSiteN@FACE(ビズサイトナフェイス)」に標準搭載された。デジタル文書の記入やデジタルサインを画面上で行うのに最適な同製品の特徴が評価され、ホテル業界向けPMSとして初めて標準搭載が実現した。

 近年の訪日外国人客の増加や2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、ホテルの客室需要は全国的に高まっている。こうした状況を受け、ホテルフロント業務の効率化や顧客情報の適切な管理は喫緊の課題で、宿帳デジタル化の要望は年々増えている。

 ワコムの液晶ペンタブレットを使用したデジタル宿帳システムを導入することで「フロント業務の効率化」「チェックインの時間短縮」「顧客情報の収集・管理ツールとして活用可能」などの効果が見込まれ、今後採用企業が増えていくものと期待されている。

 ナバック社の「BizSiteN@FACE」は、宿泊客が予約の際に入力した情報を顧客情報管理システムから読み出し、液晶ペンタブレット上に表示する。宿泊客は画面上で内容確認後サインするだけでチェックインが完了する。この際、手書きで入力された宿帳データは自動的に文字認識されPMSに反映されるため、従業員が情報を入力し直す手間が省け、作業時に発生しうる転記ミスを未然に防げる。このほか、宿帳の検索時間短縮や保管コスト削減、情報収集・管理の効率化などメリットも大きい。

【導入事例】

 本システムは、北海道内のホテル・リゾート運営会社であるアンビックス傘下のニセコ昆布温泉「ホテル甘露の森」で、昨年11月1日から稼働している。導入効果として「1日3時間かかっていたPMSへの再入力時間を半分に短縮できた」「過去の宿帳情報の瞬時検索が可能になった」「サインするだけのスムーズなチェックインが実現できた」などの声が上がり、フロント業務を大幅に効率化するとともに、顧客サービスの向上も実現したと高評価を得ている。

 問い合わせ=ワコム ビジネスソリューション ビジネスユニット営業グループ 電話:03(5337)6706。

ネット活用で外国人を集客、小野秀一郎氏

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 インターネットを最大限に活用したインバウンドマーケティングの第一人者・小野秀一郎氏(インバウンドにっぽん代表取締役兼CMO)はこのほど、単行本「ネット活用でここまで変わる! 外国人観光客を呼び込む方法」(日本実業出版社、1600円+外税)を発刊した。全国の書店で販売しており、アマゾンのマーケティング・セールス部門の書籍で1位を獲得するなど、大きな話題を呼んでいる。

 訪日外国人観光客数は近年、飛躍的に増加しており、2015年は2千万人近くが日本を訪れた。とくにツアーではない個人旅行者(FIT)の割合は増加しており、全体の3分の2を占める。本書では、この層を主なターゲットとし、宿泊施設や飲食店がネットを活用して、低予算で外国人個人旅行者を集客するポイントを分かりやすく説明している。

 著者の小野氏は1974年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)に入社。その後豪州でのインターン、IT企業勤務。米国と英国でのMBA留学を経て、宿泊予約サイト運営会社の幹部を経験し、04年に現会社の前身「実践! インバウンド」を起業。温泉旅館など全国400軒に対する外国人集客サービス、観光地誘客コンサルティングを手掛けてきた。

 著者がこれまで関わってきた事例を中心に、外国人の集客に成功した地方や都市部の温泉旅館やゲストハウスなど個々の施設のほか、地域活性化につながった事例も多数紹介している。また、「海外メディアやガイドブックに紹介されるにはどうしたらいいか?」など、さまざまな質問に対して小野氏が回答するコーナーも設けている。

 問い合わせ=日本実業出版社 電話:03(3814)5161。

代金変動型導入へ、ホールセールの革新に挑戦(JTBワールドバケーションズ)

井上聡社長
井上聡社長

 JTBワールドバケーションズ(井上聡社長)は1月14日、東京都内で2016年度「ルックJTB」上期商品発表会を開き、基幹商品である黄色パンフレットを中心に個人旅行商品(添乗員同行コースは対象外)に旅行代金変動型商品を導入することなどを発表した。

 井上社長は16年度の商品造成方針に「ホールセールの革新に挑戦」を掲げ、(1)ハードからソフトへ(2)間際から先行へ(3)固定から変動へ(4)リスクテイク――の4つのキーワードを基に商品造成を進めていくと報告。1つ目のキーワード「ハードからソフトへ」では人的サービスの向上を挙げ、滞在中の相談や、観光中の休憩などに利用できる「ルックJTB専用ラウンジ」の増設、新たなサービスとして、海外空港での乗り継ぎ時の「緊急ホットダイヤル」や「ルックJTB遅延お見舞金制度」を導入するなど、サポート体制を充実させ、パッケージツアーの価値を高めていく。

 2つ目の「間際から先行へ」では、16年度の注目方面に設定した「ハワイアンアイランズ」において、これまでの早得割引90・60に加え、新たに早得割引120を設定。120日前、90日前、60日前までに予約を完了すると、旅行代金が割引となる。

 また、90日前までの予約の完了で、ハワイ島・マウイ島・カウアイ島でルックJTBおすすめの観光プランを特別価格で利用できるほか、35日前までの予約完了で、ホノルルからマウイ島など各島々へのフライト時間を、午前便・午後便・夕刻便の3つの時間帯から選ぶことができる。

 「固定から変動へ」では、経済原理に沿った旅行商品の提供として、需給環境に応じて旅行代金が変動する商品を導入。外的要因を除き、原則として早く申し込みをするほど料金が安くなるというもので、主に基幹商品である黄色パンフレットに取り入れる。早期申込みが促進されることにより、旅行代金のみならず、希望する内容で手配がしやすくなるというメリットを生みだすことが可能になる。

 「リスクテイク」では、航空機チャーターや定期便の座席の買取、海外ホテルの客室の買取を積極的に行う方針で、とくにチャーター便は、フランスのテロ以降厳しい現状が続いているヨーロッパ方面を強化していく。

 新商品の「一度は泊まってみたい世界のホテル」では、年々宿泊だけのホテルから、観光としてのホテルに意識が変わりつつある現状を踏まえ、世界中からまだあまり知られていない19のホテルをピックアップして宿泊プランを設計。リゾートらしさを楽しめる商品として売り出していく。

 15年度の取扱見込人員は、円安やフランス・パリでの同時多発テロなどの外的要因を受け、前年度比6・0%減の113万人となる見込み。16年度は、海外需要喚起につながる企画性の高い商品を提案し、同11・0%増の125万人を目指す。