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「トラベルスクエア」 アフターコロナは「質」重視へ

2020年5月23日(土) 配信
  
 ちょっとした病を得て、入院生活を余儀なくされていたので、このコラムも1回お休みをいただきました。ご愛読者の皆さん、申し訳ありませんでした。
 
 もっとも、娑婆にいても自粛の幽閉生活、病院にいる方が安全かもよ、という声もSNSなどでずいぶんいただいた。
 
 とはいえ、その間、旅館さんやホテルの倒産、廃業、身売り話が幾つも聞こえてくるし、個人的な知り合いも多い、小売業専門の「商業界」の倒産にもびっくりだった(廃刊号の特集が「アマゾン対抗策」というのも皮肉な話)。海の向こうからだって、手堅いファッションブランドのJ・W・クルーや、超高級百貨店のニーマンマーカスが倒産というのも驚き。
 
 こんな黙示録的(終末的)な光景ばかり見せつけられると憂鬱になるばかりなので、いつになるか分からないが、アフター黙示録の宿泊産業がどう生きて行ったらいいのか、考えることにした。
 
 正直、この緊急事態宣言が外され、商売の一部が自由になれば、温泉需要は消費者の自粛疲れもあって、割に早く殺到するのではないかと思う。それは厳戒下の今でも熱海が予想以上ににぎわっていることからも分かるが、それが怖い。
 
 今後も収入がきちんとあるか不安に思う勤労層が半分以上あると思われるこれからの消費マーケットでは、とにかく低価格が受けるのは間違いない。1泊2食型で詰め込み主義のパターンから埋まると思うのだが、ここは各温泉観光地とも、心して、平均の宿泊上代を上向きにもっていく最大のチャンス到来と考えてほしいのだ。
 
 もちろん、みんなで価格を談合して決めるのは独禁法に触れるからNGだが、全体に宿泊単価を皆で上げていくことにトライするチャンスはアフターコロナだろう。
 
 要するに、「量」を集める経営から「質」重視の経営への本格的転換を目指したいのだ。
 
 ここで安売り競争で、遠くからの客も歓迎、1室4人も5人も詰め込みたいなどと考えれば、これまで頑なにみんなが守ってきた3密原則を覆すことになる。そこでまたコロナクラスターを起こしたら、社会的糾弾の対象になってしまう。
 
 せめて、最初の半年はお隣の3県くらいからしか予約を受けない。1室2人の定員を厳守する。食事場所も十分ソーシャルディスタンスを守れる座席配置にし、ビュッフェも小皿配膳にするといった配慮が必要だろう。
 
 館内消毒などにもコストがかかる。これからの旅館は社会的責任を負うから、これまでの料金よりお代を高くしていただきたい、とお客に納得させるべきなのだ。
 
 お客に「安全な宿泊」を売るということの意味。これを今から考えていてほしい。
 

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

 

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