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HIS、平成の30年を振り返る 様変わりした旅行業界

2019年2月20日
編集部:平綿 裕一

2019年2月21日(木) 配信 

平成の時代を経て、大きな変化があった「旅」(画像はイメージ)

エイチ・アイ・エス(HIS)はこのほど、2019年4月末の天皇陛下の御退位、皇太子殿下の御即位に伴い改元されることを踏まえ、平成時代30年間の旅行トレンドを3つの時代に分け、振り返った。「インターネットの普及に端を発するIT技術の革新で、旅行業界にもイノベーションが起きた時代だった」――。

インバウンドが急増し、日本人出国者数を上回った

1989年~2000年 海外旅行転換期

【旅の主流はパッケージツアー】

HIS初代パンフレット

 この時期は、バブル景気から崩壊へと国内の経済が急激に変わり、ベルリンの壁開放、ソヴィエト連邦解体という世界でも大きな転換期を迎えていた。海外旅行の主流はパッケージツアーと呼ばれる、旅行会社が企画・募集・催行するものだった。他方、FIT(Foreign Indepedent Tour)と呼ばれる個人で海外に行く手配を取り扱う旅行会社が徐々に増加してきた時代でもあったという。

 1980年に創業したHIS。大手旅行会社とは異なり、海外格安航空券の販売から開始していた。1989年(平成元年)から、自由度の高いパッケージツアー「Ciao(チャオ)」を主催・販売を始めた。

 当時のパッケージツアーでは珍しく、1人から催行し、延泊や滞在行程のアレンジを可能とした新たなスタイルとして市場に打ち出した。今でも主力商品として販売してる。このほか、HISの旗艦商品であった海外格安航空券は他旅行会社も取り扱いが進み、今では一般化している。

【情報はTVや雑誌などマス媒体から】

 

 当時は、海外の物価事情を取り扱ったクイズ番組やヒッチハイクの旅が社会現象にもなったバラエティ番組など、現地の情報を収集する手段はテレビを中心としたマス媒体が主流だった。

 現地に実際に行かなければ得ることができない情報も多く、海外旅行は「まさに未知との遭遇という時代」だと振り返る。旅行の航空券・ツアーを比較・検索する情報源としては月刊誌「エイビーロード」(1984年創刊、2006年9月号で休刊し現在はウェブでの展開)に代表される旅行商品比較情報誌が書店を通じて流通し、海外旅行を身近にした一役を担っていた。

 そのあと、1998年前後よりインターネットや携帯電話が世帯・個人に徐々に普及し始めた。これらが海外の情報を知る1つのツールとして活用されるようになっていった。

【拡大する中国への渡航】

中国の渡航が目立つ

 

 海外渡航先ランキングでは中国が急増した。1990年は約46万人だった日本からの渡航者数は、翌1991年に約64万人にまで増えた。

 当時の中国は、鄧小平氏による経済の改革開放が行われて経済が急成長。「世界の工場」と呼ばれるまでになり、生産の拠点を中国にも置く日本企業が増えてきた時期だった。渡航者の拡大はレジャーよりも、ビジネスでの渡航が増えてきた背景があり、2000年以降も同じ傾向が続いた。
 
 一方、USドルの為替レートの変動が大きく乱高下した時代(1990年1USドル=約144.8円、1995年1USドル=約94.06円、1998年1USドル=約130.9円/数値出典:国際通貨基金データ)だったが、海外渡航者数には大きな影響はなかった。横ばいから微増傾向で、海外出国への意欲はアーリーアダプター層が担っている時代だったという。

2001年~2008年 9.11後の世界情勢混迷期

【燃油サーチャージの設定】

世界情勢は不安定な時代に

 

 大きな転機となったのは2001年のアメリカ同時多発テロを発端とする、世界各地で起きた情勢不安。伝染病の流行などもあり、海外旅行に対するネガティブな印象が色濃くでた時期だった。
 
 9.11のテロ以降、原油価格の変動が大きくなった。2005年、航空会社が急激な変動にも対応できでるよう、海外航空券の運賃とは別に変動制の「燃油サーチャージ」が設定されたのも、この時期となる。

 パッケージツアーでも燃油サーチャージは徴収となり、HISでは他社に先駆けて、燃油サーチャージ込みの総額表記での販売を開始(2008年2月)している。この総額表記は現在では多くの旅行会社が導入しており、一般的となっている。

【スマホの登場で情報取得が手軽に】

情報の入手が容易に

 

 技術の革新は加速度的に進んだ。iPhoneを代表とするスマートフォンの出現、Facebookなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)の登場により、世界はどこでもすぐにつながる時代となった。

 同時にネット予約が確立し始めた。海外の情報を比較的簡単に手に入るようになり、海外での過ごし方も多様化する傾向もみられ、FIT化が進む一歩となった。「情報を手もとで得ることのできる時代においての海外旅行は、癒しに代表される現実からの一時的な逃避が多くの目的であったように思う」。

 HISでもいち早く2008年からオンラインでの予約を始め、これに伴いコールセンターによる予約が急成長した時期だった。

【安近短のアジアがブーム】

アジアがブームに

 

 この時期の海外旅行者の動向は、アジアが全体的に人気で、逆にヨーロッパの人気渡航先であったイタリアが下がった。一方、アジアでは韓流ブームに起因した需要の波が海外レジャー市場にも波及し、近距離・安価に行くことができるアジアへ複数回行く傾向が出てきたことなども、ランキングに影響しているという。

2009年~2018年 情報過多時代

【LCCの参入と訪日ブームによる市場激化】

 2009年7月に中国人個人観光客への査証が解禁され、訪日外客数は東日本大震災の年を除き毎年増え続けている。2015年には、ついに日本人の出国者数を上回った。日本にとって「国際観光」が国策となり、インバウンドによる観光消費は小売業、飲食業など地域・関連企業に影響を与えるまでとなった。

 同時期、航空自由化も進んだ。インターネット予約や徹底した低価格、短中距離市場に特化、簡素で効率的な運営を特徴としたLCC(格安航空会社)が日本市場にも多く参入した。羽田空港の新国際線ターミナルが開業したことも相まって、海外旅行がより一層身近になった象徴となった。

【スマホの普及増加によるオンラインビジネスの登場】

スマホの普及で新たな勢力も

 

 スマートフォンは急速に普及した。2012年には人口の約半数が、2015年には約72%が保有するという、ほぼ1人1台情報端末を持ち歩く時代となった。知りたい情報はいつでも、どこでも手に入るようになり、スマホをプラットフォームとする多様なサービスが登場した。

 シェアリングエコノミーが活発になり、一般消費者間の取引(C2C)という新たな動きがみられる時代に突入した。より一層個人に合った消費が求められた海外旅行は、モノからコトへ体験に重きを置いた個人の価値観重視の傾向が顕著になっていった。

 旅行業界では新たな勢力としてオンライントラベル会社(OTA)が登場した。旅の形態もスマホによる検索性や閲覧性、予約機能などが向上し、需要が多角化。FITもシェアを拡大した。他方、パッケージツアーや航空券、ホテルなど旅の商材のメタサーチが出てきたことで、自らほしい商品をより的確に検索、購入することが安易になった。

【台湾がハワイと同規模の渡航先に拡大】

台湾が人気に

 

 近年は年により上下の動きはあるものの、台湾の上昇が目立つ。東京だけでなく地方空港からもLCCが就航し、手段・価格の幅が広がって、ハワイと同規模の客が訪れるようになった。
 
 海外渡航者数の上位10位以内にランクインはしていなかったが、東南アジアなど新興国への渡航がふえたのもこの時代だ。各国の経済状況が上昇して、治安の向上や宿泊施設の充実化したことが大きな要因とみる。

 HISでは、訪日需要の高まりによる座席確保の環境が変化し、チャーター便の仕入れ強化をはかった。海外支店で旅先でのサポート体制をより充実させることに加え、海外支店がある強みを活かした“貸切プラン”をパッケージツアーに組み込むなど、旅ナカの体験価値の向上に注力。OTAとの差別化を進めてきた。

 国内店舗の一部を渡航先に特化する専門店の展開を拡大したのもこの時期だった。現在は、ハワイやヨーロッパ、沖縄といった、人気観光方面に明るいスタッフによる専門店ならではの旅の提案を行っている。

【若者は海外旅行に意欲的】

若者の海外旅行への割合は増えている

 以前は、「若者の海外旅行離れ」という言葉をよく耳にした。日本の総人口における若者の人口が減少していることで、全体の海外渡航者数における若者の構成比率は縮小している。しかし、若者層(20~29歳)の出国率でみれば、SARSやイラク戦争など、外的要因が高まった十数年前には若者の渡航は弱含みの傾向があったが、近年は増加傾向をみせている。
 
 要因として、LCCが就航し価格の選択肢が広がったことのほか、スマホなどで情報収集や発信が手軽になり海外への敷居が低くなったことなどが影響しているとみる。「今後、日本人の出国者数増加には、発信力がありコミュニティを持つ若者の動向が大きく影響する可能性があるといえる」。

総括

新しい時代の幕開けを

 平成はアナログからデジタルに、オフラインからオンラインに大きく技術的な転換を向えた。物理的距離は情報により身近に感じられるようになり、日本における海外旅行はより安易になった。
 
 HISは格安航空券販売から始まり、自由度が高く格安のパッケージツアーを世の中に提案し、海外旅行の自由度が拡大していくことに合わせ成長してきた。今では旅行会社の店舗に行かなくても、海外旅行のすべての手配ができる。一方、「実際の旅を通してでしか得たり感じたりすることができないことも多くある」という。
 
 「我われ旅行会社は、世界各地の事情や航空会社、ホテルなどの現状を把握し、正確な情報として客に届けることはもちろん、旅を通じて叶えることができる多くの可能性を伝えていく必要があると考えている」。
 
 5月の改元より、新しい時代の幕開けとなる。今年はラグビーワールドカップ、2020年には56年ぶりに東京オリンピック・パラリンピックが開催される。訪日需要にさらなる注目が集まるが、海外旅行でも観光庁は2020年に2000万人突破を目標に据えている。
 
 同社は、「未来を担う若者はもとより、多くの年代層が海外に行くことで、その国の文化や歴史を知り、相互理解をはかる。アウトバウンドの活性化による国際競争力が向上を目指し、HISも少しでも助力となるよう、引き続き邁進したい」と結んだ。

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