test

訪日外客数1000万人に向けて ― VJ大使からの修正点は“宝の山”

2013年10月11日
編集部

 観光庁が発足した2008年10月1日から数えて5周年を迎えた13年10月1日、同庁は「訪日外国人旅行者1千万人に向けての集い」を開いた。ビジット・ジャパン(VJ)事業がスタートした03年に「訪日外客数1千万人」を目標に掲げたが、あれから10年が経つが、一度も達成することができなかった。数字がすべてだとは思わないが、予算投入のあり方や、世界の観光客の足が日本に向かわなかったことへの反省は必要だろう。

 日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、13年の訪日外客数の1―8月累計の推計値は、前年同期比21・4%増の686万4400人。12年は年間で835万人訪れているので、2割増のペースを続ければギリギリ達成できるという計算だ。久保成人観光庁長官も「10月1日時点では(目標達成は)厳しい状況」という認識を持っている。国はこの節目の年に形振り構わず、予算執行の前倒しをしてでも「悲願成就」を目指す意気込みを感じる。

 「1千万人の集い」に先だって、国土交通大臣から委嘱された「ビジット・ジャパン大使」21人が一堂に会し、観光庁の久保長官以下幹部と意見交換を行った。そこでは世界の観光客が日本に足を向けなかった原因や修正点が山のように出てきた。

 その一部を紹介すると、外国人観光客受入れの草分け的な存在である澤の屋旅館館主の澤功氏は、世界中に日本のガイドブックがあることの重要性を訴えた。富士箱根ゲストハウス代表の高橋正美氏は受け入れ側の人的対応能力を上げていかなければ、いずれ異文化摩擦やトラブルが生じるだろうと警鐘を鳴らした。日本観光通訳協会元副会長の辻村聖子氏は外国人観光客に人気のJRパスが「のぞみ」に乗れないことの弊害を指摘。富ノ湖ホテル社長の外川凱昭氏はビザ緩和やスムーズな入国審査を求めた。

 沖縄ツーリスト社長の東良和氏は「都道府県や市町村にも観光予算が増えてきているが、旅行、観光の流通のしくみや、空港のハンドリングのしくみを勉強していない担当者が制度設計すると『馬鹿げた』不公平な政策が生じる」と述べた。新規LCC就航に支援金を出すことが、同じ路線の既存の航空会社との格差を生み、市場原理を壊す原因になることや、たとえば旅行者の頭数に対して3千円の支援金を出発地の旅行会社に予算づけすると、支援金を得た旅行会社が5万円のツアーを4万7千円で売り、結局A社からB社に移るだけになるという事例を上げた。ショートショートフィルムフェスティバル&アジア代表で俳優の別所哲也氏は「日本からは物語が聞こえてこない」という海外の声を紹介し、ストーリーテリングの拙さを指摘した。JR九州ビルマネジメント社長の町孝氏が大学生に行ったアンケートによると、パスポートを持っているのは約2割。「来てください」と言う以上、こちらもいつでも行ける準備が必要ではないかと語った。

 このほかにもたくさんのビジット・ジャパン大使からさまざまな意見が出された。しかし、一つだけ残念だったのは、時間内にすべての大使が発言できるように「1人3分以内」と観光庁から言われていたにも関わらず、10分近く語り出す大使もいた。順番が後ろの4人の大使は時間切れで、ひと言も発言できなかった。持ち時間を延長した大使は、自己満足のように聞こえた。

(編集長・増田 剛) 

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。