「提言!これからの日本観光」 “「危機」を「好機」に”

2020年12月20日(日) 配信

 コロナ禍の影響をまともに受け、観光産業は危機に瀕している。しかし、来年のオリンピックを観光地の旅館街がシャッター街となって迎えることは何としても避けなければならない。公的支援も活用しつつ、皆さんの格段の経営努力が実を結ぶことを切に願っている。

 とくに貴重な観光資源である和風旅館の宿泊客の伸び悩みは新型コロナウイルス感染拡大前から指摘されていただけに、その経営改善が急務と言えよう。

 3000万人の外国人客を迎えていた2018年ホテルの客室稼働率は年間80%超に比し和風旅館は50%を切り、転廃業が続出していた。この原因の1つが和風旅館、それも有名観光地の老舗施設の多くが1泊2食付契約の商慣習を守っていたため、外国人客の利用が増加せず、邦人ビジネス客も敬遠するようになってきたからと考えられる。この古い商慣習から脱皮して泊食分離契約にならないものだろうか。

 確かに1泊2食付制は旅館の経営安定と高いサービス水準を支えてきた。旅館の主な収入源は夕食にあるとされる。必要とする食材の量を予約と同時に確認できるため、効率的かつ計画的な食材仕入などが可能になり、仕入先業者から良質な食材を安定的に仕入れることができ、高水準の食事を提供しているからである。従って、業界ではこの契約方式を維持すべきとの声が今も強い。

 しかし、近年、顧客ニーズは変わってきた。夕食は旅館から街に出て名物料理を味わいたい、高級旅館に泊まるが食事は豪華な料理ではなく、簡単なものを自由に選び、むしろ好みの土産物を買いたいなどニーズの多様化が観光情報の増加で目立ってきた。また外国人客は部屋代と食事代を分けることが常識で、1泊2食付契約には馴染めない。

 和風旅館の利用促進にはこの点を改め、泊食分離契約にする必要がある。旅館の収入減が予想されるが、宿泊客は街のどこかで夕食をとるであろう。また、土産物やほかのサービスなども求めるであろう。従って、旅館の減収を街全体で考えてはどうだろうか。

 旅館の減収分を街のどこかが受け入れているはずだから、街の観光産業の収入をプールして再配分することである。観光コンソーシアムないしはDMOなどの組織を活用して、これを実現する。即ち泊食分離の結果、旅館に生じた減収分を同じ街の他業種に生じた増収でカバーすることはできないだろうか。

 そのためには各企業が収入を登録すること、配分方法、配分率などを事前に入念な実態調査によって定め、公正を期さねばならない。オンラインで結んだ共通レジの導入などIT技術導入で、この精算業務は実行可能と思う。同時にヤミ民泊の絶滅とホテル、旅館、民宿の宿泊3事業間の新しい利用秩序の提案、構築も進めなければならない。観光地の中心産業である旅館業の経営改善は急務である。旅館業の「危機」を改善への「好機」とされるよう期待し、あえて素人の暴論を提案させていただいた。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(191)」 たたら鉄の積出港・安来の挑戦(島根県安来市)

2020年12月19日(土) 配信

「和鋼博物館」にある原寸大のたたら炉

 11月末、島根県安来市の観光モニターツアーに参加させていただいた。テーマは、日本遺産「出雲國たたら風土記」を安来から感じる旅である。

 物語の核になるのは、日本古来の製鉄「たたら製鉄」である。日本遺産エリアの安来市・雲南市・奥出雲町では、約1400年前から近世に至るまで、たたら製鉄が盛んに行われ、最盛期には全国の約8割の鉄がこの地を中心とした中国山地の麓でつくられていた。今でも奥出雲の地では、たたら製鉄の炎が脈々と燃え続けている。

 しかし、たたら製鉄は優れた鉄をつくるだけではない。原料の砂鉄を採取した跡地は広大な棚田状の田畑に再生し、良質の蕎麦や米の生産地に変えてきた。全国的に有名となった「出雲そば」や「仁多米」は、たたら製鉄による新たな産業創出の成果でもある。

 また、大量消費される木炭を供給する森林は、成木になる30年という期間を考慮し、年間に使用する木材の30倍以上の山林を確保して自然を破壊せず、永続的に循環利用できるような配慮が徹底していた。今でいうSDGsの考えを古くから実践してきたのである。

 2市1町(当時は6市町村)は、既に30年も前から「鉄の道文化圏」をテーマとする広域連携を進めてきた。今でいう広域観光圏や地域連携DMOのような機能を早くから実践してきたのである。

 今回のツアーは、中海に面した鉄の積出港として栄えた安来市単独の試みであった。だから、果たして全体ストーリーを完結できるのかという危惧もあった。

 しかし、安来市にはたたら製鉄の技術を継承し、ヤスキハガネのブランドで世界マーケットを掌握する日立金属の拠点がある。この会社が創設した和鋼記念館(現和鋼博物館)は、たたら製鉄の技術や産業社会システム、民俗などを研究・展示する総合博物館である。まさに鉄の道文化圏のゲートウェイともいうべき施設である。

刀鍛冶の伝統を受け継ぐ鍛冶工房弘光

 もう1つ、安来市広瀬町西比田には、製鉄・鍛冶・鋳物などの守護神、金屋子神社がある。金屋子神の伝説は各地に残るが、白鷺に乗って安来市広瀬の地にある桂の木にとまり、この地に神社を創建したという言い伝えがある。

 安来は、鉄の積出港として大いににぎわい、海を介して全国の金物産地とつながっていた。港に直行する通りには、鉄問屋や回漕会社、銀行、料亭など多くの建物が立ち並び、往時のにぎわいを彷彿とさせる。

 今回、ツアーで回った中世山城・月山富田城は、奥出雲の鉄資源を掌中に収めようとした尼子氏の戦いの舞台となった城である。富田城のある広瀬町には、かつての刀鍛冶の技術を踏襲する鍛冶工房弘光や広瀬絣の藍染を行う天野紺屋など、たたら由来の生業も元気である。

 改めて、安来の観光のポテンシャルの高さと可能性を感じたツアーであった。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

訂正:上記の連載コラムの中で、所在地について謝りがありました。正しくは「安来市広瀬町西比田」です。訂正してお詫びいたします

ピーチ、女満別と大分線 新規就航へ 成田の着陸無料策を活用

2020年12月18日(金) 配信

森健明CEO。国際線の増便が難しいなか、ネットワークの拡大で収益改善を目指す

 ピーチ・アビエーション(森健明CEO)は2021年2月10日(水)から成田~女満別線、2月19日(金)から成田~大分線に新規就航する。事業の40%を占める国際線の増便が難しいなか、国内空港へのネットワーク拡大で収益改善を目指す。

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなかでの開設について、森CEOは「Go To再開直後に多くの人に利用してもらうため、早い段階で運航をスタートする」と強調した。

 今回は、成田国際空港(NAA)が実施する国内線の着陸料と停留料を無料にする措置で実現した。

 NAAの田村明比古社長は「コロナ禍で航空業界が厳しいなか、英断してもらい感謝する。今後も成田から北東北や日本海側地域の就航を促す」と意気込んだ。

田村明比古社長

 両路線の就航で、成田国際空港から国内線定期便が結ぶ都市は24になる。ピーチ・アビエーションの就航都市は12になり、関西国際空港からの運航都市と同数となる。同社は女満別線では既存の成田~釧路線と合わせて、東北海道を周遊する旅行需要を狙う。大分線では、「成田~福岡線と組みせて、福岡と大分を巡る旅に出かけてほしい」(同社)考えだ。

 運賃は女満別線が5290円から3万4990円。大分線は5790円から3万6990円。

 「(今後は)成田空港に行けばどこでも訪れることができるようにする」(森CEO)と抱負を述べた。

JNTO、優良な訪日インセンティブ旅行を表彰 日本のホスピタリティを学ぶ研修旅行が大賞に

2020年12月18日(金) 配信

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 日本政府観光局(JNTO)は12月17日(木)、優良な訪日インセンティブ旅行を表彰する「JAPAN ベスト インセンティブ トラベル アワード2020」の受賞者を発表した。大賞には、ドイツのteamtravel international GmbHが企画した、日本の小売文化を学ぶ「VME Retail Safari and the Beauty of Japan」が選ばれた。企画賞は、H.I.S International Travel Pte Ltd(シンガポール)が、貢献賞は、JTB Germany GmbH(ドイツ)がそれぞれ受賞した。

 訪日インセンティブ旅行市場の活性化を目的に創設された「JAPAN ベスト インセンティブ トラベル アワード2020」は今年で5回目となる。2019年度に実施された100人泊以上の訪日インセンティブ旅行を対象に、過去最多となる16カ国・地域から83件の応募があった。

 大賞の「VME Retail Safari and the Beauty of Japan」(teamtravel international GmbH・ドイツ)は、有名デパートなどで日本のホスピタリティを学ぶ10日間の研修旅行で、特別感のある演出や、観光の要素を上手に組み合わせているところが評価された。訪問地も東京のほか、箱根、京都、沖縄と多様で、寿司作り体験によるチームビルディング、プライベートアイランドを貸し切ったバーベキューなど、独創的なコンテンツを盛り込んだ。

 企画賞に選ばれた「2019 Incentive Trip to Okinawa, Japan」(H.I.S International Travel Pte Ltd・シンガポール)は、小売会社の成績トップ社員を対象にした4日間のインセンティブ旅行で、シンガポールや台湾など4カ国・地域から121人が参加。沖縄でハーリー船のレース大会や、沖縄美ら海水族館でのガラディナーなど、沖縄の特徴を生かした体験を取り入れた。

 貢献賞の「Japan Incentive Tour」(JTB Germany GmbH・ドイツ)は、ハンガリーから日系工具メーカーのトップ社員50人が参加し、9日間の日程で行われた。食に関心の高いグループ向けに、昼食やスイーツを地方の商店街にオーダーメイドした点などが評価された。

 また、特別賞に、19年ラグビーW杯日本大会時に合わせて催行された Fortis Events 社(ニュージーランド)の「Hynds VIP Rugby World Cup 2019 Tour」が、大型スポーツイベントをきっかけに日本各地を訪問した好事例として選ばれた。

 訪日インセンティブ旅行は、企業が従業員などを対象に実施する報奨旅行や研修旅行。観光庁の調査では、訪日インセンティブ旅行の外国人1人当たりの消費額は約32万円で、一般観光の消費額15.8万円の約2倍の経済効果があるとされる。

人気インスタグラマーが写真の撮り方を地元学生にレクチャー 長野市で“映える写真”を撮る体験ツアーを実施

2020年12月18日(金)配信

 ながの観光コンベンションビューロー(長野県長野市)は2020年12月11日(金)、デジタルネイティブ世代の視点で長野の人気観光スポットの新たな楽しみ方を発掘し、シェアする取り組み、「Go To長野市 デジタル世代のススメ」プロジェクトとして、人気インスタグラマーを講師に招いて長野市の人気観光地「松代」を地元学生とまわる体験ツアーを実施した。

 世界40カ国を訪ねた経験を持ち、旅行やグルメ、ファッションなど幅広い投稿で人気を集めるインスタグラマーの石井里奈さんが、集まった長野美術専門学校の学生10人と一緒に、松代の観光スポットを回りながら「映える写真」の撮り方など、インスタグラマーならではの写真の楽しみ方をレクチャーした。

 松代藩文武学校や旧樋口家住宅、真田邸など数々の歴史的なスポットを散策し、地元の歴史を知るだけではなく、景色や建物をより美しく撮影する方法や、食べ物をさらに美味しそうに見せる方法などを石井さんが直接指導した。

 学生たちからは、「プロのインスタグラマーからテクニックを教わることができて本当に良かった」「見慣れたはずの地元の景色も“映える”ことがわかり、とても勉強になった」「今後は学んだことを生かし、自分のアカウントでもどんどん投稿していきたい」などの声が上がった。

コロナ禍で半数の観光スポットが観光客数減少 埼玉県物産観光協会

2020年12月18日(金) 配信

半数の市町村・観光協会は7~9月の観光客数が減少したと回答

 埼玉県物産観光協会はこのほど、埼玉みどころ旬感協議会加盟の市町村・観光協会に向けて実施した新型コロナウイルスによる県内観光地への影響調査の結果を発表した。

 主要観光スポットにおける7~9月の観光客数は前年と比べて減少したとの回答は50%で、増加したと回答した14%を大きく上回った。一方で10月は、増加が25%、減少が21%と回復の兆しを見せた。

今後3カ月間は、どこから集客をしたいですか。(複数回答可)

 「今後3カ月間は、どこから集客をしたいですか」に対しては県内との回答が最も多く、次いで近隣市町村、同じ市町村内との回答が続いた。遠方ではなく近隣からの集客を考えていることがうかがえる。

 GoToトラベルなどの観光需要喚起策終了後については、88%の会員が前年比50%以上回復させたいと回答した。市町村・観光協会を主体に宿泊補助や物産販売の補助事業を実施していると回答したのは31%。今後に向けてさまざまな取り組みをしているとみられる。

 調査は11月6~27日まで、Microsoft Formsによるウェブアンケートで埼玉みどころ旬感協議会の会員である89の市町村・観光協会を対象に実施した。回答数は52件だった。

HIS、エイチ・エス損保と連携で保険売り出す コロナ感染時などの入院費補償

2020年12月18日(金) 配信

入院費は最大180日まで補償する

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長兼社長)の法人営業本部は12月17日(木)、企業と官公庁に向けに新型コロナウイルスなどの感染症やケガなどを補償する保険「感染症とケガの保険(団体傷害保険)」を売り出した。引受保険会社はエイチ・エス損保。

 在宅勤務などが普及する一方、出勤が求められる業務やテレワークだけでは仕事が成立しない業務、やむを得ない出張などで、企業はより一層の危機管理対策が求められるという。これを踏まえ、HISは企業・官公庁を契約者とし、勤務中・勤務外を問わず、従業員の感染症またはケガによる入院を最大180日まで日額補償する。

 「感染症とケガの保険」の補償対象となる感染症は、感染症法で定める1~3類感染症と、新型コロナウイルスが指定されている指定感染症。さらに、今後新たな感染症が発生し、上記に指定された場合は補償対象とする。

観光地周辺の混雑状況を可視化  観光デジタルマップ「Map Life」と 「モバイル空間統計人口マップ」が連携

2020年12月18日(金)配信

 モバイルライフジャパン(神農渉社長、東京都港区)が提供する観光デジタルマップ「Map Life」と、ドコモ・インサイトマーケティング(三毛孝彦社長、東京都豊島区)が提供する「モバイル空間統計人口マップ」は2020年12月17日(木)、観光地周辺の混雑状況を可視化し、密集や混雑の回避促すためのサービス連携を発表した。

 連携を通じて、「Map Life」既存の観光や飲食店などのスポット情報と同時に、周辺の混雑状況がリアルタイムで把握できるようになる。事前に目的地周辺の混雑状況を確認することで、状況に応じて目的地の変更や移動時間をずらすなど、混雑を避けた安心・安全な移動が可能となる。同サービスは2021年3月末までの期間限定で提供される。

鳥取県が食の魅力発信「豊漁感謝祭~蟹取県のカニ食べてみんな蟹バレ 」

2020年12月17日(木) 配信

ガンバレルーヤの2人が登壇

 カニの水揚げ量日本一を誇る鳥取県は12月16日(水)、11月6日に解禁された 「とっとり松葉がに」をはじめとする同県の食の魅力を伝える「豊漁感謝祭~蟹取県のカニ食べてみんな蟹バレ 」メディア発表会を東京都内で行った。

 吉本興業所属のガンバレルーヤの2人が登壇し、蟹取県 PR 大使「蟹バレルーヤ」として蟹取県の魅力を伝えるためにカニ料理に挑戦する動画「蟹バレルーヤ チャレンジ 22 《 クッキングチャレンジ編 》 」と、2人が作ったカニ料理をお披露目。蟹取県の美味しいカニが今年も豊漁であることへの感謝の気持ちを込め、「蟹取県ウェルカニキャンペーン」の新たなプレゼント企画も発表された。

 動画「蟹バレルーヤ チャレンジ 22」は、同県の料理人、知久馬惣一氏によって創られた芸術的なカニ料理を巡って対決するなど、「お笑い」と「カニグルメ」を融合したチャレンジ動画。平井伸治鳥取県知事から蟹取県のPR を依頼された「蟹バレルーヤ」の2人が鳥取のカニの魅力を楽しみながら料理をしたり、カニについて勉強したりするようすを期間限定の ユーチューブ動画として配信している。 

 12月16 日(水)からスタートしたキャンペーンでは、「蟹バレルーヤ チャレンジ 22 」の動画をツイートした人のなかから抽選で22人に、鳥取の旬のカニをプレゼントする。

 また同県は、11月28日(土)から、家で鳥取県のカニを楽しみたい人のために、オンラインショッピングモールの「47CLUB 」と「高島屋オンラインストア」で、蟹取県のグルメやグッズを全国からお取り寄せできる「蟹取県ウェブカニキャンペーン」も実施。購入者のなかから抽選で22人に、鳥取県産の松葉がにをプレゼントする。

ロイヤルウイング 「カウントダウンクルーズ」と「初日の出クルーズ」を運航

2020年12月17日(木) 配信

21年のご来光を船上で(写真はイメージ)

 ロイヤルウイング(神奈川県横浜市)は12 月31 日(木)に「カウントダウンクルーズ」を、2021 年1 月1 日(金祝)に「初日の出クルーズ」を運航する。

 2021年のカウントダウンをロイヤルウイングの船上で迎える「カウントダウンクルーズ」。2021年を迎える瞬間、横浜港に停泊している船舶が新年祝いの汽笛を一斉に鳴らす。船内では、中国料理バイキング、年越しそばが楽しめる。

「初日の出クルーズ」は、2021年のご来光をロイヤルウイングの船上で迎えるクルーズ。運航時間は、午前5:45~午前7:45。船内では、新春特別バイキングとフリードリンクも楽しめるほか、毎年恒例のロイヤルウイングオリジナルの升をお土産としてプレゼントする。

 さらに、両クルーズでハズレなしのプレミアムラッキーくじ引きなども企画。司会進行は横浜出身のお笑い芸人「横浜ヨコハマ」が務める。