中央大細野教授が会長、酒蔵ツーリズム推進協発足

 日本酒と酒蔵を世界に発信し、訪日外国人旅行者の誘客につなげるため、昨年11月1日に官民連携の組織が設立した。このほど、実行性のある組織へ改革するため「日本酒蔵ツーリズム推進協議会」と改称。6月28日に東京都内で総会を開いた。会長に就任した中央大学総合政策学部の細野助博教授は「日本酒、酒蔵は地域の産業であり、酒蔵ツーリズムは地域活性化に役立つ。大いに努力したい」と述べた。

 酒蔵ツーリズム事業は、観光庁のテーマ別観光による地方誘客事業に2年連続で採択。昨年度は、国内と海外の富裕層向けの酒蔵巡りモニターツアーをそれぞれ実施した。今年度はクルーズ客船と連携したツアーや、通訳案内士への酒文化教育の推進などを計画する。

 協議会は(1)国内外への情報発信とインバウンドの地方誘客推進(2)日本産酒類の輸出増加と海外販路拡大(3)酒造業界・観光業界・自治体との連携ネットワーク構築(4)共同プロモーション・プラットフォーム開発(5)酒蔵ツーリズムを軸に地域資源を活用した魅力的な地域づくり(日本酒蔵街道)の推進――に取り組む。「とくに富裕層の来訪が地域にもたらす経済効果は大きい。幅広い方々と連携し、インバウンドも含めて、地域誘客に貢献できるよう努めていく」(細野会長)。

 なお、同協議会は10月1日に導入される、訪日外国人旅行者向け酒税の免税制度が追い風になると期待している。

 役員は次の各氏。

 【会長】細野助博(中央大学総合政策学部教授)
 【副会長】久保田穣(日本観光振興協会副理事長)▽佐浦弘一(佐浦社長)▽宮坂不二生(東北・夢の桜街道推進協議会事務局長)


総会のようす(右から2人目が細野会長)

宗像・沖ノ島、世界遺産に、すべての構成資産認定

沖津宮遙拝所

 日本で21件目の世界遺産が誕生した。ユネスコの第41回世界遺産委員会は7月9日、「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」を世界遺産一覧表へ記載することを決定。8資産すべてが登録されるかが焦点となったが、「8つの構成資産は文化的・歴史的に結びついた一体のものであり、本資産の価値を理解するためにはすべての構成資産が必要である」とされ、すべての構成資産が登録された。

 一方、ユネスコは追加勧告も出し、「保存活用協議会」の設立の検討を要請。資産の所有者代表を参画させることや沖ノ島への違法な上陸、船舶の接近の増加への考慮、締約国と関係国間で交易と航海、信仰に関する研究を継続・拡充させることなどを求めた。

 松野博一文部科学大臣は、「関係者の熱心な説明で、本資産が古代から連綿と受け継がれてきた信仰を現代まで伝える遺産であると世界遺産委員会の理解が得られた。最終的にすべての構成資産を登録できたことを心から喜んでいる」との談話を発表した。

          
 「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、宗像大社沖津宮、中津宮、辺津宮など8つの資産で構成される。沖津宮がある沖ノ島は、女人禁制や一木一草一石たりとも持ち出すことは禁ずるなどの掟が、今も厳重に守られている神聖な島。4―9世紀の間の古代祭祀の変遷を示す考古遺跡が、ほぼ手つかずの状態で現代まで残されている。8万点の出土品が国宝に指定され、「海の正倉院」とも称される。

二階氏続投、新体制へ、国内観光の活性化はかる(ANTA)

二階氏が続投

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長、5506会員)は6月29日に東京都内で第53回定時総会を開いた。任期満了に伴う役員改選で二階会長が再任。副会長は近藤幸二氏(全観トラベルネットワーク社長、岡山県)と、國谷一男氏(国谷観光社長、栃木県)が続投となり、永野末光氏(西日本トラベルサービス社長、大阪府)が新たに就任。新体制を整えて地域に寄り添い、国内観光の活性化をはかる。

 二階会長は「旅行業界は発展していくように持っていかなければならない。『ANTAここにあり』といわれるように皆さんも頑張ってほしい」と会員らを鼓舞した。

 来賓では観光庁の田村明比古長官があいさつ。政府が掲げる数値目標の達成に向け「キーワードは地方と消費だ」と述べ、「皆さんは地旅の推進など地域に根ざした活動に取り組まれてきた。まさに主役になるべきときだ」とANTAの活動に期待感を示した。

 2017年度事業計画では18年2月に「第13回国内観光活性化フォーラムin 高知」を開き、国内観光の振興に努める。旅行業法の改正内容などについては説明会を開き、今後の通達、省政令、ガイドラインの周知と情報共有をはかる。

 一方、今年は日中国交正常化45周年に当たる。近隣諸国をはじめ、アセアン諸国を中心に双方向の人的交流促進事業に取り組んでいく。このほか、地域の観光資源を活用した着地型旅行やニューツーリズム、ユニバーサルツーリズムを推進していく。

 総会では会長表彰も行われ、17年度は総計107人(社)が受賞した。総会後には懇親会が開かれ、多くの政治家や関係団体の代表らが駆けつけ盛会裡に終了した。

 なお、事務所を現在の港区虎ノ門から、同区赤坂4丁目の赤坂SHASTA・EASTビルに10月を目途に移転する。

(左から)専務理事の有野氏、副会長の近藤氏、國谷氏、永野氏

 新役員は次の各氏。

 【会長】二階俊博【副会長】近藤幸二▽國谷一男▽永野末光【専務理事】有野一馬【常任理事】浅子和世▽岩本公明▽北敏一▽駒井輝男▽髙橋幸司▽中川宜和▽花岡正雄▽藤田雅也▽山中盛世▽和田雅夫

No.466 グランディア芳泉、持続可能なビジネスモデルへ

グランディア芳泉
持続可能なビジネスモデルへ

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」。第14回は、福井県・あわら温泉の「グランディア芳泉」の山口賢司代表取締役専務が登壇。同館は、人を増やさずに週休2日制を導入するなど大きな改革を断行中だ。内藤氏との対談では、持続可能な宿のビジネスモデルなどについても探り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(14)〉
グランディア芳泉

山口:もともと祖父が民宿のような小さな宿を営んでいましたが、1963(昭和38)年に先代の父・山口輝望(現会長)が80人収容の芳泉荘を開業しました。

 父は「これからはモータリゼーションの時代だ。限られた狭い土地で旅館を経営していても新しい時代には対応できない。駐車場も必要で、規模も大きくしなければならない」と、72年に温泉街を離れ、ニュー芳泉荘と館名を変えて、収容250人の新たな宿を現在のグランディア芳泉がある場所に移転しました。

 当時は田んぼの真ん中で、周辺には何もない場所でした。仲間からも「早まるな、温泉街から離れることは宿としては致命的だ」とも言われたようです。

内藤:オイルショックの最中ですが、高度経済成長期のあとで土地の値段が下がった時期でもあり、その後のバブル前夜という、とてもいいタイミングですね。

山口:他の旅館と同じように、当館も「大規模・高品質」を目指して大きな増改築工事を続けていきました。1回目は79年に貴粋殿(きすいでん)を、2回目は85年に寛粋殿(かんすいでん)を、そして93年には鉄筋12階建ての煌粋殿(こうすいでん)をオープンしました。

 3つの館ができ、大規模旅館となりましたが、次第に「個人客化への流れを考慮すると、団体旅館のままでは企業の継続は難しい」と考え始めました。団体旅行に頼らずに、個人のお客様も受け入れていくには「質の高いおもてなしが必要だ」と考え、ハード面の投資も団体客から個人客を意識したものへとシフトしていきました。

 幸い約7千坪の敷地の中に、庭が約2千坪あったので、露天風呂付きの客室も造りやすい環境にありました。 

 最初は2001年に貴粋殿の1階の客室13室を庭園露天風呂付き客室に改修し、離れ「ゆとろぎ亭」としました。お庭が綺麗に見える露天風呂付きの客室は、当時は極めて珍しかったため、人気を集めました。料亭も当時、一世風靡した炭火焼会席スタイルのものを新設しました。これが今の料理茶屋「遊膳」です。改修前は1万円程度の宿泊料金で部屋食を提供していましたが、露天風呂を付けて、個室料亭で炭火焼会席料理を提供することによって、2万5千円まで上がりました。

 同じように、03年に寛粋殿の庭に面した1階の6部屋を、別邸「個止吹気亭(ことぶきてい)」として露天風呂付き客室にリニューアルしました。こちらも1人当たりの客室単価が2万円程度から4万円を超えるようになりました。1階は畳敷きの2間で、「オーセンティックなガーデンスイート」という特徴付けをしました。2階はターゲットを変え、和洋室タイプの「コンフォートスイート」として04年にオープンし、こちらも収益が上がりました。

 一方、本館の7割は団体客が占め、料理は部屋出しをしていました。個室料亭「季の蔵」を造ることで部分的ですが、一般客室のお客様にも「泊食分離」を進めることができました。多様化するニーズにも応えられ、オペレーションの負担低減化にも努めました。

内藤:常に一歩先んじていますよね。

 駅前旅館からモータリゼーションを見越して、広い駐車場を備えた大型団体旅館として大型バスを受け入れられた。その後、個人客化へとシフトされています。多くの旅館が現在も個人化へのシフトに取り組むなか、すでに15年ほど前に取り組まれています。

山口:時代の流れにいち早く対応するというのが、当社の企業文化です。

 1985年に、1階から5階まで直通のエレベーターを設置しました。そして「これからの旅館はただ県外のお客様が旅先で泊まる場所ではなく、地元の方々が宿泊以外にも楽しめるイベントや、大規模な会議が可能なコンベンションホールも必要」と考え、600人収容の大ホールも造りました。

 今の場所に移ったときも、男性風呂を広くするのが旅館の常識でしたが、男女とも同じ大きさのお風呂を造りました。当時ではとても斬新なことでした。…

 

※ 詳細は本紙1677号または7月18日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

「全国女将サミット2017新潟」開催 ― 共感し、思い出を共有できる場に

 島根県や九州北部など全国各地で豪雨による水害が発生している。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

 大きな被害を受けた地域の1つ、福岡県朝倉市では、原鶴温泉旅館協同組合に加盟する旅館・ホテルが、ライフラインが途絶えた地元被災者に温泉を無料開放している。その動きも迅速だった。地域に不測の事態が生じたときに、地元の旅館・ホテルが頼れる存在として認知されるのはうれしい。逆に、観光業界が厳しい状況になったときに真っ先に助けてくれるのは、地元のお客である。地域で助け合う姿勢には、胸を打たれる。

 7月5日には、新潟県新潟市で「第28回全国女将サミット2017新潟」(野澤邦子運営委員長)が開催された(次号詳細)。新潟県内でも大雨が降り、当日参加できない女将がたくさんいるのではないか、信濃川のウォーターシャトル乗船観光が川の水位上昇で欠航になるのではないか。また、翌日の佐渡島へのエクスカーションも予定通り行えるかという不安もあったが、当日には雨が上がり、無事にすべてのプログラムが実施された。

 女将サミットでは、基調講演が行われたあと、いくつかのテーマに沿った分科会を開くのが常であったが、今回は参加女将が全員、会場のホテル日航新潟を出て、目の前に広がる信濃川クルーズを楽しむという趣向だった。目的地の新潟ふるさと村でにいがた総おどりを観たり、地元の新鮮な食や自慢のお酒など、女将たちはたくさんのお土産を買ったりして、新潟でのひとときを満喫していた。

 大雨の影響は残り、日本を代表する信濃川の河口付近でも、水嵩がいつも以上に増し、濁流で大きな木の枝なども土色の水面に浮かんでいた。

 それでも厚い鉛色の雲が少しずつ薄くなり、夕方近くには夏らしい青空が広がった。女将たちもデッキに出て、身を乗り出して川風を浴びたり、遊びに来たカモメの写真を撮ったり、日々の多忙な業務を離れ、自然豊かな新潟での1日を楽しんでいたのが印象的だった。

 そのような船上のリラックスした女将たちの姿を見ながら、大勢での旅もすごく楽しいのだと、改めて感じた。

 日本でも団体旅行が全盛の時代から、旅のスタイルがどんどん個人化に向かっている。気の合った数人のグループや、家族といった小単位の旅行、さらには夫婦やカップル、そして1人旅も増えている。

 旅の目的が細分化していくなかで、他人との団体行動よりも、自分の好きなように動ける「自由な旅をしたい」という欲求が強くなるのは当然かもしれない。しかし、旅の大きな醍醐味の1つに、感動と思い出の共有がある。1人旅は楽しいが、どうしても独り言が多くなる。「何だよ、これ」と愚痴を言うのも1人。「すごくキレイな景色だな……誰かに見せたいな」と小さく呟くのも1人。尾崎放哉ではないが、「咳をしても一人」といった気分になる。

 全国の女将が集まり、同じ船に乗って短い旅をするというのも、きっといい思い出になるはずだ。地域や、宿の規模は違っても、日々同じ境遇で自分自身と戦っている者同士。お互いを労わり合い、励まし合う姿が今回も見られた。全国の女将が共感し、思い出を共有できる場が今後も続けられるといいなと思った。

(編集長・増田 剛)

研修受講は5年に1度、WGを併設し早期施行へ(通訳案内士検討会)

 観光庁は6月30日に「新たな通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を開いた。全国通訳案内士の研修は省令で年1回以上行い、5年に1度は必ず受講させる方向性を固めた。研修は無資格者と地域通訳案内士も受講できるようにする。今後は検討会WG(作業部会)も併設し、政省令などの枠組みを構築し早期施行を目指す。

 新通訳案内士法で全国通訳案内士の研修期間は3―5年とされているが、事務局は5年に1度の期間を提示。観光地域振興部観光資源課長の倉持京治氏は「負担を軽減するため」と説明した。研修は対面での実施を基本とするが、海外にいるガイドなどにはeラーニングを用いることも検討していく。

 新法では5年の研修受講期間を過ぎれば、登録が取り消される。ただそもそもの法改正にはガイドの量的な不足が一因にある。改正後は欠格しても業務は可能で、圧迫する規定は資格者の減少につながる要因になりかねない。同庁は「登録を復活させることもあり得るかもしれない」と制度に幅を持たせる可能性も示唆した。

 登録研修機関の制度設計は既存の旅行業法事例に倣う。登録手続きや、登録事項、業務基準のほか、申請書類なども、旅程管理研修を実施する登録機関の規定に合わせ、省令で定めていく。

 研修で使用する教材など基準については、今後作業部会を通じて検討。同庁が告示した基準を満たした教材を提出してもらう方向で進めていく。
 登録研修機関の更新期間は政令で3年とする。「我われでしっかりと監督していく」。同庁は登録研修機関の業務が適正か更新の審査にも注力していく構えだ。

 一方で「通訳案内士情報検索システム」を現在構築している。各都道府県に情報をあげてもらい、オンラインで研修状況を把握できる仕組み。有資格者への研修通知などは各都道府県に一任すると負担が多い。今後同システムを活用する考えも示し「施行までに詳細を詰めていく」とした。

 なお、観光振興部長の加藤庸之氏は同庁の体制強化について報告。「現在は約150人体制だが、7月1日で一気に100人増える。今後は250人体制で、スピード感を持っていく」と述べた。

ガイドと旅行者つなぐ、マッチングサイトを開設(HIS)

トラヴィガイドが案内

 エイチ・アイ・エス(HIS)が訪日外国人旅行者と地域の地元ガイドをつなぐサービスを始める。6月29日にCtoCのマッチングサイト「Travee(トラヴィ)」を開設。地元ガイドの募集を始めた。「通訳案内士法及び旅行業法の一部改正法」成立を受け、施行前に受け皿を作った。深刻化する地方ガイド不足の解決に向け、新たな人の流れを生み出す。

 地元ガイドは「トラヴィガイド」として登録する。旅行者は目的に合うプランをサイト上から選び、ガイドと相互で合意したあとにマッチングが完了。旅行者は地域の文化や地理に明るいガイドに案内してもらえ、ガイドは空いた時間に副収入を得ることができる。

 サイトの特徴は「相手の素性が分かったうえでマッチングを行う独自の仕組み」(同社)。旅行者とガイド共に、プロフィールやレビューが公開され、相互に選択する権利がある。

 レビューが高いガイドに人が集まる傾向が強い。改正後にガイドの質の低下が懸念されるなか、評価が公開されることで「(ガイド)自らクオリティを保つ」(同)としている。

 さらにHIS公認の「トラヴィガイド」を認定する取り組みも進める。このほか面接や講習会などを行い、ガイドの質の担保をはかる。

 一方で今後は地方自治体と連携。地域通訳案内士を増やす取り組みや、地域独自の文化を体験できるプラン造成にも力を入れる。情報発信は39カ国で展開する旅行者向けサイト「hisgo」をはじめ、訪日外国人旅行者向けWebメディアと推進していく。

 これまで有償で行うガイドは、国家資格者のみだったが、改正後は誰でも行える。観光庁によると資格取得者は全国で1万9千人ほどいるが、4分の3が大都市部に偏っている状況だ。訪日外国人旅行者が地方へ流れているなか、地域のガイド創出が急務となる。

東京でめぐる越後の祭り

 東京・新橋の虎ノ門エリアにある複合施設「旅する新虎マーケット」は、7月5日―10月1日までの期間、2017年夏の章「夏疾風の物語 ローカル線でめぐる越後の祭り」を実施している。新潟の祭や食、ワークショップなどを通じて祭文化とものづくりの魅力を国内外に発信する。

 風土を生かした「祭り」をテーマに、越後のローカル線で巡ることができる新潟県の村上市、燕市、三条市、長岡市、十日町市の5市が出展。4棟の常設スタンドでは、各地域が誇るご当地グルメや日本酒などを堪能できるほか、テーマストアで各地域の工芸品や物産品を販売し、テーマカフェではテーマ連動の特別メニューも展開する。

 旅行先として魅力たっぷりの新潟。この機会にまだ知らない魅力にめぐりあえるかもしれない。

【長谷川 貴人】

民泊事業で提携へ、販売はホームアウェイ(楽天ライフルステイ)

握手する木村氏(左)と太田氏

 楽天 LIFULL STAY(楽天ライフルステイ、太田宗克社長)とホームアウェイ(木村奈津子日本支社長)は7月3日、民泊事業での業務提携を発表した。目的は、インバウンドの需要把握と来訪促進。住宅宿泊事業法施行に合わせ、楽天ライフルステイの国内民泊物件を、ホームアウェイのWebサイト上で販売する。地域への誘客を実現することも狙いの1つで、空き家の一棟貸しによる新しいリゾートコンテンツの創出も視野に入れる。

 ホームアウェイは、家主不在型の民泊物件仲介で強みを持ち、全世界で月間4千万人のサイト訪問者数を誇る。提携を通じ、物件選定や商品企画に役立つマーケティングデータを供給することとなる。「現在、国内物件数は1万弱、2020年までには10万件を目指す」と語るホームアウェイの木村奈津子日本支社長。家主不在型で一棟貸しという事業展開は、空き家活用を狙う楽天ライフルステイとの親和性が非常に高い。

 楽天ライフルステイの太田社長は、「物件のリノベーションや運用代行などは我われが担うことになる。新会社では、楽天トラベル(髙野芳行事業長)で培ってきた営業ノウハウを横展開していきたい」と述べ、民泊の仲介業でも、各地域に民泊コンサルタント人材を配備するなどして、民泊に関わる事業を統括できる仕組みをつくる構え。楽天市場や楽天トラベルに匹敵する規模まで、民泊仲介業をグループ内で育てていく。

 ホームアウェイの木村日本支社長は、「同じ旅行者であっても、どこに、だれと訪れるのかによって求める宿泊のサービスは違う」と、宿泊形態の多様化が、インバウンドの増加に結びつくと語った。

 なお現在、楽天ライフルステイは、親会社の1つLIFULL(ライフル、井上高志社長)が進める「LIFULL HOME’S空き家バンク」事業と連携し、各自治体が運営する空き家情報を集約している最中。データベースとして2017年夏に、サービスを開始する予定。

経費の3分の1補助、宿泊施設の外客対応支援(観光庁)

 観光庁はこのほど「宿泊施設インバウンド対応支援事業」の公募を始めた。今回は4回目でWi―Fi整備などに対する経費を3分の1(上限100万円)補助する。2015年度から始めて累計328の計画が認定されている。宿泊施設の受入環境を整備して、訪日客の訪問・滞在時の利便性向上をはかる。申請は7月31日まで。

 申請時には宿泊事業者が5者以上で組成する協議会などの設立が必要。協議会は現状分析を踏まえた取り組みや、訪客宿泊者数などの目標を計画する「訪日外国人宿泊受入体制拡充計画」を策定し申請を行う。最終的に国土交通省大臣が認定し、補助金の交付を決定する。

 補助対象事業は(1)Wi―Fi整備(2)トイレの洋式化(3)自社サイトの多言語化(4)クレジットカード決済端末整備(5)ムスリム受入マニュアルの作成――など。今回は客室部分の整備は対象外で、館内共有部分のみとなる。

 認定・公表は8月を目途に実施予定。

 詳細は観光庁ホームページか、同事業の事務局(電話:03―5253―8329)まで。