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旅行ガイドブック ― ロマンチシズムの香りを

2013年8月1日
編集部

 自慢ではないが、子供のころ、授業の予習は一度もやったことがない。しかし、こんな私でも、旅をする前にはガイドブックを買って来て、旅先の地理や歴史、食文化などの予習を楽しみながらしてしまう。ガイドブックは「旅の先生」である。さらに、旅というものは、経済波及効果よりも、文化波及効果の方に、より大きな貢献をしていることを感じるのだ。

 今の時代、飲み会の居酒屋もスマートフォンで探すし、旅先だってその延長線上にある。スマホが登場する前から、旅行ガイドブックの販売不振は言われていたが、今後はさらに厳しい状況になるかもしれない。でも、先に述べたように、私なんぞは今でも旅行する前には、律義にガイドブックを購入し、出立の数日前はペラペラとページをめくりながら、いつの間にか読み込んでいる風情なのだ。そして、旅の間はいつも肌身離さず一緒だ。困ったときには旅行鞄から取り出し相談する。

 ガイドブックも千差万別である。しかし、古代から未踏の地を冒険する旅の必需品として、良質ではない紙に貴重な文字情報、地図が手書きで記された「案内書」(ガイドブック)を片手に分け入って進んだ、あの“ロマンチシズム”の香りが、DNAとして残されていないならば、残念なことである。

 最新情報という観点では、インターネットに道を譲る。また、具体的な旅行者視点の情報では、トリップアドバイザーなど「口コミ」サイトに軍配が上がる。では、旅行者は、この前時代的な旅行ガイドブックに何を期待しているのだろうか。

 限りある紙幅の中で個性が競われるが、私はやはり、情報量の多さを求める。濃密な情報量が、最終的に勝敗を分ける。ガイドブックはその土地の辞書であるべきだと思う。旅行者と同じ視線から語られる口コミ情報とは立ち位置が異なる。詳細で見やすい地図や、危険情報など旅行者に必要な情報を的確に提供し、プロのガイド(案内役)に撤することが求められる。

 「良書は人生の最良の友」という言葉があるが、良いガイドブックは、旅の最良のパートナーであり、親友でもある。書店でガイドブックを手に取る多くの旅行者は旅の友を探しているのだ。旅を終え、ボロボロのガイドブックの姿を見たとき、改めて親友の存在のありがたさを知る。

(編集長・増田 剛)

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