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【特集No.532】観光教育 早期導入で業界へ優秀人材を

2019年8月30日
編集部:木下 裕斗

2019年8月30日(金) 配信

 観光教育が変わろうとしている。従来は大学や専門学校などが中心だったが、近年、小中学校の社会科の授業で地域理解のために観光を用いている。観光教育の早期導入は、現場の教育者が集まるシンポジウムで「観光業で優秀な人材を確保できる」とメリットを挙げる声もあり、観光業界にとって明るい話題になりそうだ。本紙では、立教大学名誉教授で、付属中学校と高校で校長を務めた村上和夫氏と、玉川大学教育学部教授の寺本潔氏にそれぞれ観光教育のメリットや実態、課題を聞いた。

【木下 裕斗】

玉川大学教育学部 教授 寺本 潔(てらもと・きよし) 氏

小学生に観光への興味促す

 ――寺本先生はなぜ観光教育を小学校など、早い段階での導入を提唱されているのでしょうか。

 日本の基幹産業になりつつある観光業に、優秀な人が若年のうちから興味を持ってもらいたい。そのために、小学校から観光教育をスタートするべきだと考えます。

 小学校5年生の社会科の授業では、自動車産業や農業、警察、消防など、さまざまな仕事を詳細に説明し、理解を深めています。

 しかしながら観光は、大学や専門学校で初めて勉強する人がほとんどです。他産業と比較してスタートが遅れています。

 外国人旅行者の消費額は2018年には4・5兆円を記録しました。これは製品別輸出額と比較したとき、1位の自動車に次ぎ、2位の半導体等電子部品を超える規模です。また、人口減少社会を迎える日本では、交流人口の増加で消費額減少を抑える効果も期待されています。

 ――先生が取り組んできた授業内容は、具体的にどのようなものでしょうか。

 沖縄県でも有名な観光地である国際通りから、徒歩で約5分のところにある沖縄県那覇市の開南小学校では、観光地の近さから、「観光は地域の身近な産業」と捉えられており、社会科の時間でじっくり学習できました。

 具体的な授業内容は「沖縄県に旅行に来た理由と国籍」というテーマのもと、5年生の児童が国際通りで観光客にインタビューをしました。外国人には英語を用いました。

 「身近なモノやコトが観光で生かせること、一方で魅力的だと思うモノやコトが観光客に伝わっていないことが理解できた」と生徒たちは話していました。

 英語能力の向上とコミュニケーション能力、主体性も伸ばせました。

 ――小学校・中学校・高校のそれぞれで学ぶべきことは。

 小学校では「観光が地域の発展に寄与していること」を教えるべきです。児童が観光業に興味を持ち、将来の夢の1つにしてもらうことが理想です。

 中学校では日本の各地域がどのように魅力を発信しているかを知ったうえで、「地元の観光資源に人を呼び込むための計画」を考えてほしい。生徒に観光業の実態を教えるために、旅行会社の社員を客員教員として招くことも有効です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

立教大学 名誉教授 村上 和夫(むらかみ・かずお) 氏

将来見据え、仕事を教える

 ――村上先生は立教大学観光学部で教授を務めていましたが、学生に指導したい内容を具体的に聞かせて下さい。

 大学は、抽象的で理論的なことを教え、具体的な仕事(働く事)を意識した教育の時間を多く割いてきませんでした。それは高等教育として当たり前かもしれません。

 学生はインターンシップやアルバイトなどで働くものの、仕事と大学の学びを結びつけ、仕事に対する責任やマネジメントを学ぶ機会は十分ではありません。大学はこれを補完するためにキャリア教育をしますが、やはり就職後に企業内訓練を受け、仕事に対する理解を深めるのが現実です。

 中学を卒業し普通科へ進学する生徒が多いために、仲間の約7割がこのような状況で就職します。それは、集団就職があり大学進学率が3割以下であった半世紀前とはまったく異なります。

 大学は、企業などと連携して実務経験者と共に学ぶ機会を取り入れるべきだと考えています。

 大学生には長期間、責任のある仕事を体験してほしい。例としては欧州のような「ワークプレイスメント」があります。学生が半年以上、責任をもって仕事を行うものです。そして就業期間の終了後、学生には、社会で必要なことと自分のスキルを生かせる講義の選択を促します。…

【全文は、本紙1765号または9月5日(木)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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