人気の着地型スイーツツアー、参加者の声で企画

ミッシェルでプリンを試食
ミッシェルでプリンを試食

 群馬県観光物産国際協会が2009年から造成している着地型商品「はばたけ群馬観光博覧会」。各地域が企画したツアーの集合体をパンフレットにし、年2回発表している。旅行会社にユニットやツアー素材のみでも販売しており、認知度も上がってきた。数ある企画のなかでも人気が高いのが“スイーツ”ツアー。4月6日に実施された前橋市・玉村町を巡る「プリンツアー」に同行した。
【飯塚 小牧】

 今回の企画「キングオブプリン♪を探して ふるふるプリンツアー」は中部エリアの前橋市。ツアー参加者の「プリンを食べたい」という声から誕生した商品だという。企画者の前橋市商工観光部観光課観光振興係の細井敦副主幹は「前橋で着地型を考えたときに、市民に愛されている素材を前面に出すことが重要だと思った」と話す。何を隠そう細井副主幹は大のスイーツ好き。「地元に根付いて、がんばっているお店を紹介したかった」と熱い想いを語る。

アルバート邸
アルバート邸

 ツアーでまず訪れたのは市内のパティシエ工房ミッシェル。売りはクリーミーでまろやかさが特徴の「半熟プリン」。柔らかいプリンが好きな人にはおすすめの一品。到着時にはオーナーシェフの膽熊由行さんが出迎え、プリンの特徴などを話してくれた。膽熊さんは「通常は地元のお客さんにご利用いただいているので、ツアーのお話を聞き驚きましたが、各地の方に食べていただける機会だと思いました」と期待を込める。

 昼食会場は市内のアルバート邸レストラン オースティン。ウェディングなどを行う英国邸宅「アルバート邸」のレストラン。運営は地元でブライダル事業などを展開するスワン(萩原康充社長)。萩原社長の英国好きが高じ、ヴィクトリア女王と夫のアルバート王配殿下時代へのオマージュとして建てられたのがアルバート邸。本国の「ロイヤルアルバートホール」と同じレンガを5万枚輸入するほどの徹底ぶりで、入口には実際にロイヤルアルバートホールで使用されていた数百年前のアンティークドアが設置されている。

ベル・ヴューの本格フランス菓子
ベル・ヴューの本格フランス菓子

 続いて、市内の菓子店ベル・ヴューへ。アレンジを加えない本格フランス菓子のお店で、材料はフランスから輸入している。夏場はお菓子づくりに適さない気温のため休業してしまうほどのこだわり。ツアー時はプリンを提供する時期ではなかったが、参加者のお土産として特別に用意した。プリン以外に人気なのがシュークリーム。皇太子殿下も好まれるというシュークリームで、そのために食べやすいミニサイズを用意したという。

 最後は隣町・玉村町のたまむらとうふ。名前の通り本業は豆腐屋だが、豆乳を使用したプリンやソフトクリームなどスイーツもそろえる。豆乳プリンと聞くとあっさりしたイメージだが、意外に濃厚で重みのある味わい。味はプレーンとチョコ、抹茶の3種類。

たまむらどうふの豆乳スイーツ
たまむらどうふの豆乳スイーツ

 ツアーに参加していた女性の1人は「はばたけ群馬」への参加が約5回というリピーター。前橋在住の地元の方だったが、「地元に住んでいても知らなかったお店を巡ることができた。地元のよさを知らなければ他地域の人に紹介もできないので良い機会です」と感想を語ってくれた。

 ツアーの終盤に企画者の細井副主幹に話を聞くと「小さいお店なのでツアーの人数に対応できるか不安もあった」というが、「やり方を工夫すれば対応できることが分かった。今季は3種類の新しいツアーを企画しているが、今後も民間の方の背中を押し、地域活性化につなげていきたい」と意欲をみせた。

 なお、同ツアーは7月6日にも予定する。参加費は1人5200円。

 問い合わせ=群馬県観光物産国際協会 電話:027(243)7273。

震災前レベルに回復、3月の訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した3月の訪日外客数推計値は、前年同月比92・4%増の67万8500人。過去最高を記録した2010年に比べ、3月単月で4・4%減、1―3月累計ベースで5・1%減となり、震災前のレベルまでほぼ回復した。

 各市場の動向をみると、韓国は前年同月比69・0%増の15万600人。プロモーション強化などにより、震災前の2010年と比べて11・0%減と、1割強の減少まで回復してきた。

 中国は、桜の時期に向けたプロモーション効果などで2010年比5・7%増、2011年比108・7%増の13万300人と、3月単月で過去最高を記録した。

 台湾は、個人旅行の需要の高まりや日台間の座席供給量の拡大により、2010年比2・9%増、2011年比118・8%増の9万2100人。

 香港は訪日旅行の回復に向けたPR効果などにより、2010年比0・9%増、2011年比160・0%増の3万6700人となった。

 そのほかでは、英国が2010年比6・7%増の1万9千人、インドも2010年比5・5%増の5600人と、震災前の2010年の数値を上回った。

 4月1日に新たに観光庁長官に就任した井手憲文長官は、4月20日の会見でインバウンドについて「国別だけでなく、需要セグメントに分け、きめ細かい対応をすることが必要」とコメントしている。

 なお、出国日本人数は、2010年同月比10・4%増、2011年同月比21・4%増の172万5千人となった。これまで3月単月として過去最高の2001年を上回り、過去最高を記録、9カ月連続の増加となった。

ピンクリボン運動を、全旅連女性経営者の会

JKKのメンバー。ピンクリボンのバッジをつけて
JKKのメンバー。ピンクリボンのバッジをつけて

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、石橋利栄会長、43会員)は4月19日、全旅連本部で2012年度総会を開き、今年度は社会貢献委員会がJ.POSH(ピンクリボン運動)のオフィシャルパートナーとして、ピンクリボン運動の啓蒙に取り組んでいくことを決めた。また、高齢者・子供・身体障がい者などの弱者の受け入れ施設として勉強会を開催するほか、会員拡大を目指していく。

 石橋会長は、「JKKはまだ大きなことはできないが、少しずつ業界のために実のあることに取り組んでいきたい。今日は皆でピンクリボンのバッジをつけて参加していますが、ピンクリボン運動も実になるよう頑張っていきたい。また、地震や風評被害など何が起こるかわからないなか、危機管理をしっかりとしていこう」と語った。

旅館甲子園開催へ、消費税の外税表示を陳情

横山公大部長
横山公大部長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(横山公大部長、1484会員)は4月18日、東京都千代田区の都道府県会館で2012年度の定時総会を開き、「旅館甲子園」の開催など事業計画を決めた。

 横山部長は「昨年の震災後、青年部は存続できるのかという不安や危機感を持ってのスタートとなった。この1年東北はもとより西日本でもいろいろな影響があったなか、多くの出向者を出していただき、それぞれが全力を尽くしてくれてありがたい」と感謝を述べ、稲尾和久元プロ野球選手の話をあげ「どんな状況であっても、その場所、その土地、その環境、その条件下で最善の仕事をすることが大切」と鼓舞した。

 親会の佐藤信幸全旅連会長は「創業100年を超える旅館も多く、本来、長く続く強い業界であるはず。経営にはバランス感覚が大切で、そのバランス感覚を持っていれば、苦境で1度落ち込んでも必ず這い上がれる。青年部の皆にはそのバランス感覚を養ってほしい」と期待した。

 来賓の川内博史民主党観光振興議員連盟会長は「観光は国の成長戦略の重要な柱。その中核を担う旅館・ホテルの意義は大きい。皆さんと一緒になって、お互いの連携を密に取り、認識を共有し、さまざまな問題を一つひとつクリアしていきたい」と力を込めた。

 各委員会から2011年度事業報告や一般会計収支報告、2012年度の事業計画を報告。12年度は、13年2月の国際ホテルレストランショーでの「旅館甲子園」の開催や、観光庁や日本政府観光局(JNTO)との協力、ネットエージェントとのトラブル解決などに注力していく。

 なお、総会前には旅政連消費税外税表示推進決起大会を開催。陳情活動も行われた。

インバウンド研究会代表に本芳氏

<ぐるなび、日観振協が研究会発足>

 ぐるなび総研はこのほど、日本観光振興協会と、訪日外客誘致施策を本格的かつ実証的に研究する観光政策研究プロジェクトチーム「インバウンド研究会」を発足。代表には、初代観光庁長官で、首都大学東京教授の本保芳明氏が就任した。

 海外から多くの観光客を誘致し、日本の食文化、魅力を広めることを目的に、インバウンド戦略の意義と位置付け、ブランド戦略、プロモーション戦略、受け入れ環境対策、人材教育戦略など多岐に渡るテーマを研究する。研究結果を国や自治体、観光関連の団体や各企業に幅広く情報発信・提言し、観光産業の活性化に寄与する狙いだ。 

国内展示拡大へ、9月20―23日開催(JATA旅博2012)

 日本旅行業協会(JATA、金井耿会長)はこのほど、主催するアジア最大級の旅行イベント「JATA国際観光フォーラム・旅博2012」を9月20―23日に東京ビッグサイトで開くことを発表した。

 「新たな旅文化の創造へ」を基本テーマに、情報流通の変革、ビジネスモデルの変化、世界的な経済の低迷継続などの環境のなかで、旅博から新しい旅文化の創造メッセージを発信し、市場の創出、拡大、旅のスタイルの多様化を推進する。

 今年は国内展示をさらに充実させ、海外バイヤーを招聘してインバウンド分野へも事業拡大。海外・訪日・国内旅行の三位一体の総合的なイベントに発展させる。海外バイヤーはインバウンド主要15市場から招聘し、名称も「JATA大商談会」から「JATA国際商談会」へ改名。日本をベースにしたアウトバウンド・インバウンドの商談のみならず、第三国間の商談もできるユニークな機会を提供し、東アジア最大の大商談会を目指す。 

中国へハイレベルミッション、中部・北陸運輸局が派遣

 国土交通省北陸信越運輸局と中部運輸局、中部(東海・北陸・信州)広域観光推進協議会は5月6―10日まで、中国の個人・団体観光旅行や教育旅行、インセンティブツアーなどの誘致促進のため、富山県の石井隆一知事を団長とするハイレベルミッションを中国の北京市と広州市へ派遣することを発表した。

 北陸信越運輸局と中部運輸局、中部広域観光推進協議会では、日中国交正常化40周年の節目で辰年の12年を、中部北陸9県の観光エリアを龍に見立てて「昇龍道」と命名し、魅力的な観光資源が凝縮している中部北陸圏を強力にプロモーションしていく方針を打ち出している。今回、富山県知事を代表とし、北陸信越運輸局と中部運輸局、中部北陸9県地域の観光関係者からなるハイレベルミッションを北京市と広州市に派遣。中部北陸の魅力・特性を幅広くPRすることにより、需要の回復をはかり、中部北陸地域への来訪促進の働き掛けを行う。現地では、中国国家旅游局、広東省政府、航空会社などを訪問し、旅行会社などを対象とした観光説明会、商談会などを開催する予定。 

旅館女将ら15人が受賞、12年観光功労者大臣表彰

 国土交通省は4月16日、2012年観光関係功労者大臣表彰の受賞者を発表し、23日に国土交通省内で表彰式が行われた。受賞は、旅館関係が6人、ホテル関係が8人、観光レストラン関係が1人の計15人。

 受賞者は次の通り(敬称略)。

【旅館業・経営者】
指宿ロイヤルホテル会長・有村佳子(鹿児島県指宿市)

【旅館業・女将】
大観女将・佐藤總子(岩手県盛岡市)▽丸栄ホテル副社長女将・渡辺利子(山梨県南都留郡富士河口湖町)▽柊家大女将・西村時枝(京都府京都市左京区)▽国際観光旅館鍋屋本館女将・富田千鶴子(熊本県人吉市)

【旅館業・従事者】
霧島ホテル支配人・福冨龍一(鹿児島県霧島市)

【ホテル業・経営者】
日本ホテル協会会長兼森ビルホスピタリティコーポレーション社長・大橋寛治(京都府京都市左京区)

【ホテル従事者】
ホテルグランドパレス料飲部シェフ兼総料理長・鈴木通照(東京都府中市)▽富士屋ホテル湯本富士屋ホテル宿泊課・長尾廣幸(神奈川県小田原市)▽帝国ホテル調理部宴会調理課専門職課長・長沼和雄(千葉県習志野市)▽京王プラザホテル料飲部専門副部長・戸邉孝明(埼玉県熊谷市)▽名古屋観光ホテル総料理長・森繁夫(愛知県名古屋市港区)▽阪急阪神ホテルズ大阪新阪急ホテル調理部専任部長・塚本三十志(滋賀県湖南市)▽ロイヤルホテル常務兼リーガロイヤルホテル大阪総支配人兼リーガロイヤルホテル大阪オペレーション統括部・品質管理部担当兼オペレーション統括部長・田辺能弘(大阪府柏原市)

【観光レストラン業・経営者】
国際観光日本レストラン協会副会長兼瓢亭社長・髙橋英一(京都府京都市左京区)

“観光に成長性あり”JNTOとの役割明確に

井手憲文観光庁長官
井手憲文観光庁長官

 4月1日付で新しく観光庁長官に就任した井手憲文長官は4月20日に、就任後初となる会見を開き、(1)インバウンドなどの需要の創造と強化(2)観光産業全体の強化(3)観光庁の組織力アップなど就任の抱負を語り、「観光は成長性のある分野」と力を込めた。

 井手長官は就任の抱負として「中長期的に冷え込む日本経済のなかで、観光は成長性のある分野。坂の上の雲を目指して力を尽くしたい」と語った。

 インバウンドでは、「震災からの回復に万能薬はなく、これまで行ってきた海外メディアの招聘や海外の旅行会社への情報発信など、さまざまな手段を組み合わせて着実に行っていく」と語り、「国別だけではなく需要のセグメントに分け、きめ細かい対応が必要」と話した。また、観光客数の数値だけでなく、観光産業全体の強化について強調した。

 観光庁の組織運営については、「観光は幅広い分野なので、観光庁職員には幅広く深いノウハウと熟練のスキルが必要となる。

 観光プロモーションのイベントを実施して終わりなど、表面的なことに満足せず、職務をまっとうしたい」と力を込めた。

 また、日本政府観光局(JNTO)との役割分担について触れ、「企画をする観光庁と、海外事務所を通じての発信などの実務を行うJNTOとの役割分担をもっと明確にし、連携を深めたい」と話した。

 溝畑宏前観光庁長官については、「リーマンショックよりも落ち込みの激しい一番難しい時期に、大変な努力をしていただいた」と評価。前長官へ海事局長時代に、風評被害への対策として中国・韓国へのトップセールスや放射線量の数値発表を助言したことを明かし、「海事局でも、欧米の定期船が東京湾に入れないなどの状態になり、放射線量の数値を計測し発表するなど、対応に追われた。溝畑前長官とは、震災後の国土交通省の会議で隣に座り、励まし合いながらともにがんばった」と語った。

<東北への数次ビザ、夏までには解禁へ>

 3月末に開かれた第3回観光立国推進本部で、外務省が、沖縄を訪問する中国人観光客への数次ビザを、被災地3県へ拡大するよう関係省庁と協議を始めていると明かした件について、「外務省と話しており、夏くらいまでには、東北への数次ビザが解禁できるのではないか」と見通しを語った。

No.309 熱川プリンスホテル - スタッフ全員で「整理整頓」

熱川プリンスホテル
スタッフ全員で「整理整頓」

  品質の高いおもてなしで、お客様の強い支持を得て集客している旅館は、従業員の職場環境を整え、お客様と真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第3弾は、静岡県・熱川温泉の熱川プリンスホテルの嶋田愼一朗社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が客室を潰してパントリーに改装することによって、スタッフから「働きやすい」という声が上がったほか、バックヤードを「徹底的に整理整頓する」ことで生産性が大きく向上した事例などについて話し合った。

【増田 剛】

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(3) 
熱川プリンスホテル

【対談者】

嶋田 慎一郎(しまだ・しんいちろう)氏
熱川プリンスホテル代表取締役
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

■嶋田:もともとは農家だったのですが、伊豆急行が開通する際に、「これからは観光の時代だ」と、1959年にみかん畑を潰して旅館を建てたのです。1971年に先代の父が「ニュー熱川プリンスホテル」として新たに会社を立ち上げました。父の代は、伊豆大島近海地震や当館が1983年に火災するなど苦労が絶えませんでしたが、取引業者への支払いは必ず期日に支払ってきましたし、景気の良いときにも大型の設備投資もせずに安定した経営をしていました。そして、5年前に私が経営を引き継ぎました。

 現在の館内は、増築を繰り返し、複雑な構造になっています。2棟に分かれていて、客室は52室です。お客様を案内する際も、導線が長いなどのデメリットもあります。食事の提供では、調理部との導線にも課題がありました。バックヤードがなかったので、お客様と同じエレベーターで料理を運ばなければならず、評価が下がるようなこともありました。しかし、この数年はお客様アンケートの声などを取り入れながら、改善点を見出し、少しずつリニューアルを重ねてきています。…

 

※ 詳細は本紙1460号または5月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。