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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(125) 当たり前の行動の奥から特別な行動を見つけ出そう 大切な時間を守る仕事

2021年6月4日(金) 配信

 

 貸切バス会社の運転士研修で「最も大切にしていることは何ですか」と質問すると、ほぼ全員が「安全」と答えます。大切なお客様の命を預かる仕事で、「安全」が大切なのは間違いありません。

 次に、「その安全を守るため、何に注意して業務を行っていますか」と問い掛けると、「運転速度と対向車や前方の車の動向に注意して、急ブレーキや急ハンドルしない」。さらに、「十分な睡眠と健康管理」という声も多く出ました。すべてが大切で納得できるものです。

 そのなかで、1人の運転士から「お客様の着席を確認してから、バスを出発させるようにしている」という声が上がったのです。実はその「声」を待っていたのです。

 「安全」といえば「事故を起こさない」という声がほとんどですが、研修で伝えたかったのは、「安全」とは事故だけではなく、お客様を守る意味合いがあるということです。

 シートベルト着用が義務付けられてから、バス車内でもその案内があります。しかし、大抵はマイクで着用を伝えるだけで、実際にお客様が着用しているかどうかを目視確認する運転士はほとんどいません。

 最近では航空業界も同様です。以前はCAが客席を回りながら、毛布やコートなどでシートベルトが見えない時は「確認させてください」と必ず声を掛けていました。

 今では案内すら、あらかじめ用意した音声を流すだけになってきました。安全への意識が薄れて行くのは、こうした効率化が優先された現場で起こるのではないかと危惧しています。そんななか、お客様の着席をしっかり確認してバスを出発させるという行動は本当に素晴らしいことです。

 観光バスが途中休憩後に出発するとき、バスガイドが「バスが動きますのでご注意下さい」と話していますが、実際には、すでにバスは動いていることが多くあります。

 バスは動き始めた時に最も力がかかり、大きく揺れる可能性が高いのです。そのときに、買い求めた土産を頭上の棚に置こうと立ち上がっている人がいたら、倒れてケガをされる危険性があるのです。バスガイドももちろんそのことは分かっています。ただ、日々繰り返される仕事の中で、そうしたことが起こらなければ、「たぶん大丈夫」という気の緩みが出てしまうのです。

 仕事でお客様に喜んでいただくのは、当たり前のことです。さらにそのうえで「お客様を守る」とはどういう行動で実現できるのかを「もっとほかに、もっとほかに」と深く考えていきながら、お客様への意識を高めることが、お客様の大切な時間を守る仕事につながるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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