第3次観光戦略始動へ、13年に3370万人泊へ

九州観光推進機構総会

 九州観光推進機構(石原進会長)は5月25日、福岡市内のホテルで2011年度定時総会を開き、11年度事業計画として九州の魅力を磨き、国内の大都市圏や海外などから観光客を呼び込む4つの観光戦略を柱に37の事業を実施することを決定した。

 今年度は第3次九州観光戦略の初年度。戦略では3年後の13年度に九州での延べ宿泊者数を3370万人泊、入国外国人数150万人を目標に掲げる。

 石原会長は「震災の影響で3月は宿泊が2割減少、4月に国内は回復してきたが、原発の影響で海外はアジアのビッグ4がいなくなった。風評被害対策として韓国、中国などで訴えていく必要がある」と強調した。

 第3次戦略では「第2次戦略で海外は目標のほぼ100万人を達成。13年に150万人を目指す。九州への延べ宿泊客数は3298万人泊といい成績を残せた」と評価。「13年には3370万人泊にしたい」と述べ、九州アジア観光戦略特区を目指す意欲を示した。

 新年度事業では、九州の魅力を磨きブランド化する戦略が、観光人材の育成・活用として、旅館従業員や将来の観光人材の育成支援、市町村職員の受入研修。第5回九州観光ボランティアガイド大会を大分県で開催する。 外国人観光客の受入れ体制の整備はコールセンター支援スキームを検討。「なないろ九州バス」運行支援、観光客満足度調査の検討、観光特区への取り組みなどを盛り込んだ。

 国内大都市圏などからの誘客戦略では、関東、中部、近畿に加え中国地方を重点市場に位置づけ、プロモーション活動を強化し宿泊客増加をはかる。旅行会社とのタイアップを推進し、商品の拡充をはかるとともに、なないろ九州バスの商品化・販売を支援する。ロングステイ提案も行う。

 また、WEBやPR媒体など活用して「行きたくなる九州」を演出。セミナー、旅フェア、観光展などで九州の魅力を直移アピールする。

 海外からの誘客戦略では、旅行博などへの参加と各国・地域の市場特性に応じた誘客対策を展開する。クルーズ博覧会への出展も盛り込んだ。

11年春の叙勲・褒章受章者、黄綬に針谷氏、藍綬に上月氏

 政府は4月29日付発令の春の叙勲および褒章受章者を発表した。東日本大震災の影響で正式決定が延期されていた。
 本紙関連では、黄綬褒章を、滋賀県大津市の「湯元舘」監査役(大女将)の針谷愛子氏と、三重県鳥羽市の「鳥羽ビューホテル花真珠」料理長の松浦貞勝氏が受章。藍綬褒章を、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会副会長の上月敬一郎氏(大分県別府市・おにやまホテル)が受章した。

11月初旬に1便運航、長崎―上海航路 来春には定期

澤田秀雄社長
澤田秀雄社長

 長崎県佐世保市のリゾート施設・ハウステンボス(HTB)とグループ会社・HTBクルーズ、長崎県は5月30日、HTB内のホテルで記者会見を開き、長崎―上海航路の就航計画と船舶取得について発表した。

 第1ステップが11月初旬(3日予定)に、長崎県と上海市の友好交流関係樹立15周年の記念事業の一環として1往復運航する。その後に約2カ月かけて改装を行い、第2ステップとして、1月下旬の旧正月需要に合わせて、週1―2便の不定期運航。第3ステップで3月下旬から4月上旬ごろに週3便の定期運航を開始する。

 第1、2ステップまでは乗客定員を700人に押さえ、第3ステップの本格運航時に1500人に拡大する。船は長崎港と上海を約20時間で結び、運賃は最も安い料金で7―8千円を予定。豪華なクルーズ船と運搬船のフェリーの中間を占める「ローコスト・エンターテイメント・シップ」を目指し、船内に劇場やシアター、九州の観光情報と物産店など設け、楽しい船旅を演出する。

船体イメージ図
船体イメージ図

 ギリシャの船会社から約30億円で購入した船は、全長192・91メートル、幅29・42メートルで総トン数は30・412トン。車両輸送もできる貨客船だ。HTBの澤田秀雄社長は「最初は旅客のみだが、将来は貨物も検討したい」と話し、港の整備など県に要望した。

 また、「事業は最初の2―3年が苦しく、難しい時期。それを乗り越えて将来につなげたい。海の大航海時代の幕開けになり、九州・日本にとって大きな1歩になる」と強調した。

全国の女将40人が集結、品川駅でうちわを配布

全国40都道府県の女将が集結
全国40都道府県の女将が集結

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は6月7日、午後に開く全国大会に先駆け、「観光業界から復興の風を」と、全国の旅館女将総勢40人によるうちわ配布イベントを、旅(新幹線)の出発地点である品川駅で行った。

 品川駅構内に、和装にそれぞれの地元の法被を来た全国40都道府県の女将が集結。観光庁の溝畑宏長官も駆け付け、「日本の観光に風を!みんなで旅に出掛けよう!」という1万本の特製うちわを通行客に配布し、「みんなで旅に出よう」と呼びかけた。

 湯郷温泉(岡山県)の「季譜の里」の佐々木裕子女将は「全国の女将が一つになって行動するこのイベントに参加できてよかった。大変なときだけど、みんなで観光を盛り上げ、観光で少しでも日本を元気にできたら」と感想を語った。

日光市女将の会設立、初代会長に臼井さん

臼井静枝さん
臼井静枝さん

 栃木県の「日光市女将の会」が5月16日、代表者会議を経て正式に設立が決まった。初代会長には鬼怒川温泉「花の宿松や」の臼井静枝女将が就任した。

 

 日光市は地域ごとに旅館組合が存在し、女将の会もこれまで個別に活動を行ってきた。今回、臼井女将が所属する鬼怒川・川治をはじめ、日光、奥日光湯元、今市、湯西川の5団体の代表者が集まり、日光市全体の女将会を創設した。東日本大震災や原発事故の影響で日光を訪れる観光客が激減している状況を少しでも改善したいという狙いもある。

 臼井会長は「1本の矢より3本の矢の方が強い。女将の会もそれぞれ単独に活動するだけでなく、みんなで協力し、日光市全体で一つになって日光を魅力的な観光地にしていきたい」と語る。

 今後は設立総会を開き、市内のホテル・旅館からメンバーを募り、勉強会や研修旅行、宣伝・誘客活動などにも積極的に取り組んでいく考え。

 「先月は北関東自動車道経由での誘客をはかろうと長野県上田市で観光安全宣言キャンペーンを行ってきました。上田市まで車で2時間半。安心や安全を訴えながら、近くなった日光にお越し下さいとPRしてきました。今後は銀座・日本橋・新宿での観光キャラバンも計画中」とこれからの活動にも意欲をみせた。

被災者受入料金の見直しを、全国の女将が観議連に要望

意見を述べる佐勘の佐藤女将
意見を述べる佐勘の佐藤女将

 観光振興議員連盟(川内博史会長)は6月8日、第5回総会を開き、旅館3団体のトップや全国の旅館女将と意見交換を行い、女将からは被災者受入れについて国の料金の見直しや、高速道路料金割引の現状維持などを求めた。

 川内会長は「現場で働いている女将の言葉を今後の政策の糧にしていきたい。忌憚のない意見を聞かせてほしい」と述べると、宮城県の伝承千年の宿佐勘の佐藤潤女将は「現在、多くの旅館が被災者を受け入れているが、国際観光旅館連盟の指標では1日1人当たり6850円の原価が掛かっている。しかし、国が決めた5千円以内、そして消費税分の250円は宿が負担という料金設定は少し低すぎるという声が上がっている。これは厚生労働省が新潟での地震の際に決めた金額で、今後も、災害に遭われた被災者を日本のどの地域であれ、旅館が長期間受け入れることが予想されるので、金額設定の見直しをお願いしたい」と訴えた。

 

行燈旅館の石井敏子女将
行燈旅館の石井敏子女将

 東京都の行燈旅館の石井敏子女将は「インバウンドに特化してほぼ100%外国人旅行者を受け入れている宿を経営しているが、3月11日以降、旅行者がまったく来ない状況が続いている。原発事故の風評被害は、実害だと思っている。解決策を国でも考えてほしい」と窮状を述べた。

 

 北海道の登別温泉郷滝乃家の須賀紀子女将は「北海道は広く、6月20日から実施される高速道路料金の割引撤廃はきつい。最低でも現状維持を」と訴えた。

 川内会長は「高速道路料金の割引をやめることは、観光業、流通業にとっても大きな打撃。人が活発に交流することが日本経済を元気にさせる。今後、第2次補正予算案が編成されるが、観議連として現状を維持できるよう要望していく」と語った。

経営者VS後継者、本音で“事業継承”語る

経営者チームの4人
経営者チームの4人

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、石橋利栄会長)は6月7日に全国大会の分科会で、経営者とその後継者4組のパネリストを呼び、「消すな!燃やし続けろ!宿屋の火―未来につなげる宿屋のこころ―」と題するパネルディスカッションを行った。

 コーディネーターに、JKK広報委員長の永山いずみ氏(岡山県美作市、ゆのごう美春閣)、パネリストには、ホテル志戸平(岩手県・花巻南温泉郷)の久保田浩基代表とご子息の久保田龍介常務、ホテル美やま(埼玉県秩父市)の北川雅代専務取締役とご子息の北川誠八専務、旅館こうろ(京都府中京区)の北原茂樹社長とご子息の北原達馬常務、土佐御苑(高知県高知市)の横山佳代子社長とご子息の横山公大専務(全旅連青年部長)の4組が登壇。それぞれの親子が事業継承について体験談を語った。

後継者チームの4人
後継者チームの4人

 北原常務は「言葉には出さずに態度で『継いでほしい』というのを示された。いずれ旅館を継ぐのであれば、他の仕事をせずに今すぐやろうと思った」と当時を振り返った。

 小さい頃からよくホテルの手伝いをさせられたという北川専務は、「手伝いのおかげで、すぐに旅館の仕事に入っていけた」と話し、事業継承について「現場への早くからの理解」がポイントにあがった。

 経営者と後継者という親子関係について、すでに子供に旅館ならではの過ごし方を体験させ、教育をしているという横山専務は「青年部で掲げている『利他精神』同様、子供には旅館で働く父親の背中を見せていきたい」と話した。久保田代表は、「親父が酒飲みながら仕事の愚痴ばかりを言っていたら、子供が継ぎたいとは思わないのでは」と疑問を投げかけ、「旅館で働く楽しさを子供に見せていけば、自然と子供は親の仕事を継ぎたいと思ってくれるはず」と語り、会場からは共感の拍手が巻き起こった。

 ディスカッション後の質疑応答では、同じように事業継承について悩む経営者などから、たくさんの質問や相談が飛び交い盛況のうちに幕を閉じた。

 最後にJKKの石橋会長が登壇し、「同業者、仲間の前で本音を語っていただきありがたい。事業継承については、よそはどのようにしているのか実はみんな聞きたいけど、なかなか聞けないというのが本音。私もそろそろ継承について考えなくてはいけない年齢に差し掛かってきたので、今回の話はとても参考になった」と述べ、「宿の火を消さないよう、みんなでがんばっていきましょう」と呼びかけた。

福島・宮城を訪問、震災後の観光促進で協力

鶴ヶ城前で(応援ツアー一行)
鶴ヶ城前で(応援ツアー一行)

 JTB協定旅館ホテル連盟鹿児島支部と山口支部は東日本大震災で多大な被害や原発事故による風評被害を受け、観光客が激減している福島・宮城両支部を激励する応援ツアーを6月5―7日の日程で実施した。

 今回のツアーは「昨年の口蹄疫や鳥インフルエンザ、そして今年の新燃岳の噴火など同じような風評被害を体験している鹿児島支部と、歴史の関わりが深い山口支部が、同じく戊申戦争で関わりがあった会津がある東北を何とか元気づけたい」(中原国男鹿児島支部長)と計画したもの。昨年12月、両支部は姉妹盟約を結び、今回が初の合同事業。

 一行は5日に同連盟福島支部と意見交換。翌6日には鶴ヶ城での合同記者会見、福島県庁表敬訪問の後、宮城県に入り同連盟宮城県支部との意見交換会、最終日には宮城県庁表敬訪問を行った。このうち、鶴ヶ城での合同記者会見では歓迎のあいさつに立った渋谷たみお会津若松観光物産協会統括本部長が会津に伝えられている移り住んだ人が最初その排他性に泣き、生活を続けるうちにその人情の深さに泣き、そして会津の地を離れる時に離れがたさに泣く、という会津三泣きを引き合いに出し「会津は過去の歴史に泣き、今回の震災で泣き、そして今日の支援で泣いた」という例えで感謝の意を表した。

 これを受けて中原国男鹿児島支部長が「今回の震災で苦境に立たされているが、今回のような応援ツアーが全国に広がり東北復興へ繋げるようにしていきたい」と述べ、宮川力山口支部長が「厳しい環境下からの早い復興を祈念する。今後も鹿児島支部と連携して地元での福島の観光、物産振興にお手伝いしていく」と語った。最後に福島を代表した畠隆章支部長が「鹿児島、山口両支部がいち早く福島を訪れてくれたことに感謝する。この激励に応えるべき。一致団結して昔のにぎわいを取り戻すために頑張ることを誓う」と結んだ。

元気になろう観光日本!、原発事故に強い懸念

約1000人が参加した全国大会で佐藤会長が冒頭あいさつ
約1000人が参加した全国大会で佐藤会長が冒頭あいさつ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長、1万6697会員)は6月7日、東京・虎ノ門のホテルオークラ東京で「元気になろう観光日本!がんばれ東日本!」をテーマに第89回全国大会を開き、約1千人が参加した。

 佐藤会長は東日本大震災の影響について「震災後、旅館に来る電話はすべて予約キャンセル。被災地域はもちろん、全国各地で旅行、外出の自粛が起こった。外国人観光客もすべてキャンセルになり、我われの業界が最も被害を受けたといっても過言ではないと思っている」と語った。

 とくに未だに見通しのつかない、福島第一原発事故については「今後、国内外の旅行行動に大きく影響してくる。日本全国の観光地は負の遺産を背負うことになる」と強い懸念を示した。

 協会としては、組合員の積極的な協力を受け、旅館・ホテルを第2避難所として被災者受け入れの対応をしたことをあげ、金融問題については「国の緊急保証のなかに、すべての地域に対し、無担保で8千万円の貸し出し支援制度ができ、主に宿泊業を想定したと明記していただいた。全旅連で努力した成果が少しずつ出てきている」と報告した。

 さらに震災被害を含め業界を取り巻く環境が厳しくなっていることから「旅館は他業種と比べ、創業100年以上の企業が最も多く強い業種と思っているが、このままの仕組みでは、将来一層厳しくなる。先人にならい英断を以て時代の変化を受け入れ対応すべきではないか」と語った。

 式典では、東日本大震災や福島原発事故発生に伴う被害に対し、全国業界の力を結集し、初期の目標である、経営の安定化と活性化に努め、人と環境に優しい宿づくりを目指す、大会宣言を採択。この宣言の趣旨にのっとり、「被災組合会員の早期復旧に全力を期す」「安心・安全な環境を早期に取り戻し、国内外のお客様を迎える体制整備を期す」「地域と環境に優しい旅館の再生促進を期す」などを決議した。

 次期開催地は、来年6月、岡山県の予定。47都道府県のなかで最後の開催地となる。

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■「あけぼの会」が受賞

 第14回「人に優しい地域の宿づくり賞」の表彰も行われ、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長賞は静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合女性部「あけぼの会」の「ふじのくにの女将が作成した『女将の地震初動マニュアル』~安全・安心なお宿を目指して~」が受賞した。選考委員会賞は大分県旅館ホテル生活衛生同業組合の「『みえないおもてなし』寝具を中心としたハウスダスト除去事業(全国初、加熱振動吸引除去)」が受賞した。

No.282 人吉温泉女将の会「さくら会」 - 豊富なアイデア、即実行

人吉温泉女将の会「さくら会」
豊富なアイデア、即実行

 「第22回全国旅館おかみの集い」運営委員長を務める有村政代女将(清流山水花あゆの里)の地元・熊本県人吉温泉の女将の会「さくら会」(会長=富田千鶴子・鍋屋本館女将)が熱い。参加する10人の女将が、「人吉温泉をメジャーに」を最大の目標に、ユニークなイベントの企画や、「さくら会」オリジナルグッズの販売、マスコミへのPRなどに活躍している。毎日のように連絡を取り合い、「アイデアが出たら、即実行」をモットーとする「さくら会」に迫る。

【増田 剛、鈴木 克範】

「人吉温泉をメジャーに」

 5月27日に取材のため、人吉温泉を訪れたとき、「さくら会」メンバー10人のうち、会長の富田千鶴子女将(鍋屋本館)、有村政代女将(清流山水花あゆの里)、田口妙子女将(純和風旅館芳野)、松田淳子女将(町屋旅館一富士)、堀尾里美女将(人吉旅館)の5人に集まっていただいた。

人吉温泉女将の会「さくら会」の女将たち(人吉駅で)
人吉温泉女将の会「さくら会」の女将たち(人吉駅で)

 人吉温泉には桜並木もあり、華やかなイメージに添いたいとの思いから名付けた「さくら会」が結成されたのは、1994年10月のこと。九州自動車道・人吉―八代間が開通した1989(平成元)年からしばらくは、人吉が高速道路の最終地点だったために観光客でとてもにぎわった。しかし、6年後の1995年には自動車道が鹿児島まで全通するため、人吉温泉の女将たちも「通過点」になることに危機感を抱いていた。

 

※ 詳細は本紙1424号または日経テレコン21でお読みいただけます。