翻訳版「100選」冊子を発行、台湾400旅行社に配布(旅行新聞新社)

中国語(繁体字)に翻訳
中国語(繁体字)に翻訳

 旅行新聞新社は、昨年12月に発表した第41回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選(以下、旅館100選)」の入選施設の情報やランキング一覧を中国語(繁体字)に翻訳した冊子を発行しました。台湾の訪日旅行を取り扱う旅行会社に無償配布します。

 翻訳版旅館100選冊子の発行は今回で5回目となります。誌面は昨年に引き続き、本紙と提携する台湾の旅行業界専門誌「旅奇」で作成。4月中旬に台湾内の訪日旅行の取扱資格を持った旅行会社本社、営業所など400カ所に無償配布します。

 4月21―24日には「旅館100選台湾プロモーション」も実施します。事業には16旅館19人が参加し、台湾の旅行会社42社67人を招いての説明・商談会(22日)やギフト・文具の見本市「ギフショナリー台北」でのPR(23日)を行います。

 本紙購読の皆様には、翻訳版冊子を見本としてお届けしましたのでご覧ください。 

DMOと人材育成強化、日観振が新組織設立

 日本観光振興協会は4月1日から、観光地域づくり・人材育成部門に新たに「DMO推進室」と「日本観光振興アカデミー」を設立した。関心が高まる日本版DMOの形成支援と、体系的な人材育成プログラムの整備が目的。日本版DMOの推進に必要な専門人材育成については、両者で取り組みを強化する。

 DMO推進室は、DMOの形成や導入に向けて地域の自治体や観光協会、観光業界からの各種照会、要望などにワンストップで対応する。具体的な事業は日本版DMO普及啓発活動として、シンポジウムやセミナーなどを開催するほか、研修メニューの提示などを行う。人材育成については、必要な研修カリキュラムを策定し、集合教育を実施していく。

 日本観光振興アカデミーは、地域の多様なニーズと課題に対応する人材育成メニューを「観光地域づくり研修なび」を通じて提示し、公募で選定した地域で実施する。また、各分野の中核人材育成に向けて、テーマごとに必要な研修カリキュラムを策定し、集合教育を行う。このほか、観光ボランティアガイドの人材育成研修や産学連携事業として大学での寄附講座、ツーリズムセミナーの開催などを展開する。

開業の不安を解消、農家民宿の手引き作成(農協観光)

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 農協観光はこのほど、農林水産省の2015年度「都市農村共生・対流総合対策交付金」を活用し、「グリーン・ツーリズム農林漁家民宿の開業・運営の手引き」を作成した=写真。農家民宿の開業に興味がある人たちに向け、具体的な手続きやもてなし、安全管理、訪日外国人対応まで幅広く掲載することで不安を解消し、開業に挑戦してもらうのが狙い。

 手引きは(1)農家民宿開業に向けた準備について(2)農家民宿の開業手続きについて(3)宿泊者との関わり方について(4)安全管理について(5)関係者との連携について(6)外国人旅行者の受け入れについて――の6章で構成。開業者の声やイラストなどを交え、分かりやすく解説している。

 外国人旅行者の受け入れも推奨しており、言語ができなくても積極的に受け入れている施設が多いことも紹介している。なお、農水省では外国人旅行者の受け入れに積極的な農家民宿経営者に「Japan. Farm Stay」のシンボルマークを付与しており、チラシや名刺、Webサイトなどに利用できる。

 手引きのダウンロードは(http://ntour.jp/green2015/)から。

ホテル天坊の厨房視察見学会、4、5、7月に追加開催(見える化プロジェクト)

 旅行新聞新社は今年2月17日に開催した、群馬県・伊香保温泉「ホテル天坊」での「第1回見える化プロジェクト」旅館経営研究セミナー・厨房運営の視察見学会が好評に終わり、このほど「参加したかったけど予定が合わなかった」という声に応えるため、同セミナーの追加開催を決定した。会場は前回同様、ホテル天坊での開催となる。

 今回は、より多くの旅館・ホテルが参加できるよう、4、5、7月の計3回実施する。全日程1泊2日の行程で、1日目の午後2時より厨房視察や旅館経営と革新的調理運営の講演・パネルディスカッション、2日目は午前10時から旅館経営と見える化プロジェクトの講演・パネルディスカッションなどを予定している。

 開催日程は、4月25―26日、5月16―17日、7月11―12日の計3回。参加費はセミナー参加費と宿泊代を含め1人2万5千円(税別)。1室3―4人の料金で、2人1室、1人1室希望の場合、別途1人当たり2人1室プラス4千円、1人1室プラス8千円が必要となる。

 なお、宿泊料金には消費税・入湯税150円は含まれていない。

 申込み・問い合わせ=旅行新聞新社 電話:03(3834)2718。

返礼品に旅行商品を、ふるさと納税サイトと連携(JTB)

魅力的な旅行商品の開発を目指す
魅力的な旅行商品の開発を目指す

 JTB(髙橋広行社長)と、日本最大のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営するトラストバンク(須永珠代社長)はこのほど、ふるさと納税に関する業務提携を行うことで合意し、3月25日東京都内で共同記者会見を開いた。両社は今後、納税への返礼品として、地域の魅力を活かした旅行商品などの開発や、納税資金の有効活用方法の提案などを行っていく。

 ふるさと納税の現状では、2015年の寄付金推定総額は1500億円相当になるとみられる。16年度に関しては、昨年度の2―3倍で推移しており、3500億円ほどの金額を見込んでいる。トラストバンクの須永社長は「市場としては伸びているように感じるが、普及率としては6―10%程度にとどまり、いまだ10人に1人しかふるさと納税をしていない状況だ」と報告し、今後成長が期待される市場だけに、今一度納税制度について認知度向上をはかる必要があると述べた。

 JTBでは、ポイントプログラムに特化したふるさと納税ポータルサイト「ふるぽ」を運営し、返礼品の開発や、広報活動の代行などを行っている。同社の久保田穣常務は、返礼品としての旅行商品の割合について、トラストバンクが運営する「ふるさとチョイス」では1%、同社が運営する「ふるぽ」では6%強程度であると伝え、「今後、返礼品としての旅行商品を拡大させていくために、インターネットからの寄付だけではなく、当社の店頭での納税受付も今後検討していく」と述べた。

 JTBはこれまで地域交流事業で推進してきた「地方が元気になる活性化プランの提案」や「観光振興に資する地域の宝の掘り起し」などのノウハウを活かし、トラストバンクと共同で、寄付金有効活用のためのさまざまな提案を行っていく。

2016年度「第1回見える化プロジェクト」旅館経営研究セミナー&厨房運営の視察見学会

ホテル天坊・伊東實社長
ホテル天坊・伊東實社長

革新的な厨房運営へ―ホテル天坊(伊香保温泉)視察
2月17日、主催:旅行新聞新社・品質管理センター

 旅行新聞新社(石井貞德社長、東京都)と品質管理センター(松本麻佐浩社長、福岡県)は2月17日、群馬県・伊香保温泉のホテル天坊(伊東實社長)で2016年度「第1回見える化プロジェクト」旅館経営研究セミナーと、厨房運営の視察見学会を開いた。当日は全国各地から旅館・ホテル経営に携わる75人が集まり、労働生産性に特化した同ホテルの革新的な厨房運営事例について熱心に耳を傾けていた。

 昨今の旅館業界の現状では、公休未消化・残業時間の発生が当たり前となっており、調理従事者には過酷な労働時間が強いられている。また、このような労働環境下で“調理人不足”は喫緊の経営課題であり、伝統ある日本料理調理人の待遇の改善は、もはや急を要す事態へと発展している。

 参加者は75人。熱心に耳をかたむけた
参加者は75人。熱心に耳をかたむけた

 ホテル天坊では昨年の1―6月まで耐震対応と、1・2階を中心とした改装工事を実施。その際2階にある厨房を、耐震工事にともない全面改装した。同ホテルでも昨今の旅行業界の現状と同様に、調理部門のES改善が問題視されていた。そこで、同ホテルでは厨房の全面改装に合わせ、調理部のなかを、加工や加熱など実際の調理に関わるエリアと、調理以外の盛付などのエリアに分類するいわゆる「レシピー化による調理プロセス」を実践した。

厨房見学のようす
厨房見学のようす

 レシピー化とは各自の仕事において、調理加工のプロセス別に作業時間・作業内容を“見える化”することで、同ホテルでは主に(1)調理加工に関する項目(2)調理作業人に関する項目(3)その他(衛生区分など)に関する項目――の3点をレシピー化した。1つ目の調理加工に関する項目では各作業部門別に1日の作業内容を明示する調理加工作業指示書をパソコン上で確認し、予約数に応じた食材の使用量を予想するシステムを導入した。2つ目の調理加工人に関する項目では、調理社員たちの作業効率をレシピー化するために、作業指示書と同様にパソコンで各作業段階別の作業時間を検証した。これにより、作業段階別の作業時間が明確になり、各調理工程に必要な人数を確認することが可能となった。

 また、さらなる生産性の向上に向けて、システム導入以前より進めてきた「煮方」「焼場」「刺場」などの縦割り運営の見直しを行った。今までの調理工程では、業務数が多く、高度力量の作業と低力量の作業が混在しており、非常に生産効率が悪い調理場であった。しかし、プロセス調理に切り替え、プロセス別に力量の高いモノと低いモノを集めることによって、作業の一極集中化をはかったことにより、作業効率が向上し、力量別の作業運営システムが確立されたという。

 レシピー化による調理プロセスに切り替えた結果、同ホテルでは従来方式の運営時よりも作業時間が30%以上削減され、(1)材料の取り出し・加工後の冷蔵庫収納時間の短縮(2)移動時間の縮小による調理場の時短の向上(3)集中作業により調理作業の効率が向上――などが改善され、労働生産性が向上した。 

 このほどの全面改装による革新的な厨房運営について、同ホテルの伊東社長は「今回の改装は効率重視の調理場にするための思い切った改装だった。我われホテル業はお客様の評価があってこそ営業ができている。生産性の向上には難しい課題が多いが、今後も改善に努めていく」と話す。同ホテルの齋藤俊彦調理長は、「縦割り運営時代は調理棚がその日使うものなどで混在しており、隅々まで掃除が行き届いていなかった」と語り、「今回の見直しによって、調理人の仕事が分業化され、各自が自分の仕事に従事できる調理場になった」と、同プロセスによってたしかに生産性が向上していることを報告した。

■調理が「楽しく」なる厨房レイアウト

 旅館業界の調理設備の現状の問題点として挙げられるのが(1)清掃がしづらい(2)シンク排水管の殺菌ができない③排水溝の殺菌ができない(4)人間工学に基づいていない――などの問題点である。

 ホテル天坊でも全面改装以前は同様の問題を抱えており、床清掃を行う場合は、一度物品の移動を行わなくてはならないため清掃時間が長くなり、清掃意欲も低下していた。

 そこで同ホテルでは、全面改装に合わせ現状の課題を解決すべく、厚生労働省が推奨する食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れがある微生物汚染などの危害をあらかじめ分析。その結果に基づいて、より安全な製品を得るための重要管理点を定め、これを連続的に監視することによって製品の安全を確保するHACCP(ハサップ)に対応した厨房を導入した。

部門ごとに分けられた冷蔵庫
部門ごとに分けられた冷蔵庫

 冷蔵庫の写真を見てほしい。冷蔵庫は清掃を可能にするために「移動式棚」の収納に変更。仕込み品食材は、規格収納容器で統一し、加工日・賞味期限を明示することによって食品の混在を防ぐ工夫が盛り込まれている。また、作業台は高架台の移動式のものを導入し、清掃しやすい環境に変化させた。そのほか、重たいモノを抱える運営方法をなくすため、物品等の移動にはすべてカート方式などを採用したことにより、衛生面の確保と、生産性の向上が担保されたという。

 HACCP対応の厨房の導入により、同ホテルでは厨房機器購入予算を30%前後削減することに成功。機器点数が少ない分、改装前と同じ床面積でも、スペースを十分に活用することが可能となった。また、加熱ゾーンも隔離されたため、夏場でも厨房が暑くならず、快適な環境下で作業ができるようになった点も、厨房改革の1つの利点である。

 同ホテルはレシピー化による調理プロセスや、HACCP対応厨房の導入など、革新的な厨房運営によって、労働生産性が向上したが、労働生産性の向上と同様に重要になるのが、衛生面の対策(ノロウイルス対策など)である。同ホテルがある群馬県では過去に、食中毒の発生により営業停止になった旅館があり、ノロウイルス・食中毒への対策は、調理場の検便検査だけでは不十分の事態へと発展している。

 同ホテルでは、(1)浴場汚染・館内汚染による感染(2)食事食器による感染――の2系統からの感染を予防するため、電解水装置による殺菌を実施。以下で同ホテルが実践している電解水装置によるノロ・食中毒対策について迫る。

ノロウイルス対策に高い関心
調理場のノロを防ぐ! 電解水装置の役割

 ノロウイルス・食中毒対策は、セミナー出席者のなかでも非常に関心の高い話題であり、ホテル・旅館業界の現状では、調理場のノロウイルス対策が十分に行われておらず、院内感染と同様に、「館内感染」によって調理人も汚染を受けている。現在の状況では調理場も〝被害者〟なのである。そのような汚染環境を回避すべく注目されているのが電解水装置による殺菌だ。今回、厨房視察を行ったホテル天坊でも、厨房の全面改装を機に電解水装置による殺菌を導入した。ここでは同装置利用による最新の感染症(ノロウイルスなど)対策を紹介する。

 現状のノロウイルス対策として、食品調理加工施設はもちろんのこと、日常生活における衛生管理には、消毒用アルコールが信頼性の高い消毒剤として大きな役割を果たしている。

 しかし近年は、社会的な食中毒感染症問題を引き起こしているノロウイルスに対する効果が低いことから、アルコールをベースとする衛生管理の信頼性が揺らいでおり、より効果的なノロウイルス対策の確立が求められている。

 こうした状況のなか、食品添加物(殺菌料)に指定されている次亜塩素酸水(酸性電解水)が、ノロウイルスを含め広範な食中毒病原菌に著効を示し、流水洗浄という従来の殺菌料や消毒剤と異なる使用法で食材・調理器具・手洗いを含めて食品分野の衛生管理に威力を発揮することが明らかになった。

次亜塩素酸水の効果
次亜塩素酸水の効果

 このことから厚生労働省は2013年に、「大量調理施設衛生管理マニュアル」や「浅漬けの原材料の殺菌」、その翌年には「生食用鮮魚介類や生ガキ等」への使用許可に関する文書を都道府県宛てに通知。また、機能水研究振興財団からは「次亜塩素酸水生成装置に関する指針」や「ノロウイルス対策と電解水」など次亜塩素酸水の品質(物性規格)、有効性や安全性に関する標準化された知識や使用法が提供されている。

 機能水研究振興財団の堀田国元理事長は、次亜塩素酸水(HClO)と次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の違いについて「両者は化学的には同類です。しかし、両者には大きな相違がさまざまあります。まず、殺菌効果については、次亜塩素酸水は酸性であるため殺菌成分(HClO)比率が85―95%と高く、広範な食中毒原因菌に対して高い殺菌活性を示します。有機物の少ない同条件下での試験において40ppmの次亜塩素酸水は1千ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液と同等以上の殺菌活性を示すことが知られています」とし、次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウム溶液やエタノールに比べてはるかに高い不活化活性を示すと両者の違いを明確にした。

アマノの小規模向け電解水生成装置「α―Light」は、小さなボディなのに性能が高く、主に食品や包丁などの除菌、洗浄に利用できる
アマノの小規模向け電解水生成装置「α―Light」は、小さなボディなのに性能が高く、主に食品や包丁などの除菌、洗浄に利用できる

 衛生的手洗いの比較試験を行った成績では、電解水手洗い(強アルカリ性電解水で洗浄後に、強酸性電解水=強酸性次亜塩素酸水で洗浄)は、手指の汚れには石鹸と、一般殺菌に関してはアルコールと同様の効果があることが確認されている。東京都健康安全研究センターで行われた、各種の殺菌料を用いた衛生的手洗い試験においても、強酸性電解水(強酸性次亜塩素水)による手洗いはノロウイルスに対して、物理的除去に加えて不活化効果があることが報告されているという。

三浦電子の「ビーコロン水(電解次亜水)」は、食品添加物に認められ、厨房全体の衛生管理に利用可能
三浦電子の「ビーコロン水(電解次亜水)」は、食品添加物に認められ、厨房全体の衛生管理に利用可能

 堀田理事長は使用方法と安全性についての相違点に触れ、「使用方法に関しても、次亜塩素酸水はユーザー自らが装置を作動して生成し、そのまま希釈せずに新鮮なうちに流水使用します。それに比べ、次亜塩素酸ナトリウム溶液は高濃度(4%以上)の市販製品を目的使用濃度に希釈して浸漬使用するという違いがあります。そして安全性に関しては、次亜塩素酸水は『人の健康を害する恐れがない』という理由で食品添加物に指定されました。実際、皮膚や口腔内の粘膜に対してもほとんどダメージを与えないため、生体に使用でき、頻繁に手洗いをしても手荒れが少なく、人体を直接洗っても、誤飲してしまっても健康被害がでないほど安心です。また、臭さ(塩素臭)がほとんどなく、屋外環境に対する影響も少ないという利点があります。従って、次亜塩素酸水は人にも環境にも優しく、水道水感覚で使える殺菌料といえます。一方、次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性のため、皮膚粘膜にダメージを与えるため、手洗いなど体に直接用いることはできません」と述べ、改めて電解水の効率性と安全性を強調した。

 ホテル・旅館業界において電解水を理解し、使いこなしていくことは決して難しいことではない。食品分野における5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)を基本として電解水を使用するうえでの2S(洗浄・消毒)を心がけて使用すれば、人にも環境にも安全性が高く効果的という電解水の特徴を発揮させることができる。

 現在、電解水は日本で生まれ育った革新的衛生管理技術として、海外においても導入が広まりつつあり、今後、食品分野において急速に広まっていくことが期待されている。全国のホテル・旅館が今後、革新的な厨房運営を行っていくうえで、電解水装置による殺菌は必要不可欠なものになるだろう。

 なお、詳しい次亜塩素酸水に関する知識や情報は、機能水研究振興財団のホームページ(http://www.fwf.or.jp)から得ることができる。

国交大臣賞は江ノ電、総務大臣賞に燕三条、15年度観光ポスターコン

「江ノ電で、会いにゆく。」
「江ノ電で、会いにゆく。」

 日本観光振興協会は4月6日、2015年度日本観光ポスターコンクールの優秀作品を発表した。国土交通大臣賞には小田急電鉄の「江ノ電で、会いにゆく。」(制作=小田急エージェンシー)が、総務大臣賞には「燕三条 工場の祭典」実行委員会の「第3回『燕三条 工場の祭典』ポスター」(スプレッド)が輝いた。

 今回は全国から203作品の応募があり、48作品が第1次審査を通過。専門審査委員に写真家の宮澤正明氏とデザイン活動家のナガオカケンメイ氏、グラフィックデザイナーの左合ひとみ氏を招いて3月9日に最終審査を行った。また、2月9日―3月7日までオンライン投票を行い、1万4503人が投票、有効投票数は2万9868票となった。なお、表彰式は9月に東京ビッグサイトで開く「ツーリズムEXPOジャパン」内で行う予定。

「江ノ電で、会いにゆく。」
「江ノ電で、会いにゆく。」

 受賞作は次のとおり。

 【観光庁長官賞】JRグループ「ふくしまデスティネーションキャンペーン」(ジェイアール東日本企画)【日本観光振興協会会長賞】岩美町観光協会「しまっておいた日本がある。岩美町」(副田デザイン制作所)【審査員特別賞】東日本旅客鉄道「ウフフ!北陸新幹線」(電通)▽平成の薩長土肥連合「明治維新150年 平成の薩長土肥連合」(コア)【入賞】山形空港利用拡大推進協議会「西の伊勢参り・東の出羽三山参り」(山形アドビューロ)▽安曇野市「朝が好きになる街 安曇野」(安曇野市)▽南三陸町観光協会「いっしょにいるだけでうれしい ありがとう南三陸町」(ダ・ハ プランニング・ワーク)【オンライン投票部門】1位 白山市観光連盟「白山市観光ポスター」(バルデザイングループ)▽2位 函館市「宝石箱のように、きらきら輝く街。~初めてでも何度でも感動する、函館~」(北海道アート社)▽3位 安曇野市「朝が好きになる街 安曇野」(安曇野市)▽4位 岩美町観光協会「しまっておいた日本がある。岩美町」(副田デザイン制作所)▽5位 郡上八幡産業振興公社「積翠城の夜明け」(ロフロデザイン)▽6位 伊勢志摩観光コンベンション機構「伊勢志摩キャンペーン 伊勢神話への旅」(アド近鉄伊勢支店)

「観光」が国策に ― 外客4000万人、6000万人へ国が動く

 「観光」が国策となった。人口減少時代に突入し、安倍政権が最重要課題と位置づける地方創生の「切り札」として、観光に大きな期待を寄せる。首相自らが議長を務める「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は3月30日、2020年に訪日外国人旅行者数4千万人、30年に6千万人と大きな目標値が設定された。実現すれば、まさに世界有数の「観光先進国」となる。“国策にブレなし”と言われるように、余程大きな世界情勢の変化や天変地異が発生しない限り、政府はあらゆる手段を講じ、目標値に向けて優先的に突き進んでいくだろう。重厚長大産業全盛時代から観光産業が“日の目を見る”ことを夢見ていた世代にとっては、隔世の感を禁じえないはずだ。

 さて、この「観光ビジョン」には、3つの視点と10の改革が掲げられた。網羅的に課題と改革案が示されている。このなかで最も重視すべき点は、地方部(3大都市圏以外)の外国人延べ宿泊者数を「2020年には15年の3倍近い増加となる7千万人泊、そして30年には同5倍を超える1億3千万人泊を目指す」という部分だ。さらに、20年には地方部の比率を50%まで高め、30年には60%と3大都市圏を上回ることを目標に定めた。今後も大規模な国際空港を有する首都圏、関西圏、中部圏に外国人旅行者が集中することが予想されるが、目標達成には地方空港のLCC、チャーター便の受入促進が大きな課題となる。また、海に囲まれた日本は、クルーズ船の寄港がしやすい環境づくりが必要だ。さらに、LCCやクルーズ船の受入れ促進と一体で観光バスなど2次交通の整備が不可欠だ。「観光ビジョン」では、この観光バスの運転手不足などの課題解決への視点が弱いのが気になる。

 新経済連盟(三木谷浩史代表理事)は3月25日、観光政策提言を行った。こちらは国の「観光ビジョン」に比べ、よりラディカルな内容となっている。目標値も30年の訪日外国人旅行者数は1億人と、政府目標の6千万人を大幅に上回る。訪日外国人旅行消費額も30兆円と、政府数値15億円の2倍だ。

 提言では、訪日外国人の情報収集源のほとんどがインターネットであり、旅行先として日本を選んでもらうには「ネットによるマーケティングが極めて重要だが、デジタルマーケティングに配分される予算が不十分」と指摘。そのうえで、「デジタルマーケティング戦略の司令塔として、精通する民間人を政府CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に起用すべき」という提案は有効だと思う。また、単年度予算により継続的な情報発信ができていない状況も課題として挙げた。

 同提言では、外国人観光客の消費を促すことに関しては、キャッシュレス決済の促進を重視している。クレジットカードの利用により、浅草・仲見世商店街では客単価が1・6倍になるデータも引用し、現金以外の支払い手段受入の義務化を求めている。韓国ではキャッシュレス取引の売上高の2%を納付税額から控除する一方、カード決済拒否は刑事処罰の対象となる(加盟店)といった事例も紹介している。国は「観光先進国」へ舵を切った。しかし、注意すべきは、国策は追い風だけでなく、時に強引さもともなう。規制緩和などの政策へのチェックがこれまで以上に大事になってくる。

(編集長・増田 剛)

20年に訪日客4000万人、「観光先進国」へ政府目標

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明日の日本を支える、観光ビジョン構想会議

 安倍晋三首相は3月30日、首相官邸で第2回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を開き、訪日外国人旅行者数を2020年には15年の約2倍の4千万人、30年に約3倍の6千万人を新たな政府目標として掲げた。訪日外国人旅行消費額は20年に8兆円、30年には15兆円と定めた。「観光は、真に我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱」との認識のもと、3つの視点を掲げ、魅力ある公的施設の開放や生産性の向上、休暇制度改革など10の改革を示した。
【増田 剛】

 安倍首相は同会議で、「観光は我が国の成長戦略の大きな柱の一つであり、地方創生の切り札であり、GDP600兆円に向けた成長エンジンでもある」とあいさつ。さらに「赤坂や京都の迎賓館など魅力ある公的施設も大胆に開放し、観光の呼び水とする。また、豊かな自然が凝縮された『国立公園』を、世界の『ナショナルパーク』に生まれ変わらせる」と語り、「『世界が訪れたくなる日本』を目指し、10の改革を着実に実行していくことで、『観光先進国』という新たな高みを、国を挙げて実現していく」と強調した。

 20年の訪日外国人旅行者数4千万人は、15年の1973万7千人の約2倍。訪日外国人旅行消費額も20年には15年の約3・5兆円から2倍強の8兆円を目標に掲げた。

 訪日外国人の首都圏、名古屋圏、関西圏への集中をいかに分散するかが課題となっているが、3大都市圏を除く「地方部」での外国人延べ宿泊者数は20年に7千万人泊、30年には1億3千万人泊を目指し、地方創生に結びつけていく考えだ。

 そのほか、外国人リピーター数は20年に2400万人、30年に3600万人、日本人国内旅行消費額は20年に21兆円、30年には22兆円と設定した。

 会議では政府一丸、官民を挙げて新たな目標の実現に向けて①観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に②観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に③すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に――の3つの視点を示した。これをもとに、10の改革では、疲弊した温泉街や地方都市を、未来発想の経営で再生・活性化――も盛り込まれた。具体的には20年までに、世界水準のDMOを全国で100形成するほか、観光地再生・活性化ファンド、規制緩和などを駆使し、民間の力を最大限活用した安定的・継続的な「観光まちづくり」の実現など――に取り組んでいく。

No.428 JTB 地方創生を応援、地域×彩―irodori―プロジェクト始動

JTB 地方創生を応援
地域×彩―irodori―プロジェクト始動

 JTB(髙橋広行社長)はこのほど、〝地域のタカラを日本のチカラに″という想いを込め、クラウドファンディング(CF)の仕組みを活かし地方創生への取り組みを応援する「地域×彩―irodori―プロジェクト」を立ち上げた。近年注目を集める、クラウドファンディング。持続的な地域振興をはかるための、持続的な資金集めの方法として、同方法は地方創生のカギとなるのか。同社事業創造部企画・開発担当マネージャーの櫻井康一氏にCFの可能性について聞いた。

【松本 彩】

 

 ――事業の詳細について教えてください。

 「地域×彩―irodori―プロジェクト」は簡単に言うと〝宝(タカラ)探し〟です。地域にはまだまだタカラが眠っていて、例えるならサハラ砂漠のなかでタカラ探しをしているようなイメージです。JTBでもこの10年弱さまざまな取り組みを行ってきました。たまたま上手くタカラが見つかったり、オアシスが発見できたりなどがあればいいのですが、この狭い日本でさえまだまだ見えていないものが沢山あり、見逃してしまっている地域のタカラが多くあります。

 ではそうしたものをどのように見つけていけばいいのか考えたときに、砂漠のなかから「これはタカラになるか分からないけれど、一度見に来てくれないか」と手を挙げてくれる人が必要だと感じました。そのような人がいれば、実際に発見したものがタカラにつながるかどうかは確率として分かりませんが、少なくとも広い砂漠のなかで延々と探し回るよりは、タカラが見つかる確率は高くなります。

 そのような人たちが手を挙げてくれる仕組みはあるのかなと考えたときに、いろいろな手法がありますが、このクラウドファンディング(CF)という仕組みが、手を挙げさせやすくする一つのツールになるのではないかと思い、CFという仕組みを使った取り組みとして、このプロジェクトが始動しました。地域のタカラを日本のチカラにし、そのためのタカラの原石を見つけ、原石を磨くお手伝いをし、一緒に応援していく。そして日本中がもっと多彩で美しく、カラフルに染まっていくことを願って「彩―irodori―」と名付けました。…

 

※ 詳細は本紙1625号または4月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。