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都市と農村の提携 ― 対極の相互補完関係を

2013年8月21日
編集部

 尾道の志賀直哉旧居から穏やかな尾道水道を挟んだ向島を眺めていたとき、「あの島の安い宿に滞在して、魚釣りをしながらのんびりしたいな」と思った記憶がどこかに残っていて、この夏、尾道を再訪し、向島の一軒家を借りて過ごした。広島ではもう1カ所滞在した。潮待ちの港だったことでも知られ、瀬戸内海に面した大崎下島で重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている御手洗地区の船宿に泊まった。現在は橋が架かり、呉市内から車でも行けるようになった。遊郭・女郎文化の面影を残す「なごみ亭」という1日1組限定の宿に宿泊した。ここでも釣りを楽しんだ。

 瀬戸内海の美しい小島を幾つか訪れ、のどかな夏を感じる時間の中で、都会と田舎の相互補完関係が進めば、もっと観光産業も活躍する場があるのではないか、体力が自慢のイキの良い若い警察官と、知恵と経験豊かな老警察官がいつもペアであるように、都市と農村が対極の補完関係を築けば、問題点は少しずつ解消されていくのではないか……と風情のある町並みと静かな海を眺めながら思った。

 類似性のある海外都市との姉妹提携に加え、国内では都市と農村が越県して連携を進めているようだ。たとえば、東京都港区と岐阜県郡上八幡市は徳川家康の家臣・青山家が江戸時代、美濃郡上藩の藩主になったことを縁に、交流基本協定を結んでおり、双方の子供たちが地元ではできない体験・交流を促進する事業が行われている。

 社会全体にとっても相互にメリットは大きい。役所や民間企業も人材交流を行うことで、新たな価値観を発見する機会を得るかもしれない。希望者には、移住しやすい環境を整えることも有効だ。農産物の流通経路の確立、不足しがちな医師や弁護士の派遣制度など、双方の強みが、弱みを補完し合える。

 この都市と農村の提携は、災害時にも大きな力を発揮する。東京都渋谷区では、災害時相互応援協定を鹿児島市(鹿児島県)、大館市(秋田県)、飯田市(長野県)、河津町(静岡県)などと結んでいる。大災害が発生した際には、優先的に物資を送ったり、被災者を積極的に受け入れることで、相互の住民に安心感が与えられる。

 一つの自治体ではすべてを満たすことは不可能だ。都市と農村の補完関係のさらなる増加を望む。

(編集長・増田 剛) 

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