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心機一転「本社移転」 ― 観光業界のコミュニティーの中心に

2013年9月1日
編集部

 心機一転。本紙「旅行新聞」の東京本社が9月2日から、新しい事務所で営業をスタートする。この原稿を書いている8月下旬現在、慌ただしい移転準備の真っ只中なのである。

 旧事務所から横丁の角を曲がった新事務所まで歩くと、駐輪自転車が邪魔で少し大回りしたものの203歩だった。心機一転には違いないが、同僚の顔ぶれも、利用する最寄りの地下鉄駅も、昼メシを食べる店も、たぶん以前と変わらない。それにしても引っ越しとは身辺整理であると再認識した。机の周りに積み重なった資料の山は、ほぼすべて捨てた。「今まであったことすら気づかなかったのだから、これからも同じように重要ではないはずだ」との信念によるものだ。それに、今は紙のみの資料はほとんど存在しない。何らかのかたちで、パソコンの中にデータとして残っている。

 先日、本紙と提携関係にある台湾「旅奇週刊」の記者とイタリアンレストランで会食した。そのときに、日本では営業マンが商談などの際に初対面の相手に取り出す会社概要(パンフレット)が、台湾ではほどんど使われないという話をしながら、台湾は、随分ペーパーレス化が進んでいることを知った。新聞社としては複雑な思いだが、日本でもペーパーレス化はどんどん進行していくはずである。

 そして、IT化が可能にしたペーパーレス化を、さらに突き詰めていくと、「事務所もいらないのではないか」という考えに至る。つまり「オフィスレス」である。記者はノートパソコン1台あれば、原稿はどこでも書けるので仕事場は選ばない。職種にもよるが、部分的にオフィスレス化が進んでいくことが予想される。IT社会によって便利になる一方で、文明の利器の囚人にならぬようにしたい。時間的、空間的にも、より自由になれることを望んでいるが、人間は自らが発明した道具に縛られていく動物でもあるからだ。

 そして今夏は、猛暑や、「経験したことのない大雨」が頻発した。大荒れの8月が終わり、9月1日は「防災の日」。大地震や大型台風、集中豪雨など、近年凶暴化しつつある自然災害への備えが必要である。

 例えば首都圏で大災害が発生した際、危険度の極めて高い都心にスシ詰め状態の満員電車が一斉に向かうのは、防災や危機管理の考えとは真逆の行動のはずである。新型インフルエンザなど、国家的危機の“パンデミック”が発生した際も同じである。データ通信によって、危険地域から分散して個人が仕事ができる環境整備も必要だ。

 近い将来、この国でオフィスレス化が拡大したとしても、人々は個々に分散していく一方向ではなく、自発的に集合できる空間を今以上に求めるのではないか。旅行会社で上手くこのコミュニティーを取り入れているのがクラブツーリズムである。定年後、会社という“居場所”を失った世代にも、新しい自発的なコミュニティーの場を提供している。今後、さらに細分化していくであろうコミュニティーの場に、旅行会社や観光産業がどのように深く関わり合っていけるかが勝負になる。

 旅行新聞は今秋から、台湾「旅奇週刊」の紙面を月1回のペースで掲載していく。また、宿泊業界で最大の関心事である「耐震問題」の連載もスタートさせる。本紙が観光業界の自発的なコミュニティーの中心となれるよう、紙面づくりに努めていきたい。

(編集長・増田 剛) 

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