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群馬県・上野村 ― 危機管理研修の拠点づくりを構想

2013年10月21日
編集部

 今号の1面特集で群馬県・上野村を取り上げた。先日、取材で訪れたとき、上野振興公社常務の瀧澤延匡氏のご案内で、御巣鷹尾根の日航機墜落事故現場に建てられた慰霊碑「昇魂之碑」を訪れた。

 日航機の事故が発生した1985年8月12日は、高校1年の夏だった。大分県で部活動のキャンプを行っていた日で、真っ暗な森のバンガローの中で、電波の悪いラジオから途切れ途切れに聞こえてくるニュースの切迫した状況に、最初は「戦争が起こったのか」と思うほど、不安になったことを覚えている。その後も、日航機事故のことは、何度も思い返された。ボイスレコーダーのやりとりも何十回と聞いた。その日航機の事故現場に足を踏み入れるには、大きな勇気が必要だった。現場は、28年という歳月を経てもなお、異様な雰囲気を残していた。ただ、あの場所(墜落現場)を訪れて思うことは、犠牲者の御冥福を祈りながら、「安全」を願う気持ちだけだった。

 上野村では、危機管理(リスクマネジメント)研修の拠点として、「安全」について考え、学ぶ施設を作ろうという構想がある。とても意味のある取り組みだと思う。

 この危機管理研修の拠点づくりと、日航機事故とは直接的な関係はない。しかし、史上最大の航空機事故といわれる520人が犠牲となった日航機墜落事故から間もなく30年を経ようとして、日航機事故そのものを知らない世代へと移り変わりつつある。犠牲者の遺族や関係者も高齢化し、慰霊登山の参加も難しくなりつつある状況のなかで、「決して風化させてはならない事故」と上野村の神田強平村長は語る。そして、上野村だからこそ、全世界に向けて、安全性を訴えることができる、「リスクマネジメント」の拠点になり得る村だと思う。

 LCC(格安航空会社)の参入により、日本の空や、世界中の空をこれまで以上に航空機が飛びまわるだろう。旅行者にとっては選択肢も増え、便利にもなる。しかし、価格競争の激化が進むと、あってはならないことだが、どの業界でも、安全面がおざなりになる傾向が強まる。この意識を防止することは、とても難しい。

 たとえ運賃が安くても、故障や小さな事故が度重なる運輸機関があると、誰もが利用することを躊躇する。利用者を守るために、「安全性」を基準にした尺度が、もっと、もっと重視されてもいい。

 ドイツに拠点を置く「JACDEC」は世界の航空会社の安全度ランキングを発表している。2012年版によると、1位はフィンランド航空。以下は(2)ニュージーランド航空(3)キャセイパシフィック航空(4)エミレーツ航空(5)エティハド航空(6)エバー航空(7)TAPポルトガル航空(8)海南航空(9)ヴァージン・オーストラリア(10)ブリティッシュ・エアウェイズ航空――の順。11年に1位だった全日本空輸(ANA)は12位に後退。日本航空(JAL)は47位にランクされている。

 機長や、機材の整備を担当するスタッフ、そして何よりも会社役員に、定期的な危機管理研修は必要だと思う。航空会社だけではない。鉄道会社やバス会社などの運輸機関、そして、さまざまな部品を作っているメーカーも同じである。利用者を守る「安全性」の意識を呼び戻す機会を、決して惜しまないでほしい。

(編集長・増田 剛)

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