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ペンを持つ者 ― 地域を輝かす気概を(3/11付)

2012年3月12日
編集部

 あれからもう1年が経つというのに、津波に襲われた町の幾つかは復興の足掛かりも掴めないままのところがある。漁業や農業、そして観光業など地場の産業が復活しなければ、その地域の復興はありえないし、地場産業の復活には、地元の人々がその地域に住み、生活をしなければならない。しかし、津波に流されてしまった住宅地や産業地の多くは、今も更地のままになっている。

 少子高齢化、過疎化が著しい地方部でとくに人口減少傾向が進んでいたが、東日本大震災で一気にその流れが加速した。東京に隣接する千葉県ですら、2011年は予想を7年前倒しに人口が減少したという。大きな打撃を受けた東北地方では、このまま放置していれば、人口流出はさらに加速するだろう。

 高度経済成長期や人口増加時代なら、復興のスピードも早い。力強い再生力によって、各地で復興の鎚音が響き渡っていたかもしれない。しかし、国の少子化問題の対応の遅れが、あらゆる歪みを起こしている。残念だ。高齢層に手厚く、現役世代、若年層への手当ての貧弱さ。若い家族や20代の若者、10代の学生が安心して教育を受けられ、就職ができ、結婚・子育て、生活ができる社会の仕組みづくりが国にとって一番大事なはずなのだ。百年の国家観、未来を語れる政治家が何人いるだろうか。また、ごく近未来図を描いても、災害に対して極めて脆弱な東京に人や経済、文化、政治の一極集中でいいと考える人はあまりいないだろう。変革のスピードがあまりに遅すぎる。

 日本全体を見渡すと、札幌や仙台、新潟、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡といった地域の中核都市は、もっと個性的で、輝くべきだと思う。駅を降りた瞬間の無個性ぶりには、げんなりだ。地域ブロックのリーダーとして、海外にも知名度を上げるために、率先して文化・経済活動を盛り上げていってほしい。東京ばかりを見るのではなく、世界中の煌めく都市を模範に、地域の文化力を高める努力に期待したい。訪れる人に、ドキドキさせてほしいものだ。

 そして、我われペンを持つ者は、地域の魅力を掘り起こす力の貧弱ぶりを直視し、反省すべきである。松尾芭蕉が「奥の細道」で訪れた観光名所は、今も輝きを失わない。ペンを持つ者、芭蕉ほどの気概はあるだろうか。

(編集長・増田 剛) 

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