「ふるさとオンリーワンのまち」第9号認定、館山市の“多様性”が魅力(NPO法人ふるさとオンリーワンのまち)

津田令子理事長(左)と小金晴男会長(認定式で)
金丸謙一市長

NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は、独特の風土や伝統文化、産物、無形のおもてなしなどユニークな観光資源を、「ふるさとオンリーワンのまち」と認定している。3月29日には、館山市観光協会(千葉県)を第9号に認定。同市は「まるごと博物館・まるごと観光地」をコンセプトに、滞在型の観光地に取り組む。“多様な楽しみ方が一つに集う館山”を理由に、津田理事長が同市観光協会の小金晴男会長(当時)に認定書を授与した。

館山市は房総半島の南端に位置し、内房に面している。人口は約4万7千人。豊かな食材に恵まれ、ポピーをはじめ1年中、多様な花がまちを彩る。「南総里見八犬伝」の舞台になるなど、歴史的遺産や神社仏閣も散在している。

パネルディスカッションでは「館山市のこれから」が語られた

認定式で津田理事長は「私たちが地域の宝を発掘し、認定を始めて約5年。現在は約40人のメンバーが在籍している」とNPOの活動を紹介。「館山市観光協会にはこの認定をきっかけにして、より大きく羽ばたいてほしい」とあいさつした。小金会長は「素晴らしい認定書をいただき、感動とともに重みも感じている。すでに認定されている8件の地域の先輩方を見習いながら、ネットワークの一員として一生懸命勉強し、『オンリーワンのまちづくり』に努めていきたい」と謝辞を述べた。

金丸謙一市長も出席し、「館山の美味しい食べ物など、多様性を認めていただいたことはとてもうれしい」と述べ、「なんでもある館山市の総合力が認められたのだと思う」と語った。

認定式終了後には「これからの館山の観光振興」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。同観光協会の小金会長と、観光まちづくりセンターの木村義雄室長(観光アドバイザー)、館山市経済観光部の上野学部長、NPOからは松陰大学観光メディア文化学部の古賀学教授、旅行新聞新社の増田剛編集長の両理事が登壇。コーディネーターは津田理事長が務めた。津田氏は「館山市には25年以上足繁く通っているが、何度訪れても同じ表情はない」と四季によって多様な姿を見せる同市の魅力を語った。

小金氏は「館山では観光は基幹産業。観光の必要性を市民にもしっかりと伝え、観光客にも伝わる“住民パワー”でお迎えしたい」と力説した。

同市に移住している木村氏は「多様性のある地元の食を『食のデパート』としてPRするなど、もう一度原点に戻って見つめ直すことが大事だと最近感じている」と話した。同市の上野氏は「34・3㌔続く海から見える富士山や夕日は、観光客だけではなく、市民の誇り」とし、海を活用したさまざまなスポーツイベントなどを紹介。市では移住定住にも力を入れており、海とともに滞在して過ごす「館山スタイル」も提案した。

古賀氏は「房総半島はサイクリングで1周できる」と説明し、「今後は2次交通として自転車で回れる起点づくりが大事」とアドバイス。増田氏は「館山はもともと別荘も多く滞在型観光地へのポテンシャルが高い」とし、「滞在客に安心感のあるまちづくりを目指してほしい」と語った。

当日、NPO一行は館山城(八犬伝博物館)や、ポピーの里館山ファミリーパーク、みなとオアシス“渚の駅”たてやまなどを視察し、館山の名物「炙り海鮮丼」も堪能した。

ポピーの里館山ファミリーパーク
館山名物の人気「館山炙り海鮮丼」

18年4月、15社を再統合、3つの事業ユニット設置へ(JTBグループ)

 JTB(髙橋広行社長)は18年4月にグループ会社15社を本社に再統合する。06年の分社化から11年。新統合会社では、新たに「国内個人」「国内法人」「グローバル」の3つの事業ビジネスユニット(BU)を設置。各事業会社がそれぞれのBUに所属し、各事業戦略の策定・推進を行う。オンライン旅行会社(OTA)の成長により激変する市場で、リアルエージェントとしての価値を提供する。【松本 彩】

 来年4月に再統合されるのは、JTB北海道、JTB東北、JTB関東、JTB首都圏、JTB中部、JTB東海、JTB西日本、JTB関西、JTB中国四国、JTB九州、JTBコーポレートセールス、i.JTB、JTB熊本リレーションセンター、JTB国内旅行企画、JTBワールドバケーションズの15社。再統合後の新統合会社では「個人」と「法人」の2つを軸にした事業単位の経営体制に切り替え、顧客ニーズに迅速に対応していく。

 新統合会社では、全社経営戦略・全社ガバナンスの責任を担うグループコーポレート機能に加え、事業戦略推進機能を担う(1)国内個人(2)国内法人(3)グローバル――の3つのビジネスユニット(BU)が設置される。国内個人BUにはPTS、エイ・ビー・アイ、JTB京阪トラベル、JTBメディアリテーリング、JTBグランドツアー&サービス、トラベルプラザインターナショナル、朝日旅行、JTBガイアレック、JTBサンアンドサン西日本が所属。

 国内法人BUには、JTBビジネストラベルソリューションズ、JTBコミュニケーションデザイン、JTBベネフィットが組み込まれ、グローバルBUはグローバル事業各社が入る。なお、現時点では対象会社が再統合後に法人格として事業を推進していくかは未定だが、来年4月の再統合までには体制を整えるという。

 現在の事業会社の営業所は「法人事業個所」と「個人事業個所」に分離し、それぞれのBUに所属する。また、国内・海外仕入造成会社などは、国内個人BUへの所属となる。髙橋社長が掲げる「仕入れを制する者が、営業を制する」という目標を達成すべく、製販一体体制を構築し、商品計画機能を強化していく。

 今回の経営体制の再編は、髙橋社長が新春あいさつで述べた「黄金の時間の果実を得る」ための〝仕掛けと変革〟として捉えることができる。昨今のFIT化やOTAとの競争激化によって、低価格のパッケージツアー商品の造成が難しくなるなど、リアルエージェントはさまざまな岐路に立たされている。来年4月の再統合化は同社が「リアルエージェントにしかできない〝ならではの価値〟を提供する」ための狙いもあると考えられる。

 同社は再統合化によって「深い感動と共感をいただける〝JTBファン(お客様)〟の拡大を目指す」ことを1つの目標として掲げている。同社の黄金の時間の果実を得るための仕掛けが、今後の旅行市場や、そのほかのリアルエージェントにどのような影響をもたらすのか、旅行業界全体の変革に向けた取り組みが始動した。

No.459 白玉の湯 華鳳・別邸越の里、社員が皆、同じ「型」を持つ宿に

白玉の湯 華鳳・別邸越の里
社員が皆、同じ「型」を持つ宿に

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第12回は、新潟県・月岡温泉「白玉の湯 華鳳・別邸越の里」の飯田美紀子女将が登場。「宿に定まった型があるからこそ、お客の動きが見えてくる」と内藤氏が語ると、飯田女将も「社員が皆、同じ型を持つことが大事」と応じるなど話題は多岐にわたった。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(12)〉
白玉の湯 華鳳・別邸越の里

内藤:創業されたのはいつですか。

飯田:1967(昭和42)年に、木造2階建ての客室8室と、中広間1室で開業しました。その後、75年に法人組織「ホテル泉慶」としました。
 開業当時はまったくお客様がいない状況で、先代の実母(橋本キヨ女将)は新潟市内のタクシー会社を回りました。当時、タクシーの運転手は夜遅くお客様を乗せても泊めてくれる宿がほとんどない状況でした。深夜だと新潟市内から約30分で月岡温泉まで来られるので、「おひとりでも連れて来てください」と頼み込み、タクシー会社に手数料も払ったと思います。
 母は夜中に到着されるお客様にも対応できるように、いつも洋服を着て寝ていました。「夜遅く来たのに、女将におにぎりを握ってもらった」とお客様に感謝され、次にお越しになられるときには早い時間にいらしていただけるようになり、お客様が次第に増えていきました。
 もともと月岡温泉の多くの宿は湯治の自炊旅館でした。82年に上越新幹線が新潟まで開業し、85年に関越自動車道がつながったことで、当館も増築と改築を繰り返しました。バス・トイレ付の客室は月岡温泉で最初に作りました。今でいうVIPルームです。
 90年に約3万坪の土地を買い、新館「華鳳」を97年に開業しました。オープン後、バブル崩壊によってどんどん景気は悪くなっていましたが、華鳳の開業人気に支えられて不景気の影響はあまり感じませんでした。しかし、01―02年ごろから売上も落ち、流れが悪くなってきました。面積も、人件費も2倍になったにも関わらず、売上は半分ほどに減少しました。厳しい経営状況のなかで02―04年の間に両親が亡くなりました。

 ――泉慶の姉妹館「華鳳」、さらに「別邸越の里」はどのような理由で建てられたのですか。

飯田:母はお客様に喜ばれようと、工事を繰り返していました。泉慶は増築、改築を繰り返したため、眺めのいい部屋や、古い部屋などが混在し、旅行会社にとっては団体客の部屋割が大変でした。大きな団体のお客様が来られても「同じような客室を提供できるように」と華鳳を作ったのです。
 そのうち、「華鳳はいつ行っても、団体客のように同じ部屋ばかりで面白くない」というリピーターのお客様も増えてきました。このため、07年には全20室がそれぞれ趣の異なるプライベートスイートの「別邸越の里」を開業しました。

内藤:先代からは、どのようなことを伝えられたのですか。

飯田:とにかく「お客様が第一」ということが根底にありました。
 「どんなことをしてでもお客様の要求を叶えてあげましょう」と母から教えられてきました。どうしたらお客様が喜び、感動され、笑顔になっていただけるか。感謝をいただくには私たちがどのような振る舞いで接するべきか――といったことです。
 とくに、お辞儀の仕方は細かく教わりました。お客様をお出迎えするときは、「あまり深く頭を下げ過ぎないように。初対面のお客様に頭を下げ過ぎてしまうと、あなたのお顔が見えないから、ちょっと横を向いて、笑顔を見せてね」と。
 また、お見送りのときは、「必ず笑顔で、しっかりと頭を下げて」と言われました。
 母は私たちの前では社員を叱りませんでした。どこで叱ったのかわかりません。おそらく役員室にコーヒーなどを持って来てもらったりしたときに、時間をつくって会話を交わしていたのだと思います。皆の前ではなく、社員と向かい合って「どうだったの?」と話を聞いてあげていたのではないかと思います。私自身もあまり叱られた記憶がありません。でも、今から考えると、しっかりと教えを受けているのです。…

 

※ 詳細は本紙1668号または4月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

2泊3日の旅 ― 「旅人に居場所をつくってあげる」

 旅とひと言でいっても、半日程度の小さな旅から、2―3週間の長い旅もある。どの旅にもそれぞれ魅力的な部分があるが、私は個人的に2泊3日の旅が気に入っている。2泊3日での旅となれば、現実的に国内各地、あるいは近隣のアジア諸国がその範疇に含まれる。沖縄や北海道、台湾や香港などに行くなら、現地での滞在をより満喫したいため、早朝に空港に向かう。少し眠いが早朝であるからこそ、これから始まる旅への期待がより高まっていく。

 2泊3日の醍醐味の1つは、旅の舞台となる滞在するホテルや旅館に連泊できることだ。 

 旅は、巡り合わせ、縁である。地球の反対側を旅して、名も知らないホテルに宿泊し、小さな街のレストランで食事をする。2度と訪れることがないだろう、と考えながら「いや、再びここを訪れる縁を築きたい」と思うことがある。街で一番の外資系ホテルに比べると見劣りがするが、滞在することで次第に心地よさを感じてくるホテル。言葉が通じないが何度か通ううちに、自分の店の客と認識してくれる店主。旅人は旅先では居場所がない。しかし、滞在するホテルや、通い続けるレストランは、寄る辺ない旅人にわずかな居場所を与えてくれる。

 1泊するだけでも、旅人にとって宿泊したホテルや歩いた街とは大きな縁になるが、2泊、3泊と滞在することで、より強固なつながりへと変わる。

 「日常的なしがらみから解放されて、どこかに旅したい」と感じることがあるが、潜在的に「未知なる旅先で新たな接点をつくりたい」という欲求があるのだろう。

 私自身、長期間をかけて地球の裏側に行くような大旅行をいつも夢見ているが、現実は、近くの海に行こうとオートバイに乗るが、途中で予測不能な雨が降り出してUターンしてくるといった、旅にもならない旅ばかりである。国内の温泉旅館に1泊2日の旅をすることもあるが、予定調和的にすべての物事が流れるために、心が高揚することは、もうほとんどなく、リラックスするというよりも、退屈してしまうのである。

 リラックスと退屈はどこが違うか。リラックスは何もしたくなるくらい心地よさを感じることだが、退屈は何かしたいのだが、何もすることがない状態だ。

 リゾートホテルの場合、2泊3日では短いと感じる。一方、多くの旅館は1泊2日がまだまだ主流であり、滞在する客のことを想定したつくりになっていない。滞在中に客に退屈させないために、面白いショーをやったり、雰囲気のあるバーを作ったり、体験プログラムを用意するのも1つの手段かもしれない。

 だが、それ以上に大事にしなければならないものは、「旅人に居場所をつくってあげる」という意志である。

 例えば、温泉旅館の岩風呂に入る場合、岩の組み合わせ具合が絶妙なポジションを探す。しかし、そのような場所は1カ所か2カ所で、あとは背中に突き出た岩があったり、頭の置き場がなかったりと長時間のんびりできない。また、浅すぎたり、逆に座ると鼻まで浸かるようなところもある。客室前の廊下に椅子を置いている宿もあるが、そんなところでくつろげるはずもない。まずは、2泊3日の旅で滞在したいと思える宿が日本にも増えてくることを期待したい。

(編集長・増田 剛)

てるみくらぶ破産、負債額は未確定、弁済制度の見直しは慎重(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は4月6日の定例会見で、破産申請を行った「てるみくらぶ」への対応について説明した。消費者に対する弁済は事務処理の簡易化を目指し、類似案件の発生防止にも努める。関連する勉強会を開き、観光庁とも相談を重ねつつ対応していく。弁済業務保証金制度の見直しには、慎重な姿勢。なお、負債総額が膨らむ可能性も否定できないという。

 3月27日の会見で明らかとなった151億円の負債総額はあくまでも、同社側の発表によるもの。全容把握には時間を要する。越智良典理事・事務局長は、「負債額は未確定の部分が多い。粉飾決算が行われている場合は、一層把握が困難になる」と懸念する。

 今後予定する勉強会では、消費者保護を第一に議論を重ねるが、弁済業務保証金制度の見直しについては慎重に取り組む構え。同制度を利用した53案件のうち、41件が返還率100%を占めるため、制度自体は正常に機能しているとの認識。

 JATAでは、内定取り消し者向けの就活セミナーを4月8日に開くなど、積極的なフォローを実施。社員についても、同社の残務処理終了後に順次対応する。

 今回の破産申請による、旅行会社の利用敬遠などの情報はない。

ゴースト・イン・ザ・シェル

  4月7日に公開された映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を観てきた。原作アニメは「ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機動隊」でその劇場版の2作目「イノセンス」を観たのが、私と攻殻との出会いだった。その時は事前に何の予備知識もなく、映画館で初めて観たのでよく理解できなかった印象しかない。

 しかしながら、随所に登場する格言的なセリフ回しをはじめ、アニメを超越した世界観に魅了され、その後パッケージ化される度にDVDやブルーレイで見直し、映画「イノセンス」の大ファンになっていった経緯がある。

 今回、実写映画化された作品は素晴らしく、観終わってすぐにIMAX(R)3Dの日本語吹替版でもう一度観たいと思った。字幕なしの大画面で観ればさらに没入できること間違いない。

【古沢 克昌】

外客消費額8兆円に、新たな計画を閣議決定

 政府は3月28日、2017年度から20年度までの新たな「観光立国推進基本計画」を閣議決定した。7つの数値目標が掲げられ、訪日外国人旅行消費額は15年度実績3・5兆円から2倍強の8兆円に設定。「モノ」から「コト」の消費に変化するなか、大幅な上積みを目指す。目標数値は15年度実績などを基に算出。訪日外国人旅行者の地方部における延べ宿泊者数は、2514万人泊から約3倍の7千万人泊に増加させる。地方部の宿泊者数の比率を高め、地方創生に結び付けるためだ。

 訪日外国人旅行者数の拡大にはリピーターの確保も重要。目標値を1159万人の約2倍の2400万人とした。

 国内旅行消費額は、最近5年間の平均値から約5%増の21兆円に定め、国内旅行消費額の維持に努める。訪日外国人旅行者数は、1974万人の約2倍の4千万人とし、目標値達成に向けて進めてきた取り組みを継続させていく。

 同計画は、昨年策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」を踏まえ、方向性を決定。観光を国の成長戦略の柱、地方創生への切り札と位置付ける。

 政府は今後、民泊サービスに向けた法整備や旅行業法の改正、「地方創生回廊」の完備と地方への外国人旅行者の流れの創出など多岐に渡り策を講じていく。

インスタグラム活用、地域の魅力、世界で共有

インタビューに答える松重氏

 インスタグラムは、SNS(交流サイト)の1つで、スマートフォンなどで撮影した写真(画像)を加工し共有できる。専用アプリから利用でき、フィルター機能を用いての写真加工も容易だ。アカウント数は6億超で、地域PRに最適なツールの1つ。今回、同SNSで写真コンテストを作成・管理するキャンペーンCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)〝CAMPiN〟を提供するテテマーチ(上田大介代表、東京都品川区)の松重秀平執行役員に話を聞いた。【謝 谷楓】

テテマーチ・松重秀平執行役員に聞く

 ――企業を中心に、インスタグラムを利用した情報発信に注目が集まっています。自治体らにとって、インスタグラムを活用するメリットを教えてください。

 インスタグラムを地域のPRに導入するメリットは大きく2つあります。言葉の壁を超えやすい点と、〝いいね〟やコメントが付く率(エンゲージメント率)がほかのSNSと比べ高い点です。
 ユーザーは、投稿した(された)写真を通じてコミュニケーションを行います。そのため、言葉の通じない海外ユーザー同士による交流も、ほかより容易なのです。海外に対し、地域で自慢の風景を知ってもらい、共感を呼ぶという使い方ができます。例えば、日本のユーザーが投稿した画像に対し、海外ユーザーがコメントをするといった反応も珍しくありません。地域のファンを、国内外で増やすことができるのです。

 ――高いエンゲージメント率について。

 フェイスブックと比べ2倍以上、ツイッターよりも3倍以上エンゲージメント率が高いという調査もあります。情報の不特定多数への拡散がSNSの役割と考える方もいるかもしれません。しかしインスタグラムでの投稿は原則、投稿者のフォロワーにのみ発信されます。ツイッターのリツイートや、フェイスブックのシェアといった機能はありません。
 ユーザー間の距離が近く、エンゲージメント率の高い密なコミュニケーションが生じやすい理由です。
 メディアの性質上いわゆる炎上が起こり難いことも特徴の1つです。利用目的が、お洒落に加工した写真の共有に特化し、ネガティブな投稿は生じづらいと言えます。

 ――自治体や観光協会でも利用しやすい印象を受けます。

 綺麗な風景や美味しそうな食べ物など、写真撮影はポジティブな感情が生じた際に行われがちです。投稿された写真を通じ、友人など投稿者とつながりの深いユーザーが観光スポットについて知ることで、口コミ効果を期待できます。
 旅行先で写真を撮らないことは稀ですから、それら写真をインスタグラムに投稿してもらえるよう工夫を施すべきだと考えています。口コミは信憑性が高く、消費行動を導きやすいからです。今後、集客増加の要となるはずです。

 ――ターゲティングについて。

 インスタグラムでは、女性ユーザーが多く、10―20歳代の利用頻度も高いです。多くの自治体や観光協会にとって、取り込みが難しいターゲットではないでしょうか。テレビや新聞といった、既存メディア離れが久しい若年層に対して、情報の発信とリーチをはかることが可能となってきます。
 日本国内のアカウント数は約1600万。世界で6億にも上ります。先ほど〝言葉の壁を超えやすい〟点を特徴に挙げましたが、インバウンドをターゲットとした情報発信に適した環境が、すでに整っているのです。

 ――インスタグラムを活用して、写真コンテストをWeb上で開催できるサービスを提供していますが。

 インスタグラムが持つ口コミの効果を最大限に高めるキャンペーンCMS 〝CAMPiN〟を提供しています。Web上で写真コンテストを実施できるのですが、周知促進だけでなく、〝いいね〟やフォロワー数の集計、投稿エリアを確かめられます。属性だけでなく、地域の魅力を共有したユーザー数も、具体的に知ることができるのです。影響力が高いユーザーの発見も可能です。
 投稿に添えられたコメントを通じ、投稿者の現地に対する印象や、そのフォロワーの反応も確認できます。何に興味を持ったのかを知れれば、地域の魅力発掘にもつながります。

 ――マーケティング用のデータ獲得など、さまざまな活用方法を期待できそうです。

 地域をPRするためのツールとして、気軽に使ってほしいという思いがあります。〝CAMPiN〟の特徴は、インスタグラムを活用したPRキャンペーンサイトを無制限でつくれる点です。そのため、同じ観光素材でも、実施ごとに切り口を変えてPRするというような、独自の工夫も施しやすいのです。春の桜写真コンテストなど、期間限定のイベントでも活用できます。

 ――FIT客を取り込むために、インターネットの活用は不可欠ですが、浸透していないのも事実です。

 SNSが一般化するなか、ユーザー生成コンテンツ(User Generated Contents、UGC)の効果に注目が集まっています。例えば、製品の広告で使用する写真も、購入したユーザーが撮影したものを使用した方が、共感を呼びやすく販促につながりやすいという調査結果があります。
 エンゲージメント率が高く、ユーザー間のつながりが深いインスタグラムなら、投稿写真を通じた口コミ効果も一層期待できます。〝CAMPiN〟では、高い影響力を持つ投稿者の写真を2次利用し、地域のPRに活かせます。
 ぜひ、インスタグラムをはじめ、ユーザーとのマッチングにインターネットを活用してほしいです。

 ――ありがとうございました。

CAMPiNを導入し、誘致に取り組む観光協会も多い(順不同)
丸亀市観光協会(香川県)
栃木DC県央地域分科会(栃木県)
小谷村観光連盟(長野県)
大町市プロモーション委員会(長野県)
大阪観光局 (大阪府)
庄原市観光協会(広島県)
湖南市観光協会(滋賀県)
美祢市観光協会(山口県)
今帰仁村観光協会(沖縄県)
帝釈峡観光協会(広島県)

レゴランドが開園、注目の入場者数は非公表

レゴランド開園初日のようす

 レゴランドジャパン(トーベン・イェンセン代表、愛知県・金城ふ頭)が4月1日にオープンした。注目が集まった当日の入場者数については、非公表だった。

 当日、同施設代表のイェンセン氏は、「お越しのお客様だけでなく、その次の世代にも〝I LOVE LEGOLAND〟と言われ続けるテーマパークにしたい」とあいさつした。

 大型テーマパークの東海地方進出、ディズニーリゾート(千葉県・舞浜)やUSJ(大阪府・桜島)との競争など、各メディアで話題となることも多かった同施設。ほか2施設に対する差別化については、ターゲットを2―12歳の子供に設定しているため、前提となる立ち位置が異なるとの認識を示した。

 入場料については、大人(13歳以上)が6900円、子供(3―12歳)が5300円。2歳までの幼児は無料となる。ほか2施設は3歳まで無料で、中人(中学、高校生)や小人(4歳位上、小学生)、シニア(65歳以上)などといった細かい分類を行っている。そのため、インターネットを中心に割高感を指摘する声もあるが、設定したターゲットの取り込みに特化した価格設定といえる。今後は、孫とともに楽しむシニア世代を取り込む施策に期待したい。

 旅行会社との提携については、3月にJTBとのオフィシャルマーケティングパートナー契約締結を発表し、ターゲットとなる年齢層と家族に対する販売促進を狙う。

富裕層のシェア拡大へ。ラグジュアリーバス導入(JTB首都圏)

ロイヤルロードプレミアム(外観)

 JTB首都圏(池田浩社長)で高品質旅行を専門としているJTBロイヤルロード銀座は、4月1日から富裕層向けに同社オリジナルラグジュアリーバス「ROYAL ROAD PREMIUM」を導入した、高品質・高付加価値のバス旅行事業を本格的に始動した。同社は同バスを保有することにより、富裕層マーケットを中心にシェア拡大や新規顧客の開拓などを行うほか、日本全国を走ることによって、同バスが地域の魅力を発信する一助になることを目的としている。

 3月29日に東京都内で完成披露・新商品発表会が行われた。JTBロイヤルロード銀座の井上完之夢の休日デスク総支配人は、近年ラグジュアリーマーケットにおいて、より贅沢にゆったりとした時間を求める傾向が高まっており、この傾向に付随したハード面での素材が不足している状況を説明。そのうえで「このバスは存在感があり、走っていても目を引く。告知効果は非常に高い」と同バスにかける想いを語った。

 同バスの外観は高品質感が漂うメタリックブラウンカラーを使用。座席は、長時間乗っても疲れを感じにくい全席窓側独立型の本革張りシートで、通常45席の大型バスをわずか10席(添乗員用席を除く)にレイアウトしたゆとりある空間に仕上がっている。

全席窓側座席のためゆったりとした空間が広がる

 バス車内で快適に過ごしてもらえるようスリッパや加湿器、テレビなども完備され、化粧室・トイレ付きで、長距離移動でも心配なくバスでの旅を楽しむことができる。

 同バスを利用したバスツアー「ラグジュアリーバスで巡る夢の休日日本一周の旅」は、東日本編と西日本編の2つに分けてツアーを造成。4月10日に発売された東日本編は、9月11日出発の12日間の行程で、東京から鬼怒川や仙台、大間、苫小牧、函館を経由し、白神山地や黒部ダムなどを巡るコース設定になっている。

 11月出発の西日本編は夏頃の販売予定で、価格は東日本編・西日本編ともに1人あたり150万円を予定している。

 同バスの目標稼働日数は330日、年間のツアー本数は130本を予定している。

 なお、ツアーパンフレットは、2カ月ごとに新たなものを製作していく。