修学旅行と「シネマ・アクティブ・ラーニング」を融合、修学旅行先で映画制作をする教育プログラム実施

2017年10月20日(金)配信

生徒たちが感じたことを、映画の物語に落とし込む

広島城北中学校(岩本光彦社長、広島市東区)とJTB中国四国、コスモボックスは、修学旅行を「シネマ・アクティブ・ラーニング」と融合させた、修学旅行先での映画撮影から作品を完成させるまでの体験を組み込んだ教育プログラムを実施する。実施するのは、同中学3年生の182人。

 同プログラムでは、子供たちの映像リテラシーの習得だけではなく、コミュニケーション力の向上や、地域資産・伝統文化への理解を深めること目的としている。修学旅行のなかで生徒がタブレット端末で映画を作り、文集の変わりに記録に残し、発表する。修学旅行を中心に、「たびまえ」・「たびなか」・「たびあと」の3つの段階に分けて進めていく。

たびまえ

 映画を作る工程を「鑑賞理解」「物語発見」「演技表現」「制作実現」と4つの区分に分割。テーマに分けて、アクティブ・ラーニング形式のワークを行う。

 「鑑賞理解」では、映画の歴史・起源や実写作品とアニメーション作品の違いなどをお題に出しながら、さまざまな映像を観て、対話形式で質疑応答やプレゼンテーションを行っていく。

 「物語発見」では、ハリウッドの脚本の理論から、話題になった有名作品を扱い、それらに見られるヒットする法則を理論的に分析する。それを踏まえて、グループワークを交えながら、映画の物語を自分たちで生み出す作業を行っていく。

 「演技表現」では、身体表現を用いながら、言語・非言語コミュニケーションのワークをゲーム感覚で体感。他者との信頼関係の構築を、体感を通じて習得する。日本人が不得意としている表現力や交渉力の向上を目的としている。

 「制作実現」では、今まで習ってきたことをすべて用いながら、タブレット端末を使ってショートフィルムを制作。実写作品・クレイアニメ・プログラミングなど、さまざまな手法を使いながら映画制作の楽しさを体験してもらうと共に、制作手法によって相手に与える印象が異なることを、実践を交えながら経験する。

たびなか

 修学旅行先を舞台に、地元の人々のサポートを受けながら、撮影を行なっていく。1日目は地元の漁業や農業などの体験学習を行い、それを踏まえて地元の人々との交流を通じた3分の短編映画制作に臨む。

 訪問先を舞台に、生徒たちの自由な発想を土台として、各チームの物語をタブレット端末を使って映像化。旅先という非日常のなかで、生徒たちの好奇心がより刺激されることが期待されている。 

たびあと

 訪問先で撮影した素材を、細かく編集、音付けなどを行う。並行して、作品のイメージを具現化させたポスター制作にも挑戦する。

 制作された映画作品およびポスターをプレゼン大会の形式で発表してもらうことで、その地域の持つ魅力や未来に向けてのメッセージを他者に発表する力を養う。

取り組みの背景

 コスモボックス社長で映画監督の古新舜氏は、大手予備校講師時代から、アクティブ・ラーニング型授業を実践し、学生は元より社会人に対しても、のべ2万人以上にアクティブ・ラーニングを約10年間提供し続けてきた。

 その過程で、個人が持つ潜在的な能力、人間性を「映画制作」を通じて引き出すことを目的とし、「映画制作×教育」として「シネマ・アクティブ・ラーニング」を全国で提供している。

 今回の取り組みは、この「シネマ・アクティブ・ラーニング」に着眼をした広島城北の中川教頭の発案をきっかけに、JTB中国四国広島支店とコスモボックスが協働し、修学旅行を「シネマ・アクティブ・ラーニング」と融合させた企画として開発したもの。

 修学旅行を観光旅行で終わらせず、子供たちにより多くの学びを持ち帰ってもらいたいというニーズが高まるなかで、タブレット端末やICTの普及により、子供たちが手軽にデジタル機器を扱うことができるようになった環境を効果的に活用したプログラムになっている。

「トラベルスクエア」大学連携型CCRC

2017年10月22日(日) 配信

膨大な蔵書の活用の道を考える

 書物に関する研究、エッセイなどで著名な紀田順一郎さんは、大学時代のサークルの大先輩で、もちろん、本の収集家としても著名なお方。

 それで、愛書家だったら必ず遭遇するのが「最後、それをどうする」の深刻な問題だ。紀田さんも80歳を超え、大胆な処分に踏み切った。その決意のプロセスを語ったのが「蔵書一代―なぜ、蔵書は増え、そして散逸するのか」という(僕には)戦慄的な本が出た。

 まとめてしまえば、蔵書は「蔵」している人の個性があるから意味があるので、その個性がなくなれば、ただのゴミに近いものになってしまう。

 悲しい話だが、それが現実。だから、できればその蔵書を何らかの形で引き受けて、社会の「共有財産」として保存してくれる村とか町はないものかと夢想する。

 話はちょっと変わるけれど、今年、経営者が読むべき1冊はジャーナリスト出身の人口論が得意な河合雅司さんが著した「未来の年表」(講談社現代新書)だと断言できる。人口予測と未来像を語る本は数多あるけれど、この本ほど妥協なく辛く予測しているものはない。なにしろ、具体的に2027年には輸血用血液が不足する、とか2039年には火葬場が徹底的に不足し、焼き場渋滞が起きるといった描き方だ。人口が縮んでいくのは必然で、それに対処するにはムード的な文言ではなく、十数年かけて居心地のいい「小さな国」に向けての基盤整備に入ろう、というのが著者の主張だ。

 その処方箋はこの本の第2部に10のアイデアにまとめられている。24時間社会からの脱却とか都道府県の飛び地合併を考える、あるいは第3子以降は文句なしに国が1千万円給付する、といった提案が並ぶ中に、中高年の地方移住推進の一環としての大学連携型CCRCというのがある。CCRCとはコンテニュイング・ケア・リタイアメント・センターの略称で、例えば「病」のような共通項を持つ中高年者が共同して快適に暮らせるような医療や介護の充実したコミュニティを作ったりする考えだ。

 そこで退職大学教員が持つ膨大な蔵書を引き受けてくれる家屋を町が用意し、そこにリタイアした研究者に住んでもらう(時々滞在でもよい)のはどうだろう?

 大学関係者だけでなく、一般の特定の分野に強い蔵書家も加えれば、かなり応募者が出るのではないか。そういう特徴ある蔵書群は若い研究者も惹きつけるだろう。

 それができれば、僕は約3万5千冊を持参して引っ越すよ。現実に、研究室に貯められた本の大半はゴミ化して終わりと思う。「知」の消耗品化、痛ましいでしょ。このアイデア、どこかの自治体で真剣に検討してほしいな。

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(153)」UNWTO賞と産業観光の意義(全国産業観光推進協議会)

2017年10月22日(日) 配信

世界初のアーチ型鋳鉄橋「アイアンブリッジ」(世界遺産)

 近代社会は、別名、工業化社会とも呼ばれてきた。従来のモノづくりが飛躍的に大型化・高速化され、先進工業国を中心に世界中に工業製品が溢れた。

 翻って、観光の語源は国の「光」を観ることといわれる(「易経」)。それぞれの国・地域の誇り・威光が観光の対象になるという意味である。だとすれば、工業(産業)は近代社会の「光」(観光対象)ということになる。実際、世界で最も早く産業革命を迎えたイギリスでは、高炉による鉄とガラスなどの先端素材が観光の対象となった。すでに18世紀初頭1706年には、コークスを用いた世界初の近代高炉が完成したが、その鉄でつくった鋳鉄製アーチ橋・アイアンブリッジは、ユネスコ世界遺産のシンボルともなった。

 イギリスが1851年に開催したロンドン万博では、鉄とガラスのパビリオン「クリスタル・パレス」という先端工業の粋を集めた建物が、世界中に喧伝された。その約150年後、愛知県名古屋市で開催された「愛・地球博」(2005年)は、日本における産業観光発展の大きな引き金となった。世界中の人々が集まる愛知県には、名古屋城など一部の資源以外に見るべき観光資源がないと言われてきた。しかし、自動車工業をはじめ、我が国の工業生産をリードしてきたこの地域には、実に多様な工場と世界的水準の産業ミュージアムが多数存在していた。愛・地球博開催の準備と並行して、1990年代以降、これらの資源をテーマ別にネットワーク化することで、中部地域の産業観光がスタートした。以来、食品、飲料など身近な消費財工場やミュージアムなどには、大勢の観光客が大型バスで訪れるようになった。

 こうしたなかで、工場・工房の中には、単に工場を見せるというより、ご覧いただくための工場として投資し収益を得る「ファクトリー・バーク」なども新たな形態も出現した。また、フランスなど欧州諸国が先行したように、我が国でも、先端産業の貿易振興やビジネス客の来訪など海外客の受入体制が整備されつつある。いわゆるMICE戦略である。オリンピックを直前に控えた現在、多くの企業が海外マーケット戦略の一環として産業観光に注目している。さらには、シルクやコットンのように一旦は衰退した地場産業を産業観光によって再生しようという新たな動きも現れている。

全国産業観光推進協議会
須田寛副会長(写真中央)

 こうした活動が評価され、今年の世界観光機構(UNWTO)部門賞に、全国の産業観光のプラットフォームともいうべき「全国産業観光推進協議会」が選ばれた。

 産業観光は観光の一形態ではあるが、我が国の先端技術や産業資源を海外にアピールし、新たな産業を創出し、世界のビジネス客を引き付ける広い役割と意義を持っている。「産業が観光になる」時代、産業観光は、次の新たな観光戦略の一つとしてさらに注目されよう。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

〈観光最前線〉忘れられない音のはなし

2017年10月21日(土) 配信

民宿「いわさき」さんで心温まる一夜を過ごした

 口承で語り継がれてきたアイヌ語を、初めて音として意識したのは2年ほど前。「60のゆりかご」という子守歌をWebで聴いたときだ。聞き慣れない音の繰り返しに、普段使わない感覚が起こされるように思えた。「癒しと畏(おそ)れの同居」。後にぼんやり考えると、そんな言葉が浮かんできた。

 先日、福島県喜多方市の農家民宿に泊まった。囲炉裏を囲み飲み交わす地酒や、心づくしの料理も忘れがたいが、抑揚が独特の会津弁が一番の思い出になった。言葉遊びではないが、こちらは「やさしい声でもつれを解いてもらう」感じ。

 地域の魅力を伝える手だてとして「画像」が注目されている。そんなときだからこそ「音」を題材にした企画や広報もおもしろいのでは。

【鈴木 克範】

No.475 47都道府県の観光関連予算を調査 宿泊者数・消費額とのバランス探る

2017年10月24日(火) 配信

【お詫びと訂正】

1689号(2017年10月21日付号)1面特集掲載の表「17年度一般会計予算(総額に対する予算の割合)」の一部に間違いがありました。以下URLに正しい表を掲載いたしました。

本紙1690号(11月1日付発行号)にも掲載いたします。

 

 旅行新聞新社はこのほど、47都道府県の「2017年度観光関連予算」(「予算」)と「17年度一般会計予算総額に対する予算の割合」(「予算の割合」)を独自に調査した。観光予算と消費額・宿泊者数の関連はどのようになっているのか?費用対効果の一例を示すために、16年(1―12月)の宿泊旅行統計調査より、日帰り旅行を除いた国内旅行消費額(「消費額」)と延べ宿泊者数(「宿泊者数」)をピックアップし、比較した。なお、「予算」と「予算の割合」をもとにした順位づけは行っていない。

【編集部】

17年度観光予算合計は852憶円 一般会計における平均比率0.204%

 本紙の調べによると、2017年度、各都道府県の観光関連予算合計は851億6417万円。前年度と比較して約20%の200億円ほど減少した。各都道府県の平均は18億1200万円で、こちらも前年の22億4919万円を2割下回った。今回、16年の宿泊旅行統計調査(※1・2)における、国内旅行消費額(「消費額」)と延べ宿泊者数(「宿泊者数」)もピックアップ。各地域の「予算」、一般会計に対する予算の割合(「予算の割合」)と比較することで、観光関係にかけた費用と、観光の収益のバランスを視覚化した。「各地域はどれだけ観光に予算をかけ、どのくらい観光で収益を得ているのか」参考としてほしい。なお観光関連予算は、各都道府県の観光課に直接ヒアリングした、本紙独自の調査によるもので、国内旅行消費額は日帰り旅行を除いた数値である。…

※ 詳細は本紙1689号または10月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

温泉旅館で過ごす最適の季節 「フルーツの宿」の出現を待ち望む

2017年10月21日(土) 配信

秋のフルーツを楽しめる宿は贅沢だ

 旅をするには、いい季節になった。とりわけ、日本の温泉旅館でゆったりと過ごすには最適の季節だ。旅先で美味しいものが食べられる楽しみもある。

 先日、東北の山間の温泉旅館に泊まった。街を抜け、山に入ると、色づき始めた紅葉が太陽の淡い光を遮る。大きく深呼吸をすると、少し冷たい秋の匂いを含んだ空気が肺の中に流れ込んだ。都市生活者にとっては、日常生活からの解放感を味わえる瞬間だ。湿った落ち葉を踏むと、微かな靴底の音が静かな空間をより一層際立たせる。鳥の声を聞きながら、微かな白い湯気が立ち昇る温泉に浸かると、全身が温かく包まれる。入浴後、よく冷えたビールを飲み、美味しい地元の魚介や山菜料理、採れ立てのフルーツなどをいただき、ふんわりとした清潔な布団に大の字に寝転がると、そのまま深い眠りの世界に入っていった。これらを一度に体験できる温泉旅館が日本各地に存在していることに、感謝したくなる季節でもある。

 取材で訪れ、「もう一度泊まりたい」と思う宿がある。それら宿に共通する点が1つある。それは、滞在中、テレビを一度もつけない宿である。

 繁華街のビジネスホテルに宿泊するときには、反射的にリモコンを手に取り、ほぼ100%テレビをつける。いつもと変わりないバラエティー番組が画面に映し出され、テレビから大きな笑い声が響いてくる。チャンネルを変えても似たような番組が続く。シャワーを浴び、テレビの前で缶チューハイのフタを開け、いつの間にか自分の笑い声がシングルルームに響いている。心地よいが、他のホテルでも同じことはできる。

 リゾートホテルでも経験上だが、ビジネスホテルに比べてテレビをつけることが少ないような気がする。滞在中、なんとなくテレビをつけないで過ごしてしまう宿には、目に映る景色、聞こえる音、森林や潮の香り、快適な室温、温泉、美味しい料理などが、五感にバランスよく心地よさを与えてくれているのだろう。人が作る料理も周囲の環境とマッチしたものでなければ調和は崩れてしまう。

 海外のリゾートホテルなどでは、客室にフルーツの盛り合わせを持ってきてくれるところがある。窓の外の青い海を眺めながら、食べきれないくらいのフルーツを摘みながら、くつろぎの時間を過ごすのは贅沢な気分になれる。タグ付きのカニやエビ、A5ランクのブランド牛を提供する宿は全国に数多ある。しかし、親しみやすい価格で食べきれないほどの地元のフルーツを提供してくれる宿を見つけるのは難しい。

 秋は、果物狩りの季節でもある。ブドウや梨などを観光農園で楽しむ旅行者も多いだろう。だが、果物は短時間にそれほど多く食べられるものではない。でも手近にあればいつでも食べられる。宿に到着して疲れた体を潤す桃やブドウ、梨などの果実があればうれしい。湯上りの喉の渇きを満たし、ワインなどのお酒にも合う。夜中に目が覚めてしまったときに手を伸ばし、甘いブドウを口に含むと再び心地よい眠りに入れる。目覚めにはグレープフルーツなどが爽やかな気分にさせる。客室や、ラウンジなどで好きなときに味わえる空間があれば旅人は虜になるはずである。この秋にも果物が存分に食べられる「フルーツホテル」が現れないかな。

(編集長・増田 剛)

広域連携進め誘客を 豪雨を受け報告会開く 由布院温泉観光協会

2017年10月21日(土) 配信

由布院温泉の今後について考えを共有した
桑野和泉会長

 大分県由布市の由布院温泉観光協会(桑野和泉会長)は9月28日、大阪市内のホテルで旅行会社や報道関係者を招き、7月の九州北部豪雨で観光客数が落ち込むなか、現状と今後の展開などを説明する「おんせん県おおいた由布院温泉の今、そしてこれから」と題した報告会を実施した。

 冒頭、由布市まちづくり観光局の生野敬嗣氏が、九州北部豪雨の影響で県全体の宿泊客数が8月以降、1―2割減で推移していると説明。豪雨で橋が流失したJR久大本線の日田―光岡間では不通が続き(来年夏開通予定)、博多―由布院を結ぶ「特急ゆふいんの森号」は現状、小倉経由のルートで運行し所要時間は約5時間かかる。しかし、これは各駅でダイヤ調整のため待ち合わせ時間が多く発生していることが原因で、ほかの特急や在来線を乗り継げば、小倉―由布院は約2時間で移動できる。生野氏は「博多から5時間というイメージが広まっているが、他の特急などを乗り継けばそれほど時間はかからない」と強調した。

 桑野会長は由布院温泉のコンセプトや今後の方針を説明した。

 滞在型保養温泉地づくりに取り組む同温泉では、組合加盟の宿泊施設が約100軒あり、宿泊料金も8千円から6万円とさまざま。桑野会長は「多様な旅のスタイルに対応できるのが由布院の特徴。近年は温泉街の飲食店も充実し、1泊朝食プランも出始めている。スイーツのお店も豊富で、女性客に喜ばれている」と話し、由布院の新しい観光スタイルを紹介。

 また、「由布院の魅力は由布院だけで成り立っているのではない」として、周辺の観光地との連携を強化する考えを示した。既に由布院と熊本県阿蘇を結ぶ観光道路「やまなみハイウェイ」のエリア7市町村で、「やまなみハイウェイ観光連絡協議会」を今年2月に設立。今後、黒川温泉などと連携し情報発信や企画を展開するという。

 来年2―3月ごろには、JR由布院駅に「由布市ツーリストインフォメーションセンター」がオープン。由布院だけでなくオール大分の観光情報を発信するほか、旅の図書館なども設け、交流拠点として活用する。

スノーリゾート活性化へ 具体的な施策検討 観光庁

2017年10月21日(土) 配信

推進会議のようす

 観光庁は10月6日に「第1回スノーリゾート地域の活性化推進会議」を行った。同会議では、2015年から今年4月まで行われていた検討会の最終報告に基づき、スノーリゾート地域全体の活性化に向けた具体的な施策を検討していく。

 日本人のスノースポーツ人口は、ピーク時だった1998年の1800万人から、2015年には740万人とおよそ4割にまで減少。同推進会議の構成員の北海道大学観光学高等研究センターの遠藤正氏によると、「今後日本人のスノースポーツ人口がピーク時の水準にまで戻ることはない」という。

 一方で2018年の平昌五輪、22年の北京五輪の影響からか、北海道を中心に訪日外国人観光客のスキー人口が増加。とくにニセコ地域では、アジア圏からの宿泊者が急増しており、14年から現在まで豪州からの宿泊者数を上回る勢いを見せている。

 遠藤氏は「スノーリゾート活性化のカギとなるターゲットはアジアである」と言及。そのうえで、中・上級者(豪州・欧米)と未経験・初級者(主にアジア圏を想定)ではマーケットが異なるため、未経験者・初心者にはスキーの面白さ、楽しさを伝えることが今後のリピーター増加につながっていくと伝えた。

外国語ができる日本人インストラクターが不足

 訪日外国人観光客によるスキー人口が増加するなかで喫緊の課題となるのが、外国語ができる日本人インストラクターが不足していることだ。現在、外国人スキー観光客対応のためのインストラクター確保については、スキーのできる外国人インストラクターを採用するなどさまざまな対策が練られている。

 しかし、外国人インストラクターを採用する場合は日本での実務経験が最低36カ月必要になるため、ビザの関係上困難を極めている状態だ。中長期的な対策として、外国語能力を有する日本人インストラクターの採用・発掘が重要となる。

 これら課題に対し構成員からは「首都圏にスキーインストラクターは1万人以上いる。そのなかには外資系企業に勤めている人もいるため語学ができる人はいると思う。まずは、首都圏のインストラクターのなかで語学ができる人を把握することが重要である」との意見が挙げられた。

 同推進会議では今年4月に取りまとめが行われた「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会 最終報告書」に基づき、第2回推進会議が行われる11月末までの間にアクションプログラムを策定する。

 アクションプログラムの柱となるのは「国内外からのスノーリゾートへの誘客に関する課題」と「スキー場の経営に関する課題」の2点。

 国内外からのスノーリゾートへの誘客について、構成員らから「幼少期からスキーなどのスノースポーツに触れることが重要である」などの意見が寄せられていることから、小中学生を対象にスノースポーツの普及活動を積極的に行っていく。

1日1組の貴賓室 「武家屋敷 桜御殿」が誕生 旅館花屋

2017年10月21日(土) 配信

貴賓室「武家屋敷 桜御殿」座敷10帖

 創業1917(大正6)年の長野県上田市の別所温泉「旅館花屋」は、6500坪の敷地に点在する建物ほぼ全館が登録有形文化財に指定されている純日本建築の伝統の宿。今年101年目を迎えた同館に8月、貴賓室「武家屋敷 桜御殿」が誕生した。2016年まで上田城近くに現存していた上田藩の上級武家屋敷が解体されるにあたり、建具や建材を譲り受け、随所に移築し、当時の雰囲気をそのままに武家屋敷の様式を忠実に再現した。

貴賓室「武家屋敷 桜御殿」玄関

 移築した武家屋敷は、昨年取り壊した上田城跡公園前にあった「河合邸」。花屋の飯島新一郎取締役は河合邸の取り壊しの話を聞き、このまま無くなってしまうのはしのびないと花屋への移築を決めたという。

 移築場所は同館内の北側奥。昨年、改築計画があった2部屋に今年2月着工。計画より2カ月遅れで完成した。

 飯島取締役は「武家屋敷を残したいという想いが結実した客室。細部に至るまで武家屋敷の様式を再現することにこだわりました」と話す。

 武家屋敷は花屋最上級の貴賓室で、玄関、取次の間、壱の間、書院座敷へと続く。西側の廊下からは坪庭が風情を添え、風呂は源泉かけ流し100%の檜造りの露天風呂を新設した。総床面積90平方メートル。

源泉掛け流し100%の露天風呂

 1日1組限定。料金は1泊2食付きで1人5万円(税別)。夕食、朝食ともに部屋食となる。

 問い合わせ=旅館花屋 電話:0268(38)3131。

消費意欲好転の兆し 「若者の〇〇離れ」歯止めか 三菱総研mif

2017年10月21日(土) 配信

小川歌織氏

 三菱総合研究所はこのほど、2017年の「生活者市場予測システム:mif(ミフ)」調査の速報を発表。雇用環境の改善などで生活者の気分は上向き、消費マインドに好転の兆しがあるとした。今回は、20代の消費意欲の向上が顕著に現れた。昨今叫ばれていた「若者の○○離れ」に歯止めがかかる勢いもある。旅行消費にも意欲をみせており、とくに海外旅行は年1回以上旅行する人の割合が全体で11・5%なのに対し、20代は14・2%と上回った。

【飯塚 小牧】

 調査の説明を行ったエム・アール・アイリサーチアソシエイツのアナリスト、小川歌織氏は、16年までは「財布の紐は固い」「若者のモノ離れが進む」「変化から安定へ」などキーワードが暗い傾向にあったと紹介。それが17年は一転し、「雇用環境の改善などで消費者の気分が上向き始めた」と述べた。

 消費支出の項目をみると、教養娯楽費や交際費、衣類履物費が16年より上昇。これらは消費抑制時には節約対象となるもので、この項目の支出が伸びているということは節約志向が緩んだと考えられる。

 前年と比較した「暮らし向き向上感」は「向上している」が前年比2・2ポイント増の10・6%となり、「低下している」は3・5ポイント減の21・1%となった。

 今後の暮らし向きについては「良くなっていく」が2・2ポイント増の12・8%、「同じようなもの」は2ポイント増で52・1%。「悪くなっていく」は3・3ポイント減の25・9%。とくに20代は「良くなっていく」が21・3%、「悪くなっていく」が15・0%と、年代のなかで唯一「良くなっていく」の方が上回った。

 経済的ゆとりの実感に対しては、「かなりゆとりがある」「ゆとりがある」の合計が2・1ポイント増の23・8%となり、ゆとりを感じる人が増加した。

 こうした背景について小川氏は、日本経済新聞のデータから17年4―6月期は金融業を除いた上場企業の約7割で純利益が増加していることを提示。これにより、人手不足は正社員にまでおよび、パートを含む有効求人倍率がバブル期より高い数字となったことが好要因だと分析した。

 また、さまざまな分野で危惧されていた「若者の○○離れ」についても、結婚やモノ、旅行などの項目で上昇傾向にあることを紹介した。結婚は5年以内の結婚予想が20代で5・8ポイント増の36・2%、交際相手の有無は4・8ポイント増の30・5%と大幅に増加。「東日本大震災後に『絆』がキーワードになったが、その11年の数値を超えているのが特徴」という。

海外、国内旅行とも上昇

 旅行については、20代で年1回以上行く人の合計が海外旅行は3・3ポイント増の14・2%、国内旅行(宿泊)が5・5ポイント増の56・0%、国内旅行(日帰り)が4・7ポイント増の56・5%といずれも上昇。全体も同様に伸びてはいるが、増加率は20代が大きかった。

 コト消費についても、「友人・知人とわくわくする体験をしたい」「おもてなしなど特別なサービスを体験したい」などが全世代別で最も高く、20代が余暇活動の牽引役になると予測した。

 若者を中心に消費マインドが上向く一方で、長期的な不安感は根強く残っている。日本の向かっている方向を「良い」とする割合は10%程度で14年から横ばい状態だ。将来の生活への不安は「とても不安」が19・2%、「不安」が40・4%。小川氏は「『とても不安』の割合は11年の東日本大震災後と同程度になっており、看過できない重い結果」とし、中長期的な手立てが不可欠だと指摘した。