【特集No.616】お花見久兵衛(石川県) 価値あるコンテンツづくりへ

2022年8月1日(月) 配信 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の12回目は、石川県・山中温泉「お花見久兵衛」社長の吉本龍平氏が登場。若い世代は「価値や意味があるものには金を出す」傾向を踏まえ、リニューアルによって滞在中に楽しめる空間づくりを目指す吉本社長と内藤耕氏が語り合った。

【増田 剛】

 ――宿の始まりから教えてください。

 吉本:山中温泉街の中心部で10室未満の小さな宿「吉本屋」を営んでいました。1933(昭和8)年の大火で被災し、その後、祖祖父が地元の何人かと共同で宿を始めました。58(昭和33)年に現在の地で、木造80人収容の旅館「山水閣」を建てました。
 84(昭和59)年には64室約300人収容の鉄筋コンクリート造に建て替えました。バブル期の団体旅行全盛期だったので、団体客向けに規模を拡大しました。
 バブル崩壊後には個人化に対応するため、2部屋を1部屋にまとめ、露天風呂付き客室などに改修し、現在48室です。02年には館名を「お花見久兵衛」と変えました。

 内藤:代替わりをしたのはいつでしたか。

 吉本:私が旅館に戻ったのが2004年10月で、社長になったのは12年5月です。
 東京の大学を卒業後、1年半ほど名古屋で営業職を担当していました。すると、04年7月に女将(母)から「旅館の経営がピンチだ」という電話があり、会社を辞めて宿に戻ってきました。

 ――どのような状況でしたか。

 吉本:個人化への対応の遅れや収益構造自体に問題を抱えていました。当時メインバンクの石川銀行が破綻し、債権がすべてRCC(整理回収機構)に行ったこともあり、厳しい状況になりました。
 社長に就任する直前の12年2月に「中小企業IT経営力大賞」で、優秀賞をいただきました。当時、先駆けてホテルシステムを導入したほか、旅行会社に頼っていた販売チャネルを、インターネットを活用して自社公式サイトや、OTA(オンライン旅行会社)に切り替えました。営業体制や内部のオペレーションについても、例えば、紙の台帳で管理していたものをデジタルに移行しました。
 経営状況は、優秀賞を受賞した12年からも、じり貧状態を打開することが上手くできませんでした。バブル後では、10年に売上のピークを迎えたのは、そもそも他よりも早くネット上で販路開拓をしたことで瞬間的に先行者利益を得ただけでした。
 若女将(妻)は2年間、子供が小さかったので休職していましたが、コロナ禍の20年4月に現場に戻ってきました。厳しい経営状況を確認し合い、「根本的に改革しなければコロナ禍を乗り切れない」ことを話し合いました。内部の事務的な部分を含め、「利益が出せる体質に見直す」必要性を感じました。

 内藤:具体的にはどの部分を感じましたか。

 吉本:団体旅行の場合、宿泊料金よりも、宴会での飲食やコンパニオン費などで利益を出す構造になっていました。
 個人客はアルコールなど飲食で大きな利益は計上できません。付帯の売上は1人当たり平均1300―1500円程度で、なおかつ、1部屋の平均稼働率は2人ほどです。これほどの空間があっても利益を得られない構造になっていました。
 利益を出すには「稼働率を高める」、「付帯の売上を増やす」、もしくは「コストを下げるために販売・管理費を下げる」しかありません。
 団体から個人へと移行するなかで、限界利益率も飲食込みで2万円と、飲食なしで1万6千円では大きく違ってきます。その分、人件費を含む販管費をいかに削っていくかが課題となりました。
 若女将が休職する前に一番大変だったのは、団体客は一度に食事を提供できますが、個人客はオペレーションが大幅に増え、人件費が増えていきました。団体と個人を効率よく対応するオペレーションもなかなかできずに、「お客様から求められたものにすべて応えなければならない」という思想から離れることができないでいました。
 高級旅館のように高単価な料金をいただける施設を持っていないにも関わらず、お客様からは高級旅館並みのフルサービスを求められ、対応しようとしていました。

 ――いただける料金以上のサービスをしていたということですね。

 吉本:人材難によるサービスの低下、顧客満足度も下がるという悪循環に陥り、ビジネスモデルとしてまったく成立していない状態でした。

 内藤:さまざまな旅館を見てきましたが、皆同じようなご苦労をされて乗り越えた宿と、そうでないところに分かれています。その差は、団体から個人客に切り替えが上手くいっているか、否かです。 

 吉本:最終的には単価を上げていける宿になっていきたいので、計画的な設備投資だけではなく、サービスの品質を上げ、オペレーションのムダを省いていく見直しを行っています。

 ――具体的にはどのようなことですか。

 吉本:昨年はドリンクのオーダーをタブレットで受けることを始めました。ずっと伝票でオーダーをとっていましたが、スタッフが忙し過ぎてお客様が注文できないという状況を改善しました。付帯売上のチャンスの確保が大きな目的です。内部で伝票の書き間違えや会計でのミスなども多く、根性や教育でミスをなくす工夫はしてきましたが、思うようにはいきませんでした。
 このため、お客様にタブレットをお渡しし、ドリンクだけはタブレットから注文していただくスタイルに変えました。お客様も好きな時に注文できるので結果的にドリンクの売上が増え、伝票のミスもなくなりました。料飲部の書いた伝票がフロントで読めないなど、毎日のように発生していた不毛なトラブルもなくなりました。
 施設も、今夏のリニューアルオープンに向けて改修をしていきます。

 内藤:どのような改修をされるのですか。

 吉本:一番大きな宴会場を個室食事処にします。ほぼ稼働していなかったクラブラウンジを宿泊客が漫画を読んだり、卓球をしたり、くつろいだりできるエンターテインメント・リラックススペースにする予定です。
 そのほか、ラウンジでお団子や手焼きのせんべいなどをサービスで出していましたが、玄関を入ってすぐに大きな階段があったので視野が遮られ、フロントから土産物の売店や、ラウンジも見えない状況でした。昨年12月に思い切って階段を取っ払って動線を集約し、フロントスタッフがすべて対応できるように変えました。お客様に館内を動いていただくように考えています。

 内藤:それは正しいと思います。館内が楽しければ、お客は歩くことは苦痛ではありません。

 吉本:コロナ禍で始めたのですが、お菓子やジュースなど飲み物をフリーで提供するコーナーも館内に散りばめており、滞在中に楽しんでもらいたいと考えています。
 構造的な変更だけでなく、コロナ禍でお客様が何を求めているのか、実験的にサービスを変えながら確認をしています。
 例えば、これまでフロントカウンターで立ったままご案内用紙を見せながら一方的に長々と説明していましたが、お客様はすべて覚えられないし、客室に入ってからさまざまな問い合わせもありました。
 これを昨年思い切ってやめて、カウンターでは必要最小限の説明をし、ラウンジに座ってゆっくりとお団子を召し上がりながら読んでいただき、「もし分からないことがあればスタッフが丁寧に説明します」という、主導権をお客様にお渡しするスタイルに変えてみました。それでも1つか、2つしか質問はないのですが、お答えすると「親切だった」という評価をいただけるようになりました。
 スタッフの説明も、欲しいタイミングでなければ苦痛に感じてしまいます。スタッフの労力が大幅に省けたにも関わらず、お客様の満足度が上がる結果となりました。
 客室の案内もやめました。サービス業のスタッフは「何でもお客様にして差し上げたい」という想いが強いので抵抗を感じていましたが、客層も変わってきて、とくに若い世代などはべったりとした過剰なサービスが逆に苦痛に感じ、顕著に表情に表れることもあります。
 若い層は合理的に消費する世代なので、「ムダと感じるサービスが宿泊料に含まれているのなら選ばない」という考えが浸透しているのを感じます。つまり、「望まないサービスをパッケージ的に売られることを拒否する」傾向が強いのです。ミスマッチがあるのであれば、求められていないサービスを一旦削ってみて、お客様が本当に求めているものを拾い上げていく方が良い消費関係になれると考えています。

 ――客室はベッドが多いのですか。

 吉本:ほとんどが布団です。

 内藤:「客室にあまり入ってほしくない」というお客は洋室を選ぶかたちですか。

 吉本:いえ、客室での食事提供もほぼやめていますので、和室にも布団敷きのときを除いて入りません。布団敷きもやめたくて、コロナ禍で助成金も活用しながら、和洋室を徐々に増やしていっています。48室中、ベッドの客室は13室まで増えました。

 内藤:サービス業の面白く、難しくて怖い部分ではありますが、サービスの内容を何か一つ変えると、客層が入れ変わってしまいます。これまではすべてのお客をターゲットにしていたために色々なことを幅広くやられていたのを、サービスの内容を絞り込むことで客層も絞り込んでいこうとされているのですね。

 吉本:おっしゃる通りです。2009年に200畳の大広間の半分を、20席のレストランに改修してオープンしました。そのときにまだ団体客もあったので、思い切れなくて84畳分を残していました。結果として中途半端なレストランのため、48室に対し、20席しか作れず席も足りない状態でした。

 内藤:中途半端が一番良くありません。これまでやっていたことをやめるとすぐにお客が来なくなりますが、次の新しいお客が来るまでには時間がかかってしまいます。
 一般的に若い人は宿泊料金が安い方がいい。単価を上げて収益を出す方向と矛盾する面もありますが。

 吉本:若い人の消費の仕方は、「価値や意味があるものにはお金を出す」傾向が強いと見ています。
 一般的な旅館の1泊2食のパッケージでは、出された料理がいくらなのか分からない状態で購入しなければなりません。この場合、出費の拒否反応が強くなります。最終的には泊食分離が理想ですが、料理もアラカルトで選べるようにしないとお金を出してもらえない。価値を感じてもらえるものや、食べたいと思うものを商品開発していく必要があります。
 現在、ラウンジにカフェスペースを作る改修を行っています。お洒落なカフェに写真映えするドリンクであれば、高い単価でも若い層はお金を出すことは惜しみません。一方、お酒の瓶のままでは注文しません。
 「宿泊客がお酒を飲まなくなった」と愚痴を言うよりも、飲みたくなるもの、お金を出したくなるものは何かを考えて商品開発をしていく。付帯売上を最終的に増やすためには、売店も若い客が欲している商品をそろえるべきだと思っています。
 アメニティも決まったものを客室に置いていますが、ピックアップ方式に変えようと思っています。その代わり、少し宿泊単価を上げて、品質の良いものを用意して、「自分のためのお土産としてほしい」と思えるものを用意する。何にお金がかかっているか、お客様に対してきちんと「見える化」していくことが目標です。

 内藤:価格帯はどのくらいを想定しているのですか。

 吉本:2万―2万2千円の価格帯です。

 内藤:いい線ですね。

 吉本:若い人がしっかりと合理的に価値があると思っていただけるコンテンツを作っていき、単価アップしていきたいと思います。
 現状では、1泊2食でパッケージ化されたサービスがほとんどですが、お客様は必ずしもすべての内容に納得して払っているわけではないと認識しています。納得していないところに単価アップをしようとしても離れてしまう。サービスを細分化して組み合わせ、納得できる内容にしていければと思っています。

 内藤:「見える化」するということは、宿泊料金をどのように考えているのですか。

 吉本:ホテルに近い概念が必要で、1泊2食であっても客室料金を設定し、料理も松2万円、竹1万5千円、梅1万円などです。泊食分離に近づける過程で整理していきたいと思います。

 内藤:飲食店と違って20時間も滞在するなかで、収支の計算は難しいと思います。チェックインからチェックアウトまでの長い時間の中での価値を分割しようとされていますが、立地条件などで常識的に相場はこれくらいだろうと先に決まってしまう。どうしても小売業的に逆算して決まるのだろうと思います。
 単価アップをするにはどういうところに価値を付けるのですか。

 吉本:客室の単価アップは投資では作れないと考えています。それよりもパブリックを改修して、滞在して楽しめる空間をたくさん作る予定です。コワーキングもできるカフェもあり、茶室では抹茶を自分で点てられるスペースにする。デッドスペースになっていたクラブラウンジは、エンタメゾーンにして、雑誌を置き、卓球スペース、ボードゲームが楽しめるリラックスゾーンとして展開する計画です。
 パブリック部分はスーパー銭湯を持ってくるようなイメージです。
 若い世代は旅館の滞在中に客室で過ごすのではなく、パブリックスペースで滞在を楽しむスタイルが定着してきています。「客室にいても何をしていいのか分からない」、「スマホを眺めるだけでは家に居るのと変わらない」という声も多くあります。
 私自身も旅館に宿泊しても退屈を感じることがあります。お風呂に入って、夕食に2時間費やし、もう一度風呂に入るか、布団に入って寝るだけ。慌ただしくもあり、暇でもある。元々旅館は風呂、部屋、料理が基本機能ですが、それ以外がオマケではつまらない。どちらかと言えば、風呂、部屋、料理の比率を弱めて、その他の部分の楽しみを高めていきたいですね。

 内藤:旅館の客室には床の間があるのでリビング。一方、ホテルはベッドルーム。旅館はリビングがメインですが、ホテルはベッドルームなのでパブリックに出てくる傾向が強くなります。和洋室化して、ベッドルームが増えることで、パブリックで楽しんでもらおうとするコンセプトはいいと思います。

 吉本:客層的にもそちらの方が「ニーズが高い」と思っています。
 コロナ禍でホテルやビジネスホテルが苦戦しているなかで、宿泊特化型がパブリックを充実させるライフスタイル型のホテルが増えてきています。近年はグランピングや、貸別荘、一棟貸しなども注目されており、その傾向はコロナ禍でさらに加速したのではないかと思います。
 客室以外のサービスが充実した施設を一度体験してしまうと、時間緒制約が大きく、顧客にとって融通の利かない旅館の過ごし方は退屈してしまうと考えています。

 ――基本的にお客のニーズに応えきれていないということですか。

 吉本:若い世代は情報を主体的に取っていますが、旅館のお仕着せ文化は受け入れられないのだと思います。
 お客様の満足度にもつながらず経費が掛かっているサービスは削って、お客様が真に求められるサービスを提供していきたいと思っています。飲料水や駄菓子のサービスもお客様が自分で客室に持って行っていただけるし、満足度も高い。「旅館には饅頭や煎餅しかないと思っていたけど、市販の人気のチョコレートやポテトチップスなどもあってうれしかった」との声も多い。単価も1人平均200円程度で、満足度のリターンはとても大きいと感じています。

 内藤:客室にお菓子を置いてもそのくらいはかかる。コストがかかるときに目くじらを立てがちですが、コストをかけることをしないから減らすこともできない状態になってしまいます。費用対効果という概念は大事になってきます。
 バスタオルを大浴場に持っていくことにも抵抗が強いですね。

 吉本:アメニティをピックアップ方式にする理由の1つに、外部委託ですがバックヤードでセッティングするだけでもものすごく人件費がかかってしまうことも大きいです。4人部屋でも大人2人・子供2人や、大人2人・子供1人、大人2人など高齢の清掃スタッフは覚えられないので、廊下を何度も何度も往復して「歯ブラシは3本でよかったかな」と確認する時間もかかってしまいます。これをなくしたら、アメニティの単価が1人当たり100円上がったとしても、経費を考えると利益がでることになります。ミスも無くなり、クレームも減ります。

 内藤:帳票づくりにも相当にコストがかかっています。それに、間違えないようなチェックも何重にもしています。裏方で指数関数的にコストが増えていることには気にしないで、お客様満足度につながる数10円のコストが増えることについては拒否反応が大きくなります。

 吉本:人から生まれる労力を費用対効果として見ない傾向は強いですね。だからこそ数10円のコスト増が悪目立ちしてしまいがちです。今回のリニューアルを機に、オペレーションにおいて紙を全面的に廃止する方向で進めています。

 内藤:フロントスタッフが紙を見てルームキーを渡すか、パソコンの画面を見ながら渡すかで大きく変わってきます。デジタルだと直前まで修正や変更が可能です。帳票づくりがなくなるし、報告・連絡・相談がなくなります。

 吉本:紙に印刷すると更新ができず更新が発生したときに、「伝えた、伝えていない」の揉め事があちこちで起こりました。これによりチェック作業が発生します。

 内藤:紙とデータベースの違いは、紙は出力して渡すという報・連・相で「プッシュ型」。データベースは皆が見に来るので「プル型」になります。

 吉本:社員も、お客様も必要なときに、必要なタイミングで各々が情報を見に行ける環境づくりが、一番ミスマッチが少ないと思っています。

 内藤:紙ベースからデータベースに切り替えるだけで、大きな改革につながります。
 私は教育と管理と指導は無い方がいいと思っています。生産性向上に最も大事なのは業務の単純化です。

 吉本:まったく同感です。どうしても教育に転嫁されやすい傾向がありますが、すべてのオペレーションを単純化、標準化することに取り組んでいます。
 マニュアルも、動画で作ることで効率化していきたいと考えています。マニュアルを作る前には、その作業が本当に必要なのかと見直しも行っています。
 今日入社した社員が複雑な業務プロセスもなく、単純化されて、夕食を提供できるような状況が理想と考えています。

 ――ありがとうございました。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(210)」新たな産業観光概念としての「生業」(神奈川県小田原市)

2022年7月31日(日) 配信

ワークショップ風景(旧松本剛吉邸・第6分科会)

 2001(平成13)年に名古屋で始まった「全国産業観光フォーラム」も、21回目を迎えた。今年の開催地は、私にとっても馴染み深い、神奈川県小田原市であった。

 産業観光と言えば、産業遺構はもとより現役の工場・工房などのものづくりやその製品などを対象とする観光の一形態であり、編集視点だが、今やすっかり定着した感がある。

 しかし、今回の小田原はこれまでとは一味違っていた。テーマは「生業」。日々の商いやサービスなどを含む広い営みが対象となった。

 小田原は、戦国時代の後北条氏の「城下町」として発展し、また江戸時代には東海道屈指の「宿場町」として栄えた。明治期になると、政財界人や文化人たちの「別荘・居住地」としても愛されてきた。

 そのなかで、これら「城下町」「宿場町」「別荘・居住地」を支える、実に豊かな生業が生まれ、数百年を経た現在も色濃く残っている。

 海からの魚を加工した蒲鉾や干物などの「海なりわい」、山の木を加工した木製品や寄木細工、漆器などの「山なりわい」、温暖な気候と富士山の火山灰による水捌けの良い土壌に恵まれた柑橘類や梅干しなどの「里なりわい」など、豊かな生業がある。後北条時代から続く鎧甲冑の鋳物(砂張)や、500年を超える「ういろう」などの薬業や和菓子と茶の文化なども魅力的である。

かつての魚市場のにぎわい(現在の蒲鉾通り)

 「生業」概念は誠に多様である。2001年に小田原市政策総合研究所がまとめた紀要には、「なり」を「実り」、「わい」を「這う」という意味に解釈し、自然の恵みを加工して、流通に乗せ広げていく一連の流れのすべてを表す言葉として捉えている。つまり、自然の資源を加工・生産し、これらを販売・消費するすべての営みが「生業」とされている。

 これは、従来の「産業観光」の概念を大きく拡大することを意味する。産業は、日々の暮らしを支える根幹だが、そう考えれば商業・サービス活動も立派な産業観光の対象となる。

 旅館・ホテルをはじめ、日本の商業・サービス業は「生産性」が低いと指摘されるが、顧客視点からみたきめ細かい「おもてなし」は、海外からみると、ある意味素晴らしい観光資源でもある。

 2016(平成28)年に策定した小田原市観光戦略ビジョンでは、小田原の観光戦略の要を、こうした生業を元気にすることと明記した。まちなかの暮らしに支えられた生き生きとした生業こそが、小田原の「光」という捉え方である。観光ビジョンでは観光客の数や観光消費額は重要な指標となるが、その究極の目的は、地域の生き生きとした暮らしの実現であり、生業の元気なのであろう。

 観光戦略ビジョンは、今年度から新たな見直し作業に入る。次の小田原の観光まちづくりの戦略が楽しみである。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

安来市観光協会 ナビゲーター養成 10月からのツアー向け

2022年7月30日(土) 配信 

フィールド実習で安来の魅力を再確認

 島根県の安来市観光協会は7月23、24日の2日間、10月から本格的に始めるサイクリングツアーに向け、ナビゲーター養成講座を開いた。同ツアーの案内役を目指す地元サイクルショップのスタッフなど13人が参加した。

 講師はサイクリングイベントの企画運営などを行う「BREZZA」(神奈川県横浜市)の筬島洋敏代表と、ホスピタリティアドバイザーの加藤香穂里さんの2人が務めた。

 講座では、初日にサイクリングツーリズムの現況分析や地域活性のための自転車活用事例と、ガイドに必要な安全知識などを座学でレクチャーし、参加者は真剣な表情でメモを取っていた。

座学ではメンテナンス方法なども学んだ

 2日目は、実際に安来市内を講師とともに走行するフィールド実習へ繰り出した。市内の観光スポットを巡ったほか、JR安来駅からほど近い十神山を臨む公園では、語り継がれる出雲神話のエピソードの説明も受けた。講師はツアー実施時のお客への気配り方法やSNS(交流サイト)に投稿してもらうための仕掛けなども伝授していた。

 同協会は、個人や小グループが地域をアクティブに巡る旅のスタイルを構築しようと、JR安来駅を拠点にしたサイクリング事業の拡大に力を入れている。昨年実施した4本のモニターツアーで手応えを掴み、10月以降の土、日曜日に隔週ペースでガイド付きのツアーを始める予定だ。

 コースは月山富田城跡・能義平野方面、能義・伯太・雲樹寺方面など、約20―40㌔を5時間程度かけて、ゆっくりと周遊する計画だ。日本遺産に認定されている「たたら製鉄」関連の要素も盛り込み、より深く安来の魅力を体感できるものにする。料金はレンタサイクル、昼食、ガイド料などを含め1人4千円前後を想定する。

 ナビゲーターが独自に考案するコースの実施も視野に入れる。今回の講座には、安来駅で観光列車の乗客を出迎える「どじょうすくい出迎え隊」の上田信也隊長(夢ランドしらさぎ総支配人)が参加しており、どうじょうすくいの衣装でのサイクリングツアー実施も1つのアイデアだ。

 同協会の門脇修二事務局長は「サイクリングだからこそ感じられる空気感や風景がある。走るだけでなく、立ち寄りを増やすことで地元の人と参加者の交流の場面をつくり、新しい安来観光の魅力をつくっていきたい」と意気込む。

国交省、22年観光功労者大臣表彰 開催延期した表彰式開く

2022年7月29日(金)配信

斉藤大臣から表彰状を受け取るロイヤルホテルの中村雅昭専務

 国土交通省は7月29日(金)、開催を延期していた2022年観光関係功労者国土交通大臣表彰の表彰式を行った。当初、今年4月25日(月)に表彰式を行う予定だったが、新型コロナの感染状況を鑑みて開催を延期していた。表彰式当日は受賞者15人のうち9人が出席。各功績分野の代表者が登壇し、斉藤鉄夫国土交通大臣から表彰状を授与された。

 斉藤大臣は、受賞者に対して「長年にわたり活躍され、他の模範となる顕著な業績を上げてこられた」と、これまでの努力と功績に敬意を表した。そのうえで、国交省として「必ずやこの苦境を乗り越え、かつてのように各地が観光業でにぎわう日が来るよう最大限の努力をしていく。受賞者には先頭に立っていただくことを期待する」と語った。

 受賞者は次の各氏。

 【ホテル業・経営者】中村雅昭(ロイヤルホテル代表取締役専務執行役員)

 【ホテル業・従事者】髙橋義明(帝国ホテル調理部センターキッチン課専門職課長)▽佐藤進一(京王プラザホテル取締役総料理長)▽折田道明(富士屋ホテル湯本富士屋ホテル宿泊課マネージャー)▽前田忠司(高山グリーンホテル調理本部調理部主厨房)▽藤原浩二(倉敷国際ホテル本館支配人兼料飲部長)▽塚脇邦浩(リーガロイヤルホテル広島総支配人室〈施設〉課長)

 【旅館業・経営者】田中榮一(元日本旅館協会北陸信越支部連合会長野県支部常務理事、ホテル亀屋代表取締役会長)▽市川行雄(日本旅館協会理事、蒲郡竹島観光取締役相談役)▽岡田昇(日本旅館協会中部支部連合会常任理事、岡田旅館代表取締役)

 【旅館業・女将】堀美惠(つるやホテル常務取締役〈女将〉)▽渡邉やゑ(海栄館取締役〈大女将〉)▽下竹原実穗(指宿白水館取締役〈女将〉)

 【旅行業・従事者】坂井信予(シーエム・ネット添乗員)▽野渕直美(TEI添乗員)

7月28日までの申請1万2291人 外国人の新規入国希望者数(観光庁)

2022年7月29日(金) 配信

観光庁は7月28日時点の新規入国希望者数を発表した

 観光庁は7月28日(木)時点の外国人観光客の受け入れ状況を発表した。入国健康確認システム(ERFS)における7月28日(木)午後6時時点の新規入国希望者数は、1万2291人。

 外国人の観光目的の新規入国については6月10日(金)から、日本国内に所在する旅行業者などが受入責任者となり、入国予定者のERFSにおける事前登録が必要となっている。

 時期別の新規入国希望者数は、7月29(金)~31日(日)は1386人、8月1(月)~31日(水)は8072人、9月以降は2833人。

 国籍別では、上位5カ国は韓国(5244人)、米国(1344人)、タイ(1217人)、フランス(535人)、マレーシア(424人)の順。

 希望者数は、ERFSから旅行業者へ発行された受付済証数から集計した。なお、ERFSへの申請数のため、希望者数は随時変化している。

 新規入国希望者数は、毎週発表される。

ジャニーズJr.の5人が映像バスガイド、8月1日から都市観光バスツアー「WOW RIDE」 東京都内で運行

2022年7月28日(木) 配信

車体外装

 KNT-CTホールディングスと同グループのクラブツーリズム、フジ・メディア・ホールディングスの総合広告会社のクオラスは8⽉1⽇から、都市観光バスツアー「WOW RIDE」の運行を開始する。

 バスの窓を「透過有機EL ディスプレイ」と⼀体化させることで、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)映像の投影を可能にした映像表⽰システムを使用し、VRゴーグルを装着せずに⾮⽇常空間の体感が出来る「世界初」の都市観光バスツアー。

 好評を博した今年2~3月に実施したツアーの内容を深化させ、ジャニーズJr.の5人を、ジャニーズ初の映像バスガイドに採用。最新のAI対話システムを導入したことで、ジャニーズJr.との疑似対話も実現した。

 新感覚バスツアー「WOW RIDE」東京タイムトリップは、東京の観光名所を巡る60分間のモビリティーエンターテインメント。複合商業施設GINZA SIXに隣接する銀座六丁⽬バス乗降所を出発し、⽇本橋、東京駅、皇居、国会議事堂、東京タワー、レインボーブリッジ、豊洲、勝鬨橋、歌舞伎座を巡る約60分の周遊コース。

 走行中は車窓から東京の街並みを楽しむだけではなく、映画監督の堤幸彦氏が総合演出を手掛けた映像を通じ、東京というまちを楽しく学べるのが特徴。同映像は実際に走行している場所周辺の車窓風景と関連付けられており、皇居周辺では桜田門外の変、虎ノ門付近では東京の地下鉄の構造など、歴史やまちの構造などを没入感を感じながら、楽しく学ぶことができる。

 ツアーは12⽉末までの運行で、現在8月分の予約を受け付けている。料金は大人、子供ともに4800円(税込み)で、定員は各回21人。ツアーは1日4回行われる。

世界初、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル フライトシミュレーターとキャビンモクアップの一体型施設をホテル内にオープン

2022年7月28日(木) 配信

フライトシミュレーター「SKY Experience」

 シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県浦安市)は8月1日(月)、フライトシミュレーターとキャビンモクアップの一体型施設をホテル内にオープンする。シミュレーターとキャビンモックアップの両方が、 ホテル内に導入されるのは、 世界初。

 フライトシミュレーター「SKY Experience」はパイロットも操縦訓練で使用するボーイング737型機のコックピットでの操縦体験ができるモノで、本物の飛行機のスイッチや操縦桿が実物大として搭載されていることに加え、ソフトウェアもボーイング社と同じものを使用。

 世界約4万5千の空港から好きな発着空港や天候、時間帯などを選ぶことができる。操縦士技能証明の資格を所持するインストラクターが付き添っているので、誰でも気軽に本格的な操縦体験が楽しめる。

 約13メートルにわたるマクドネル・ダグラス MD-90型のキャビンが再現されたモックアップには旧政府専用機で使われていた座席やカーペットのスペアパーツなど、退役した航空機の本物の部品が使われており、購入することもできる。

旧政府専用機で使われていた座席やカーペットのスペアパーツを使用
マクドネル・ダグラス MD-90型のキャビンが再現されたモックアップ

 またモックアップの手前にある受付カウンターも航空機のエンジンカバーを再利用したものとなっているなど、航空機ファンにもワクワクする仕掛けが随所にちりばめられている。

 フライト体験は1~2人で利用できる30分コースと、1~4人で利用できる70分コースの2種類を用意。宿泊者の利用料金は、30分コースが1万5000円から、70分コースが3万円から。宿泊者以外は30分1万9800円、70分3万9600円。夢のパイロット気分をより盛り上げる、 パイロットの制服(シャツ、 肩章、 ネクタイ )もオプションで有料レンタル可能。フライトシミュレーターをお得に体験できる宿泊プランも用意している。

 「ファミリー層に、これまで体験したことのないようなエンタテインメント施設を」という考えのもと整備された同施設。関係者は、「リゾートホテルでの滞在を楽しむとともに、国内にいながらプチ海外旅行気分も味わっていただきたいです」とPRする。

HIS、ハワイへの旅マエに説明会開催 コロナ禍で安心感高めてもらう

2022年7月28日(木) 配信

説明会のイメージ

 エイチ・アイ・エス(HIS、矢田素史社長)はこのほど、ハワイへ出発するパッケージツアー参加者を対象に、旅マエの準備や注意事項などを現地スタッフに直接質問できる「出発前オンライン説明会」サービスを始めた。コロナ禍での海外旅行に不安を感じる利用客に安心感を高めてもらう。
 
 同サービスは、空港到着後からワイキキまでの移動の流れやハワイ滞在中の注意事項などを動画で説明するほか、現地の最新情報を伝える。さらに、おすすめのレストランなども紹介する。その後の質疑応答時間には、現地スタッフがチャットでの質問に答える。
 
 説明会は隔週の水曜日と金曜日に30分程度、Zoomで開催する。費用は無料。

【PR】第2回観光経営力強化セミナー 9月1日(木)、都内で開催 テーマは「宿泊業界の人材不足を乗り越えるには」 リアルな交流の場も提供予定

2022年7月28日(木)配信

 東京都と(公財)東京観光財団は2022年9月1日(木)、東京都内で第2回観光経営力強化セミナーを開催する。今回は、「宿泊業界の人材不足を乗り越えるには」をテーマに、3部構成のプログラムを用意した。東京都内の観光事業者(旅行業や宿泊業、飲食業、小売業、観光施設)に加え、「都内の観光産業に関わっている人」も対象に、8月25日(木)まで参加者を募集している。参加は無料。

 第1部のセミナー(午後2時5分-3時10分)は、「宿泊業界の人材不足を乗り越えるには」がテーマ。宿屋大学代表・近藤寛和氏がコロナ回復期で宿泊業界に起きた変化を解説するほか、石川県金沢市のライフスタイルホテル「LINNAS Kanazawa(リンナスカナザワ)」のホテルスタッフ・チチ氏へのインタビューセッションも企画している。

 第2部の東京観光産業ワンストップ支援センター事業説明会(午後3時20分-3時50分)では、今年7月に開設した新しい相談窓口を通じて利用できる、東京都や(公財)東京観光財団が提供する観光関連事業者向け支援メニューを紹介する。

 知見を深めるだけでなく、第3部では参加者同士がリアルで交流を深める「名刺交換会」(午後3時55分-4時30分)も開催する。セミナーの感想や、互いの状況、これからの方針・新たなビジネス展開などを自由に意見交換してもらう。

第2回観光経営力強化セミナー

開催日:2022年9月1日(木) 午後2:00-4:30(1:45開場・受付)
会 場:測量年金会館 2階「大会議室」
    東京都新宿区山吹町11番地1
    東京メトロ有楽町線江戸川橋駅(2番出口)徒歩5分
    東京メトロ東西線神楽坂駅(矢来町側出口)徒歩5分
定 員:来場参加 60人、オンライン100人(要事前申込)
    来場参加は、第3部の名刺交換会に参加希望のある人が優先
参加費:無料                             
対 象:東京都内の観光事業者・観光産業に関わっている人
プログラム:
    第1部 セミナー
     午後2:05-3:10 ※オンライン同時開催 
     テーマ 宿泊業界の人材不足を乗り越えるには
        Part1 宿屋大学代表 近藤寛和 氏
           「コロナ禍~回復期で宿泊業界に起きた変化」
        映像   LINNAS Kanazawa の秘密に迫る
           ~ローコストオペレーションと顧客満足の両立⁉~
        Part2   インタビューセッション
             近藤氏からLINNAS Kanazawaチチ氏へ

         第2部 東京観光産業ワンストップ支援センター 事業説明会
                午後3:20-3:50 ※オンライン同時開催

     第3部 名刺交換会
      午後3:55-4:30

講師紹介

ホテルの新しい在り方を捉え、夢のある宿泊業界を創る
宿屋大学代表 近藤 寛和 氏

【プロフィール】法政大学卒業後、出版業界においてメディアを駆使しホテル業界の活性化に尽力した後、ホスピタリティ業界のプロフェッショナル・マネジャーを育成する宿屋大学を設立。日本を代表する観光地に立地するホテルの総支配人を輩出。また宿屋大学の運営・内部講師だけでなく、多数の著書を出版し、外部研修講師も務める。

宿泊業界に変革を起こす、次世代ホテルスタッフ
LINNAS Kanazawaホテルスタッフ チチ 氏

【プロフィール】新卒で大手リゾート会社に就職後、転職してLINNAS に参加し、代表の松下氏とともに LINNAS Kanazawa を立ち上げる。ホテルの中でのサービスを提供するだけにとどまらない、「ホテルスタッフのNew Basic」確立を目指し、地域ぐるみでの活動やSNS での発信にも力を注いでいる。いしかわ観光特使。

お申込み・問い合わせ

観光経営力強化セミナー事務局(株式会社ゼロイン)
担当:安野・増田  午前10:00-午後5:00
TEL:03-5537-5554 E-mail:info_seminar@zeroin.co.jp
お申し込みはコチラから(Googleフォームへのリンクです)

茨城県、台湾で食と観光PR 宣伝大使に渡辺直美さん

2022年7月28日(木)配信

特設サイト「開運茨城」イメージ

 茨城県は7月25日(月)、台湾で食品の輸出拡大やコロナ後の観光誘客を目的として大規模なプロモーションを8月1日(月)から展開すると発表した。宣伝大使には、台湾生まれで茨城県育ちのタレント・渡辺直美さんが就任。台湾と茨城県の「懸け橋」となり、広告媒体や特設ウェブサイト、SNS(交流サイト)などを通じて、台湾に向けて「新しい日本の目的地 茨城」をPRする。

 プロモーションの第1弾として、8月1日(月)に茨城県のパワースポットなどと食を「開運」のコンセプトで紹介する特設ウェブサイト「開運茨城」を開設。あわせて、台湾・台北の中心街を同日から1カ月間、「開運茨城」で埋め尽くすジャック広告を実施する。

 特設サイトやSNS(中国語繁体字)では、各種イベント情報を発信するほか、茨城県の観光や食にまつわるクイズキャンペーンを8月から毎月実施。正解者の中から抽選で菓子類や地酒、青果物などの厳選した県産品などのプレゼントが当たる。

 このほか、県産品のテスト販売や、「2022台湾美食展」「台北国際観光博覧会」へのブース出展、観光商談会の開催など、多方面からのアプローチを同時期に行う。台湾に向けて茨城の周知をはかり、同プロモーションを盛り上げる。